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コラム
2022年5月13日

マンガ制作の分業体制 ~GANMA!編集者と作画家の視点~

『100殺島』
この島からは…100人殺すまで出られない。欲望が渦巻く孤島で巻き起こる、最悪のサバイバルデスゲーム開幕!
作品情報はこちら
・作画:岸本悠希
埼玉県出身。『動物の守り人』でGANMA!クリエイターズマンガ賞洋介犬杯特別賞を受賞(牧悠希名義)。『100殺島』で連載デビュー。人間ドラマとエンタメのバランス感、メリハリの利いた演出が持ち味。
・原作:大木貢祐
鹿児島県出身。歌手。作詞家。TVアニメ『バトルスピリッツ ダブルドライブ』OP、ED主題歌で歌手デビュー。TVアニメ『リアデイルの大地にて』ED主題歌「箱庭の幸福」作詞。『100殺島』で連載デビュー。


縦スクロール作品やコミカライズ作品はもちろん、通常のページ漫画でも徐々に増えつつある分業体制での制作。GANMA!で連載中の岸本悠希先生は、これまで1人で制作をされていましたが、『100殺島』の連載にともない、初めて原作/作画分かれての制作に挑戦されました。今回はそんな岸本悠希先生、そして担当編集の石橋さんに、1人で作る場合と分業制の違いについて伺っていきます。


――まずは『100殺島』がどんな作品か、改めて教えてください!

石橋:
『100殺島』は、異国の孤島を舞台に、修学旅行中の高校生が「100人殺さないと出られない」デスゲームに巻き込まれる、サバイバルデスゲーム漫画です。
見どころは、日本の高校生たちが異国の孤島で世界中から集まった人たちと殺し合うというスケール感と、1人殺すごとにポイントが入り、そのポイントを使って武器や装備を手に入れることができるというゲーム性です。ゲームが進むにつれて、どんどん強力な武器や装備が登場するので、今後の展開を楽しみにしていていただきたいです!


――どんな流れで連載が決定したのでしょうか?

石橋:
もともと僕が岸本先生を担当していて、2人でオリジナルの連載企画を作っていました。ただ、その企画が連載会議に落ちてしまって、そのタイミングで原作者の大木先生を担当している別の編集部員から『100殺島』の作画に興味ありませんか?と声をかけてもらい、岸本先生と相談してご一緒することになりました。
『100殺島』は王道のデスゲームモノなので、青年系の描写が得意かどうか等のスキル部分はもちろん重要だったのですが、原作を漫画にするという点で、原作を尊重しつつ自分の作品に落とし込めるかが非常に重要で、岸本先生はその点すごく前向きに捉えてくださっていたのがありがたかったです。
当時『100殺島』はまだ原案に近い形だったので、原作者の大木先生、大木先生の担当と僕の3人で企画や原作部分をブラッシュアップし、岸本先生にキャラデザやネームを進めていただき、連載会議に提出して無事連載が決まりました。


――なるほど。連載会議に提出したことで、作画サンプルが他編集の目に留まり、作画家としてのお声がけが発生した形なんですね。原作/作画が分かれるパターンにもいろいろあると思うのですが、『100殺島』の場合は、どこまでをどなたが担当されているのでしょうか?

石橋:
原作の大木先生が文字原作を、以降のネーム・作画を岸本先生が担当しています。編集は作品全体を見つつ、原作と作画のギャップを埋めるための翻訳者みたいな部分もあります。作品をより面白くするという大前提はありつつ、作画家さんから見た原作、原作者さんから見た作画の両面で、うまく連載が進行するように仲介役として調整をしています。
原作と作画が分かれる作品は、それぞれの作家さんに主体的に取り組んでもらうことが大事だと思うので、連載が始まる前に原作者さんと作画家さんと担当編集でオンラインで顔合わせを実施し、モチベーションを共有しました。それ以降はそれぞれで打ち合わせをしながら連載を進めています。


――スケジュール感はどういった感じなのでしょうか?

石橋:
原作と作画はそれぞれ別で打ち合わせをしながら制作を進めていて、どちらもおよそ2週間に1話完成させるイメージでスケジューリングしています。 原作に関しては、通常の連載分とは別に章ごとにプロットも並行して制作いただいており、つどつどプロットの打ち合わせもしています。

【1話 p1,2ツカミのシナリオ】セリフ・描写ともに記載。作画家さんに共有する一歩前の状態です。

【今後の展開をまとめたプロット】シナリオと同時平行で進めている全体の展開の相談。盛り上がりを作れるかや、展開の矛盾がないかを確認しています。

岸本:
シナリオをいただいてから、読み込みとミニネーム(かなり大雑把)に1〜3日、ネームに3〜4日、原稿に7〜9日のペースで進行していて、校正はネーム提出後の返却待ちの間で行っています。
まず原作の魅力を伝えられるよう、頂いたシナリオを読み込み、必要に応じて石橋さんに質問やキャラデザのご相談をさせていただいています。次にミニネームを描いています。液タブで最初からネームを描くと全体が見えづらいのと、内容をページ内にまとめることに注力してコマを細かく割ってしまうので、ミニネームでざっくりページの繋がりや流れ、見せ場を決めてから、ネーム、原稿作業に移っています。

【完成版ネーム】原作の大木さんともご相談しつつ、シナリオからさらに調整して理解しやすいように仕上げています。


――よく「作画家であれば兼業可能か?」という声もありますが、実際作業量としてはいかがでしょうか?

岸本:
ネームから仕上げまでもともと隔週で16ページ程度のペースで描けていて、今は18ページ程度なので少し量は多くなりましたが、自分の作業量と作業スピードはあまり変わっていないと思います。兼業可能かどうかは人によると思いますが、私の場合は全体的にギリギリのスケジュールで進行していて、アシスタントさんにお手伝いをお願いして、なんとか原稿を落とさずに済んでいるので、現状では兼任や兼業は難しいですが、チャンスがあればぜひ挑戦してみたいです。


――なるほど。岸本先生の場合はかなりお忙しい日々を過ごされているのですね。お忙しい中でネームや原稿の作業が思うように進まないこともあると思うのですが、その際はどのようにリフレッシュされているのですか?

岸本:
バラエティ番組やSNSをボーっと眺めています。好きなアイドルやタレントが出演している番組を見ていると、ほっこりして良い気分転換になります。また、最近ではTikTokでダンス動画を見るのが好きです。流行りのダンスでも踊っている人によって全然違うので見ていて楽しいです。何も気にせず見ていると時間があっという間に過ぎてしまうので、時間を決めて楽しむようにしています。


――作画担当は今回が初めてだと伺いましたが、1人で全て制作していた頃との違いはありますか?

岸本:
1話ごとの量が決まっているのでページ内にその量を収めるのに四苦八苦したり、先のストーリーを知らないので、前回描いた原稿中にストーリーにそぐわない場面があった場合は修正したりすることもあります。
私の中で大きな変化だったのは、演出に集中できるようになったことだと思います。絵を含めてまだまだ課題は多いのですが、『100 殺島』の作画担当としてお声がけいただく前は「ストーリーがご都合主義」だとよくご指摘を受けていました。つい自分で話を考えると、こういう話を展開したいと思う方向に登場人物の言動を合わせてしまうのです。
今回はすでに素晴らしい原作がありますので、見せ場の演出や登場人物の感情を伝えることに意識を集中できています。また、今回作画担当としてお声がけいただいたおかげで念願の漫画家として連載をできるようになったことが素直に嬉しいです。


――ありがとうございます。最終的に1人で描きたいと思っている方も、演出の練習や連載のペース感を掴む練習として、一度作画のみの担当を検討してみてもいいのかもしれませんね。最後に、これから作画担当に挑戦したいと考えている方へ、アドバイスをいただけますか?

岸本:
私は新人なので誰かにアドバイスをするなんて恐れ多いですが、未熟ゆえに1つお伝えできることがあるとすれば、自分が挑戦したいかどうかが大事ということです。作画を担当する前は、漫画で作画を担当される方は「画力が高い人」という思い込みがあり、自分の絵柄や画力が作画担当としてやっていけるかとても不安でした。不安なく万全の状態で仕事に臨めることなんて、なかなかないと思います。作画担当としての作業は絵を描くことだけではありません。もし、自分の作画の技術面で不安がある方がいらっしゃれば、躊躇せずに一歩を踏み出すことをお勧めします。




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