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ノウハウ
2024年6月17日

持ち込み・漫画賞の傾向と大賞受賞作品を見ながらアドバイス【マッグガーデン】

各出版社で実施されている漫画賞には様々なジャンルの漫画作品が応募され、魅力的な作品には賞金や本誌読み切り掲載、連載の権利を贈呈するなど商業連載に繋がる特典が用意されているものもあります。ただ、魅力的な作品とはなにか、大賞受賞する作品はどういったものか、漫画媒体ではどういったものが求められているのか、まだまだ伝わっていない状況だと思います。
今回は、月例マッグガーデンマンガ大賞を主催している株式会社マッグガーデンにご協力いただき、最近の持ち込みや漫画賞の傾向、実際の受賞作品を見ながらどんな点が良かったのかご紹介していきます。



最近の持ち込み・漫画賞の傾向について

Q.持ち込みではどのくらいのページ数や資料など準備すれば好ましいのか教えてください。
A.ページ数は30~50p程度の完成原稿の読み切りが理想的です。ページ数が多すぎると主題が定まっておらず、構成が冗長であると捉えられる場合があります。作品によりますが、一般的ではない教養が求められたり時代背景を知っていることが前提の内容である場合は、あくまで補足の役割として資料を用意することをおすすめします。

Q.最近持ち込まれる作品でこういったジャンルが多い、このジャンルは少ない、読者の中ではこういったジャンルが人気などの傾向を教えてください。
A.マッグガーデンでは、ファンタジー作品は舞台を問わず多いです。ほかにも男性向け、女性向け問わず恋愛を主題に扱った作品も多いです。ファンタジーと恋愛を扱ってる作品は時代を選ばず読み手に需要があります。ですが、作家さんの「これを描きたい!」という気持ちが一番なので、必要以上に考えなくともいいかと思います。様々なジャンルの漫画をお待ちしてます!

Q.持ち込みでは主にどういったところに注目して見られているのか、どういった姿勢を意識すべきか、担当として見ていきたいと思うポイントを教えてください。
A.楽しませること、見られることを意識しているかに注目します。漫画は絵の表現が重要なので巧拙にかかわらず画面作りは意識してほしいです。ただ漫画は総合力なのでわかりやすい企画か、適切な情報量や展開なのか、構成が複雑すぎないかにも着目します。また時代に合わせた題材を扱っているか、価値観が今どきかも重要です。

Q.漫画賞においてはどういったジャンルが多いのか、持ち込みとは違った傾向があれば教えてください。
A.お持ち込みいただく作品の傾向とさほど変わりませんが、漫画賞は恋愛を主題に扱った作品よりファンタジーのほうが比率としては多いです。ギャグ・コメディ作品や、アンダーグラウンドな題材を取り扱った作品も持ち込みと比べると漫画賞のほうが多い印象があります。派手なバトルをする作品は案外少ないので読みたいですね!

Q.ネームの粒度は漫画家によって様々だと思います。編集部としてはどの程度のものが理想か、どういった点を意識すると編集者視点として読みやすいか教えてください。
A.目的に合わせたネームが理想的ですね。例えば表情を魅せるシーンで正しく喜怒哀楽が伝わっているか、バトルシーンで敵味方の位置が伝わるかなどがあげられます。ネーム段階で下書きレベルに描きこむ必要はありませんが、ここでも人に見られる意識は大事です。手書きだと文字の読みやすさも作品自体のホスピタリティに表れる印象があります。

Q.持ち込みや漫画賞において他の漫画家志望者よりも一歩抜きん出るために意識すべきことを教えてください。
A.何かしら突出したスキルがある作品は目を引きますね。全ての作品に通ずるところでは、キャラの感情の積み上げや切り口が甘いと面白さが半減するので、何かしらで感情の積み上げ方や影響の与え方を研究することは重要です。ほかには投稿先の読み手はどんな展開、内容を求めているのかを考えられると強みになると思います。

Q.ケースバイケースではありますが、連載が決まるまでの流れや手段を教えてください。(連載会議の時期や決め方など)
A.ざっくりいえば2通りです。編集部の企画会議にネームを提出して全体で掲載可否を話し合うパターン(毎月中旬と下旬に行います)と、上長に直接見せて企画を通すパターンがあります。企画自体は作家さん発案だったり、編集の企画案を元にしたり様々です。コミカライズは作画仕事に興味がある作家さんを優先的に斡旋します。



月例マッグガーデン マンガ大賞 完成原稿部門 大賞作品を例に

月例マッグガーデンマンガ大賞の完成原稿部門でネマキ先生の『竜の子』が大賞を受賞しました。今回はその『竜の子』に対して、編集部はどういうところが良かったのか、どういうところを改善すればより良かったのかコメントをいただきました。受賞作品とコメントを並べながら、自分の作品に取り込められるテクニックは活用していきましょう。
受賞作品と受賞されたネマキ先生のインタビューは下記リンク先からご覧いただけます。
受賞作品を読む
インタビューを読む

【ストーリー】
主目的がぶれることがなく、最後まで筋の通った一つのお話として描かれていたところが高評価でした。終始重厚な語り口で描かれている本作ですが読み手の集中力が途切れないよう、要所に笑えるような表現を取り入れたことにホスピタリティを感じました。

しかしお話を俯瞰してみた時には「雷竜」が与える影響力の説明のため、本軸からやや外れた解説も多く当初の目的が見えづらくなったところは少し残念でした。今後の展開に大きくかかわる説明が優先的に提示できると主目的を見失わないお話づくりができるでしょう。また本作は淡々とお話が進むため次のページをめくってもらうヒキという点において、画力に比べると構成が弱かったように思います。大きな流れの中で見せ場になる箇所はあるものの、ページごとの段階的な盛り上がりは見られず要素それぞれが独立した役割をしていたところは今一歩でした。次回は先行きを示唆するような重要性が高い情報を優先的に描写することに挑戦してみてほしいです。

【キャラクター】
本作は必要最低限のキャラクター性を提示できていましたが、それぞれが初登場の際にわかりやすく好感や共感、憧れが持てるキャラクターとは言い切れませんでした。ただ各キャラクターの「目的」は単純明快に描かれていたため役割がしっかりと読み手に伝わりました。本作は「雷竜サンドラード」ありきで物語が展開されます。作品の特性を上手に使って各登場人物のパーソナルな情報をそれぞれの目的から掘り下げられていたところは評価のポイントといえます。

セリフ回しが印象的な反面、セリフが多く端的なキャラクターへの理解には時間がかかった点は研鑽が必要です。次作は冒頭から読み手が興味を持てるようなインパクトのあるキャラクターの見せ方にも挑戦してみてください。小さな印象を積み重ねることも重要ですが、大きな印象を与えてどういったキャラクターか瞬時に理解してもらうことも大事です。

【アイデア】
今作では目新しいアイデアは見られませんでしたが、細やかな設定の説明を積み重ねたことにより、この作品でしか味わえない独自の世界が見どころになっています。

一方で本作はワンアイデアとしてはヒキが弱いところに改善の余地があります。昨今はSNS等で漫画を知ってもらう機会が増えました。多くの読者の目にとめてもらうにはどういった題材であれば強烈な印象を残せるか、媒体に限らず様々なエンターテインメント作品に触れてみるとよいでしょう。

【画力】
歴代の本漫画賞作品のなかでも、最高レベルであるといっても過言ではないでしょう。編集部からは、終始見ごたえのある画面を描き切ったことで満場一致の高評価を得ました。キャラクターのデザインや、魔物などの造形に関しても自身の紡ぐ世界に上手に落とし込めていたところも評価が高かったです。

終始圧倒される絵が続きますが特にバトルの応酬やキャラクターが見得を切るシーンは読み手の期待を裏切ることのない凄みがあります。

物語、設定、演出がこの高い画力に裏打ちされたことで作品全体の説得力が増していました。次作はこの高い画力を生かして、どういった物語が紡がれるのか期待が高まります。

【総括】
本作は特に高い画力、演出力の高さについて高評価が集まりました。初投稿の作品としても、目を見張るクオリティだったといえます。お話の構成やコマワリなど、まだまだ腕を磨いてほしいところはありますが欠点を補っても余りある高水準な作品となっていました。今の持ち味を生かした次作が編集部一同楽しみです。




■月例マッグガーデン マンガ大賞

目標次第で選べる2部門!連載やデビューのチャンスを掴み取れ!
完成原稿部門と連載ネーム部門にて受付をしています。アナログ原稿・デジタル原稿どちらでも、またオンラインからの応募も可能です。

詳細は下記をご覧ください。
https://magcomi.com/article/monthly_magprize