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編集長の部屋 2017年10月30日

週刊少年ジャンプ中野博之編集長④「自分が本当に面白いと思って描いた漫画を、日本中に、世界中に広げられる力を一番持っているのがジャンプ」

第13回目を迎えた今回の「編集長の部屋」は、『週刊少年ジャンプ』の中野博之編集長!今年の6月に就任されたばかりの中野編集長に、『週刊少年ジャンプ』のこれまでとこれからをじっくり伺いました。

 

1対1の人間関係が築けてこそ、多くの読者を楽しませることができる

-ジャンプの連載作家さんに、何か傾向はありますか?

色んな作家さんがいるので一概には言えませんが、頭が良い人が多いですね。高校で一生懸命勉強していい大学行って、というような頭の良さではなく、社会的に頭が良いというか、うちの会社の若手以上に人とのやり取りもしっかりできます。もちろん、人と話すのが苦手という人はいますが、人間的にしっかりしている人ばかりだと思います。

原稿の締め切りだけは守らないですけど(笑)、その他の約束の時間とかはしっかり守りますし、言葉遣いも知っていますね。やっぱり、担当編集とのやり取り一つとっても、こういうことやったらこの人は不快になるんだろうな、という意識がちゃんとある気がします。それがないと読者を楽しませることはできないですよね。こうしたら読者が楽しむ、こうしたら読者が嫌がるという想像が働いているということです。それは1対1の人間関係にも関わっているので、そういう意味の頭の良さはみんなあるなと思いますし、そういう人が残っていきます。

-新人を見るポイントは、どんなところでしょうか?

人によって違うと思いますが、僕はやはりキャラクターを見ますね。話がめちゃめちゃでも、絵がめちゃめちゃでも、何かキャラが作れていれば、評価します。主役じゃなくてサブキャラでもいいですし、何なら一コマでもいいんですけど、何かこのキャラが素のセリフを言っているな、キャラになっているな、というのは見ます。

これはおこがましいのですが、結構新人とかに言うのは「俺は経験もあるし、作品も多く読んでいるし、ボツになった作品もたくさん見ているから、話のアイディアは出せるし、構成とかはできる。だけどキャラは作れないから、キャラを作ってきて。話は一緒に考えよう」ということです。でもそれくらい、キャラは作家のものですし、編集者はキャラについては良いかダメかしか言えない。どうすれば作れるのか、指導はできないんです。

-キャラ作りができている作家さんがやっていることは、どんなことでしょうか?

島袋先生もそうですけど、人間をしっかり見ているんだと思います。冷静に観察して、欠点ポイントを面白がっていますね。「あの人ここがホントダメ人間ですけど、そこが面白いですよね」みたいな見方をして、それをキャラクター作りに生かしていると思います。

- 一人の編集者がどれくらいの新人を抱えているんですか?

差はあると思いますが、連絡の取れる作家さんでそれぞれ100人以上はいると思います。その全てと毎日毎週ガッツリ打ち合わせをしているわけではないと思いますが、期待が低かった作家が、急成長をすることもあるので、担当は外せませんね。

-20人の編集さんが100人ずつとなると、担当付きと言われる新人が2000人くらいいることになりますね。すごい倍率です。

「ジャンプの持ち込みは厳しい」とか、「こんなひどいことを言われた」とか、ネットなどで言われていると思いますが(笑)。実際には書かれているようなことはあまりないと思います。どこに才能が眠っているか分からないので、なるべく可能性は持っておきたいと考えるのは当然ですよね。なので、どの編集者も「なるべく僕のところに持って来てね、他のところに持っていかないでね」という感じです。他の雑誌に持っていかないで、は当たり前ですけど、「同じ編集部内の他の編集者にも持っていかないでね、僕の名前覚えてね」と。結構いるんですよ、持ち込みを受けてもらった編集の名前を忘れて、電話のときに「昔持ち込みして、その時の担当さんの名前忘れちゃったんですけど」って言う人。その電話を取った編集者はしめしめ、という感じで、「僕が担当しまーす」みたいな。もう編集部内で奪い合いです。

 

月例賞は毎月100本以上、手塚・赤塚賞は毎回200本以上が応募

-新人賞についても、教えてください。

まずは月例賞として新世界漫画賞があります。審査員には、週刊連載の先生が毎回1名入っています。これが一番分かりやすいというか、いつでも応募できて、結果も早く出ますので、まずこれを目指すということになると思います。

-月例賞は毎回どれくらいの応募があるのでしょうか?

審査員の先生や時期によって応募数には差があるのですが、どの月も100本は必ず超えています。その100本以上の投稿を選考班(4人)全員で30本くらいに絞り、その後副編集長が加わって最終候補を10本以内に絞ります。最後に審査員の先生、編集長、副編集長、選考班を含めて全員で講評も含めて点数もつけて選考会を行うような流れです。発表は締め切りから2カ月後ですね。

-手塚賞・赤塚賞については、いかがでしょうか?

手塚・赤塚賞は審査員先生も多くて賞金も豪華ですが、月例賞との一番大きな違いはページ数です。ストーリー漫画部門は31Pなのですが、31Pで壮大なストーリーは描けないですね。たくさんの要素を盛り込めないので、月例賞よりも企画力やキャラクター力が求められます。この世界は何とか王朝、何世紀で、というファンタジー世界で、過去があって、みたいなのは31Pでは描けないですね。あれこれ設定を盛り込みたくても31pだと足りないので、どう絞るか、そこがシビアです。なので、月例賞などで最終候補とかに残って担当編集がついた作家が、担当と一緒に目指すということが多いです。応募数で言えば月例賞の倍くらいのイメージですかね。

-他にもいくつか賞がありますよね。

他には、ストキンというネームだけで応募できるものと、ガリョキンという作画だけで応募できるもの、Gカップというギャグ漫画のみの漫画賞を不定期に行っています。この辺りの賞は、オールマイティーにできる人というより、ここだけはストロングポイントがあるという人を見出す漫画賞という感じです。

ウェブについてはジャンプルーキーというウェブでの投稿・公開サイトがあって、読者が「いいジャン!」を付けられるような仕組みになっています。いつでも何本でも投稿できるのが特徴で、デジタル世代に向けた漫画賞だと言えます。全投稿作を編集スタッフが読んでいるだけではなく、審査に読者が入っているので、より読者に近い目線で審査がされるし、スマホで読んでいる読者が好きな漫画が求められている、ということになりますね。

-ジャンプ世界一マンガ賞というのも始められましたよね。

ジャンプ+の企画ではあるのですが、実はライバルは世界にいるのでは、という発想がありました。日本の才能というのは、今どれくらいの総量があってどういう動きをしているのか、大体見えていて、まだまだジャンプブランドはあるのかなと思っています。一方で、世界の才能がどこに行くのか、というのが分かっていなくて。今までは、「世界の人たちって漫画の書き方分かってないね、ノウハウを教える人もいないし」と余裕の気持ちでいたのですが、ここへきてどんどん世界のレベルが上がっていて、ひょっとすると大物になる才能が眠っているかも、と。それなら早いうちにジャンプに流れて来る構造を作っておかないと、他に持っていかれたら取り返しがつかないことになってしまう、と考えました。こと画力に関しては、抜群に上手い人が海外にもいますね。バイリンガルの編集がなかなかいないので、どこまでできるか、というのはありますが、新しいチャレンジです。

-新人賞でこうしていきたいとか、こんな人に来てほしい、というのはありますか?

今はウェブの応募を増やそうとしています。ウェブ上には絵が上手い人はたくさんいますが、ほとんどが1枚絵です。なので、こんなに画力があるならどんどん漫画を描いて持ってきてよ、と思いますね。自分の画を描いて、ウェブにアップして、というのは楽しいし気持ちの良いことです。一方で漫画を描いて編集からボツをくらったり、自分が面白いと思って描いてきたものが、読者には人気が無くて受け入れらなかったり、というのはすごく絶望的な辛いことかもしれません。それでも、それを超えて人気が出たときは、本当に気持ち良いと思うんです。その辛さを味わなければ、この気持ち良さは味わえないと思うので、絵が上手い人はそこを目指してほしいですね。絵が上手いというだけで目指すチャンスがあるのだから、漫画を描いて持ってきて欲しいと思う。

ただ、来て欲しいとは思いますが、我々は口出しはします。他のどの編集部よりも、編集がこんな漫画を作りましょう、この漫画はダメです、と作家をぎゅっと絞っていくことをします。しかしその方が、作家の才能を開かせるし、面白い漫画が作れると思っています。

-『ジャンプGIGA』についても教えてください。

元々はジャンプネクストという増刊号でしたが、どちらも基本的には新人作家向けのものです。本誌だと枠に限りがあってなかなか新人を載せられないので、その手前のステップとして場を作っています。漫画家さんにとって、一番の成長は描くことなので、そのための雑誌ということです。増刊号はずっと昔からあるものですが、年々新人の為という意味合いが強まっていますね。

この間の『ジャンプGIGA』は4か月連続で刊行したので、連載も作りました。イメージとしては、本誌連載までは行けていないけれども、次にそこを目指してほしいというレベル感の作家さんです。読み切り一発というのも大事なんですけど、連載をすることでさらに学べることが沢山あります。まずは引きをつくること、限られた話数の中で完結させること、キャラクターの広がりも主人公だけでは持たないので、サブキャラも活躍させないといけません。さらには4号連続で大事なのは、連載になったことで生まれる締め切りです。読み切りだと、時間をかけて「やっとできた、これなら通る!」と提出してきたものが載って終わりですが、連載だと次は1か月後に締め切りが来るんですよね。限られた中で最大限の力を出すというのは、連載、特に週刊連載においては一番大事で、一番大変なところです。この間のGIGAで連載した作家さんは圧倒的に成長したと思いますので、近いうちに本誌に登場すると思います。


©集英社

 

自分が本当に面白いと思って描いた漫画を、日本中に、世界中に広げられる力を一番持っているのがジャンプ

-ヒット作家を育てるために、様々な取り組みがなされているんですね。

そうですが、現状はなかなか難しいですね。色々な才能がある中で、飛び抜けたヒット作が生まれない一つの要因としては、漫画が広がりすぎていることがあると考えています。編集者もそうなのですが、昔のジャンプ編集部って半分くらいは漫画嫌いだったんですよね。仕事以外は漫画を読まない人もいた。「ジャンプなんて読んできてないよ、文学小説が好きだぜ」とか、「映画は好きだけど漫画は読まないぜ」、みたいな。漫画家さんもそこまで漫画を読んでいない人が多かったので、他の漫画家の影響をそんなに受けてないんですよね。今は漫画が広がりすぎて、漫画を読むのがスタンダードになってきています。漫画を読んで育った人が多いので、『ドラゴンボール』みたいな漫画を描きたい、『ONE PIECE』みたいな漫画を描きたい、という一つのイメージが出来上がってしまっていて。そうなると、少し縮まっちゃいますよね。それだと『ONE PIECE』は超えられません

-確かに、それはあるかもしれません。

漫画ってこんな表現があったんだ、漫画ってこんなことができたんだ、こんな漫画見たことない、という表現が生まれにくくなっているので、そこは見てみたいですね。そういう意味では、ふと漫画を描いてみた、漫画を持っていくならとりあえずジャンプなんだな、という認識というか、漫画を詳しくない人が漫画を描いたら、とりあえずジャンプに持っていけばいいのかなと思ってもらえるようにしたいです。今までは鳥山明先生がいて、尾田栄一郎先生がいて、何となく、尾田栄一郎がいるジャンプに持っていこうという発想が起きていて、そこに我々はあぐらをかいていたのは否めません。これからは、我々も待っているだけではなく、自分たちから才能を見つけに行かないといけないと思っていますね。

-ジャンプ作家を目指す上で、大事にして欲しいことはありますか?

担当編集を使ってほしいですね。良い部分も悪い部分も含めて、付き合っていくとちゃんと漫画はパワーアップしていくと思うので、へこたれずに上手く使ってもらうのが良いと思います。やっぱり編集の手が入ってこそヒット漫画、良い漫画が生まれると思っているので、まず編集を頼って欲しいし、編集と付き合うことを嫌がらないでほしいです。

ジャンプに持ち込みに来たあとに、ジャンプじゃないなと思って他の雑誌に行く人もいて、それ自体はいいのですが、自分のことを一番評価してくれるところどこかな、と探しに行ってしまうのはどうかな、と思ってしまいます。合わないな、というなら良いんですけど、自分を一番誉めてくれるのはどこかな、というので探すのは意味がないのでは、と。

漫画って使い捨てだと思って、どんどん新しいものを描いた方が良いんですよ。「ジャンプにボロクソ言われたけど、この漫画をもっと誰かが誉めてくれないかな、誉めてくれる所を探そう」ではなくて、「だったら次の作品もっと良いのを描いてやる」、と思ってほしいですね。

-確かに、描いた作品に固執していると、次には進めないですよね。

我々が新人の新連載を一番の企画だと思っているのと同じ意味で、作家にとっては次の作品が人生で一番面白い作品になるはずなので、まずは若いうちは描くことが大事です。描けない漫画家さんって本当に多くて、なかなか31ページなり45ページなりの漫画を完成させるというところにたどり着けない。まずはそこからかもしれないですね。完成させただけで「すげぇ!頑張った!」と思ってもいいくらい。それができたら、次はそれを誰かに見せる。それが編集者ならさらにいいですね。もちろん、それは恥ずかしいだろうし、ハードルが高いことかもしれません。ファミレスでの打ち合わせなど、最初はすごいイヤだったとプロの作家さんもよく言っていますね。でもそれが乗り超えられると、次へ進めます。

-最後に、漫画家を目指す方へメッセージをお願いします。

漫画家は大変な職業ですし、今は広がっている分より大変な仕事になっています。出版社に持って行かなくても作品が描けて、発信ができるようになったので、わざわざ職業として選ぶ必要はないかもしれません。ただ、やっぱり自分が面白いと思って描いた漫画が人に読んでもらえるのは嬉しいですし、読者は多ければ多いほど嬉しいことだと思います。そして、本当に面白い漫画を、一番日本中に、世界中に広げられる力を持っているのがジャンプだと思っていますので、まずはジャンプを目指してもらえると嬉しいです。才能を見抜く力がどこまであるかわからないけど、才能を受け入れていく覚悟はあるので、ぜひ一緒にヒット作を作りましょう

―ありがとうございました!

インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、福間、川原

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