橘オレコ先生による恋愛漫画制作お悩み解決講座【マンガワン】
#マンガイチ恋愛漫画賞開催記念!今回は橘オレコ先生にご協力いただき、事前に恋愛漫画に関するノウハウ相談から漫画制作はじめたてのお悩みを募集し、それぞれ回答いただきました。
橘オレコ先生は小学館の漫画アプリ『マンガワン』にて『ホタルの嫁入り』『プロミス・シンデレラ』など執筆されており、現在連載中の『ホタルの嫁入り』は『みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024 大賞』や『全国書店員が選んだおすすめコミック2024 1位』など受賞する大人気作品です。
Q1:橘オレコ先生のキャラクターの個性の強さはたまたま生まれるものですか?戦略的に狙っていますか?「世間にウケる」と「自分の癖」の塩梅加減はどのようなものでしょうか?
橘オレコ:もともと個性的なキャラクターが好きなので、世間のウケをそこまで意識していないんです。結果的に、自分好みのキャラクターが世間の皆さまにもたまたま受け入れられているようで、本当にありがたいと思っています。感覚としては、自分が好きなキャラを自由に描いている感じですね。ただし、「これをやると嫌われるかも」とか「もっと優しい表現のほうがいいかな」など、読者の皆さんがどう思うかについては常に考えています。まずは自分が描きたいものを形にして、編集さんの意見を聞き、話し合ってブラッシュアップしたものが最終的に世に出ています。マンガは読者さんがいてこそ成り立つものなので、自分以外の人の意見も大切にしています。もし「自分の癖」が気になる場合は、周囲の人の意見を聞いてみるのも良いと思いますよ。
Q2:男性の可愛らしい仕草は実体験ベースでいろいろ考えられるのですが、女性の可愛らしい仕草はうまく俯瞰できず描いててピンときません。対処法があれば知りたいです。
橘オレコ:女性の可愛らしい仕草…。実は自分でも描けている気がしないのですが(笑)、困ったときは口元や顔の近くに手を持ってくるよう意識して描いているかな…。そうすると、指先がさりげなく色気を演出してくれる気がします。
Q3:キャラクターの名前はどのように決められますか。変に凝りすぎた名前を考えてしまい、覚えにくいキャラを動かしにくく感じます。
橘オレコ:名前は、完全に好みで付けてますね。個性的な名前も好きなのですが、意外とつけてないかも。キャラクターが名前負けしないようにだけ注意しています。
Q4:橘オレコ先生が描いた漫画に出てくるキャラで誰がいちばんタイプですか?
橘オレコ:全員タイプだな~。好みの幅が広くて(笑)でも、パッと浮かんだのは三枝(『ホタルの嫁入り』の登場人物)ですかね。
Q5:恋愛漫画において主人公とヒロインは大事だと思いますが、両者それぞれ抑えておきたいポイントがあれば知りたいです!
橘オレコ:自分好みのキャラかどうか。そして描いているときにモチベーションが上がるかどうかですね!私自身が人として魅力を感じるキャラクターたちだからこそ、ヒーローがヒロインに、ヒロインがヒーローに惚れるんです。ヒロインは、自分にはできないようなことができる、かっこいい人間像を描きたいと思っています。
Q6:恋愛漫画でもっとも大事にすべきポイントはなんでしょうか?
橘オレコ:大事にしていることは、自分が魅力的だと思うキャラクターを描くことですね。それはヒロインやヒーロー片方だけではなく、双方です。
Q5と内容かぶるんですが、やはり自分が魅力的だと思うキャラクターだから惹かれ合うんです。仮に、ヒロインが「空気を読むのが苦手」「友達を作るのが下手」などネガティブな悩みを抱えていたとしても、人の目を気にしなくてかっこいい、うんと優しい、底抜けに明るい、誰よりも勇敢、なぜかいつも余裕があるなど、作者自身が好きになれるような魅力があれば、自然と相手キャラクターも惹かれ合ってくれます!投稿作品だと、ヒロインの悩みばかりが描かれ、魅力的が描かれないことも多いので、たっぷり魅力を描くというのは大事なポイントだと思います!
Q7:橘オレコ先生の描かれる漫画は背景や衣類、時代考証なども納得感・臨場感ある描写で素晴らしいなと感じています。自分で時代劇ものや中世ファンタジーなどを描こうと資料集めのためにネットで調べたり本を読んだりしても、当事者の生の声のようなものは掴めなくて、どこかで見たような設定になりがちです。リアリティがないなと感じてしまいます。そこで生活している人間の思考を想像できるようになりたいです。橘オレコ先生は登場人物の置かれている背景と、そこに生きる人の感情が瑞々しく描いていらっしゃるので感情移入がスムーズです。資料集めなど、読者の没入感を高める工夫はどのようにされていらっしゃいますか?
橘オレコ:『ホタルの嫁入り』に関しては、ある程度資料も集めましたし、大阪、京都、伊勢、愛知、千葉など様々な取材地に足を運びました。ただ、描いた世界のほとんどは架空の設定です。設定が正確な方が良いのはもちろんですが、タイムスリップするわけにもいかないですし、限界がありますよね。
私の漫画が瑞々しいと思っていただけるのであれば、それはキャラクターが魅力を発揮してくれているからだと思います。魅力的なキャラクターを描ければ、そのキャラクターが自然と時代背景や世界観をリアルにしてくれると感じています。
Q8:何の漫画制作アプリを使われているのでしょうか。もしくはアナログ?橘オレコ先生の執筆環境が知りたいです。
橘オレコ:ペン入れまではアナログで、仕上げはCLIP STUDIO PAINTです。
Q9:橘オレコ先生はじめまして。私は正面顔を描くのがとても苦手で、正中線をかいてもどうしても片方に歪んでしまいます。橘オレコ先生のように左右対称な美しい顔を描けるようになるために、なにかコツなどはあるのでしょうか?とっても知りたいです。
橘オレコ:反転してもらえればわかると思いますが、私の絵も左右対称ではありません。効き目や癖など原因は色々で、私も最初は拘っていたのですが、諦めました笑
ただ、右利きの人は人物の顔を正面から描いたときに左上に引っ張られたような絵になる傾向にあると本で読んだことがあったので、そこだけ少し気を付けています。
Q10:背景を描く秘訣を教えてください。人物だけは描くのが好きなのですがどうしても背景が上手く描けません。
橘オレコ:私も背景を描くのはそこまで好きではありませんが、一コマを一枚絵として考えると割と楽しんで描けることに気付きました。あとは何度も達成感を味わいたい…。描き込みすぎないよう注意しています。
Q11:描きたいキャラクターは沢山いるのに構図が思いつかない時が多々あります。橘オレコ先生は構図などが思いつかない時どうしていますか?
橘オレコ:描きたいキャラクターが決まっているなら、その後はわりとスムーズに進むことが多いですね。とりあえず適当に動かしてみるところから始めます。そのキャラクターの性格ならどんな動きをするだろうと考えたり、連載が始まる前にはたくさんキャラの落書きをしたりします。また、1~2ページのミニネームを作ることもあります。その中でさまざまな構図を試し、キャラクターをどう切り取るのが一番かっこよく、かわいく、または美しく見えるかを考えるのが好きです。
Q12:質問というより要望ですが橘オレコ先生が描いているところ見てみたいです!ライブドローイング動画見てみたいです!!!!!
橘オレコ:
1.アナログ作業
水色のシャーペンで下書きをし(スキャンの際読み込まない色なので)、Gペンでなぞります。私は、基本Gペンのみを使用し、丸ペンなどは使いません(めんどくさいから)。線を正確になぞるというよりも、勢いと強弱を優先し、絵に安定感を持たせたいと思っています。下絵からペン入れまでで、平均30分~1時間くらい。書き込みが多いともうちょいかかるかな。
2.デジタル作業
アナログでペン入れまで済ませた原稿をスキャナーでパソコンに取り込み、仕上げの作業。私はベタ、ホワイト、トーン貼りなど行程を分けず、一括りで考えています。他、はみ出し、書き間違いを修正し、トーンを張り、最終調整をします。目安は1枚30分くらい。背景が多いと1時間くらいかかります。
3.番外編
こちらもアナログ線画をパソコンに取り込んでからの工程です。私の中では②と同じ行程なのですが、シーンによっては雰囲気を出すため、あえてトーンを使わずに描いています。こういうキャラの感情的なシーンは筆がノッて楽しい。
Q13:日頃作品で使われている素材(トーンやブラシなど)を知りたいです。
橘オレコ:トーンはCLIP STUDIO PAINTやネットで購入したものを使っています。ブラシはCLIP STUDIO ASSETSにある『線画用ペン』というものを選んでいます。
Q14:3D素材を使うと、あからさまに浮いてしまいます。橘オレコ先生は3D使いますか?もし使うなら作品に落とし込む際の時短テクニックや表現調整を知りたいです。
橘オレコ:3D素材、使いますよ。当たり前かもしれませんが、まずは人物の角度をしっかり決めてから素材を落とし込むようにしています。線は人物が浮かないよう、できるだけ自然に馴染ませるよう心がけています。もし角度がうまくつけられないなら、3Dを使う前にパースの勉強をオススメします!それが理解できれば、あとは線を書き足すなどして調整すれば、素材を自然に馴染ませられると思います!
Q15:デジタル制作だと、どうしても均一でぺたっとした線になってしまい、いい感じに線が引けません。アナログっぽさを残す手法を知りたいです。
橘オレコ:ポイントは「線の強弱」と「密度」ですね。力の入れ方にメリハリをつけて線を引くと、よりアナログっぽくなります。あとはペンの種類を変えるとか。ざらざらした描き心地のペンが沢山出ていますので、そういったものを使うとよりアナログっぽくなると思います。
Q16:橘オレコ先生はストレス発散にどういったことをされていますか
橘オレコ:運動、この一択です。
Q17:当方、『30代男』ですが恋愛マンガを描くのは変ですか?
橘オレコ:ちっとも変とは思いません。私は何かに挑戦する際、年齢や性別を気にしたことがありません。
Q18:両親から漫画家になるのを止められています。どのように説得したらよいでしょうか
橘オレコ:止められる理由にもよりますが、人に迷惑さえかけないのなら、私は隠れてでも漫画家になります(笑)人生一度きりなので、悔いのないようにしますね!ご両親のことは大事に!応援しています!
Q19:漫画家になりたい高校生です。お年玉やアルバイト通じて20万円ほど貯金が出来たので、iPadなど買って漫画制作挑戦しようと思うのですが、親からアナログがいいのではとアドバイスを受けました。今までデジタルしか考えていなかったのですが、アナログの良さや高校生ならどっちがいいなどあれば
橘オレコ:まずコツコツ20万円貯めたことが素晴らしいです!ご自身のお金なら、アナログorデジタル問題はもう完全に好みで決めていいと思います。どちらにも良し悪しはありますし。デジタルは場所を選ばず効率的で正確に描けるイメージですが、私は「好き」を優先してアナログにしています。私は迷ったときは心がときめく方を選択します。あのアナログにしか出せない線の歪みや強弱、そしてペンが紙の上を走る音が大好きです。
Q20:最後に漫画家目指している方・投稿者の皆さんへ一言!
橘オレコ:私は作画が大好きなので作画の技術面中心で回答させていただきました。何か少しでも参考になったら幸いです。また、現在、#マンガイチ恋愛漫画賞が開催中です!大変恐縮ですが、私が審査委員長を務めることになりました。漫画家を目指すみなさん、良ければご応募どうぞよろしくお願いします。〆切は3月14日です。ぜひ一緒にマンガワンで連載しましょう!
💙マンガイチ恋愛漫画賞
— マンガイチ (@manga_ichi) December 19, 2024
本日より応募スタート!!!
審査員は、
『#ホタルの嫁入り』『#プロミス・シンデレラ』などの
橘オレコ先生!!!
投稿方法はXにてハッシュタグ#マンガイチ恋愛漫画賞
をつけて原稿をポストするだけ!!
詳細はこちら
↓↓https://t.co/7OVXlyj8o2 pic.twitter.com/gArIQYIeti
■マンガイチ恋愛漫画賞
『ホタルの嫁入り』、『プロミス・シンデレラ』の作者橘オレコ先生を審査委員長にお迎えした特別企画「マンガイチ恋愛漫画賞」を開催します!!
テーマが「恋愛」であれば、現在、歴史、異世界ファンタジーなど・・・ジャンルは全く問いません!年の差、三角関係、百合、BL・・・どんな関係性でもOKです!多様な関係性を自分らしく表現してみてください!橘オレコ先生に自分の作品を読んでもらえる、とっても貴重な機会です。このチャンスを逃さず、みなさまの思い思いの恋愛漫画のご投稿お待ちしております!!
応募期間:2024年12月19日(木)~2025年3月14日(金)
結果発表:2025年4月27日(日)
詳細はコチラ
■ホタルの嫁入り
令嬢と殺し屋…絶対交わらないはずの二人の、契約結婚ラブサスペンス! 時は明治。 名家に生まれ美貌に恵まれるも、余命わずかと言われている紗都子の唯一の夢は…家の利益になる結婚をすること。 しかし突然、謎の殺し屋に命を狙われ…!? その場を生き延びるため、紗都子は殺し屋にある“提案”を…!?
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