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コラム
2022年7月28日

【アルファポリス】プロ漫画家インタビュー! キャラ立ちで意識すること/藤沢真行先生&鈴木イゾ先生




ある日、没落貴族の末弟エヴァン・ダグラスは不思議な夢を見る……それは、未知の技術で溢れた世界で「制御工学」という学問に励む自分の姿であった。──しかし、見た事もない文字と数式からなるそれを、何故か知識として理解できたエヴァンは、一念発起。魔力ベクトルを操る超絶技巧「制御魔法」として昇華! やがて獣人メイドのセラフィナとともに出奔した彼は、危険な剣と魔法の世界で、運命と対峙する道を選ぶ。 ──運命すらも制御する、超絶技巧の異世界ファンタジー、待望のコミカライズ!!
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藤沢真行/漫画
神奈川県出身。代表作は「戦場のヴァルキュリア3 名もなき誓いの花」(アスキー・メディアワークス刊)他多数。精緻な描写と、躍動感のあるアクションで活躍中! また、ソーシャルゲームや、幼児誌の付録など、幅広いジャンルのイラストを手がけるマルチクリエイター。可愛いデフォルメキャラから、異形のクリーチャーまでドンと来い!
佐竹アキノリ/原作
試される大地出身。2013年頃からWeb上で小説を書き始め、大学で学んだ制御工学の知識を生かした「異世界を制御魔法で切り開け!」で出版デビュー。他の著書に「異世界に行ったら魔物使いになりました!」(アルファポリス)、「転生魔術師の英雄譚」「逆成長チートで世界最強」(ヒーロー文庫)、「魔物と始める村づくり!やる気なし魔導師の開拓記」(レッドライジングブックス)シリーズがある。



魔王討伐軍の平兵士ジョン・セリアスは、長きにわたる戦いの末、ついに勇者が魔王を倒すところを見届けた……と思いきや、敵の残党に討たれてしまう。あっけなく戦死したはずのジョンが目を覚ますと、彼は魔族に滅ぼされたはずの故郷で、赤ん坊になっていた――。自分が過去に戻ったのだと理解したジョンは、前世で得た戦いの技術と知識を駆使し、悲劇の運命を変えていくことを決意する! 一兵卒によるタイムトリップ逆襲ファンタジー、待望のコミカライズ!!
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鈴木イゾ/漫画
漫画家、イラストレーター。神奈川県在住、B型。漫画と並行して別名義でゲーム原画の仕事をしていたことも。代表作は『魔法精錬 ガルナルージュと雛菊亭のエルッカ』全3巻(双葉社/アクションコミックス)など。
丘野優/原作
宮城在住。2012年からWeb上で小説を公開し始め、徐々に人気を得る。 2014年に「平兵士は過去を夢見る」で出版デビュー。他の著書に「蘇りの魔王」(オーバーラップノベルス)シリーズがある。


※2017年1月にアルファポリスサイトにて掲載した記事を再構成しております。なお、記事中の情報は初掲載時のままです。



漫画の設計図作り・ネーム作業はファミレスで!


――まずは「異世界を制御魔法で切り開け!」(以下、「制御魔法」)と「平兵士は過去を夢見る」(以下、「平兵士」)それぞれの作業工程をお話しいただこうと思います。

藤沢真行
おおまかな工程は自分もイゾも同じですね。ネームに関しては昔ながらのアナログ作業で、ノートに描きます。以降の線画から仕上げまでは、自宅PCでのデジタル作業になります。

――では、ネーム作業から教えてください。

藤沢真行
まずは、ネームの前に原作小説からの文字起しですね。これはコミカライズの際に行う作業で、原作小説の該当部分からセリフや物語の流れを抽出して1話分にまとめます。

鈴木イゾ
私は文字起こしの際、専用のノートに手書きでまとめていきます。私の場合は手で書くことでストーリーの流れを覚えられるんですよ。

藤沢真行
自分はパソコンで文字起こしをやってます。テキストをデータ化しておくと、後で原稿をデジタルで描いていく時にコピペでセリフが入れられるから便利なんです。

――なるほど。やり方は違えど、まず原作の流れを、漫画の1話分にまとめるんですね。

鈴木イゾ
そうです。文字の書き起こしが終わると、それを持ってファミレスに篭ります。ここからがネーム作業ですね。物語が頭に入っているうちに、一気にノートにコマを割っていきます。

藤沢真行
自分も同じ作業をします。ただ、この最初のネームは自分のための設計図みたいなもので、キャラもアタリですし、セリフもほとんど入れてません。

鈴木イゾ
この最初のネームでだいたいの枠組みを決めたら、自宅に持ち帰り、あらためてデジタルでネームを描き起こします。アタリで描いていたキャラに名前を入れたり、セリフのテキストを入れて、他の人も読めるように整えてから、編集さんにお送りするわけです。

――では、「編集確認用」のネームを拝見させてもらいます。なるほど、絵はラフですが、状況はしっかりと伝わりますね。

藤沢真行
ネームは主に、シーンやセリフの流れを確認してもらうものなので、絵の構図はここから変わることもありますね。

鈴木イゾ
セリフも担当編集さんから的確な修正が入ります。自分でも少し引っかかっていた部分を、すっと流れるような文脈に変えてもらってありがたいです。


(左)「平兵士」第6話の14ページ。「編集確認用」ネーム。状況や雰囲気も伝わってくる。
(右)「制御魔法」第7話の14ページの「編集確認用」ネーム。一部、文字による補足がある。

音楽や映像を流しながら、一気に線画&仕上げ作業へ!


――ネームチェックが通ったら、下書き作業になりますよね。

藤沢真行
ネームで描いたアタリを整えながら、下書き→線画→トーン&効果と、順に原稿を仕上げていきます。

鈴木イゾ
私も基本は同じ工程で、1ページ目から描き進めますが、状況によっては前後することもありますね。難しい箇所や、気分が乗ったシーンを一気に描き上げたりすることもあります。


「制御魔法」第7話の14ページ。下書き→線画→トーン&効果。

――前編でお話しされた、お父さんばかりを描く「髭祭り」などですね(笑)

鈴木イゾ
そうです、そうです(笑)

藤沢真行
自分たちの原稿データを見返して思いましたが、作業中のレイヤー数がけっこう多いんです。顔・腕・体とパーツごとにレイヤーを分けて描いたりして、かなりの数になっている。


「平兵士」第6話の14ページ。下書き→線画→トーン&効果。

――レイヤー数が多いと作業中に混乱しませんか?

鈴木イゾ
なおさんも私も、線画フォルダ、トーンフォルダなど、作業ごとに細かく分けてフォルダ分けしているので、その辺は大丈夫です。

――事前に作業工程ごとのフォルダを作ることで効率化を図っているんですね。ちなみにおふたりは、ネーム、下書き、線画、仕上げ&効果ならどの作業が楽しいですか?

鈴木イゾ
どの作業も頭の使うところが全然違うので比較しづらいですけど、線画は無心になれるので好きですね。

藤沢真行
ネームと下書きまでは脳みそがフル回転なんで、音楽を聴くくらいしかできないけど、線画作業からはラジオを聴いたり、映像を流しながら作業ができるようになるのも良いよね。

――ラジオはともかく、映像もですか?

藤沢真行
まぁ、映像といっても、基本は音声を聞くのがメインになるんですけどね。

鈴木イゾ
私は、最近だと女児向けアニメとかを流してますし、ドラマや映画も、雰囲気重視なものじゃなければ、けっこうBGMとしていけますね。あと、作業内容や、その時の自分の状況で、流す曲や映像は選んでます。例えば、原稿の追い込みかけている時はメタル系がいいとか。

藤沢真行
テンポが速い曲は筆が進むね(笑)

少年漫画的演出で王道を目指す! キャラ立ち重視の「制御魔法」!!


――作品を制作する上で、それぞれどんなことを心がけているかお聞きしたいと思います。まずは「制御魔法」の方から。主人公のエヴァンや、ヒロイン・セラフィナなどを描く時に気をつけていることはなんですか?

藤沢真行
原作小説は三人称で物語が書かれていますが、漫画の方はなるべく、主人公・エヴァンの視点で描くようにしています。少年漫画的手法ですが、エヴァンはよりヒーロー然とし、セラフィナはよりヒロインらしくなるよう、わかりやすいキャラの立ち位置を意識してますね。作画に関しては、セラフィナは特に表情や感情の描写に力を入れています。顔の微細な変化はもちろん、耳やしっぽも感情とリンクさせています。

――第9話では、セラフィナがしっぽをぶんぶん振って喜んでいる場面もありましたね。

藤沢真行
耳やしっぽの感情表現は獣人ならではの特徴なので、大事にしています!

――主人公たち以外では、第4話から登場したブルーノが、目立っていたように感じました。

藤沢真行
ブルーノは、のちに冒険者となるエヴァンを導くため、「尊敬できる兄貴分」を強く意識しています。「自身がダメージを負ってでも、皆の活路を見出す」など、冒険者としての生き様を、身をもってエヴァンに示す役割を強調しました!

――強さも申し分ないですよね。では、これまで描いてきて、苦労した回はありますか?

藤沢真行
漫画全般に言えることだと思いますが、やはり第1話ですね。物語の流れをはじめ、全体的なカメラワーク、また実際に作画をする際の線の多さなど……すべてのベースが第1話で決まるので。ネームも作画も一番大変でした。

鈴木イゾ
第3話で熊のアクションを描くのは大変そうだったよね。

藤沢真行
うん。でも熊は大変だけど楽しかった。そのために、映画「レヴェナント: 蘇えりし者」(20世紀フォックス)を観たわけだし!

鈴木イゾ
強敵の魔熊とのバトルシーンを描くのに、ちょうどいい映画が公開されてるからって、一緒に観に行ったんですよ。そのせいで私も「熊は怖い」って刷り込まれました(笑)

藤沢真行
サバイバル映画なんですけど、熊と戦うシーンが超リアルに描かれているんですよ。銃で撃った瞬間、熊がクロスカウンターをしかけてくるところなんて、マジで怖かった! で、それを観た直後に、第3話の魔熊のシーンに取りかかったので。サイズ感とかスピード感とかも含め、映画でインプットしてきたものを出し切るように描きました。

――あの迫力のバトルシーンは、映画を観なかったらまた違う表現になっていたかもしれないんですね。では、担当編集とのやり取りで印象に残っていることはありますか?

藤沢真行
こちらが迷ったことには、かなりアイデアを出してもらっています。魔熊を倒すシーンの流れや、言葉選びもだいぶ手伝ってもらいましたね。

――シーン的には、エヴァンが初めて連続で制御魔法を使うシーンですよね。

藤沢真行
制御魔法の使い方を、短く端的に伝えられるように言葉を整えてもらいました。ネームの時点では、自分でも説明のモノローグが長すぎると思う状態だったんですけど、いったん編集さんに出してみて。「これをどうにか短くしたい」と伝えて、アイデアを出してもらいながら、今の形までモノローグを圧縮していきました。


第3話における、魔熊戦。熊本来のポテンシャルに加え、魔法も使う強敵だ!

ジョンたちの子供姿と大人姿を両方描けるのが「平兵士」の醍醐味


――次は「平兵士」についてお聞きしていきます。本作は主人公のジョンをはじめ、さまざまなキャラクターが、現世の子供姿、そして前世時代での大人姿で登場しますが、描きやすいキャラクターは誰ですか?

鈴木イゾ
一番はカレンかな? 子供を描くのは好きなので、子供姿のジョンなども描きやすいです。あと最近描いていて楽しかったのは、第5話で登場した前世での大人姿のコウですね。

――ジョンが生まれ育った村の悪ガキ“タロス村の三馬鹿”の一人ですね。

鈴木イゾ
そばかすなどの特徴があるので、子供のころと顔の印象が変わらないから描きやすかったです。現世の子供姿と前世での大人姿、どちらも登場させられるのは楽しいですね。これは漫画だからこそ表現できる部分だと思うので。

――お父さんを描くのはどうですか? 前回のインタビューでは、ジョンのお父さんだけを描く日「髭祭り」もあると話してましたけど。

鈴木イゾ
もちろん、お父さんを描くのも楽しいですよ。髭や頬骨の部分が非常に好きです。

藤沢真行
おじいちゃんを描くのも好きだよね。

鈴木イゾ
髭とかを描き込んでいると、達成感があるんですよ。苦労はするけど、描いた感があるので。あと、辛いシーンですけど、血が流れているような絵は描きがいがあります。あと前世でジョンが出会うファレーナの長い髪の毛も!

――確かに、あの長い髪は描き込みが凄いですね! では、この作品をコミカライズする上で、苦労していることはありますか?

鈴木イゾ
原作小説の物語の流れがきれいなので、基本は原作のまま展開しているし、あまり苦労という苦労は……。ただ過去の描写の入り方が、マンネリにならないよう、そしてなるべく自然にみせられるように気をつけてはいますね。

――では、作画的に大変だった回はありますか?

鈴木イゾ
第7話など魔族がいっぱい出てくる回は、基本大変です。でも、一番苦労したのは第1話ですね。いきなり謎の勇者たちが登場するクライマックスシーンから始まるのですが、勇者たちの正体は作品そのもののネタバレにもなりますから、ビジュアルをいかに描くか工夫しないといけなくて……。勇者はフルフェイスの兜で顔を隠すことを決めていたんですが、後ろの仲間たちはどうしようかと悩みましたね。結局シルエットで描いたんですけど。

――正体がわからないようにビジュアルを描くのは、工夫が必要ですもんね。

鈴木イゾ
文章ならビジュアルに触れずに物語を書き進められると思うんですけど、漫画はそうもいかないですからね(笑)

――(笑)。その部分は、コミカライズならではの大変さかもしれないですね。

鈴木イゾ
あとは、個人的に大変なのは戦闘シーンですね。あまりアクションが得意じゃないと自分では思っているので。ネームの段階で構図が浮かばず、字だけで説明することもよくあります。

――特に難しかったのは、どこのシーンでしょうか?

鈴木イゾ
第2話のお父さんとクリスタルウルフが戦うシーンですね。構図だけで丸1日くらい考えましたし、作画や効果も2回くらい修正しているんですよ。…お父さんが剣で叩き割る岩がうまく描けなくて……。「誰だよ、こんなネーム描いたの!」って思いました(笑)。まぁ、自分なんですけどね(笑)


第2話の22ページ。苦労のかいあって、大迫力のシーンに仕上がっている!

「制御魔法」&「平兵士」より、夫婦協力の痕跡を特別公開!


――仕事はお互いに協力し合うことも多いとのことですが、具体的にどういった形で、助け合われているのですか?

鈴木イゾ
私が特に助けられたのは「平兵士」の第8話に登場する、勇者のデザインですね。アタリまで描いたところで、なおさんに装備品について意見をもらいました。

藤沢真行
第1話でイゾが「勇者のフルフェイス兜」だけは描いているんですよね。だから自分は、第8話に再登場する際に、兜から下を想像して、兜に似合う全身鎧のデザインについて、アイデア出しをしました。

鈴木イゾ
おかげさまで勇者にふさわしい装備が描けました。他にも、「もっとマントをブワーっと風に舞わせて、派手にしよう!」…なんて、演出的なアドバイスももらいましたね。

藤沢真行
他にも「平兵士」では、背景の一部も手伝っていますね。前編でも少しお話ししましたが、自分はアシスタント時代に、瓦礫を描くことが多かったんですよ。だから、破壊された人工物なんかは得意なんです。

鈴木イゾ
逆に私は自然物の背景が得意なので、「制御魔法」の森などを手伝いましたね。あとは、セラフィナちゃんのスカートを「もっと、フワフワにしようよ」なんてアドバイスもしました。

藤沢真行
イゾは、自然物や柔らかいものを描くのが得意だからね。

鈴木イゾ
あ、「制御魔法」では、貴族の家の装飾品も部分的に描きました。昔、アシスタントで洋館の背景や内装をよく描いていたんで。

藤沢真行
そうだ! エヴァンの父親の部屋の装飾品を描いてもらいました。イゾは週刊誌で現代物のアシスタントをやっていた時期があるから、日常で使うものの物体の比率も頭に叩き込まれているんですよ。コップとか窓やドアの大きさとか、食べ物類とか。もう、すごく頼もしい!

――イゾ先生は自然物や日常品など現実的なものを描くのが得意で、なお先生は非現実なもの……特撮やSF映画的なものを描くのが得意ということでしょうか?

藤沢真行
まさにそう! 魔族に破壊された街の瓦礫とか、襲撃を受けた城壁とか、煙や炎とか! 

鈴木イゾ
得意分野が違うから、助け合えることが多いんです。あと細かいところでは「制御魔法」第2話で、エヴァンたちが狩った鹿や、収穫してきた山菜やキノコを描きましたね。

藤沢真行
そうだね。単行本のオマケ漫画で第2話の後日談を描いたんですが、「エヴァンたちの収穫物からどんな料理を作ればいいか」のアイデアも出してもらいました。

鈴木イゾ
うん、「鹿肉とキノコの香草焼き」ね。ジビエ感が出るからってオススメしました(笑)


「平兵士」7話より。なお先生が得意な、襲撃を受けた城壁。煙&炎が立ち上る。

――そういえば、イゾ先生は料理がお得意でしたね(笑)。ではそれぞれ、今後のコミック版を描く上で楽しみにしていることはなんでしょうか?

藤沢真行
「制御魔法」は、エヴァンが新たな力に目覚めて、パワーアップしていく姿を描くのが楽しみです。どんどんアクションが派手になっていくので。あとこの先の温泉回では、エヴァンとセラフィナの、きゃっきゃウフフなシーンも……。

鈴木イゾ
何? その次回予告みたいな口上は……(笑)

藤沢真行
乞うご期待ということで!

鈴木イゾ
「平兵士」は、萌えドワーフのナコルルちゃんを描くのが楽しみでしょうがないです! 第9話でさっそく登場しますよ。


エヴァンたちの収穫物。自然物はイゾ先生がお得意。

店の内装画からバンド活動まで!? 明かされる青春の一幕


――では、担当編集とのフリートークです。おふたりは学生時代に知り合い、同人活動を経てデビューしましたが、その頃の思い出話をもう少し聞かせてください。

藤沢真行
そうですね。同人誌作り以外にも、イゾを紹介してくれた友人を交えて、よくみんなで遊んだりしていましたね。アルバイトにも誘われて、美容院のメニュー表のデザインを作ったり、イベントの看板を作ったり……。

鈴木イゾ
アルバイトは、ちょいちょい招集されましたね(笑)

――そういえば以前、別件の打ち合わせ時に、アルファポリスの近くでもアルバイトをしたことがあるとうかがいましたが?

藤沢真行
恵比寿にある「Rue Favart」という、カフェレストランの天井画を描きました。ふたりの共通の友人が引き受けたアルバイトで、まずは自分が誘われて、彼を手伝うことになったんです。

鈴木イゾ
一週間くらいの間、夜中に描きに行ってたよね。

藤沢真行
夜の閉店後から、朝の開店時間までの作業だったんですよ。お店は三階建てで、二階と三階に天井画が描かれていますが、そのうち三階の天井と壁をピンク色に塗りつつ、天井にいろいろな昆虫を描く仕事でした。実は昆虫の絵よりも、ピンクに塗る仕事のほうが大変だったんです。ペンキがなくなるたびに、赤と白のペンキを混ぜ合わせて作っていたのですが、なかなか同じテイストのピンクにならなくて……。

鈴木イゾ
そこで私が色作り担当として、なおさんたちに呼び出されたんです。大学でも色彩系の科目の成績は悪くなかったので、気軽に手伝い始めたのですが、それでもなかなか同じテイストにならない(笑)。乾くと違う色に変化するし大変でした。

藤沢真行
苦労したけど、今から振り返るといい思い出ですね。

鈴木イゾ
まだ当時の絵が残っているのもうれしいです。

――アルバイト以外にも、当時の思い出はいろいろありそうですね。

鈴木イゾ
なおさんはバンド活動もやっていましたね。

藤沢真行
地元の友人たちの間でバンドブームが起き、誘われて……。助っ人でボーカルをやったら、そのままライブをやる流れになったんです。それが漫画家としての今の糧になっているかというと……(苦笑)。まあ、個性的でおもしろい友人も増えたし、人生という意味では、ターニングポイントのひとつではあると思います。

――というと?

藤沢真行
自分はもともと、人付き合いが得意なほうではなかったんです。でも、一年間もステージに立たされていれば、嫌でもしゃべりを覚えますよ。MCやらなきゃいけないし(笑)。人が苦手だった人間が、人前に立てるようになったという点では、大きな変化がありました。

鈴木イゾ
バンドでの経験は、編集さんたちとの打ち合わせに役に立っているのでは?

藤沢真行
まぁたしかに、そうかもしれませんね(笑)

今でも役立つ! アシスタント現場でふたりが学んだテクニック


――続いておふたりは、同人活動を始めてアンソロジーコミックでデビューしましたが、イゾ先生は「金田一少年の事件簿」(原案・原作:天樹征丸/原作:金成陽三郎/講談社)の作画をされていた、さとうふみや先生のアシスタントをされていましたよね?

鈴木イゾ
そうですね。さとう先生の現場は週刊連載ですから、仕事をいかに効率的にこなすかが特に重要なテーマでした。原稿を早く上げるための知恵やら抜け道やら、実践的なテクニックをいろいろ学ばせていただきましたが、なにより先生にはすごくよくしていただいて……。

藤沢真行
いろいろ親身になってくれる先生だったんだよね。

鈴木イゾ
もともと新人を育ててくれる先生ということで、紹介していただきました。ネームを先生のところに持っていくと、お忙しいのにいろいろアドバイスしてくださるんです。左ページの終わりには、次のページに期待を持たせるようなコマを持ってくるとか、漫画を描くうえで身につけておくべき基本も優しく教えてくれて……。当時の私にとっては、すごく勉強になりました。

――さとう先生のもとで働いていたのは、2年ほどとうかがっていますが?

鈴木イゾ
はい。2年間修業して思ったのは、漫画の勉強にはとてもいい環境だけど、やっぱり自分で作品を描きたいなということでした。それで改めて、どんな仕事でも自分に依頼されたものをやっていこうと思ったんです。といっても生活費も必要なので、自分の仕事をメインにしながら、フリーで臨時アシスタントをやっていました。急に名古屋の先生のところに行くように頼まれて、そこから3日間泊まり込んだり、なかなかに波乱万丈でしたね(笑)

――アシスタントは合計すると、何年くらいやっていらしたのでしょう?

鈴木イゾ
さとう先生のところも合わせると、5〜6年くらいですね。すべてアナログの現場でしたが、作業環境やシステムがそれぞれ違うので、驚きもあったりしておもしろかったです。「家政婦は見た!」みたいな感じですね(笑)。フリーのアシスタントを続けるうちに、どんな場所でもひと通り対応できるようになったのも収穫でした。

――なお先生も、アシスタントのご経験がおありですよね?

藤沢真行
臨時アシスタントとして、様々な先生のところにちょこちょこお邪魔していました。時期は2005年あたりまでですね。その中でも印象的だったのは、麻宮騎亜先生の現場です。当時は「聖獣伝承ダークエンジェル」(角川書店)や「サイレントメビウス テイルズ」(スクウェア・エニックス)の連載をなさっていて、たった一年間でしたが毎月一週間ほど泊り込みで通っていました。自分もイゾも、アシスタントはフルアナログでやっていたので、先生のお仕事場に通うのが基本だったんです。

――当時の思い出話を聞かせてください。

藤沢真行
実は、麻宮先生とは対面する機会があまりなかったんです。作業の体制がしっかりと組み上がっている現場で、先生が仕事をされている間はアシスタントが寝て、アシスタントの作業中は先生が寝るシステムでした。仕事の割り振りや簡単なチェックまでなら、チーフアシスタントの方がやるから、先生から直接指示を受けることはほぼなかったです。あ、でも初日にガッツリ、直接指導を受けました。力量とコミュニケーション力を測るためだと思うのですが、集中線やティーカップ、岩などを描いて見ていただきましたね。

――分業体制がしっかりした現場だったんですね。

藤沢真行
はい。たまに先生とお会いすることがあっても、映画の「エイリアン」(20世紀フォックス)なら何作目が好きか、とか趣味の話ばかり(笑)。先生の仕事場には、「サイレントメビウス」(角川書店)や「快傑蒸気探偵団」(集英社)など、ご自身の作品のガレージキットをガラスケースに入れて並べている場所があったんです。しかも、造形家さんたちがみずから組んで塗装した完成品ですからね……。先生の作品もガレージキットも好きだったから、休憩時間によく眺めていました。

――ファンにはたまらない仕事場ですね!

藤沢真行
素晴らしい環境でした。ただ、あくまで仕事で通っていたので、先生のファンだとは公言していなかったんです(笑)。現場で直接指導を受けたことはあまりなかったけど、効率的な分業の仕方やスケジュール管理、その他もろもろ、今でも麻宮先生の現場で学んだことの多くを実践しています。

藤沢真行
もちろんそれだけではないですが、アシスタントで身につくスキルは効率面、つまり作業時間を短縮するテクニックみたいなものが多いと思います。アシスタントをやったからといって、画力が急激に上がったり、急にネームがうまくなったりするということはあまりないですし……。

鈴木イゾ
アシスタントをすれば、漫画を作るうえでの基本は学べると思います。背景もうまくなれますが、ネームを作ったりキャラクターを描いたりはしないので、そのあたりは個人で頑張ることが大事だろうなって思いますね。


コミック「制御魔法」と「平兵士」のキャラクターデザイン画。アシスタントは漫画の基本と実践テクニックが学べるけれど、キャラを描くのは自分自身の力!

まずは作品を仕上げることが大切! 漫画家志望者へのアドバイス


――では、プロ漫画家になりたいと志している方に向けて、アドバイスをいただけますか?

鈴木イゾ
私たちの頃は同人誌くらいでしたが、今はWebもありますし、漫画を発表できる場所がたくさん広がっています。プロを目指している方は、どんどん発表してアピールをしていただきたいですね。私の個人的な感覚ですが、編集さんはそういうアピールを意外に見てくれているように思います。

藤沢真行
そのためにも、とにかくまず作品を描き上げることが大事です。

鈴木イゾ
明確な締め切りがない中で作品を完成させるのって、私もそうですが、誰にとってもきつい作業だと思うんです。特に1本目のオリジナル作品のネームを描ききるのが難しい……。アマチュアで締め切りに追われていない方は、みんな「完成したら持っていくよ」って言うんです。「今、途中まで作っている大作があるけど、冒頭の部分を何回も描き直している」とか。でも私は、まず描き上げることの方が大事だと思います。一度でも完成させられたら、自信につながるし。それができたあと、コミックを規定のページ内に収めることや、内容をよりよくする練習をすればいいと思います。

藤沢真行
自分も、決められたページに収めるスキルを身につけたのは、デビューしてアンソロジーのお仕事をいただけるようになってからでした。ラストには必ずオチをつけるとかも(笑)

――なるほど。たしかにオチは大事ですね(笑)

鈴木イゾ
それから、自分に妥協するとあとでがっかりするので、作画は最後まで集中力を切らさないようにすることでしょうか。それと描き上がったら原稿を見直して、自分と向き合うこと。

藤沢真行
描いたものを見直す人と見直さない人だと、その先の上達度が全然違うように思います。自分と向き合い、さらに自分を追い込む作業は、プロになってからも絶対に必要です。

鈴木イゾ
そういう反省会のような時間は必要ですね。もちろん私も、今でも自分で原稿を見直しています。完成した時には「すごくよく描けた!」と思っていたけど、配信されたコミックを読んで「あれ? そうでもないかも」って思うこともよくあるんです……。

藤沢真行
自分も完璧にできたって思えることはないですね。必ず「次はこう描いてやろう」って思う。


執筆時にはうまく描けたと満足したページも、配信されると反省点が見えてくる……。プロの漫画家にとっても、作画は思い通りにはいかないものなのだ。

――そう考えると、反省は描き続けるためのモチベーションにもつながっているかもしれませんね。ちなみにおふたりが、プロ漫画家になったと思えたタイミングはいつでしたか?

鈴木イゾ
アンソロジーで生活できるようになり、アシスタントの仕事をしなくなったあたりかなと思います。……いえやっぱり、初めて連載のお仕事をさせていただいた「M.F.C.女泥棒会社峰不二子カンパニー」(原案:モンキー・パンチ/双葉社)の頃ですね。アンソロジーも、もちろん責任を持って全力で描かせていただいていましたが、二次創作ではあるので、連載作品ほどの心構えはなかったように思います。

藤沢真行
自分は「魔弾戦記リュウケンドー」(原作:「魔弾戦記リュウケンドー」製作委員会)の時です。初めての連載ということもありますが、商業の漫画雑誌に掲載されたことの方が大きかったです。そうそうたる先生方のお名前が並ぶ中に、自分の名前も入れていただいたので。

鈴木イゾ
樋口大輔先生とのお付き合いは、それがきっかけだっけ?

藤沢真行
樋口先生は、仮面ライダーシリーズのコミカライズが載った「テレビマガジン別冊ヒーローズ」(講談社)という雑誌が縁です。コミックマーケットの会場に樋口先生がいて、思い切って声をかけたんです。そうしたら、樋口先生も自分の作品を読んでくださったそうで、 そこから仲良くしていただけるようになりました。そういう横のつながりで、同業者の友人・知人が増え始めたのも、プロの実感につながったのかな、と思います。

24時間一緒でもノープロブレム! 愉快な漫画家夫婦生活


――おふたりはWebコミックの連載は「制御魔法」と「平兵士」が初めてですが、何か仕事の仕方や環境に変化はありましたか?

藤沢真行
自分のほうは、仕事の仕方に違いはありません。Webコミックの場合、サイトによっては原稿が1ページずつ表示されるケースもありますが……アルファポリスのコミックは基本2ページごとに表示されます。コミックスにまとまった時も2ページずつ読むことになりますから、隣り合うページが同じような構図にならないようにネームの段階から気を配るなど、むしろ紙媒体と同じ意識で仕事をするように心がけています。

鈴木イゾ
私は、Webコミックではノド(※)を空けなくなりました。紙媒体ではノド側の絵や文字が食い込まれるので、ノド付近にはあまり絵を描かないようにしていたんです。「平兵士」も第1話はノドを空けていたのですが、真ん中の余白が気になって……。第2話以降は、ノドを空けずに描くようになりました。

※編集部注「ノド」
印刷用語で、本の綴じ部付近のこと。その部分に絵や文字があると見切れてしまうため、紙媒体用の原稿はノドに余白を作ることが鉄則となっている。

鈴木イゾ
それと、無料配信についてはありがたく思っています。Twitterで更新の告知をすると、友達やTwitterでフォローしてくれている方から「見たよ」って感想をいただけることが増えました。雑誌はわざわざ買わないといけないけど、無料配信なら気軽に読めますからね。

藤沢真行
編集さんも漫画を知っている方が担当してくれているので、安心感がありますね。

――なるほど。今回のインタビューでは、ご夫婦で漫画家をなさっていることのメリットをたくさんうかがえましたが、デメリットはあったりしますか?

藤沢真行
うーん……お互い、我が強い! 主張がぶつかり合うと、お互いになかなか譲らないから大変なんですよ(笑)

――そこですか(笑)。日常生活で困ることはありませんか?

鈴木イゾ
それはないかな。もともと私たちは、他人と暮らしても平気なタイプの人間同士なんです。同業の知り合いの方たちに、同じ仕事部屋に毎日一緒にいるのは辛くないかっていわれることもあるんですけど……人として最低限の決まりごとさえ守られていれば、全然辛くないんです。

藤沢真行
外に出て働いている人たちから見れば、24時間ずっと一緒にいるのはありえないって思うみたいですが、全然大丈夫ですね(笑)。アシスタント時代に、集団生活で寝泊まりしながら作業していたから、慣れているのかな。

――それはすごいですね。……で、先ほど仕事場に宅急便が届いて、なお先生がさっそく荷物を取り出していましたが?

藤沢真行
iQOS(加熱式タバコ)のキットが一式入るケースです。イゾからのクリスマスプレゼントなんですよ。

鈴木イゾ
なおさん、12月生まれなんです。iQOSが欲しいっていうから、キットを誕生日にプレゼントしたら、今度はクリスマスプレゼントにケースが欲しいって。うまく言うなぁって思いました(笑)。超合金のおもちゃが欲しいって言わなかったから、今回はよしとしようと(笑)

――では最後に、今後の目標をお願いします。

藤沢真行
幅広くいろいろな仕事をしたいです。イラストも、ロボットやキャラクターデザインの仕事も全部込みで。これまで身につけてきたスキルや経験を活かして、漫画に縛られず、絵に関わる仕事をしていきたい。もちろん、単行本になる漫画の仕事もやりたいです(笑)

鈴木イゾ
私は、単行本になるお仕事をいっぱいしたいです。自分の名前がついた本が、ひとつでも多く世の中に出せればいいなと思います。ふたりともずっと、この仕事を続けていきたいですね。

――お忙しい中、インタビューに応じていただき、誠にありがとうございました。よりよい漫画を読者のみなさんにお届けするため、これからもよろしくお願いいたします!

ふたり
お疲れ様でした。こちらこそ、ありがとうございました。




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・投稿インセンティブ
作品の人気度に応じて投稿インセンティブスコアを作者に還元!
貯まったスコアは現金やギフト券などに交換できます。
・1500pt出版申請
作品の人気度に応じてカウントされる24hポイントが1500pt以上の作品は「出版申請」が可能です。
「出版申請」されたコンテンツに対しては、アルファポリス編集部が書籍化や公式連載化を検討します。
・評価申請
16ページ以上の内部投稿作品は評価申請をすることができます。
プロの編集者から詳細なアドバイスを受け取ってステップアップ!

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