漫画編集者山中chによる漫画講座 ~ストーリーの作り方~
ヤングマガジン編集部の漫画編集者の山中です。新卒で出版社に就職して以来、約10年間、漫画編集者を続けております。普段漫画家との打ち合わせで使っている漫画制作の小技や考え方などをお伝えしたいと思います。よろしくお願いいたします。
本記事ではストーリーの作り方、『右に行くなら左にはなむけ』についてお話ししていきます。前回解説した「フリとオチの使い方」の記事と合わせて是非読んでみてください。
まず、新人の漫画編集者がやってしまいがちな漫画制作、ストーリーの作り方のミスを紹介したいと思います。例えば、真っすぐな道を進んで、最後に右に曲がるというお話を漫画家先生が考えられたとします。新人の漫画編集者としては右に曲がらせるストーリーを考えるのですが、道中の物語に例えば「親から右に行ったほうが良いのでは?」「仲間たちも先に右に進んでいる」などを組み込み、最後に左側には怪獣がいるという形にしたら右に曲がることになるから、これでお話整いましたみたいに言われることもあります。ただ、これは一番やってはいけないことです。右に曲がるなら、左に行くと思わせないといけないです。
何故かというと、先程の例の場合「親から左に行ったほうが良いのでは?」「仲間たちも先に左に進んでいる」などと組み込み、最後に右側に怪獣がいるというストーリーにします。こうすることで読者は物語に対しワクワクするようになります。論理的に結論に話を導いていくというのは話をかなりつまらなくする、面白くなる話をただ綺麗な話にしてしまうので、一番やってはいけないことだと考えています。
今の例えは簡単すぎて、それはやらないと感じる漫画家志望者も多いと思いますので、具体的に例えを交えてやりたいと思います。 今回の話の主役キャラがホームランを打つという話だとします。例えば「ピッチャーの癖をその人が見破りました」「ピッチャーはカーブが得意でカーブ打ちが得意です」「ピッチャーの疲れ」などでホームランに向けてストーリーは整ったと考えるかと思います。
ただこの話は全然面白くなくて、これをどうやってはなむけしなきゃいけないのかストーリーを改善する必要があります。例えば「ずっとそのピッチャーの球が打てなかった」「会場から降ろせとブーイングが鳴り止まない」「なんであいつに代打を出さないんだ」など、打てる理由ではなくフリになります。分かりやすい説明すると、勝てる理由ではなく勝てなかった今までを積み上げてオチに持っていく必要があります。
勝てる理由があってホームラン打っても何も面白くないです。そうではなくて、勝てなかった今までが積み重なってホームランを打つところに読者は感動しますので、課題を抱えている漫画家の皆様は是非自分の漫画作品を見直してみましょう。
●漫画編集者:山中 様
ヤングマガジン編集部所属の漫画編集者。担当作品には『なんでここに先生が⁉︎』『テンカイチ』『ごくちゅう!』『純猥談』『ツワモノガタリ』『地球から来たエイリアン』『魔法創造』『転生重騎士』。
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毎週水曜20時更新。作家さんの才能(=gift)を、“商業誌”というフィルターを通さずに、贈り物(=gift)として届けたい。そんな思いから始まった、編集者が個人で作るwebマガジンです。
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●テンカイチ
原作:中丸洋介先生 漫画:あずま京太郎先生
【あらすじ】
時は西暦1600年。“織田信長”が全国統一してから10年が経過していた――。信長は自分の死期を悟ると、最強の武芸者を輩出したものに“この国”を譲ると発表。天下統一の夢破れた武将たちは、それぞれ最強の武芸者を擁立し、この国の王を目指す! 第一試合は“天下無双槍”本田忠勝(後援:徳川家康)vs.“進化する天稟”宮本武蔵(後援:長宗我部元親)!!!!! 誰もが夢見た異種武術時代絵巻、堂々開幕!!!!!!!!
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次にくるマンガ大賞2022のコミックス部門に「テンカイチ」がノミネート!1人1回、3作品まで投票できますので是非応援してくださると嬉しいです。投票締切は7月11日(月)11:00までとなります。
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ノミネート作品一覧
※本記事は山中様にご許諾をいただき、動画を記事化させていただきました