エッセイ・ノンフィクション作品を漫画編集者が分析 Part.2
今、エッセイやノンフィクションジャンルの漫画がアツい。現在、新潮社WEB漫画サイト「くらげバンチ」には多くの実録漫画が掲載されており、累計実売数は500万部を超えるといいます。 そんなくらげバンチが初めて『エッセイ・ノンフィクション漫画賞』を実施します。それを記念して、実録漫画の担当を持ち、今回の漫画賞を企画したくらげバンチ編集部・伊東朋夏さんに動向や賞についてお聞きしました。
――続いては伊東さんにお話を伺いたいと思います。簡単に担当作品など経歴紹介をお願いします。
漫画編集者 伊東朋夏:
女性用風俗をテーマにした『女性に風俗って必要ですか?』『真・女性に風俗って必要ですか?』や、美容整形をテーマにした『女の人生に整形って必要ですか?』などを担当しております。
――ありがとうございます。最近エッセイ・ノンフィクション作品が各種ランキングでも上位で見かけるようになりましたが、漫画編集者としてどのように分析されておりますでしょうか。
漫画編集者 伊東朋夏:
今、実録漫画がアツいと思います!
SNSのおかげで今まで秘匿されてきたことが明るみに出たり、謎だった業界の裏側がわかったりと、現実世界と地続きにも関わらず、今まで誰も見たことない世界を見ることができるようになりました。
ただ、偽情報も多いので実際に取材した情報をもとに作られている作品の需要はますます高まってきています。実録漫画はSNSでも拡散しやすく、広告との相性もよく、社会的意義がある場合は「東洋経済オンライン」「ダイヤモンドオンライン」のようなサイトも積極的に取り上げてくれ、実売に繋がります。電子書籍でこっそり読めるのも魅力的ですよね。「真・女性に風俗って必要ですか?」はテレビ東京でドラマ化しました。
くらげバンチにはエッセイジャンル・ノンフィクションジャンルの作品が多く、またヒット率も高いです。そのジャンルを更に強化したいと考えております。

ドラマ化された『真・女性に風俗って必要ですか?』(©︎ヤチナツ/新潮社)
――バトル漫画や恋愛漫画といったジャンルも熱く感動しますが、エッセイ・ノンフィクション漫画もこんな業界・文化などがあるんだと漫画としての面白さと学びを得られて、個人的にも好きなジャンルの1つです。ただ、エッセイ・ノンフィクション漫画はネタが特化しているため、執筆するにあたって他ジャンルとは違ったハードルの高さをどこか感じますが、いかがでしょうか。
漫画編集者 伊東朋夏:
確かにそうですね。実際、『「子供を殺してください」という親たち』『ケーキの切れない非行少年たち』のような社会的なテーマを扱う作品の印象が強いですが、実際に経験した面白い出来事や、自分が就いているお仕事のこと、身近にいる面白い人など、ご自身の体験をもとにしたお話も扱うテーマとして面白いのではと思います。

A V男優に転職したお仕事漫画『AV男優はじめました』(©︎蛙野エレファンテ/新潮社)

猫飼いの日常を描いた『あたいとネチコヤン ゲイが猫を飼ったら終わりよ!!!!』(©︎もちぎ/新潮社)
奇抜な体験がないと駄目ということではなく、普遍的な内容でも、それを読者に「面白い」と感じていただけるような内容になっていれば問題ないと思います。例えば宮川サトシ先生の『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は宮川サトシ先生がお母様を亡くされた時の心境を漫画にされています。また、『ご成長ありがとうございます~三本家ダイアリー~』は三本阪奈先生がご家族との生活のことを漫画にされています。どちらも普遍的な内容ですが、読者の方々が自分のことのように感じて読むことができ、共感を呼んでいます。

母の死と向き合う『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(©︎宮川サトシ/新潮社)

三本家の日常を綴った『ご成長ありがとうございます~三本家ダイアリー~』(©︎三本阪奈/新潮社)
――もう1つ、年々漫画作品のクオリティは高く、話作り作画ともにハードルが上がっていると感じます。この点についても、いかがでしょうか。
漫画編集者 伊東朋夏:
ネームや話作りには自信があるという方には是非今開催中のエッセイ・ノンフィクション漫画賞のネーム部門やテキスト部門を活用してほしいです。フォーマット自由です。テキスト目安は500〜2000字程度を推奨していて、箇条書きでも問題ありません。過去にも、「私の経験を漫画にしてください」という文章の持ち込みから漫画制作がスタートした作品もございます。
作画に自信がある方には作画部門を用意しています。指定のネーム(4ページ分)をダウンロードし、それを元に作画して応募してください。キャラ・コマ割り・構図など、自由にアレンジ可能です。
――自分の強みを活かせる分野で挑戦できる環境があるのは良いですね。こういった漫画賞通じて、連載に繋がった場合はネタ探しや取材しなければいけない場面があると思うのですが、編集者はそういったのも手伝ってくれるのでしょうか。
漫画編集者 伊東朋夏:
自分が担当している『女性に風俗って必要ですか?』『女の人生に整形って必要ですか?』だと、どのようなネタを取り上げるかを作家さんと話し合い、私から関係者を探して取材のアポイントを取ります。取材当日は作家さんに同行し、一緒に質問をしたり取材議事録を作成したりします。
そのほか、作画の資料のためにモデルとなる場所に写真を撮りに行ったり、作家さんに描いていただいたネームや原稿に間違いがないか関係者に確認を取ったり、業界の方々と人脈を作って作品を広めやすくしたりしています。必要であればアシスタント探しや潜入取材なども行いますし、作家さんが作品を問題なく描けるサポートのようなことを行なっています。

『真・女性に風俗って必要ですか?』(©︎ヤチナツ/新潮社)
――それは連載後も安心ですね!今回は貴重なお話ありがとうございました。
■エッセイ・ノンフィクション漫画賞
くらげバンチにはノンフィクションを題材にしたヒット作がたくさん!漫画を描ける人も、描けない人も!あなたの「特別な」経験を募集します!大賞獲得作品は連載・書籍化のチャンス!
1.テキスト部門
フォーマット自由!漫画を描く必要なし!あなたが漫画にしたら面白いと思う経験を文章(箇条書きでもOK!)にして応募してください。
2.ネーム部門
あなたの経験を漫画ネームにして応募してください!過去に書いた作品・同人誌での応募も可能!
※エッセイ形式であれば、フィクションでもOK
※商業誌で公開されている作品は除く
3.作画部門
『それでも、親を愛する子供たち』のネーム(数ページ分)をダウンロードし、それを元に作画してください。キャラ・コマ割り・構図など、自由にアレンジしてください。
詳細は下記をご覧ください
https://kuragebunch.com/info/entry/nonfiction
■くらげバンチ 持ち込み
くらげバンチで漫画を描いてみたい!そんなあなたを、いつでも編集部がお待ちしております。まずはお気軽にあなたの原稿を持ち込んでください!編集部員が丁寧に拝見し、アドバイスいたします!いっしょにシビれる漫画を作っていきましょう。
●オンライン持ち込みの場合
ご自宅に居ながら、編集部に持ち込みができ、編集者からアドバイス(僭越ですが)を受けられます!
オンライン持ち込みをきっかけに、くらげバンチに掲載が決まった方も多数♡♡
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持ち込みは完全予約制です。希望される方は、必ず前日までに電話で予約をしてからお越しください。
(受付時間:月〜金曜日(※祝日を除く)11:00〜19:00)
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