フランス出版社と手がけた漫画作品「DOGA」が先に日本に上陸!
※本記事はKi-oon様より寄稿していただきました
はじめまして!フランスの漫画出版社Ki-oonの編集者、カミーユです。
今回ご紹介したいのは日本とフランスの異例の漫画コラボです。大きな話題を呼んだ「大好きな妻だった」「あと一歩、そばに来て」「BADDUCKS」の作者•武田登竜門先生による新作「DOGA」についてです。
フランスの出版社Ki-oonと制作を進めながら、2023年10月から双葉社が運営するウェブコミック配信サイトWebアクションにて連載が始まり、2024年3月に日本の書店で先行発売されました。今回は武田登竜門先生と「DOGA」について語っていきます。
日本連載発表時のイラスト
①漫画界の新星・武田登竜門先生が漫画家になるまでの道のりと「DOGA」の誕生
武田登竜門先生は読書と絵描きに没頭する子供時代を過ごしました。2018年から独学で漫画の描き方を覚え、同人誌即売会コミティアで同人誌を販売していました。一番注目された同人誌は一次創作「BADDUCKS」ですが、完結までの900ページをたった2年間で描き下ろしました。
2021年にpixivで当作を読んだKi-oon編集者・キムはこの物語に魅了され、武田登竜門先生に連絡したという経緯があります。初めての打ち合わせの際に武田登竜門先生がキムに見せた絵の中には、サイボーグと女性の後ろ姿が…後に「DOGA」の主人公となる二人組が色鮮やかに描かれていたのです。つまり、武田先生はすでに「DOGA」の基盤となるキャラを思いついていました。
先生が初めて描いた「DOGA」のイラスト
左と右:企画立案初期段階イラスト
企画設定資料例
その絵をスタート点にキムと武田登竜門先生は企画を立ち上げました。武田登竜門先生にとって、一人で完成させた前作と違い、初めて出版社と協力しながら長編漫画を作る経験となります。ちょうどKi-oonで「DOGA」企画が始まっていた頃、武田登竜門先生は同時に双葉社と手を組み、「BADDUCKS」商業本発行の準備を進めていました。発売前、webアクションに「大好きな妻だった」という読み切りも掲載され、わずか2週間で100万PVを突破しました!双葉社にとっても武田登竜門先生は期待の星となりました。
そんな流れの中で、2023年からKi-oonのオリジナル作品「DOGA」がWebアクションで発表されました。しかし、フランス語版は2024年に発売されました。なぜフランスより先に日本で連載されたのでしょうか?
左:「DOGA」第1巻/右:第1巻プロモーションイラスト
身体を失った青年「ヨーテ」と雇われた怪力の少女「ドガ」。
貴族と庶民、ちぐはぐの二人は奇蹟の「海」を目指す――。
『BADDUCKS』『大好きな妻だった』の武田登竜門、商業初連載となる長編ファンタジー、開幕!
②日本人作家とフランス及び日本の出版社の親密なコラボの成功例
武田登竜門先生はKi-oonと「DOGA」で長編漫画制作において信頼関係を築きながら、「BADDUCKS」商業本化の件で双葉社の頼もしいサポートを経験しました。両社の作家に対する向き合い方が気に入り、フランスと日本の二社と同時に縁を結び固めていきました。
一方で、Ki-oonは双葉社と昔から縁があり、双葉社の名作「王様ゲーム」がKi-oonによりフランスで刊行されヒット作品となりました。作画担当者がパリの大規模な漫画イベント・ジャパンエキスポに招待されるくらいの話題作です。
こうした経緯もあり、以前から両社の間には信頼関係がありましたが、今まではKi-oonの方が双葉社のライセンス、つまりフランス語版を刊行する権利、を許諾してもらう側でした。実は、双葉社が刊行した「BADDUCKS」商業版もその中の一例です。
日本で2022年6月に「BADDUCKS」の商業版が完結したため、双葉社は自然と武田登竜門先生の次回作「DOGA」に強い興味を示しました。ライセンス購入の場合、本来ならオリジナル版(「DOGA」の場合はフランス語版)が出た後に、売れ行きや現地での話題性を確認した上でオファー条件を検討します。しかし、こうした通常のやり方に則った場合、「BADDUCKS」仏版完結後に予定されていた「DOGA」の発売、つまり2024年を待つことになります。
そこで、日本の読者を待たせたくない武田登竜門先生と双葉社の意思もあり、Ki-oonにとって前代未聞の手を使い、未刊行の作品のライセンス許諾に初挑戦しました。先に日本語版が出ると、Ki-oonはある程度日本の連載ペースに合わせ制作をすることになりますが、一方で先に日本語版を出してもらうことでフランスでも注目される可能性が高くなります。
「DOGA」をフランスの出版社と日本の作家で制作し、日本の出版社に先行連載してもらった後にフランスで発表する、このパターンは大変珍しいです。それが成功したのは、武田登竜門先生、双葉社、Ki-oonの間の絆とお互いを理解し合う姿勢のおかげです。
2024年3月に日本語版単行本が発売され、2ヶ月後にフランス語版単行本が発売されました。 フランスと日本を両柱にしている武田登竜門先生は作品作りにどう挑んでいるのでしょうか?
③先生特別インタビュー
ー 漫画家を目指そうと思われたキッカケを教えてください。
武田登竜門先生:気がついたらなっていました。強いて言えば「漫画を描いてお金をもらう仕事、向いているのかもしれない」と思ったのが商業作家へ転身したきっかけです。
ー 影響をうけた作品(漫画に限らず)がありますか?
武田登竜門先生:絵柄で言えば「北斗の拳」とか「ジョジョの奇妙な冒険」とか、寺田克也さんのイラストとかです。
ー どういうポイントで取引先(出版社・編集部)を選ばれたか教えてください。
武田登竜門先生:私の作品の特徴・良さを理解した上で、話をきちんと完結させてくれる、また紙の本を出版してくれる、制作ペースが月刊誌ペースである、以上の条件で決めています。
ー フランスの出版社(Ki-oon)に声をかけられた時はどう思いましたか?
武田登竜門先生:聞いたことのない部署からメールが来たぞ!と思いました。笑
友人からは「海外でもウケそうな漫画」と言われていたので特に疑問は感じませんでした。
ー なぜフランスの出版社と組むことにしましたか? 制作にあたって日本の出版社さんとの違いがあると感じますか?
武田登竜門先生:フランスの出版社というか、Ki-oonに関してですが、ラストの展開まで吟味して連載を決めてくれて、かつ紙の本をしっかり出版してくれるところが魅力的だと思ったからです。日本では見切り発車で連載して打ち切り、紙の本が出ない、ということは少なくないので、そこが違いであり、魅力でもあると思います。
ー 漫画制作時、日本とフランス両国の読者にむけて意識した制作ポイントがあれば教えてください。
武田登竜門先生:フキダシを円に近くすること、それ以外は特に変えていません。もともと特定の集団だけでなく幅広い人が理解できる漫画を描くのが好きなので、このスタイルが向いていたのかもしれません。
ー Ki-oonの担当編集から受けた印象深いアドバイス(漫画制作ノウハウや取り組み方など)を教えてください。
武田登竜門先生:「今回のネームで武田登竜門先生が何をしたいのか全然わかりませんでした」と言われたことです。後にも先にもこれ一回きりでしたが、自分でも内容を整理できていないまま提出したのがバレたな、と思いました。
ー 「DOGA」をどのように思いつきましたか?
武田登竜門先生:最初は首なしの機械の体と首(本体)というバディを思いついたのですが、色々考えていくうちに、世界の設定や魔法についてのアイデアが湧き、今の形になりました。 若い主人公たちを描いたことがなかったので挑戦してみようと思い、今の形になりました。
ー 主人公のドガとヨーテは武田登竜門先生から見てどのような人物ですか?個性をどのように作りましたか?
武田登竜門先生:二人とも無知で純粋である程度楽観的、ですが二人とも異なる絶望を知っている、という感じです。キャラクターの個性は描くうちにどんどん定まっていきます。子供がどんどん成長していくような感じでしょうか。これから二人がどうなっていくのか自分でも楽しみです。
ー 魅力的なキャラにするためにどのようなところに気をつけていますか?
武田登竜門先生:見た目を好みにすることですかね。ドガは見た目が個人的にドンピシャです。あとは男性を困らせるのが好きです。そこに魅力を感じます。
ー 全体的に漫画を描くことにあたって心かけていることが特にありますか?
武田登竜門先生:回収するべき伏線をあらゆる場所に散りばめることと、常に読者を驚かせる要素を入れることです。あとはなるべく丁寧に絵を描くことです。
ー 今回の長編漫画制作に関しては「BADDUCKS」や短編を制作していた頃と変わった点がありますか?
武田登竜門先生:編集さんがついているという点が大きく違います。制作過程で話し合いをした経験があまりないので、毎回の打ち合わせが興味深いです。
ー 日本での発売の時とフランスでの発売の時はどんな気持ちでしたか?
武田登竜門先生:日本での発売は、短編集発売以降久しぶりの新作だったので「お待たせ!」という感じでした。フランスでの発売は、「"BADDUCKS"より面白いと思うよ、読んでね!」という感じでした。
ー 漫画家になりたい方々へのアドバイスがあればぜひ教えてください!
武田登竜門先生:いいものを描いていれば、誰かが必ず見つけてくれます。
只今漫画企画募集中です! Ki-oon編集部との漫画制作に興味がありましたら
・ストーリー
・世界観とキャラの設定資料
・完成したページ(最低限一話目)
をまとめ、メールアドレス又は郵送で送ってください。
東京オフィス連絡先
住所:〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2-2-2
日本橋本町YSビル2階 フランス商工会議所内
メール:mochikomi@ki-oon.com
電話番号:03-4500-6668
Ki-oonマンナビページ
東京オフィス公式TWITTERアカウント
東京オフィス公式Instagramアカウント
東京オフィス代表・キムのDAYS NEO プロフィール
Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ)
記事制作協力:Ki-oon