【アルファポリス】プロ漫画家インタビュー!ネームや線画の工程で意識していること/村上ゆいち先生
ある日突然、異世界トリップしてしまった、神崎美鈴、22歳。ステイタス画面は見えるし、魔法も使えるしで、なんだかRPGっぽい!? オタクとして培ったゲームの知識を駆使して、魔法世界にちゃっかり順応したら、いつの間にか「黒の癒し手」って呼ばれるようになっちゃって…? ゲームの知識で魔法世界を生き抜く異色のファンタジー、待望のコミカライズ!!
コミカライズ作品情報はこちら
原作小説の連載情報はこちら
村上ゆいち/漫画
東京都在住。イラストレーターとして活躍中。スタイリッシュで透明感のある絵柄が持ち味。
ふじま美耶/原作
兵庫県在住。2012年よりwebにて小説を発表。2013年「異世界で『黒の癒し手』って呼ばれています」で出版デビューに至る。
※2016年11月にアルファポリスサイトにて掲載した記事を再構成しております。なお、記事中の情報は初掲載時のままです。
――それでは『癒し手』の作業工程を、実際の原稿に照らし合わせながらお伺いしたいと思います。まずはネームに取りかかる前、原作を読み込むところから始まると思いますが……。
村上ゆいち
『癒し手』の場合、最初に担当さんとコミックス1巻分に原作のエピソードをどこまで入れるか相談して、構成案を作成しているんですよ。なのでそちらに合わせて毎回、ネームに取りかかる前に原作を読んで、エピソードの量の見当をつける感じですね。これが実際に使っている原作本ですが(と言って小説を持ち出してくる)……たぶん日本で1番、『癒し手』を読み込んでいると言えるくらいの黄ばみ具合ですね(笑)
――どれだけ原作と向き合ったのかが伝わりますね!文字をネームに起こす際に苦労する点はありますか?
村上ゆいち
苦労は特にないかな?もともと本を読む時は頭の中に絵を浮かべながら、というタイプなので。ここからここまでで1ページくらいかな、と考えながら読んでいます。大ゴマで見せたい場面が浮かんだら、原作のページにわかりやすくキラキラマークを書き込んだりしていますね。
――ネーム作業に集中できるのは自宅という方と、喫茶店等の外出先という方に大きく分かれると思いますが、村上先生はどちら派ですか?
村上ゆいち
断然、外出先派です。自宅から徒歩圏内に何軒かファミレスがあるので、原作本とiPadを持ち込んで一気に勢いを付けてやります。やるぞー!と気合を入れて、ガーッと集中して進めますね。
――iPadでネームをされているんですね。
村上ゆいち
最初は紙に描いていたんですけれど、担当さんに携帯のスキャンアプリで撮影してお送りしていたので、解像度が低くて自分でも読みづらいし、何より手間がかかって……。今はタッチペンで直接、iPadに描いています。iPadだとマルチタスク機能で前のページが表示できるので、見開きでコマ割りがかぶらないかチェックするのも楽ですね。コマ割りは常に目線が動かされるような感じというか、読者さんを飽きさせない、描いてる自分も飽きない形にまとめたいと思っているので。
――では、実際のネームを見せていただきたいと思います。第18話、グランマチスに旅立つ前のリィーンと、怪我から立ち直ったクモンのやりとりですが……かなりラフですね(笑)
村上ゆいち
自分の勢いをキープして進めたいので、頭の中に浮かんだことを忘れないうちに早く形にしようと思うとこうなってしまうんですよね(笑)
――このページのネームを起こすに当たって、気を付けた点はなんですか?
村上ゆいち
うーん……右ページ冒頭のギャグ感ですね。クモンが辛い目にあった後なので、元気なところを見せてあげたいな、ということを意識しました。それと、クモンをデフォルメした後にかっこいいポーズを取らせることで、見せ方に緩急をつけました。『癒し手』は、ギャグっぽく見せる時は思いっきりコミカルにやっていますね。
――左ページは、めくった先のページへ読者の期待感を煽るヒキがメインですね。
村上ゆいち
そうですね。その次のページが、クモンがちゃんと立ち直ってる感じを見せるちょっと良いシーンなので、右ページから続けてコミカルな感じを保たせておいた方がメリハリがついていいかな、と。画面を誰の視点からにするか、コマごとになるべく切り替えたりするようにして、見せ方が単調にならないよう気をつけています。
――クモンがかっこよかったり可愛かったり、というところがアクセントになりますしね。でもリィーンの感情の流れを軸にストーリーを追っていく形なので、視点や見せ方の切り替わりが多くてもすんなり読めるのが漫画版『癒し手』の良い点だと思います。
村上ゆいち
ありがとうございます!漫画の『癒し手』は一人称でいこうと決めてますからね。そうでないと私がわからなくなるというか……初めての漫画連載で群像劇は無理かな、と。
――でも右ページ4コマ目、これだとどんな忍者が出てくるか全然わかりませんね(笑)
村上ゆいち
我ながらひどい(笑)。このシーン、原作ではリィーンが「クモンは忍者だね」というようなことを長めに語っていたんですが、そこは漫画なので絵で説明する感じにまとめました。やっぱり漫画版は、漫画ならではの良さを押し出せるようにしたいんです。読者さんがもっとこの世界を濃く知りたいと思ったら、原作を手にとってもらえるようにしたくて。もちろんコミックスだけでも楽しめると思いますが、原作を読むと、このキャラはこの時こんなことを考えてたいんだ、というような新たな発見があると思います。
――次は線画ですね。担当さんからOKが出たネームは、どのようにして画面に反映させていますか?
村上ゆいち
担当さんからネームに修正が入ったPDFデータが返ってくるので、そちらを原稿データに貼り付けて下描き、次に線画という形で進めています。ネーム段階でのセリフの調整を担当さんにお願いしているので、セリフの量に対してフキダシの大きさを適切なものに調整したり、それに応じてキャラの配置も変えたりしていますね。なので確認しておかないと後で大変なことになるという。
――確かに、防ぐことができるミスは潰しておきたいですね。
村上ゆいち
あと自分で言うのもなんなんですが、誤字や脱字、書き文字忘れがひどいんですよ!先ほども言いましたが、勢いでネームを描くのでキャラまで勢いでしゃべらせてしまって、セリフの接続詞がなくて唐突な発言になっていたり、新しい漢字を作り出していたり(笑)
――(笑)。気を取り直して、実際の線画を見てみましょう! 村上先生の線画はタッチがきれいですね。
村上ゆいち
最初の線画は、とりあえず人物のレイヤー分けがしやすいように描いているんです。仕上げの時に、後から線をかなり書き足しているので、この時点ではつんつるてんな感じですね(笑)
――線画で注意している点はなんですか?
村上ゆいち
描き始めてから気付いたんですが、漫画は全部線で描かないといけないんですよね……! たとえばイラストだと背景は、むしろ人物を際立たせるためにぼかした方が良いという場合も多いんですけど、漫画は全部線で描かないとおかしく見えるというか。その上、カラーだと細部までいろいろな色を何諧調も重ねて1枚の絵にしていく感じですけれど、漫画は服のシワまですべて線。だからといって描き込みすぎると見辛くなるから、ある程度取捨選択をしなければならないし……。すべてにおいて白か黒かって、私はなんでもぼかしておきたいグレーゾーン主義なのに(泣)
――(笑)。では完成原稿についてですが、仕上げの時に意識していることはありますか?
村上ゆいち
仕上げに関しては少し画面から離れて見て、白黒のバランスが整う形になるよう気を付けています。例えばこの右ページは、ツッコミセリフの入るウニフラッシュ※がインパクト強めなんで、他の部分はわりとさっぱりした画面にしていますね。それとクモンがこの世界では珍しくリィーンより若い子なんで、トーンや効果線はその貴重な若さや少年らしさが出せるよう意識しています。他のキャラは100歳近い人たちばかりなので、クモンとリィーンが2人の時は、生き生きとした青春っぽさを出していければな、と。
※編集部注「ウニフラッシュ」 集中線を細く引いたフキダシのこと。見た目がウニのようなので、この名称で呼ばれることが多い。主に心の声を表すフキダシに使われ、今回紹介している見開きでは右ページの2、3コマ目左側に配置されている。
――村上先生はイラストレーターとして活動してこられて、『癒し手』が初めての漫画連載であるというお話は前回の冒頭でもお伺いしましたが、漫画を描くに当たって何か勉強はしましたか?
村上ゆいち
勉強らしい勉強は特に何も。確かに漫画を描いたことはほとんどなかったんですが、漫画そのものは好きで、とにかく大量に読んでいたんですよ。さらにイラストを描くようになってからは、漫画を読む時に「こう描くとこういう効果があるのか、イラストでも応用できるかもしれない」と考えたりして。画面構成からヒキやインパクトの大切さにも薄々感付いてはいたので、そういった蓄積を自分の漫画にも反映させていった感じです。
――参考にしたジャンルは……。
村上ゆいち
子供の頃から「週刊少年ジャンプ」(集英社)を読んで育ったので、乙女成分を補給しなければならないと思って(笑)、少女漫画系でも主に「LaLa」(白泉社)や「ASUKA」(KADOKAWA)を参考にしました。レジーナは特にファンタジー世界を舞台にした女性向け作品が中心なので……。それでもコマの境目にホワホワ〜としたトーンを使ったりとかはできないんですが(笑)
――漫画のお仕事ならではの苦労はありますか?
村上ゆいち
そうですね……漫画は終わりが見えないことですね(笑)。だってイラストは1枚で終わりなのに、漫画は20ページ以上あるんですよ!?
――(笑)。作業にかかる時間が長いから、テンションが維持しきれないんですね。
村上ゆいち
そうなんです!例えるならばイラストは跳び箱みたいな感じなんですよ。目の前にある箱を、勢いつけて跳べば終わり。だけど漫画は登山というか、山頂にたどり着くまでに準備が必要だし、登るのにも時間がかかるし……。実際の作業にそれほど時間がかかっている方ではないと思うんですが、とにかく勢い重視で進めているので、集中力が途切れてしまうと途端に「もうダメ……ここではないどこかに行きたい……」という具合になってしまうんです(笑)
――逆に漫画のお仕事が、イラストのお仕事に及ぼした影響はありますか?
村上ゆいち
漫画を始めてから、ラノベのモノクロ絵の見せ方や表情が良くなったと褒めていただくことが増えました。やっぱり漫画はキャラを生き生きと動かす勉強になるんだな、と思いましたね。あと、カラー絵を描きたいという気持ちが漫画の作画作業中に蓄えられます(笑)。漫画を描いていると「カラー絵を描きたい、色を塗りたい!」という気持ちがどんどん高まっていくので、『癒し手』を納品後、カラーイラストに着手するともう楽しくて楽しくて(笑)。ジャンルの違う仕事を掛け持ちすることで気持ちを切り替えられるので、それが良いサイクルを生んでいるのかもしれませんね。
――テンション的にも良い作用があるのが素晴らしいですね(笑)。では担当さんを交え、漫画版『癒し手』が出来上がるまでの舞台裏について、ざっくばらんに伺えればと思いますので、よろしくお願いします!
村上ゆいち
ざっくばらんにですね、わかりました!(笑)。よろしくお願いします。
――それでは、担当さんを交えて漫画版『癒し手』制作の舞台裏を、ざっくばらんにお伺いしていきたいと思います。まずは担当さん、村上先生に『癒し手』を依頼した経緯を教えてください。
担当
私は以前からpixiv等で村上さんの絵を拝見していたので、その存在は知っていたんです。でもなかなかお仕事をする接点がなくて。だからレジーナコミックスの立ち上げに関わることになり、『癒し手』を誰にお願いするかという話になった時、ぜひ村上さんにお願いしたいと思ったんです。
――当時、村上先生は漫画家としてのキャリアがほぼありませんでしたよね。
担当
そうなんです。いきなり連載になるし、まったくの新人だと執筆のペースがわからなかったりするので、当時コミカライズに関して基本的には漫画のお仕事をした経験のある方にだけ声を掛けさせていただいていたんですが、私の中で村上さんの絵が『癒し手』のイメージにぴったりで……。社内で「彼女はほとんど漫画は描いたことがないんですけど、たぶん描けます!」「モノクロもちゃんとしています、カラー絵も素晴らしいクオリティの仕事をしています、絶対に良いカバーイラストを描いてくれるはずです!」と。
村上ゆいち
(爆笑)
担当
会議には持てるだけの資料を持っていって、出来る限りのプレゼンをして。だから最初はトライアルという形で、私から原作の何ページから何ページまでをネームにしてみてくださいとお願いして、出てきたのがこちらです。(と、ネームを出す)
村上ゆいち
うわー、ネームがちゃんとしてる(笑)!そうそう、まず最初に小説1巻序盤のシーンのネームを描いてみてほしい、というお話でしたよね。それでガングさんが岩に挟まるあたりの10ページ分を描いてみたんです。
担当
このネームを社内会議にかけて、「構成力はバッチリです、あとは連載に耐えられるスピードがあるかだけだと思います、この人と作品を作りたいです!」と再び大々的なプレゼンをして。
村上ゆいち
バクチでしたよね。始めてみないと連載に耐えうるスピードがあるかわからないという(笑)
担当
でもそれまでのやりとりから、村上さんは仕事に対する責任感がきちんとある方だというのがわかっていたので大丈夫かな、と。
――Webに掲載された漫画を初めて見た時はどう思いましたか?
村上ゆいち
あまり言っていいのかわからないんですけど……ヘタだなー、と……。
担当
私にも「これ大丈夫ですか?」と聞いていましたよね。
村上ゆいち
最初は3回分くらい描き溜めをしていたんですよ。だから初回を描いてから掲載までに半年ほどタイムラグがあったので、完全に客観的な目で見てしまうんです。それで軽く凹んで、次頑張ろう……と(笑)
担当
でもお声がけさせていただいた時点で、村上さんは漫画執筆がほぼ初めてということもあるのでダメ出しはしますよ、とお伝えしていたんです。村上さんも、気になった点はどんどん指摘してほしいと言ってくださったのもあったので、最初からかなり率直に意見を言わせてもらっていました。その上で出来上がった原稿なので、私は大丈夫だとお話ししていたんですが……。
村上ゆいち
初回は背景、ほぼ全て描き直しでしたもんね(笑)。ラノベのモノクロイラストでは、キャラを立たせるために背景をぼかすというやり方が主流ということもあって、そういう仕上げが漫画だとおかしく感じると気付けなかったんですよ。でも理由をきちんと説明してもらえたので納得出来たし、指摘されたところをより良くするためにはどうしたらいいかを考えれば、原稿のクオリティも上がっていくので良いかな、と。自分の作業量は増えますが……!
担当
(笑)。村上さんは向上心がすごいんですよ。本当にそこは偉いと思います。
――修正は作品をよりよくするため、という共通の認識と、お互いの信頼関係があってこそのお話ですね。
担当
あとWebに掲載されてすぐ、村上さんからコミックス収録時に修正したいとご連絡いただいた箇所がありました。スサウゴテルスのところなんですが……。
村上ゆいち
造形に納得がいかなかったんですよ。迫力が足りないよ、これじゃトカゲだよ!と(笑)。リィーンが初めて直面する、ファンタジー世界の象徴のような存在なので、もっと説得力を持たせたかったんです。
――自分が描いた作品はなるべく見たくない、と言う漫画家さんもいらっしゃいますが、村上先生はいかがですか?
村上ゆいち
積極的に見たくはないんですが、きちんと見ておかないと、悪いところがわからないじゃないですか。描きたての絵は自分にはすごく上手に見えているので、そこで満足して終わり、ではダメかと。でも良くないところが見つけられるということは、描き上げた時点よりは成長しているはずなので、そこは自分でも認めてあげたいと思っています。
担当
ただ村上さんは単行本作業の時、ほとんど修正しないんですよ。トーンミス等はもちろん直しますが、絵に関してはこの時はこの時、とそのままにしますね。だからスサウゴテルスの箇所はむしろ異例でした。
村上ゆいち
描き直しをしだすと泥沼化しそうな気がするんですよ。正解が見えなくなってしまうというか……。だから基本的には、その時の自分が1番良いと思えるものを納品しているはずなので、後から見るとうーん、と思う部分も含めてそのままにしておこう、と。ただ、読者さんがコミックスを読み終えた時に、最初のページから少しは上手になっている、読みやすくなっていると思ってもらえるようにしようというラインを自分の中で設けて、そこに向けて頑張っていましたね。
――他にコミックス作業にまつわるエピソードはありますか?
担当
コミックスの表紙絵が、ラフが通った翌日に仕上がってきた時は驚きましたね。
――やっぱり早いですね!実作業はどれくらいかかっているんですか?
村上ゆいち
10時間……くらいですね。前回もお話ししましたけれど、とにかくテンション重視なので、その絵が自分の中で旬の時に終わらせたいんですよ。1日集中してずーっと見ていると、コントラスト等がわからなくなってくる部分もあるので、とりあえず塗り終えたら一旦寝て、翌日にヒキで見てみて調整してから提出、という流れですね。
――村上先生の勢いとテンションの為せる技はすごいですね!
村上ゆいち
『癒し手』の場合、カバーイラストについての打ち合わせで構図の指定やイメージをいただくんです。それをもらった瞬間、私はピコーン!と絵が頭に出るタイプなんですよね。やっぱり最初に頭に浮かんだ絵が自分の中では1番良くて……他の絵はどこか、ひねり出す感じになっちゃうというか。なのでラフを提出する時も、1番最初に浮かんだ絵を激推ししています(笑)
担当
そう!1点だけ気合の入れ方が違うラフが入っているので、ものすごくわかりやすいんですよ。でもやっぱり、村上さんご自身が推してくる絵が1番良い絵なんですよね。ちゃんと打ち合わせを踏まえて、こちらが欲しいと思うイメージの絵を上げてきてくれるので、結果オーライなんですが(笑)
――推しと言えば、『癒し手』で村上先生のお気に入りのキャラは誰ですか?
村上ゆいち
リィーンの夢の中に出てくる謎めいた男性がいるんですが、彼のことがもう、別枠というくらい大好きです!
担当
コミックスの本体表紙には絶対彼を入れるということにしていますしね(笑)
村上ゆいち
別名「イケメンの部屋」(笑)。書店用の特典でも、コミックスにはまだあまり出ていないにも関わらず、隙あらば彼を入れようとしています。
――では漫画の執筆時も、その男性キャラを描いている時が1番気合いが入りますか?
村上ゆいち
それはもう、私のお楽しみ空間ですよ(笑)
担当
でもネームだと、彼もかなりラフな感じで描かれますよね。そういえばノエルもだいぶひどいんですよ!(と、ラフを取り出す)
村上ゆいち
私の勢い主義がこんなところにも(笑)。改めて見てもひどいですね!
担当
原作者さんがネームを読まれるので、この時は“ちゃんと描きます!”とメモ書きを添えてお送りしたんですよ。原作者さんには完成したキャラクター表をお送りしてあるんですが、「きちんと仕上がるとわかっていても笑いました」というお返事をいただきました(笑)
――せっかくの機会なので、村上先生から担当さんへ要望があればお願いします。
村上ゆいち
……電話に出なくても怒らないでください……。出たくなくて出ないわけじゃないんです……1日35時間の生活サイクルのせいなんです!
担当
怒ったことないじゃないですか(笑)。村上さんはお仕事のスケジュール管理がしっかりしているので、切羽詰まった用件でお電話することはほとんどないんですよ。なので出られない場合、携帯に着信が残っていたら、こちらに折り返しお電話をいただく形にしているんです。以前、進捗確認のお電話を差し上げた時にお出にならなくて、その後いつもならもう折り返しをいただけるタイミングなのにな、と思っていたら、まさにその進捗を聞きたかった原稿データが完成形で上がってきた時には驚きましたが(笑)
村上ゆいち
あの時はたまたま電話に出られなかったんですけれど、どういう用件かはわかっていたので(笑)。驚かせてしまってすみません!
――ある意味、以心伝心でしょうか(笑)。では担当さんが知る、村上先生の素顔とは?
担当
村上さんはすごくポジティブですね。
村上ゆいち
本当ですか!? 昔はものすごくネガティブで、夜、寝る前に「強盗が入ってきたらどうしよう」と怯えていたんですが……。
担当
(爆笑)
村上ゆいち
慰めにしかならないようなプラスチックのバットを枕元に置いておくぐらい、怖がりなんです……。とにかく物事をマイナスに考えてしまいがちなので、なるべくプラスに考えを持っていくよう心がけていることが、功を奏しているのかもしれませんね(笑)
担当
実は怖がりだったんですね(笑)。お仕事に関しては、修正についても納得していただけたらすぐに対応してくださいますし、逆に疑問に思った場合は、どうしてそう感じたのかをきちんと伝えてくれた上で改案を出してくださるので、すごくありがたいです。
村上ゆいち
そう言っていただけると、こちらもありがたいです!
――お二人がお互いの仕事を信頼しているからこそ出る言葉ですね……。では村上先生から最後に、イラストレーターや漫画家等、クリエイター志望の方へ向けたアドバイスをお願いします。
村上ゆいち
そうですね……自分の好きなものには普段から積極的に触れておいた方が良い、覚えておいた方が良い、ということでしょうか。例えば私の場合は映画が好きなので、たくさん映画を見ることで、良い画面作りや素敵なセリフ回しを漫画に反映できたりするので。良いアウトプットをするためには、たくさんインプットすることが大切だと思います。それとなるべくフラットな気持ちで仕事に向かえるよう、適度な気分転換が大事ですね。
――大切なのはインプットを欠かさないことと気分転換の2つですね。
村上ゆいち
あ! それと体重管理も大事です! なぜか私、自分が太ると絵も太るんですよ。どうしてかはわからないんですが、なぜか絵と自分の体型が連動してしまうので、あまり太ったり痩せすぎたりしないよう、ほどほどの体重を保とうと心がけています。心も体も、フラットな状態を保つ筋力が必要ということでしょうか。言うなれば「筋力は画力だ!」という感じですね。
――素晴らしい締めのお言葉をいただきました(笑)。村上先生、ありがとうございました!
アルファポリスとは
アルファポリスはエンターテインメントコンテンツのポータルサイトです。オリジナルの小説・漫画を投稿したり他の人の作品を読んだりすることができます。『ダィテス領攻防記』『Eランクの薬師』『月が導く異世界道中』などの作品が漫画化されています。
公式ホームページはこちら
公式Twitterはこちら
新人社員・アルファカのTwitterはこちら
第18回漫画大賞 春の陣
開催スケジュール
エントリー期間 : 2022年3月1日~2022年3月31日
開催(投票)期間 : 2022年4月1日~2022年4月30日
結果発表 : 2022年5月末頃
詳細はこちら