無自覚イケメン×ツンデレ猫の新婚ラブコメ「愛しの国玉」アッチあい先生にインタビュー
トキメキと大好きがいっぱい詰まった女性のためのWebコミック『シルフ』で無自覚イケメン×ツンデレ猫の新婚ラブコメを描いた漫画作品『愛しの国玉』。 漫画制作のやり方や執筆で大切にしていることなどを著者のアッチあい先生にインタビューしました！
■愛しの国玉
オレが結婚したのは人間になりたい猫だった。
「ずっとずっと会いたかったです！」
そう言って大学生・真の胸に飛び込んできた猫（？）の国玉。
しかし、国玉が探していた“運命の相手”は真の兄で、しかも既婚者だと判明。
悲しみで涙いっぱいの国玉に、真は思わず「オレじゃダメ？」と求婚してしまった――!?
「真実の愛で、ボクを本当の人間にしてください」
引用元：https://sylphcomics.com/series/kunitama/
一番助かってるのが最初に読んでくれること
―今回はインタビューにお答えいただき、ありがとうございます。アッチあい先生は最初は同人活動されていたとのことですが、同人活動を始められたキッカケを教えてください。
アッチあい：
最初は漫画を描いてネットにアップしてたんですがそのジャンルでオンリーイベントが開催されることになったんです。当時は同人誌即売会に行ったこともないし同人誌を見たこともなかったんですが、みんな参加するから参加してみよ～の精神で初めて同人誌を発行してみました。でその同人誌が余りにも下手で他の人の同人誌と自分のを見比べて絶望して時間を戻してやり直したくなったり落ち込んでたんですが、リベンジして記憶を塗り替えようと決意してまた同人誌を出して落ち込んでを繰り返してた感じです。
―ありがとうございます。同人活動をしてきた中で商業漫画家を目指されたきっかけを教えてください。また、目指すにあたり不安などありましたか？
アッチあい：
同人活動中に編集の方から名刺をいただき商業デビューしました。正直漫画を描くのが楽しかったのでいつかは商業デビューするんだろうなと思ってました。その時は不安はなかったんですが、BLの短編を書いてみてあまりに下手すぎて恥ずかしくて載ってる雑誌もろくに見れなかったです。
―スカウトされたんですね。同人活動が長いと担当編集がつくことに苦手意識ある方もおられるのかなと思うのですが、担当編集がついてよかったことはありますか？
アッチあい：
最初はプロの編集の人はその道のプロなんだからってかなり意見を参考にしてたんですが、参考にしすぎてテンポが変になったり整合性が取れなくなったりしちゃいました。なので編集のせいにしようとしたんですが最終的に描いたのは自分だしなと思って、最近はバランス良く意見を聞いたり聞かなかったりしてます。でも一番助かってるのが最初に読んでくれることです。伝わりにくい部分とか面白くない部分とか読まれた反応でなんとなくわかるのでそこから変えられたりするのですごく助かってます。
―確かに編集者は最初の読者でもあるので、微妙な反応のときは意見を聞けるというのは良いことですね。他に同人漫画と商業漫画で感じたギャップ、大変だったことを教えてください。
アッチあい：
同人誌は元々ある作品のキャラを書くので"1"から作品を生み出すじゃないですか。それと違って商業はすべて"0"から生み出さないといけなくてそれが大変でした。同じ漫画でも1と0だと漫画を描く方法が全然違ってて0から描くのを掴むのに苦労しました。
―0からの生みの苦しみはありつつも、同人漫画と商業漫画それぞれ面白さ魅力がありますよね
アナログは一発勝負なので気合の入った線が描けるのがいい
―漫画家の執筆スタイルも多様化し、デジタルで描く方やアナログで描く方様々でありますが、アッチあい先生はどちらになりますか？
アッチあい：
気分でアナログとデジタルを使い分けてます。アナログはGペン、デジタルは液タブかiPadでCLIP STUDIO PAINT EXを使ってます。背景の下書きは常にデジタルで、3Dデータや写真、パース定規などを使って下書きしてます。それをプリンターで原稿用紙に水色インクで印刷します。（水色はグレーでスキャンすると飛ぶので）それをアシスタントさんにアナログで描いてもらってます。人物はデジタルでもアナログでもあんまり気にならないんですが、背景だけはアナログがいい感じです。背景がアナログだと温度や光を感じる気がしてます。
―うまく併用して使いこなしているんですね。他にもアナログとデジタル、それぞれの良いところを教えてください。
アッチあい：
デジタルのいいところはやり直しがきくところとデジタルでしか描けないおもしろペンが使えるところです。デジタルは下書きほぼなくても描けるし左右反転もできるので顔面崩壊の事故を防げます。一方アナログは一発勝負なので気合の入った線が描けるのがいいです。それに雑に仕上げられるのもいい感じです。デジタルで雑だと本当にただ雑な感じなんですがアナログだといくらでも味になるので一番時間ない時はアナログがオススメです。
―確かにデジタルであれば色んな素材が試せたり機能を駆使し綺麗に整えられる、アナログであればはみ出しや滲みなどが味になったりとそれぞれ魅力がありますよね。続いて、1話制作するにあたっての大体のスケジュールを教えてください。
アッチあい：
ネームは∞、下書き10P/日、ペン入れ10P/日、トーン30P/日、仕上げ20P/日 こんな感じです。ネームは本当に早く完成してほしいです。
―ありがとうございます。最初お話にありました"0"から生み出す大変さですよね...。アッチあい先生はアシスタントさんがおられるとのことですが、どういった作業を分担されているのでしょうか。
アッチあい：
コマ枠線と、背景のペン入れをお願いしてます。あと靴紐とか服の模様とか細かい装飾を頼んだり頼まなかったりしてます。
―アシスタントさんへの指示出しは中々イメージしにくいのですが、どのようにされているか気をつけていることを教えてください。
アッチあい：
背景の時間や天気を伝えたり、参考の雰囲気の写真を渡したりとにかくイメージの共有にずれがないようにしてます。あとは流れで適当にお願いしてます。木や草、空など自然物はアシスタントさんが描くの嫌がるので自分で描いてます。とにかくアシスタントさんの得意な部分をお願いしまくってそれ以外の苦手な部分は自分でやって、って分けてます。
―抑えておきたい共通認識はちゃんとしつつも、信頼して任せられるところもあるんですね。それぞれの得意分野を活かすのは確かに大事だと思います。
執筆以外の息抜きの日もあると思いますが、その時はどう過ごされていますか。また次回に向けてインプットを意識するときの行動を教えてください。
アッチあい：
ケーキなど美味しいものを作ってます。でも失敗すると落ち込むのでリスクありです。インプットについては散歩が一番いいと思ってるんですが最近面倒で外に出てないです。
1話に1つ「これだけ見ていけ」の決めゴマを入れる
―執筆作品についてお伺いできればと思います。『愛しの国玉』を描いてみようと思われたキッカケを教えてください。
アッチあい：
恋愛漫画を企画してたんですがどのカップルを描いても応援する気になれなかったんです。それで何も考えずに好きな感じにキャラデザしたのが猫人間の国玉でした。その国玉を見ながら考えたのが真さまでした。2人のキャラデザが決まってからはするする描けました。
―ありがとうございます。『愛しの国玉』は人間と人間になりたい猫という組み合わせですが、組み合わせとして描くにあたり難しい点を教えてください。
アッチあい：
身長差があるので一つのコマに入れるのが大変でアングルをがんばってます。
―描かれる側としては難しいところありつつも、いち読者としてはその身長差がまた魅力の1つに感じます。メインの他にも黒川百恵さんや樹本美彦さんと一癖あるユニークな登場人物がおられます。こういったキャラクターの着想はどのように得ているのでしょうか。
アッチあい：
全員を俳優に当てはめてどんな俳優さんが出てきたら面白いか、みたいな。モデルの俳優さんを決めてからどんな役を演じてもらうかって感じで考えてます。
―俳優をベースにされているんですね。個性豊かな方も多く漫画描かれるにあたり参考になりそうです。登場人物のみなさんの衣装はもちろん、特に国玉さんは可愛らしい服装が多い印象です。等身低くかつ猫ベースではありますが、どういったところからデザインの着想を得られているか教えてください。
アッチあい：
SNSをいつも参考にしてます。主にInstagramで、丸々着せることはないんですけどフォルムとかアイテムとかアイデアにちょい足しさせてもらってます。
―SNS通じてインプットし、さらに自分のアイデアを組み合わせられているんですね。ありがとうございます。続いて、担当編集とのお話も触れていければと思います。2巻あとがきで「何も気にせず自由に好きなキャラにしたらいいヨ」とアドバイスされたとあります。信頼して作家に委ねられて自由に描けるのは良い反面、これで良いのかと不安になる一面もあるかと思いますが、このあたりのバランスいかがでしょうか。
アッチあい：
自由に描いても不自由に描いても結局これでいいのかって悩むシーンは一生ついて回ると思うので、後ろを見ないでこれから出来る軌道修正に全力を注げば結構なんとかなります。
―他に作品を執筆していく中で印象深かった担当編集者からのアドバイスがあれば教えてください。
アッチあい：
1話に1つ「これだけ見ていけ」の決めゴマを入れると目に留まるし印象付けられるって言われてそれから見せゴマを入れるように意識してます。
―1話ごとに印象に残るコマをというのは確かに大事ですね。執筆にあたり大切にされていることはありますか？
アッチあい：
自分が今楽しいかどうかはいつも大切にしてます。楽しいコマ、楽しいアングル、楽しい展開など。ペン入れ中もアナログのGペンが楽しい時もあれば紙に引っかかる感じにイライラしてくる時もあってその時はデジタルに変えたりして気分が飽きないようにしてます。
―ありがとうございます。それでは最後に漫画家を目指されている方に対して、応援メッセージをいただければと思います。
アッチあい：
最近は漫画業界も人手不足なので、絵が上手ければ漫画家になれる可能性大です。編集さんは最初に絵が上手いかどうかで漫画を見てくるのでとにかく絵には気をつけて下さい。でもそれのせいでただキレイな絵を真似して自分らしさを失わないでください。私はその人らしさが出てる漫画を読むのが大好きなので、編集の目をある程度騙せる画力を身に着けて、自分らしさを誰にも踏みつけられないように伸ばしていってください。
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URL：https://sylphcomics.com/award/couple/
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