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コラム
2021年8月20日

【アルファポリス】プロ漫画家インタビュー!コンビに至るキッカケや仕事のスケジュール/黒百合姫先生

アルファポリス 漫画家 インタビュー


物語の中の人 コミカライズ
不老の魔法使いリヒードは、ひきこもり生活に終止符を打ち、外に出る決心をした! 森の中で偶然助けた領主の娘ミケーネから魔法学校の存在を聞いたリヒードは、子供の姿に変身し、ありとあらゆるコネを使って入学を試みる!! 伝説の魔法使いの物語、待望のコミカライズ!!
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黒百合姫/漫画
石川県出身。幅広いタッチと巧みな人物描写が持ち味の二人組。近刊には「妻は、くノ一」(角川書店)などがある。
田中二十三/原作
関東地方出身、在住。2011年末よりweb上にて作品を公開する。2012年「物語の中の人」で「アルファポリス第5回ファンタジー小説大賞」を受賞。



絵を描くのが好きな女の子たちがゲーム系同人サークルに進化


――まず、黒百合姫先生はお2人で活動されているコンビの作家さんだ、というところから読者の方に説明しないといけないですかね。

マナカ
私が、ネームと仕上げ、あと女の子キャラ担当で……。

彩帆
私は線画と男の子キャラを担当してます。

マナカ
私のほうが柔らかいタッチなので、自然と女の子を担当するようになりました。


――お2人が漫画を描き始めたのはいつくらいですか?

マナカ

漫画自体は物ごころついたときから描いてましたね。落書き帳に「新れんさい!」とか書いちゃって。新連載、くらいならまだいいけど、急に「れんさい29話!」とか書いたり。表紙描いたり付録作ったりもしてましたよ。


――じゃあ、小さいころから漫画家を目指してたんですね。

マナカ

将来は漫画家になるもんだ、くらい思ってましたね。

彩帆

私は漫画を描いてはなかったんですけど、小学生のときから絵画教室に通っていた、ふつうに絵が好きな女の子でした……。ところが、中学生からオタクな女の子に進化しまして現在に至ると。


――ちなみに最初に読んだ漫画は何になりますか?

マナカ

父親が漫画好きだったのか、実家に父親が若いころ買ったらしい古いジャンプやサンデーがあって、絵本代わりにしてたんです。「よいこ」や「めばえ」(共に小学館)を読むような年頃から「まことちゃん」(楳図かずお/小学館)や「ブラックジャック」「七色いんこ」(手塚治虫/共に秋田書店)あたりを読んでました。

彩帆

私は小学生のころは学年誌くらいですね。

マナカ

当時の「小学一年生」(小学館)に「連載作家による『女の子の瞳の描き方』」みたいな付録があって、「漫画って人が描いてるんだ〜」と知ったくらいから、私は将来漫画家になるんだろうな、と。

彩帆

実は、2人には共通のバイブルがあるんです。

マナカ

「悪魔(デイモス)の花嫁」(原作:池田悦子/作画:あしべゆうほ/秋田書店)というホラー系の作品です。これは多分母親の趣味で。

彩帆

うちにもなぜか1冊だけあったんです。



共通のバイブルによる影響でホラー寄りのペンネームになるも……


マナカ

これがまたおもしろい作品なんですよ。なんなら最初はホラーでデビューしようと思ってたくらいでしたから。


――めっちゃ影響されてますね。

彩帆

だからペンネームも一応、そんな雰囲気なんですよ。黒百合で姫ですから。

マナカ

最初は別々のペンネームで同人誌を描いていたんですけど、ホラーを描くときにそれっぽいペンネームにしようという話になって。私が小学生の遠足のとき、地元の石川県に「黒百合の姫」って怖い話があるとバスガイドさんから聞いたんです。それにちなんでペンネームをつけようってなったんですけど、私が勘違いしてて……。実はその話はお隣の富山県の話なんですよね。しかも姫の名前は黒百合ではなく早百合(さゆり)。彼女が黒百合にまつわる予言をしたって話なんですが、そこから取ったんですよ。

彩帆

2人の出身地である石川県の県花が黒百合だからいいかな、ということで「黒百合姫」に決定しました。

マナカ

その後案外、爽やかな作品を描くことが多くなったんですけど、ペンネームは変えそびれてそのまま残っているという。

彩帆

ペンネームに「姫」を入れるとか、今だとないわーと思うんですけど、ユニット名だからいいのかなーと。

マナカ

ホラー漫画なら雰囲気があってすごくいい名前なんですけどね。

彩帆

花言葉は「呪い」だっけ?


――まあギャップは大事ですから(笑)。昔の少女漫画家は、ホラーも描いてた人が多いですしね。他にも影響を受けた作品はありますか?

マナカ

あと影響受けたと言ったら……鳥山明先生ですかね。先生の作品に「HETAPPIマンガ研究所」(さくまあきら/鳥山明/集英社)という漫画の描き方がいろいろ載った本がありまして、基本的な漫画のお約束はすべてその本で学んだと言えるくらいです。

彩帆

結構大事なことが書いてあるんですよね。


――今なら電子書籍版がありますね。じゃあ、鳥山明先生と……デイモスがお2人のルーツってことですね。

彩帆

そこもやっぱりギャップが激しいですね(笑)

写真の本棚は中板がたわまないよう特注で厚い板にしてもらった自慢の逸品!



道を切り開くマナカ、ついていく彩帆



――漫画家になるって、周囲に反対されたりはしなかったんですか?

マナカ

東京の某有名専門学校のマンガ科に行きたいって親に言ったら最初は反対されました。なんとか説得して、親が用意してくれていた私の結婚資金(笑)で上京しました。そして1年ほど通ったんですけど、漫画を描くための基本的なテクニックしか教えてくれなくて……「ここで学ぶものは何もない」と学校を辞めて石川県に帰っちゃいました。当時はデジタルとかなかったんで、教えることが少なかったのかな? 基本的なテクニックなんかは、すでに同人活動で身についていたので、学ぶよりも同人誌出してたほうがいい! みたいな感じで。


――それは……親御さんは複雑ですね(笑)

マナカ

そこで諦められたという説もあります(笑)

彩帆

私のほうは高校卒業後、デザインの専門学校に通ったんですけど……なんか違うかな? と。それで学校に行かなくなりました。……そうなると親に怒られるじゃないですか。「お前どうするんだ」って。……じゃあ就職しちゃえばいいじゃん! と考えたんです。ちょうどそのころ、ゲームの会社に就職するための本みたいなのがあって、それにゲーム会社の連絡先とか載ってるし、これだ! と思って、絵を描いて送ったんですよ。そしたら最初に送った会社から面接に来てと言われ、そのままトントン拍子にイラストレーターとして入社しました。県外の会社だったんで私も地元を出たんですけど、結局、そこには1年半しかいませんでした。


――じゃあ何かゲームとして発売されたものにイラストが使われたりとかは?

彩帆

結果、採用されないまま退社しちゃったんですよ。自分のペースで描けないので、辛かったんですよね。


――それで地元に帰ると。

彩帆

そうですね。帰ると、同じタイミングで帰ってきてる子がいて(笑)。2人ともフラフラしてたので、ちょうどいいかなって(笑)

マナカ

1回県外に出て戻ってくると、友達になんか遠慮されてるかなーって空気感があって……。


――なるほど。奇跡的なタイミングだったんですね。お2人はどうやってお知り合いになったんでしょうか?

彩帆

地元を一旦離れる前はそれぞれ個人で本を出してたんです。同じ県で同じジャンルでサークル活動をしてると、イベントでスペースの配置が近かったり、友達の友達でつながってたりして……。それでイベント後にご飯を一緒に食べるようになったのが始まりですかね。そのころはそれぞれもっと仲の良い子が他にいたんですけど、地元を出たタイミングと戻ったタイミングが近かったので一緒に遊ぶようになって、ついでに友達から紹介されたアミューズメント系のバイトをマナカにも紹介したんです。で、同じバイト先で働き始めました。


――初対面時のお互いの印象はどうでしたか?

彩帆

初めて会ったときは私が高1でマナカが中3でした。行動力があってバイタリティに溢れている子だと思いました。

マナカ

私は、物静かでめっちゃ絵のうまい人だって思いました。仲良くなったら、物静かなのは楚々としているからじゃなくて喋るのがめんどくさいからだとわかったのですが(笑)


――(笑)。今、お2人は一緒に住まれているとのことですが、いつぐらいから共同生活をされているんですか?

マナカ

地元にいたときからです。一緒に勤めていたバイト先が実家からすごく遠かったので……。

彩帆

いちいち家に帰るのが面倒になっちゃって……。

マナカ

一緒に住もう、みたいな(笑)。石川県の中でもそれぞれ違う地域の出身なんですけど、お互いバイト先のある金沢から車で30分以上という田舎でして。


――てっきり幼なじみか何かかな、と思ってたんですが……モヤモヤが今解けました!

マナカ

そこからアパートを借りて共同生活をスタートしました。そこからも原稿自体は別々に描いていたんですが、私のほうが手が早くて……。

彩帆

私が遅いと(笑)

マナカ

折半で同人誌を作ってるのに、なんで私のほうが作業量が多いの!(笑)って問題が出てきたんです。

彩帆

1冊出すと、私が1/3くらいしか描いてない感じで(笑)

マナカ

彩帆さん絵がうまいんだから、もっとバリバリ描きなよ! となって、その結果、私がネームを切るようになって合作が始まりました。


――どういう経緯でデビューというか、漫画家の道に進むことになったのでしょうか?

マナカ

私はゲーム系の読者投稿雑誌への投稿からですね。その雑誌にはトップを取った投稿者に表紙を描かせてあげます権+賞金もあげますという企画があって、無事トップを取れました。でもちょうどそのころに大きな事件がありまして……。実は、同居先のアパートが放火されて焼けてしまったんです……。荷物もすっかりなくなったので、それで2人で東京に出ていこう! ってことになりました(笑)


――えっ? いきなり大事件じゃないですか。

彩帆

当時は若かったので、悩まずにポーンと東京行っちゃおうと。

マナカ

その事件の直後に夏コミ(コミックマーケット)があって、そこに投稿雑誌の担当の方が来てくれて「連絡つかないからどうしたかと思いました」って言われたんです。そして、投稿雑誌の表紙を描いたあと、担当さんにもう1人描ける人がいるって彩帆さんを紹介して、ゲーム系のアンソロジー漫画の仕事をもらったりしましたね。

彩帆

私のデビューはそこですね。マナカさんのついでにデビューさせてもらえました。だから私って「漫画家になるぞ〜!」と力んだことがなくって、流れに身を任せていたら漫画家になっちゃった感じです(笑)

同人活動10年ちょっとで出した本は70冊! 手元にあったものも知り合いの方に譲ったりして今はほとんど残っていないとのこと……!



困ったら原稿を描け! ししゃも1匹をおかずに食いつなぐ!?


大好きな漫画に専念するためなら、ししゃもだけしか食べられなくても苦にならない……


――それで今に至る、というのもある意味すごいですね。その後は順風満帆でした?

マナカ

実は「そろそろ漫画家ダメかなー」と思うタイミングもあったんですけど、その度に細々と仕事は来る、という感じで現在までやってこられましたね。


――やばいタイミング、あったんですか?

マナカ

そのゲーム系アンソロジー漫画を描いていた出版社が潰れてしまったあと、ホラー系漫画を描かせてもらったところも雑誌が潰れちゃって(笑)。その後は数年ほぼ同人活動のみで暮らしていました。別にこのままでもいいかなーって。

彩帆

好きなゲームをプレイして、その漫画を描いて暮らすのって幸せ、みたいな(笑)

マナカ

ただ、人気のゲームに燃えてるときはよかったんですけど、マイナーなゲームにはまったときは部数も売り上げもガクッと下がっちゃいまして。仕方がないので6本入りのししゃもを買って来て、毎食1本ずつおかずにして食べる、なんて生活をしていたこともありました。


――マイナーなゲームが好きなときは大ピンチと(笑)

彩帆

あれーなんか苦しいかも? という実感は出ちゃいますよね。


――そんなときはバイトでもして食いつないだりとかはありましたか?

彩帆

バイトしちゃうと、絵を描くヒマがなくなってしまうので、しなかったですね。だったら、次の新刊描いたほうがいい! ってししゃもで我慢してました。漫画の仕事じゃなくてもトレーディングカードの仕事やTRPG(テーブルトークRPG)雑誌のカットの仕事は細々あったので、それで印刷費を賄って。


――じゃあ最初に地元でバイトしてた以外は、漫画だけで生計を立てていらっしゃったんですか?

2人

そうですね。

彩帆

だから履歴書を書こうと思ったら真っ白ですね(笑)

マナカ

そんな私たちなので、OL漫画とか会社漫画とか描けないんですよね。そのジャンルは弱いかなーと思うので、将来漫画家を目指すなら社会人生活も送って、勉強はしておきましょう!

彩帆

漫画家は実体験が肥やしになるのでぜひ。


――じゃあ現代の会社が舞台のジャンルは苦手ということですかね。

マナカ

住んでる世界が違いますからね……(笑)


――ゲームはかなりお好きなようですが、アニメなんかはどうでしょう?

マナカ

かたっぱしから見てますよ。「合わない!」と思ったらすぐ切っちゃいますけど(笑)


――気に入ったアニメとかゲームが出てきたら、同人熱が再燃することとかはないですか?

マナカ

あ〜あまりないんですけど、「刀剣乱舞」(「刀剣乱舞-ONLINE-」)(DMMゲームス/Nitroplus)が出てきたときはちょっと考えたかな?

彩帆

でも仕事があるから仕事しなきゃ、って仕事してたら……。

マナカ

同人熱はおさまっちゃいましたね。他の方のいい漫画やいい絵が見られるので、自分たちが描かなくても満足できるようになったので。



大人気「物語の中の人」、再開へ……



――なるほど。では次に、「物語の中の人」のオファーが来たときって、どういうタイミングだったんでしょうか?

彩帆

ちょうど他社さんでやっていた前の連載が終わりそうなころですかね。

マナカ

さらにその連載していた雑誌がなくなるってことで……お、これって渡りに船だぞって感じでした(笑)


――そうですね。休刊前の最終号に次、アルファポリスで「物語の中の人」描きますって広告を載せてもらったと伺っています。

マナカ

作家にやさしい方針で、次につながるようにって配慮してくれたんですよね。ただ、その雑誌と読者層が重なっているのか若干疑問でしたけど……。


――担当編集さんからの情報ですが、その広告は作家さんの今後を一覧で掲載したページに載せてもらったみたいですね。「漫画 物語の中の人」の企画が立ち上がったばかりで細かなスケジュールが固まっておらず、とりあえず「今夏公開予定!」とかなりアバウトな告知になったそうですね。

彩帆

ああ、そうでしたね〜。


――その後連載も無事続き、コミックスも大人気。2015年5月刊行の「物語の中の人1」は5刷まで重版出来し、2016年4月に刊行した「物語の中の人2」は初版30,000部スタートと順調にヒットしていますね。「物語の中の人1」に関しては、ご自身の作品の自己最高部数だと伺っています。

マナカ

ありがたいことです。

彩帆

あとの心配は……ストーリーが原作に追いついちゃうことくらいですかね(笑)


――(笑)。そして2016年秋から第3部の連載が始まりました!

2人

引き続き頑張っていきます!


――よろしくお願いします。では、ここからはそんなお2人の仕事のスタイルについて伺います。

マナカ

お、お手柔らかに……(笑)

原作小説も併せると累計53万部(電子含む)の人気シリーズ!!



「物語の中の人」はここから生まれる! 作業場拝見!!


デスク周りにこだわりの感じられる作業場。先生本人に詳しく解説していただきます!

担当

今回はご自宅の作業場写真を拝見しながら、色々とお話しさせていただければと思います。

マナカ

写真の手前が私のデスクです。

彩帆

奥が私のデスクです。

担当

綺麗に整頓されていて作業しやすそうなデスクですね。お部屋の配色に合わせたインテリア……女性作家さんらしいこだわりを感じます! ただ、中央の大きなメタルラック、この部屋の中で異彩を放っている気がするのですが……。

マナカ

半アナログでやってた時期に、A3サイズまで取り込める大きなスキャナーを置いてたんですよ。かなり重量のあるスキャナーだったので、その重さに耐えられるよう、メタルラックを選びました。完全にデジタルに移行してスキャナーを使わなくなった今もそのまま使っています。

彩帆

もはやただの間仕切り兼収納ですね。

担当

それだけ大きなスキャナーを置くためのものであれば納得です。

マナカ

ラックは実務優先の適当チョイスですけど、机や椅子はこだわっています。

彩帆

この作業場、床が白くて、写っていないですけど扉が濃い茶色なんです。なので机や椅子、壁につけている棚もその配色に合わせてって感じですね。椅子はイトーキのモーブチェアです。座り心地がいいんですよ。

マナカ

私はその椅子に、腰痛防止のためにバックジョイを敷いています。

担当

なるほど。……この写真を拝見してからずっと気になっていた、中央に鎮座している日本刀についてなのですが……(笑)

存在感を放つ日本刀……。一体、何に使うのか!?

マナカ

ふふふ(笑)

彩帆

刀剣乱舞にハマったときに、キャラグッズを買うならいっそ気合を入れて、と思い、マナカの誕生日プレゼントとして買った模造刀です。土方歳三モデルです。

マナカ

前々から資料として1本、刀が欲しいなと思っていました。刀剣乱舞ではありませんが、新撰組には今ある商業活動のベースを作ってもらったと言ってもいい、「幕末恋華 新撰組」(宙出版)で大変お世話になったので……。

彩帆

その後も「妻は、くノ一」(角川書店)など、日本刀が出てくる漫画を描く機会が多かったので、あってもいいかなー、と。あと、泥棒が来てもこれで撃退できます(笑)

担当

(笑)。確かに防犯にも一役買ってくれそうな逸品ですね(笑)



デジタルを駆使して作品を作り上げていく!


モニターにはプロット、タブレットにはネームが……!

担当

それではマナカさんのデスクをより詳しく拝見させていただきたいと思います。……モニターに映っているのは、「物語の中の人」18話のネームですね。

マナカ

はい。コミックス1巻分のおおまかな流れや、各話の盛り上がりを考えてお話を区切っているプロットを確認しながら原作小説を読み返してネームに起こしています。2人で作業をしているので、時間があるときはなるべく前倒し前倒しで進行させてますね。……あんまり連載に向いてない性格みたいで、早く終わらせちゃいたいんですよ(笑)。一気に最終回までぶわああああっと描き切っちゃいたいタイプです(笑)

担当

前倒しで進めてくださるのは本当にありがたいです(笑)

マナカ

(笑)。「物語の中の人」は1巻区切りで第1部、第2部……といった感じでやらせてもらっていますけど、他社さんのお仕事だと120ページくらいの単行本読み切り作品を一気に作り上げるので、そのペースに慣れちゃってるのもあって(笑)

タブレットの拡大写真。このネームから「物語の中の人」が出来上がっていく……!!

担当

なるほど(笑)。漫画の形式は色々ありますからね……。続いて彩帆さんのデスクです。これは17話のワンシーンですね。

彩帆

はい。17話の下絵です。ついつい描き込んでしまいがちで、マナカに「遅い! どうせペン入れしたら見えなくなるんだから手を抜いていい!」と怒られてます(笑)。でも、その手の抜き方がよくわからなくて……。

マナカ

彩帆さんの下絵、本当に細かいんですよ(笑)。ベタまで塗ってあったりして。ペンが入っていない鉛筆画ですけどこれで公開できるんじゃないの? ってくらい。ペン入れする分にはそこまで細かいものだと楽なんですが、締め切り前とかは「ふんがー!」ってなります(笑)

タブレットに映っているのは下絵。この時点でかなり美麗です……!

担当

(笑)。でも、あれだけクオリティの高い原稿があるのは彩帆さんの丁寧な下絵のおかげかもしれませんね。……お2人のデスク周りの写真を拝見していて気になったのですが、それぞれタブレットの左側に置かれているキーボード的なものは一体なんでしょうか?

マナカ

ロジクールのゲームパッドですね。とは言ってもゲームに使ってるわけじゃなくて……。

彩帆

コミスタ(コミックスタジオ)に対応させてあって、ショートカットを記憶させてあります。同じ商品を使っているのですが、私のキーが白くてマナカのが黒いのは……。

マナカ

私は割り当てたショートカットを暗記しているので商品そのままなんですが、彩帆さんはシールにショートカット名を書いて貼ってあるからです(笑)

彩帆

便利ですよ? 使い始めの方にはオススメです!

マナカ

慣れたらいちいち見なくなりますけどね(笑)

担当

(笑)。同じデバイスを使用していても個性が表れていますね。……今まで黙っていたんですが、ここまでの画像に登場している猫ちゃんがどうしても気になります……!(笑)

彩帆

うちの金運アイテムです(笑)。この子を飼い始めてから晩ごはんがししゃもだけってことがない程度には裕福になったので、金運を運ぶ招き猫だと思っています。

マナカ

名前が影千代(かげちよ)で、「千代ちゃん」と呼んでます。数年前に亡くなった兄妹猫は男の子で、マルちゃん。本名は獅子丸(ししまる)です。

彩帆

どちらも「忍者ハットリくん」からとりました(笑)

担当

なるほど。猫ちゃんについてはのちほど詳しく聞かせてください!(笑)



息の合ったコンビプレイが支える、黒百合姫の1ヶ月!!


担当

ここからはお2人のスケジュールについてお聞かせいただければと思います。日々のリズムを作る中で、意識されていることはありますか?

彩帆

ひたすら描いてひたすら休む感じで……。メリハリは意識しています。同人時代も同じようなスケジュール感で作業していました。睡眠時間なんかはかなり無茶していましたけど、若かったからなんとかなってました(笑)

マナカ

同人時代は半分アナログ作業だったんで、PCを使うペン入れと仕上げ担当の私用のパソコン1台だけだったんです。彩帆さんは「パソコン? いらないよ〜」って(笑)。その時代はネット徘徊の時間がなかった分、彩帆さんの手はもう少し早かったです(笑)

彩帆

そうかもしれない(笑)

担当

ネットによって便利になった反面、弊害もあるわけですね(笑)。それでは、1ヶ月・1日と2つのパターンで細かくスケジュールを拝見させてください。まず1ヶ月のスケジュールですが、ネーム・ペン入れ・仕上げ担当のマナカさん、下絵担当の彩帆さんとしっかり分業体制をとっておられるからか、作業が流れるように進行している感じですね。

コンビならではの流れるような作業感。彩帆さんの下絵にスケジュールの維持がかかっている!!

マナカ

ざっくりしてますよね。こう見ると、1ヶ月ずーっと描いてように見えるんですが、そうでもないです。

彩帆

締め切り1週間くらい前までは、日曜日は「遊ぶ日」と決めて、1日ゲームしてたりします。

マナカ

そして遊び過ぎて締め切り数日前に後悔する(笑)

彩帆

もっと真面目にやってればよかったと(笑)

担当

日々の息抜きは大切ですからね(笑)。お2人の名誉のために明言しておきますが、今まで原稿を落としたり、延期したことはないです!(笑) ……話をスケジュール表に戻しますが、脱稿直後にまとめてお休み期間も取るスタイルなんですね。この感じだとちょっとした旅行や外出なんかもしやすいのかなと感じます。

マナカ

そう思うでしょ? でも実際は、散らかりすぎた部屋の掃除や溜まったメールの処理をしていたらあっという間に過ぎ去ります(笑)

彩帆

老猫の千代ちゃんのことも心配なので、長期の旅行も難しいですね。

マナカ

旅行はここ数年、ずっと日帰りコースですね。近場の温泉に行ったりとか。

担当

なるほど。確かに猫ちゃんのことを考えると何日も家を空けるのは難しいですね。旅行まではいかなくとも、外で遊ぶとなるとどんなところでリフレッシュされるんですか?

マナカ

映画を観に行ったり、美術館や博覧会に行ったりすることが多いです。

彩帆

どこかへ出かけるとなっても、まず気の済むまでゲームをしてからですね(笑)



毎日ゲームは欠かさない! 黒百合姫の1日!!


担当

では次に1日のスケジュールです。まずは【理想の1日編】から。……お休み前に、ゲームの時間がしっかり取ってありますね(笑)

漫画家でなくともお手本にしたいような美しいスケジュール。

彩帆

最低でも1日30分はやってます。「ドラゴンクエスト10」をもう4年くらいほぼ毎日ひたすらに……(笑)

担当

すごいですね(笑)。ひとつのゲームをやり込み続けるって中々できることじゃないですよ。マナカさんもドラクエオンリーでしょうか?

マナカ

私は別のゲームをしたり、わりかし新しいゲームもしますよ。アトラス信者なのでメガテンシリーズとか世界樹シリーズとか……。彩帆さんはドラクエ10で3キャラくらい育てているんですが、私は1キャラなんです。そのあたりが遊んでいるゲームの本数の差ですかね(笑)

担当

ここまでのお話でお2人がかなりゲーム好きなのが窺い知れました(笑)。ここまでだと毎日触れていないとダメですね(笑)

彩帆

やらないでストレスが溜まるくらいなら、少しの時間でも毎日やるほうがいいという考えです(笑)

マナカ

この通りゲーム好きなので、朝のウォーキング時も私は「イングレス」、彩帆さんは「ポケモンGO」をしながら歩いています。イングレスをしていると「あそこまで歩くぞー!」と目標を立てやすいので、毎日1時間くらい楽しく歩いてますよ。

担当

ゲームを楽しんで健康になれるって素敵だと思います! 次は締め切り間近のスケジュールですが、作業と食事、そして睡眠のみですね……!

修羅場になると項目がたった3つに……! 忙しさがタイムテーブルだけでも伝わる……!!

マナカ

今回出したスケジュールはどちらも、『こういう時間に起きられたらいいな』という本当に理想です(笑)。……実は我々、1日が25時間周期なんです。限界まで起きてたり原稿を描いたりしてパタッと寝て、7時間後にパッと起きる、というサイクルが次の日にだんだんと食い込んでいくんです(笑)

彩帆

睡眠や食事、仕事の時間分布はこのままで、1日1時間ずつ円を描くようにズレていきます。

担当

なるほど。それで1日が25時間周期という認識になっちゃうわけですね。

マナカ

ラジオ体操なんかはリアルタイムでできなくなると、ネットで動画を開いてそれを見ながらやってます(笑)

担当

(笑)。日本でもっとも熱心にラジオ体操に取り組んでおられるかもしれませんね(笑)

彩帆

(笑)。……それにしても修羅場中のスケジュール表、我ながらすごいですね。お風呂に入っていない(笑)

マナカ

原稿を描いて寝るだけの日々……。こうなる前にちゃんと進行しよう(笑)



千代ちゃん大活躍!! 日々のリフレッシュ方法とは……?


担当

ここからは日々の原稿作業の合間の息抜き・気分転換についてお話を伺いたいと思います。お2人はどのようにしてリフレッシュされるのでしょうか?

彩帆

ストレッチ……ですかね。あと、猫を揉むとか?

マナカ

揉むというか「吸い」ますね。背中やお腹に顔を埋めて、毛と毛の隙間にある猫空気を胸いっぱいに吸って幸せになる……!

担当

わかります(笑)

マナカ

あとはゲームを適当に……彩帆さんはドラクエだよね?

彩帆

ドラクエは日課だから、気分転換や息抜きとは違うかな。

マナカ

ドラクエでちゃんと気分転換してよ(笑)

担当

ゲームは日課、至言ですね(笑)。で、その流れでこのお写真についてもお話をお願いいたします!

ゲーム機の数々。これだけあれば気分転換も思いっきりできそうです。

彩帆

写真で自慢している通り、ハードをいっぱい持ってるんですよ。ここには写っていませんが、他にもPS2、PS3、セガサターン、あと3DSとWiiUがもう1台ずつあります。本当にゲームが大好きなんです。

担当

かなり懐かしいハード名も出てきましたね(笑)。私もゲームはよくやるほうなんですが、ここまでハードを取り揃えられていないです。いわゆるTVゲーム以外にも、ゲームと名のつく物はお好きなんですか?

彩帆

TRPGも好きですね。ルールブックを数シリーズ持っています。

マナカ

昔のゲームは絵が荒かったり、ストーリーも補足したくなるような大雑把なものだったんで、そこを自分の妄想で補って絵を作ったりお話を考えたりしてました。そこで漫画家としての構成力を培ったと思っています。大枠の設定と世界観くらいしか決められていなくて、参加者みんなでゲームをプレイしながら色々考えて遊ぶTRPGなんかは、キャラ作りからストーリー制作まで自分でやりますからね。

担当

好きなものが今の仕事に活きている……。非常に理想的ですね。

マナカ

アンソロジーのお仕事や乙女ゲームのコミカライズを経て、「物語の中の人」のような小説原作のコミカライズを何作かやらせていただいてますが、私たちのコミカライズが厳密に原作に沿ったものじゃなくて、自分なりの解釈や漫画にしたときの面白さを重視しているのは、こういう経験からきているんだなぁと思います。

担当

今ある物をよりよくしていく精神が、黒百合姫さんのお仕事のベースになっているわけですね。……インタビュー序盤でお話しいただいた千代ちゃんにそろそろ触れておきたいと思います(笑)。原稿を描かれている最中も作業場へ遊びに来たりするのでしょうか?

ここまで随所に登場いただいた千代ちゃん。ご出演、ありがとうございました……!

マナカ

私たちの家の主人は彼女ですから(笑)。自分が行きたいところへ自由気ままに行っています。

彩帆

それは膝の上であったり、タブレットの上であったり。

マナカ

タブレットの上だったり。タブレットの上だったり。タブレットの上だったり。

担当

(笑)。千代ちゃんはタブレットが好きなんですね(笑)

マナカ

作業場に来るときは、たいていご飯が欲しいか、かまって欲しいかなので、そのあたりを満たしてあげると他の部屋に行って一人で寝てますよ(笑)

彩帆

今回、写真のそこかしこに写っているのは、写真撮影が珍しくて落ち着かなかったんだと思います。ずっとウロウロしてました(笑)

担当

かわいいですね。千代ちゃんのおかげで、すごくいい写真に仕上がっているかと思います(笑)。さて、次回はネーム・完成原稿を拝見しながら、実際の原稿作業について詳しくお聞かせいただければと思います! 引き続き、よろしくお願いいたします!

マナカ

はい。よろしくお願いします!

彩帆

引き続き、頑張ります……!


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エントリー期間:2021年9月1日~2021年9月30日
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