エモキュンラブコメ『恋する(おとめ)の作り方』万丈梓先生にインタビュー
■恋する(おとめ)の作り方
“…だから僕、もっとかわいくなりたいんだ。"
スクールカースト上位の男子・御堂は誰にも言えない秘密を抱えていた。それはコスメが大好きなこと。つちかってきたメイク技術を誰かに試してみたい…!そんな気持ちを抑えきれず陰キャの幼馴染(♂)・日浦にメイクをしたらとんでもない美少女が誕生してしまい…!?しかも日浦はひそかに御堂に思いを寄せていて…!?
引用元:『恋する(おとめ)の作り方』紹介
comic POOL/pixivコミック
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「アニメ化してほしいマンガランキング2024」
— 万丈梓 (@azusa_banjo) March 22, 2024
『恋する(おとめ)の作り方』は4位に入賞することができました!
読者のみなさま、たくさんの応援本当にありがとうございました…!
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デビュー前後の思い出
―今回は2024年4月25日(木)に単行本8巻が発売、「アニメ化してほしいマンガランキング2024」4位に入賞された「恋する(おとめ)の作り方」の万丈梓先生にお話を伺っていきたいと思います。早速ではありますが、漫画家を目指そうと思われたのはいつ頃だったのでしょうか。
万丈梓:
具体的に行動したのは大学生に入ってからでした。小学生ぐらいの頃から絵を描くのは好きでしたが、全然うまくはなかったです。それでも漫画を描くことには憧れがあったので、大学入学後に漫画投稿し始めました。
―よく聞く話として、あの漫画に影響されて描き始めた、あの漫画に衝撃を受けて描き始めたなど見聞きするのですが、万丈梓先生はあったのでしょうか。
万丈梓:
特にこれ!というものはないのですが、講談社の漫画雑誌「なかよし」が一番最初に手に取った漫画雑誌です。他にもバトルや魔法モノなど結構色々なジャンルのものを友達から借りて読んだりしていました。
―幅広く楽しまれていたんですね。そうなると進路としては、美術系でがっつり学ぶという訳ではなく、所謂一般的な学校に進学されたのでしょうか。
万丈梓:
美術系に進学したいなと思っていましたが、親から大学に行って欲しいと言われたので最終的には一般的な大学に進学しました。美術系だとデッサンなど独特な試験もあり、勉強して間に合うのか正直不安だったことも影響としてありました。
ただ、絵に関するものを学びたいという気持ちはあったので、それに近いところとして文学系かつ美術を学ぶようなところに進学しました。
―そこで大学生活過ごしながら、漫画家を目指し始めたんですね。
万丈梓:
そうですね。漫画投稿に力を入れました。漫画家になりたい気持ちはあったので、就職までに受賞できたら両親を説得できるかなと思い頑張っていました。その結果、とある雑誌で初めて担当編集が付くことになりました。編集がつく最低限の賞でしたが、具体的な結果を出すことができ嬉しかったです。その担当編集さんとはより上の賞をとるために改めて投稿用作品を作りましょうという話になり、いくつか作品を作っていきました。
結局その雑誌では作風が合わずにうまく行かなかったのですが、作品を作っていく中で漫画作りの基礎を叩き込んでいただいたので良い経験になったと思います。
―その雑誌に投稿された理由や選び方はなにかあったのでしょうか。
万丈梓:
投稿する前に自分が描きたい漫画を載せてくれそうな雑誌を全部買って研究しました。あまり競争率が高すぎないことなども考慮したと思います。見比べた結果、自分の方向性と合っていそうということでその雑誌を選びました。
―複数の媒体を比較検討するのは大事ですよね。当時の作品作りはどのような方向だったのでしょうか。勿論雑誌や担当編集によって異なってくると思いますが、自分が描きたいような作品が作れたのか、編集者主導のビジネスライクな作品なのか。
万丈梓:
初投稿では男の娘系の漫画を作ってそちらを褒めていただいたのですが、2作品目からは賞を取ることを意識しすぎてしまい、自分の好きなものを抑えるようになってしまっていました。「ちゃんと物語として成立しているか」「見せ場があるか」などは大事なことではあるのですが、投稿で評価されるポイントばかりを重要視しすぎていたかもしれません。最初の頃は自分の好きや夢を詰めたプロットなどを担当編集さんに送るのですが、当然未熟なので「これはウケない」「こういうところが良くない」など却下されることばかりで、自分の好きを全面に出した上で否定されることが怖くなったことも原因だと思います。好きを引っ込めて「編集さんに褒められる」ことだけを目指した漫画は商業的な目線でも面白いわけないだろうなと、今となってはよくわかります。
―好きなものが商業連載でもウケるかは、流行りだったりその時の状況だったりといろいろ話が変わってくると思うので難しいですよね。
万丈梓:
その担当編集さんは編集長だったということもあり色々と俯瞰して見て柔軟に対応してくださり、こんな話が合うのではないか、社内の別雑誌に行った方がいいのではないか等様々な提案してくれたのはありがたかったです。ただ、あのころは今よりも雑誌のカラーや縛りがきつかったので、その後についていただいた別の担当編集さんから「うちではもうあなたの漫画は載せても意味がないと思う」と言われてしまい、しばらく落ち込んだあと別の雑誌に持ち込みしてみようとなりました。
―いち編集として作品は良くても、媒体に載せるには難しいこともありますよね。そこから漫画持ち込みを経験されたとのことで、当時は確か兵庫にお住まいだったのでしょうか。
万丈梓:
そうですね。なので兵庫から東京に直接持ち込みしにいきました。ほぼ初めての東京だったので右も左もわからず大変でした。ただ、その頃は作家の友達もでき、周りもちらほら読切が載ったり商業連載が始まったりしていたので、自分だけ負けるわけにはいかないという気持ちで臨みました。
―その時はどういった出版社・編集部に持ち込まれたのでしょうか。
万丈梓:
連載することになったCOMICメテオをはじめ、少年誌や少女寄りの雑誌など5社ほど回りました。王道なものを載せるというよりは少しマニアックであっても載せてくれそうな雑誌という視点で持ち込みしにいきました。
―どんな作品を持ち込まれたのでしょうか。
万丈梓:
少しダークなバトルファンタジー系のものでした。商業連載を狙って作ったというよりは、その時出来たキャラクターがとても可愛かったので、その子が一番活かせるのはヒロインが可愛い系のバトル物かなと思って作りました。今とは全く違うジャンルですが、「自分が大好きなキャラをどう活かせるか」という作り方は今の自分に繋がっている気はします。
―「恋する(おとめ)の作り方」とは違った作品ジャンルで意外でした。各社からの反応はどうだったのでしょうか。
万丈梓:
いろんな反応をいただきました。ある編集部で見てくれた編集者さんは正直凄く怖かったのですが、漫画についてこうした方がいいなどかなり具体的なアドバイスをいただくことが出来ました。別の編集者さんは優しくて持ち込み作もかなり褒めてくれましたが、その後は色々質問してもフワフワとした答えばかりであまり実入りのあるお話はできませんでした。
元々厳しい方は得意ではないのですが、作品を褒めてくれるからと言って次につながるわけでもないんだなと今振り返ると感じています。
―編集者とやりとりしていた経験があったとはいえ、持ち込みは違った緊張感があるのかなと思いますが、いかがだったでしょうか。
万丈梓:
否定されることに変に慣れてしまっていたので、緊張とかは大丈夫でした。むしろ、自分の作品を見てもらえるんだという嬉しさが勝っていました。
―確かにいろんな作品に触れている編集者に見てもらえるというのは、よくよく考えると貴重なことですよね。そんな持ち込みを通じてCOMICメテオで連載となりましたが、COMICメテオで頑張ろうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
万丈梓:
持ち込みの時、唯一連載企画について具体的に話を進めようとしてくださったのがCOMICメテオの編集者さんでした。持ち込んだ作品自体にはほとんど触れられなかったのですが、漫画を描く力がある程度あることは感じ取っていただけたのかもしれません。他にももう1社、持ち込みした際に好印象だったところと並行して取り組んでいたのですが、前向きにぐいぐいきてくださったのがCOMICメテオさんでした。
―求められると嬉しいですよね。持ち込みや打ち合わせで当たり障りないこと言われるより、実際に作品の添削だったり連載企画のお話されたほうが挑戦しようという気になると。
万丈梓:
その時は自分の作品を褒められるより次のアクションに向けての話してくれるほうが大事でした。なので前向きに取り組むことが出来ました。
―次のステップに進むための取り組みは嬉しいですよね。いろんな編集者と出会い、編集者の見るポイントは変わったりされましたか。
万丈梓:
ポイントは中々難しいですね。相性はもちろん大事なのですが、何回かやり取りをしないとわからないものでもあるのでそれ以外にも個人的に大事だと思うポイントをお話します。初めての持ち込みという視点なら、やはり編集者さんが次に繋げたそうな雰囲気かどうかは大切です。後はどのくらい編集業務を経験されているかの実績なども結構重要だと思います。特に新人さんは、まだ自分が定まっていない中でフワフワした指導をされてしまうと何を描けばいいかわからなくなることも多いので…。それに、どれだけ担当編集者さんが作品を認めてくれても連載会議に通らないと仕事に繋がらないので、そこでグイグイ推す力がある方だと安心感はあります。持ち込みでは過去の立ち上げ作品などのお話をしてもらえることもあるので、気になったら聞いてみるといいと思います。
自分に合う担当さんに出会えるまで負けずに色んなところを回ってみるのもいいかもしれません。
―確かに連載に繋がるものに一緒に作り上げられる編集者なのかは大事な視点だと思います。
万丈梓:
最初の連載は大変でしたね。ただ一度連載すると、その作品の売上に関わらず他社からもうちで描きませんかとお声はよくかかるようになったので、連載できるチャンスが目の前にあったら一度は挑戦したほうが良いと思います。実績になるのは勿論、連載漫画の仕事運びや単行本作業・読み切りとは違う編集さんとのやり取りなどの実体験できるのは貴重です。コミカライズでも同様です。
『恋する(おとめ)の作り方』の誕生秘話
―『恋する(おとめ)の作り方』の立ち上げの話も伺えればと思います。最初はX(旧Twitter)で投稿した漫画というスタートだったのでしょうか。
万丈梓:
そうですね。最初、原案をその時お世話になっていた編集さんに見せたら反応は悪くなかったんですが、編集長さんからは「誰向けかわからないからうちでは無理」と言われてしまいまして・・・。結局その雑誌で取り扱えるかは別として、もったいないからSNSに上げてみたらどうですかという話になり投稿したところ運良くバズりました。
―バズったときの感覚って覚えられていますか。
万丈梓:
載せてすぐはもちろんバズりというほどでもなかったです。かなり力を入れた作品だったので、これがダメだったら辛いな…と思って胃が痛すぎて寝込んでいたと思います(笑)それから起きたら凄くバズっていて驚きました。SNSで拡散してくれた仲間の作家さんや読者さんには今でも感謝しかないです。
―調べたところ、その投稿から1,2ヶ月で連載が告知されました。かなりスピーディーに決まった印象です。
万丈梓:
丁度1話を載せたのが年末でしたが、そんな時期にも関わらず一迅社の編集者さんからすぐに連絡をいただきました。他にも5人ほどの編集者さんから連絡をいただいたのですが、同じ会社の同じ部署の人方もいて、スピード勝負なんだなぁとびっくりしました。
―その中で一迅社を選ばれたのは早くお声がけいただいたということも影響あるのでしょうか。
万丈梓:
そうですね。あとcomicPOOLは「オタクに恋は難しい」「うらみちお兄さん」など人気作品抱えていたりメディア化もされているなど勢いを感じていました。担当作品にも人気作が多く、なおかつ編集長さんで話が早く進められそうというところも魅力でしたし、メールの書き方も1人熱量が違ってとても嬉しかったのを覚えています。どれだけ自分の作品に熱を入れてくれそうかって大事だなと思います。
―X(旧Twitter)からお声がかかるのは今でこそ一般的に聞く話ではありますが、当時はまだそこまで広く手法が浸透していたほどの手段ではなかったと思います。SNS通じたスカウトに不安とかはありませんでしたか。
万丈梓:
不安な気持ちはなかったですね。むしろ、一度他所で商品にならないと言われた自分の作品を評価して褒めてもらえるのが嬉しくてたまりませんでした。ただ、今までこのジャンルで難色を示された経験がたくさんあるので、後からこういうのはダメと止められないように「私はこの作品で最終的にこういうことをやりたいんですがやっても大丈夫ですか?」と各編集者さんに最初に聞きました。バズった作品だから使える手法だと思いますが、失敗はしたくなかったのでそこだけは慎重に選びました。
―一迅社というパートナーを見つけて、連載までの1,2ヶ月の準備期間。かなり慌ただしかったと思うのですが、当時は万丈梓先生自身もイケイケみたいな雰囲気だったのでしょうか。
万丈梓:
熱が冷めないうちに連載始めたいとは思っていました。Twitterの漫画は移り変わりも早く絶対間を開けてはいけないと。編集さんも鮮度について私より詳しかったのでスピード感持って準備を進められました。
―作家と編集者が同じ目線で取り組められるのは良いですね。
万丈梓先生の制作環境
―ここからは執筆環境についてもお伺いできればと思います。最初はアナログで漫画制作だったのでしょうか。
万丈梓:
そうですね。アナログから始めて、丁度初連載が始まるタイミングでCLIP STUDIO PAINTが発売されたので、その頃からデジタルで漫画を作るようになりました。
―最初アナログで描かれるとデジタルに切り替えた時、独特の感覚に慣れないこともあるのかなと思うのですが、そのあたりいかがだったでしょうか。
万丈梓:
逆に私はアナログが苦手で手汗などで原稿用紙がくしゃくしゃになるのが嫌だったので、デジタル環境の方がやりやすかったです。何回も描き直す手間もかからず、CLIP STUDIO PAINTがなかったら漫画家になれなかったとさえ思います。最初の頃はデジタルすぎる見栄えになってしまいペンの設定を調整したり大変な面もありましたが、今では自分にぴったり合うペンが出来たり描きやすさも向上してより使いやすくなっていると感じています。
―ありがとうございます。デジタルはいろいろな表現に挑戦しやすいメリットがあると感じています。素材もいろいろ提供されております。
万丈梓:
そこも良いポイントだと思います。昔アナログで連載されている作家さんのアシスタントをしていましたが、グラデーショントーンなどは所持枚数も少なくすぐ買いにいけるものではないし、失敗したら終わりという緊張感がありました。デジタルなら何度でも貼り直せますし、買いに行く時間や手間も不要で連載作家にもアシスタントにもとてもありがたいものだと思います。
―デジタルだと板タブか液タブという選択肢がありますが、どのタイプから始められたのでしょうか。
万丈梓:
最初は色塗りのみの使用だったこともあり板タブから挑戦し、次に液タブの小さいものに挑戦しました。板タブも原稿が手で隠れないという良さはありますが、やはり直接描き込める魅力は凄かったです。
―人それぞれになりますが、板タブも液タブもそれぞれ良さがありますよね。続いて、制作体制について、現在アシスタントさんは採用されているのでしょうか。
万丈梓:
今はレギュラーで2名ですね。今の連載ではトーン処理のみ1名で背景は自分で描いていたのですが、工数的に厳しくなったので新たに1人採用しました。作業が多い時は昔のアシスタントさんに声をかけてヘルプで手伝ってもらっています。
―アシスタントさんとのやりとりはご自身のアシスタント経験を活かして。
万丈梓:
そうですね。アシスタントは経験してよかったと思います。アシスタントしていた時の先生からの指示の出し方を見て、どんな指示の仕方がわかりやすいかを学ぶことができました。先生から何をされたら嬉しい、何をされたら嫌だということもアシスタント経験で学べたから、今アシスタントさんと上手くやれているのかなと思います。
商業作家を目指すなら、一度アシスタントは経験しておいた方がいいと思います。
―ありがとうございます。それでは最後に漫画家志望者に対して応援メッセージをいただければと思います。
万丈梓:
もし商業連載のチャンスがあるなら、それを掴みに行ったほうが絶対良いです。その作品が例え伸びなくても短く終わったとしても、連載したからこそ得られるものがあります。SNSなどで個人で連載することになったとしても絶対にアドバンテージになります。私を含め周りの先生も10年目でようやくだったり連載3作品目でやっと花が咲くような方も多く、一発目で当たりを狙うのはかなり厳しい世界ですが、恐れず経験値を積み重ねていくのが大事だと思います。食らいついて描き続けていれば絶対にチャンスは来ます!応援しています!
【お知らせ】
— 万丈梓 (@azusa_banjo) April 5, 2024
「恋する(おとめ)の作り方」
単行本最新⑧巻、4/25発売です!?
告白を超えて、でもまだ付き合ってないふたりのもだもだが見れるのは今だけ!
地味に御堂のメイン巻なのでコスメイラストにもこだわって作りました
よろしくお願いします~!✨
?ご予約?https://t.co/q9io3lbpHK pic.twitter.com/tSS0JWfxGX
■万丈梓先生 プロフィール
漫画家。comic POOLで『恋する(おとめ)の作り方』を連載中。現在7巻まで発売中。大学生の頃に漫画家を目指すため漫画投稿を開始。COMICメテオで『変則系クアドラングル』執筆したり読切やコミカライズなどを経験。
・X(旧Twitter)アカウント
・個人サイト
■恋する(おとめ)の作り方
“…だから僕、もっとかわいくなりたいんだ。"
スクールカースト上位の男子・御堂は誰にも言えない秘密を抱えていた。それはコスメが大好きなこと。つちかってきたメイク技術を誰かに試してみたい…!そんな気持ちを抑えきれず陰キャの幼馴染(♂)・日浦にメイクをしたらとんでもない美少女が誕生してしまい…!?しかも日浦はひそかに御堂に思いを寄せていて…!?
引用元:『恋する(おとめ)の作り方』紹介
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