漫画編集者山中chによる漫画講座 ~キャラが立たない原因~
ヤングマガジン編集部の漫画編集者の山中です。新卒で出版社に就職して以来、約10年間、漫画編集者を続けております。普段漫画家との打ち合わせで使っている漫画制作の小技や考え方などをお伝えしたいと思います。よろしくお願いいたします。
本記事では『キャラが立たない原因』について解説していきます。
漫画家の皆さんは編集者からボツが出るときに一番言われる言葉は「キャラが立ってない」「キャラに魅力がない」など、多く言われてると思います。何故、キャラが立ってないと言われるのかというと、正直よくわかっていない編集者でも言える言葉というのも少なからずあります。ストーリーが「波」だとしたらキャラは「舟」にあたります。あらゆる困難をキャラがどうやってリアクションをとって乗り越えるかが「ストーリー」なので、そのキャラが面白くないとどんな面白いストーリーが起きても面白くないと読者は感じてしまいます。なので編集者側も「キャラ」「キャラ」とよく言います。
あとは、売り上げ的にもキャラクターが人気出ると横展開がしやすい、連載が終わってもキャラクターが色々なところでコラボして作品の人気を保ってくれるという側面もあります。なので、ストーリー面でも売り上げ面でもキャラクターが重視されています。
漫画作品のお話はアイデアを思いついて、以前の記事でご紹介した「フリとオチ」を使ってストーリーにするという順番で大体作られていると思います。具体的に例を用いて説明したいと思います。
例えば、読切の漫画作品で親子愛に関するお話が書きたいと思ったとします。父親が泥臭く頑張って娘にちょっと見直してもらう話とか感動しそうだなとアイデアが思いついた際、娘と父親は仲良くない、母親がいない、娘が子どもの頃に約束したことを父親が破ってしまったなどのフリが考えられます。約束を破ってしまったというフリに対しては、高校生の娘にもう一回果たすというような形だとフリとオチが利いていいように感じます。母親がいないというフリも活かそうと考えた時、例えば母の形見を父が整理して見つけたおかげで約束が果たせたみたいなオチもいいと思います。ただ、もう少し考えてみましょう。
娘との約束はなんなんだと考えた時、例えば今まで学芸会で主役になったことがなかったけど今回始めて主役になれて沢山練習したから両親揃って来てほしい、父親も行くと約束したとします。ただ、実際舞台が上がった時には父親は来ていないと気づき、娘はショックすぎてセリフを飛ばしてしまい舞台の上で泣き出し駄目になってしまうトラウマを抱えてしまうと思います。そういうフリがあると、オチのことを考えた時、例えばあの時応援出来なかったけど10年後に父親は仕事よりも優先して応援するフリオチのお話を作ったとしましょう。この場合、娘と父親の喧嘩シーンで娘が「どうして学芸会来てくれなかったの?」に対して父親が「急に外せない仕事が入ってしまったんだ」というセリフが考えられまずが、これは作品として面白いですかという結論になると思います。
こういうセリフを書くとキャラが立っていないと言われます。編集者は漫画家さんに「このキャラってどうしてそれをしたんでしょう?」と聞きますが、大体の漫画家さんは「なんでなんですかねぇ」などすぐに答えられないと思います。何故かというと、漫画家にも分からないからになります。なんでキャラがそんなことをするのか分かっていないのにネームになるのかというと、漫画家さんとしては口が裂けても言えないと思いますが「そういう流れになったから」と本心ではそう思っていると思います。ただ、そのまま描いてしまうと、キャラクターが漫画家のパペット(操り人形)になっている、要は漫画家が都合のいいように喋らせているとか、役割をキャラクターが喋っていると言われてしまいます。そのようなことにならないよう、どうすればよいか次回解説したいと思います。
いかがだったでしょうか?次回はキャラ立て、キャラが立たない原因を解決する動画・記事が公開されます。他の動画・記事と合わせて是非ご覧ください。
●漫画編集者:山中 様
ヤングマガジン編集部所属の漫画編集者。担当作品には『なんでここに先生が⁉︎』『テンカイチ』『ごくちゅう!』『純猥談』『ツワモノガタリ』『地球から来たエイリアン』『魔法創造』『転生重騎士』。
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※本記事は山中様にご許諾をいただき、動画を記事化させていただきました