縦スクロール漫画の教科書：Chapter3　回想・想像シーン

スマホの普及に伴い、新たな読み方として注目されている縦スクロール漫画（Webtoon）。従来の右から左に読み進める形式ではなく、上から下へと読む形式となります。漫画アプリやWEBコミックサイトなど通じて、作品に触れた方も多いと思います。
ただ新たな形式のため、縦スクロール漫画を描くにあたり、制作ノウハウがまだまだ少ない状況です。今回は『縦スクロール漫画の教科書　プロに学ぶ構図・着彩・演出の基本&上達テクニック』に収録されている制作ノウハウを５つ、１ヶ月ごとに公開させていただきます。より詳しく縦スクロール漫画を学びたい勉強したいクリエイターは『縦スクロール漫画の教科書　プロに学ぶ構図・着彩・演出の基本&上達テクニック』をお手にとってみてください。

縦スク漫画の回想シーンは、上から下への流れでスムーズに移行することで、分かりやすく転換できるのが特徴です。また、色のイメージによってさまざまな表現が可能です。

セピアやトーンは回想の基本

回想の内容で演出を変える
回想シーンであることを分かりやすく読者へ伝えるには、セピア系の色を使う、トーンをかけるなどの方法があります。この際、ポジティブな回想シーンには光などを入れて明るく、ネガティブな回想シーンには影を落としたり、暖色系以外を使って暗く仕上げるなど「 そのキャラにとってどんな過去なのか 」を色のイメージで訴求することができます。

人物に合わせた小物を使う
より印象的な回想シーンをつくりたいときは、特定のキャラを象徴する小物が役に立ちます。たとえば、特定キャラのキーアイテムを別のキャラが手に取って回想する演出は、スクロールも相まって読者の没入感をよりアップさせます。

過去と現在の人物を重ねる
現在のキャラの背後に過去のキャラの姿を透過して配置すると、キャラの変化を分かりやすく表現できます。再登場時に風貌が変わったキャラを紹介するときなどに便利な演出です。

回想シーンとよく似た演出に想像シーンがあります。想像は実際に起こっていることではなく頭の中で展開される事象なので、回想とは表現の違いがありそうです。

想像は実際に起きていないこと

「ぼかし」を生かす
一般的に、回想が過去に起こったことを思い出すことであるのに対し、想像は実際起きていないことを思い描きます。つまり想像は必ずしも事実ではなく、回想よりもあいまいなものになります。想像シーンを演出する際は色を淡く塗ったり、絵にぼかしの効果を入れるなどがベターです。

透過やエフェクトで印象が変わる
想像や観念的なシーンは、回想と同様にその内容によって描き分けられます。明るいイメージには光を入れる、暗いイメージには影を入れるなど、明暗の調節でニュアンスが変化します。

TIPS ちょうどいい不透明度を考える
映画やアニメでも定番の「人物の顔が空に浮かぶ」シーン。縦スク漫画のデジタル作画では「不透明度」を調節することによって、簡単に表現できます。感傷的な余韻を生み出せる値としては、不透明度 50％～70％あたりでバランスを調節してみましょう。この値の範囲から外れると、薄すぎたり濃すぎたりします。

記事制作協力：株式会社サイドランチ／株式会社エムディエヌコーポレーション

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