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コラム
2023年2月28日

百合漫画を出張編集部に持ち込み!コミック百合姫での連載までの道

ゆあま先生 漫画家 デビュー

「COMITIAやCOMIC CITYなどで出張編集部やっているのは見かけるけど持ち込むのは緊張する......」「サークル参加したら編集者からスカウトされたけどそのまま付き合いして良いのか不安......」など漫画家志望者から声をいただきます。
今回は大学生時代に編集者からのスカウトや出張編集部への持ち込み経験のある、現在コミック百合姫で『君と綴るうたかた』を連載されているゆあま先生にインタビューし、漫画家デビューに至るまでの思い出や振り返って思うやっておくべきことなど伺いました。



― 漫画家を目指されるキッカケ

インタビュアー:
本日は2018年10月からコミック百合姫にて『イケメンすぎです紫葵先パイ!』(完結済)、2020年5月から『君と綴るうたかた』を連載されておりますゆあま先生に、漫画家デビューに至るまでのお話をいろいろお伺いできればと思います。それではまず、ゆあま先生はいつ頃から絵や漫画に興味を持たれたのか、漫画家になりたいと意識されたのでしょうか。

ゆあま:
もともと絵を描くのは小学生の頃から好きでした。ぼんやりと絵に携わる仕事はしたいなとは思っていたのですが、漫画家やイラストレーターを目指すのはあまり現実的じゃないと学生時代は思っていました。なので、美術大学や美術系の専門学校などではない栄養学を学ぶ大学に進学しました。ただ、絵を描くのが好きなのは変わらなかったので絵を描くゆるいサークルには所属していました。
大学2年生の頃からは、ちゃんとした漫画・同人誌を描いたり同人誌即売会にサークル参加していく中でウルトラジャンプ(集英社)の編集者にスカウトされ、初めて商業雑誌で読切デビューしました。そのあたりから漫画家やイラストレーターなど絵を描く仕事をしたいと意識するようになりました。

インタビュアー:
ありがとうございます。栄養学を学ぶ大学にいながら漫画家やイラストレーターを目指すとなると、最初はご両親から驚かれたりとかされましたか?

ゆあま:
両親ともに私が小さい頃から絵を描くのが好きというのは知っていたので、目指したいと相談した時はすんなり受け入れてくれましたね。

インタビュアー:
漫画家を目指す学生さんらとお話すると、美術大学や美術系の専門学校など漫画やイラストを学ぶことに特化した学校に行かないといけないのか悩まれている方がいます。ゆあま先生としては所謂一般的な大学に通われて感じられたこれはメリットかもみたいなことはありますか?

ゆあま:
私の通った大学では栄養士の資格を取得できるところで、絵の技術とは違った知識を学べるのは話の引き出しを増やせるのでメリットに感じます。所謂一般的な大学に通うことで大学の講義の様子や学生生活など、描かれるジャンルにもよりますが描写されやすいシーンを実際に体験できるのは大きいと思います。交友関係も漫画に詳しくない方オタクじゃない方などと接する機会も多く、そういう方とコミュニケーションできるのは大学ならでは貴重な場所です。
何より現実問題、漫画家やイラストレーターの道が駄目だったとしても、私の場合は栄養士の道に歩みやすいというのは精神的に安心感があります。個人的な考えですが、あまり自分自身を追い込みすぎず精神的に少しゆとりがある状態の方が連載デビューに向かって取り組みやすいのかなと思います。



― ラブライブ!の同人誌を楽しんで描いてきた

インタビュアー:
大学2年生の頃から本格的に同人活動をされてきたとのことですが、どのようなジャンルで活動されていたのでしょうか?

ゆあま:
『ラブライブ!』をメインに同人活動をしていました。小泉花陽というキャラクターが推しだったので、その子を中心にしたコメディ系統の漫画やイラストを中心に描いていました。


ラブライブ!とは
少女たちが学校廃校の危機を救うべくアイドルを目指して奮闘する作品。2010年から雑誌やCD展開、グループ名・ユニット名の募集やユーザー人気投票など展開。2013年にはTVアニメ1期、2014年にはTVアニメ2期、2015年には新作映画が公開された。ライブや漫画、ソーシャルゲームなどメディアミックス展開が多くされ爆発的な人気を誇った。


インタビュアー:
同人活動されていた当初はコメディ系統がメインだったんですね。

ゆあま:
幼少期の頃から読んでいた少女漫画がギャグ・コメディ色が強い作品が多かったり、高校生あたりからは少年ジャンプやスクウェア・エニックスあたりの少年漫画やギャグ・コメディ系統の漫画をよく読んでいたのでその影響があるかもしれません。

インタビュアー:
それで同人活動をしていく中でウルトラジャンプ(集英社)の編集者から同人誌即売会の会場でスカウトされたと。

ゆあま:
夏のコミックマーケットに『ラブライブ!』でサークル参加した際にウルトラジャンプ(集英社)の編集者からスカウトされました。ご丁寧に名刺もいただいたのですが、当時の私は大学生で社会人経験が少なかったこともあり、本物の編集者なのか怪しく感じ1ヶ月ぐらいは連絡せず放置してしまっていたんですよね。ただ、同じジャンルでサークル参加していた友人もその編集者からスカウトされて、実際に集英社で打ち合わせが出来たりとちゃんとした編集者という情報共有があり、期間は空いてしまいましたが試しに連絡してみました。

インタビュアー:
そのスカウトをキッカケにウルトラジャンプ(集英社)の編集者と漫画制作に取り組まれたんですね。

ゆあま:
ウルトラジャンプの付録で特別小冊子があった時、可愛いをテーマにした読切漫画を集めたものに作品掲載いただいたのが私にとって初めての商業デビューとなります。

インタビュアー:
最初の商業デビューに至るまでネタ出しや打ち合わせなど大変だったかと思いますが、いかがでしょうか?

ゆあま:
ネタ自体何回かボツを貰ったりと冊子に掲載された方々の中で私が一番作業に取りかかれたのが遅かったのかなと思います。周りの友人は載るかもというのを知っていたので、載れなかったらどうしようというプレッシャーはありました。制作する時は大学4年生の頃、約2週間職場体験みたいな実習授業と丸かぶりしていた時期で学業との両立が大変でした。実習先から帰宅したらすぐ寝て、深夜から早朝にかけての時間を漫画制作に充てました。大変ではありましたが、実際に読切が載った時は友人らから凄いと褒めてくれたりと一緒に喜んでくれたのが嬉しかったです。



― 出張編集部でコミック百合姫と出会う

インタビュアー:
『ラブライブ!』の二次創作活動がメインだったようですが、大学4年生の頃から一次創作(オリジナル作品)限定の同人誌即売会のCOMITIAにもサークル参加されております。オリジナル作品にも挑戦されたのはウルトラジャンプ(集英社)での読切デビューをキッカケに、本格的に商業漫画家を意識されてのことだったのでしょうか。

ゆあま:
そうですね。大学4年生の時には既に漫画家かイラストレーターとして生活していくぞと決めていました。その頃は周りのみんなも就職活動を意識している時で、私としては趣味として楽しみつつ、たくさん描いていたらイラストや漫画の仕事のお声がかかる可能性が上がるから実質就職活動のはず!と信じてさらに絵や漫画を描くことに精力的になっていきました。同時に食わず嫌いせずいろいろなジャンルを描いてみたい挑戦したいと思っていた時期でもありました。なので、最初は男女の作品を描いて、次は百合作品、その次はBL作品を描こうと考えていたところに、百合作品がうまく出張編集部でお会いした編集者に刺さった感じでした。

インタビュアー:
栄養学に関する大学に通われていたとのことですが、周りのご友人らは一般的な就職活動をされている中、漫画家・イラストレーターと違う道を目指されました。当時、不安感みたいなものはなかったのでしょうか。

ゆあま:
それがあまりなかったですね。ウルトラジャンプ(集英社)の読切掲載や『ラブライブ!』などのアンソロジー企画参加、イラストやキャラクターデザインの仕事も経験したので絵に関することで生活できるかもという安心感はありました。

インタビュアー:
それなら確かに安心ですね。就職活動的な側面で参加されていたと仰っていましたが、出張編集部を活用したのはやはり商業連載を目指してということでしょうか。

ゆあま:
そういった面もありますが、どちらかといえばもっと気楽に漫画作品に対して意見が欲しい、ワンチャン連載の話が出てきたら嬉しいなという軽いノリで出張編集部に行きました。持ち込み先はネットの友人が連載されているかどうか、百合作品を描いていたので百合作品に対して造詣が深そうな編集部などという視点で選びました。その時は出張編集部会場でも連載を目指してみませんかと名刺をいただいた編集部が2つ、同人誌を会場で買って後日メールをくださった編集部が1つ、Pixivの新刊サンプルを見てメールで声をかけてくださった編集部が1つあり、合計4つの編集部から同時にスカウトされたタイミングでした。

インタビュアー:
4つの編集部同時は凄いですね。比較するにあたってどういう点を意識されたのでしょうか。

ゆあま:
まずは全員と顔合わせといいますか打ち合わせをしました。編集者がどういう方なのか、その時持ち込んだ作品に対する解釈が合っている方なのか、原稿料はどの程度か、連載した際は紙の単行本を出せるのかなど意識して比較した結果、コミック百合姫が一番理解いただけたので一緒にやっていこうと思いました。私の考える作品作りの方向性である「カッコいい女性を描く際にカッコいいまま描かせてくれるか」というのもコミック百合姫の編集者が一番理解していただけました。大変有り難いです。

インタビュアー:
持ち込まれた『イケメンすぎです紫葵先パイ!』の元となる作品は執筆期間が短かったと伺っていますが、いかがでしょうか?

ゆあま:
イケメンすぎです紫葵先パイ!』の元となった作品はワイド4コマという形式の漫画ではあったのですが、本当に執筆する時間がなく4日ぐらいの制作期間で描きました。同人誌即売会当日に間に合わせられるよう、イベント前日に印刷してくれる印刷所にお願いするなど本当にギリギリでした。当然急いで描いたので振り返ると全体的に絵が雑なところはあったのですが、最後のページに余裕があったときに描いたキレイめな落書きをなんとなく載せたところ、その落書きを見て編集者から連載とか興味あるかと言われました。その落書きを載せなかったら名刺をいただけなかったかもしれません。

インタビュアー:
時間がないからこそ逆にゆあま先生の好きな表現がストレートに描かれていたり、余計な考えなく描けたという良さがあったかもしれませんね。

ゆあま:
そうですね。カッコいい女性と可愛い女性の百合作品をストレートに描けましたし、作品内で描いたバスケの描写も元々『黒子のバスケ』が好きでカッコいいなと感じていたので作品内に気楽に突っ込みました。

インタビュアー:
それから2018年10月頃に『イケメンすぎです紫葵先パイ!』が連載となったため、出張編集部でスカウトされてから約1年程度とかなりスピード感ある商業連載に繋がったのは流石ですね。

ゆあま:
担当編集としてついていただいた直後は大学卒業前だったり、他の冬のコミックマーケットなどの同人誌即売会にサークル参加したりしていたので、実際に本腰入れて連載目指して作業出来たのは3月あたりからだと思います。コミック百合姫の担当編集とは連載に向けた打ち合わせなどきちんとコミュニケーションがとれ、いろいろ相談に乗っていただけたりと大変有り難かったです。

インタビュアー:
その連載に向けた準備期間中は将来の不安など心境はいかがだったでしょうか。

ゆあま:
漠然とした将来の不安はありましたね。周りの友人らは病院や会社など出社している中、私はなんで家にいるんだろうみたいな気持ちはありました。準備期間中なので当然原稿料がなかったりと金銭的な不安も感じました。実家じゃなかったらもっと不安でいっぱいだったと思います。

インタビュアー:
実家で過ごせたというのは安心ですね。今だから思う、連載準備期間中にやっておけばよかったことや、やっといて良かったことなどありますか?

ゆあま:
連載準備期間中に限らずですが、漫画制作は体力勝負みたいなところがあるので体力をつけるため運動をするというのは大事だと思います。やっといて良かったこととして、いろんな方と仲良くしたりお話を聞いたり漫画に関すること以外の知識や経験を積められたのは良かったです。サークルに入ったりバイトしたり、使う使わないはあると思いますが漫画制作時に使えるエピソードの手札は多いほうがいいなと思っています。他にも高頻度で同人誌即売会にサークル参加したのは締切に向かって作品を作り上げるというのに慣れられたり、執筆する速さを意識することができたのは良い経験でした。

インタビュアー:
作品のテーマやネタが思い浮かばない悩みを持たれている漫画家志望者の方もおられるので、日頃から知識や経験を積んでおくのは大事ですね。他にこういうこと意識したほうがいいかもというのはありますか?

ゆあま:
絵や漫画以外の趣味や好きなものを持つことですね。商業の漫画を描くうえで、自分の興味のある分野や好きなことを漫画に落とし込んだり、話づくりのきっかけにするので、自分が興味を持って掘り下げられるものを増やしておくのは大事だと感じました。 作品の立ち上げをする際、担当編集さんとの打ち合わせの中で「好きなものや趣味は何ですか」と聞かれたことがあります。私が以前この質問をされた時「イラスト描くこと」と答えてしまい、担当編集さんを困らせてしまいました。この質問は、作家自身の好きなものや趣味、描きたい題材があるならそれを中心に練って読み切りや連載に向けて漫画を作っていこう、という意図の質問なのですが、それを漫画に落とし込むのも難しく感じ、結局自分が描きたい・描けるものは何かと悩んだことがあります。そのやり取りした編集さんとは別件で、のちに「同人女百合アンソロジー」にて同人活動をしてる女性二人の百合を描いたのですが、自分が趣味として造詣が深いものということもありとても楽しく描けたのを覚えています。漫画以外の能動的な趣味がいくつかあると(例としてキャンプや楽器など、知識としてだけでも深く知っていると)「何を描くか迷った時」の糸口として強いと感じました。

インタビュアー:
ありがとうございます。それでは、まとめ的な質問をさせていただければと思います。今後のゆあま先生の夢や目標などありますか?

ゆあま:
『君と綴るうたかた』の漫画執筆を頑張るというのは勿論ですがアニメ化やドラマ化、コラボカフェなど今応援してくださっているファンの方に限らず、メディアミックス企画をしたいです。それをキッカケにより多くの方にも作品を知ってもらえたらより嬉しいなと思います。他にも画集発売や個人イラスト展の開催などお声がかかるよう、これからも精力的に頑張りたいと思います!

インタビュアー:
ありがとうございます!それでは最後に漫画家志望者に対して応援メッセージをいただければと思います。

ゆあま:
漫画は好きで描くのが一番だと思います。夢に向かって楽しく諦めず描いて欲しい、いろいろな視野をもって楽しく頑張ってほしいと思います!!


■ゆあま先生 プロフィール

コミック百合姫にて『君と綴るうたかた』を連載中、現在4巻まで発売中(2023年3月16日に5巻発売予定)。過去には『イケメンすぎです紫葵先パイ!』の連載やウルトラジャンプ特大号付録読切にて『カワイイってむずかしい』を掲載。『ラブライブ!サンシャイン!!コミックアンソロジー2』や『ゆるゆりアンソロジー 10周年記念ver.』などアンソロジー企画にも参加。人気VTuberの歌ってみたイラストやYouTubeスタンプイラストなどイラスト方面でも活躍。
Twitterアカウント(@maymaymay7523)
pixivアカウント
個人サイト(プロフィール、お仕事依頼等)



■コミック百合姫 連載作品『君と綴るうたかた』

人との接点を避けて生きている女子高生・星川雫は、隠して執筆していた小説をクラスメイトの朝香夏織に見られてしまう。しかし、小説を読んだ夏織からは「次回作のために私と付き合おうよ」と逆に誘われてしまい……物語を通してつながる少女二人の、甘く切ないひと夏だけの恋人ごっこ。
(引用:一迅社作品紹介ページ

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