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2020年7月10日

【プロの視点】学生さん作のマンガにプロがアドバイス。ノウハウと熱いメッセージに感激

2020年1月9日~4月27日まで、マンガ家を目指す学生を対象に開催された『国際コミック・マンガスクールコンテスト2020』の審査結果が発表されました。

国際コミック・マンガスクールコンテスト2020』、3回目となる今年は69の国・地域から800校を超える学校が参加し、多くのマンガ作品が集まりました。協賛社として、集英社・KADOKAWAなど大手出版社が参画、公益社団法人日本漫画家協会の後援も入り、学生を対象とした国際コンクールとして類を見ない規模で開催されました。

受賞作品には審査員・協賛各社のプロフェッショナルの目線からアドバイスが贈られました。具体的なアイデアや、マンガを制作する姿勢、考え方など、熱いメッセージが数多く寄せられ、参加した学生からは感激の声が寄せられているとのことです。

受賞作品はセリフを日本語や英語など各言語に翻訳された後に全世界へ発表され、賞金や副賞も贈られました。参画した各社のメディアからは、デビューに向けた学生へのコンタクトが始まっています。

国際コミック・マンガスクールコンテスト2020』を通じて世界でどのような作品が描かれ、それに対してマンガのプロフェッショナルは何を感じ、どんなフィードバックを贈ったのか。モチベーションが刺激されること受け合いです。具体的に見ていきましょう。

審査員総評

画像をクリックするとYouTubeに移動して審査員の講評を視聴できます。

《株式会社KADOKAWAグローバルコミック誌  梅澤 淳》
今回審査させていただき、世界各国にはいろんなマンガがあることを改めて実感しました。それと同時に、世界の色んな国にこれだけマンガを描いている人がいるんだなとわかって、大変嬉しく明るい気持ちになりました。
そんな世界のいろんな国々のマンガ作品ですけど、私がマンガ作品で一番大事に思っていることは、読んでいる読者の心を揺さぶるということだけだと思います。カッコいいとか可愛いとか怖いとかシンプルな理由でいいんですけど、読んでいる人の心を刺激するということが大事な要素じゃないかなと思います。そういった意味では、今回審査させていただいた作品は非常に刺激に満ちた作品ばかりで私の気持ちも大きく動きました。人を楽しませたいという気持ちは世界共通だと思っています。ぜひ、その気持ちを忘れずに受賞者の方々の今後の活躍を期待しています。

《株式会社コルク代表取締役  佐渡島 庸平》
僕は元々、講談社のモーニングというマンガ雑誌の編集者をしていました。そこでドラゴン桜、宇宙兄弟という作品の編集を手掛けました。今はコルクというクリエイターのためのエージェント会社の代表で、マンガ専科というマンガの学校自体を主催し、たくさんの新人漫画家の育成にあたっています。
今回はみなさんに作品を送っていただき、それを拝見させていただいて、ありがとうございました。まず、世界中のいろんな国から作品が集まっていて、どの作品も絵柄がそれぞれの国らしさ作家さんらしさがあって非常に絵柄ペンの入れ方、色の塗り方が特徴的で魅力があるなという風に思いました。どの作品もしっかりと描きあげてあって楽しく拝見しました。
新人の時にすごく重要なことは、どんな感情を伝えたいか、その感情を伝えるために、前後にはどんな感情が描かれているとよいか。多くの新人の人はどんな出来事を伝えよう、ということを考えます。でも、その出来事は主人公に感情を引き起こすために存在します。なので、どんな感情を伝えたいかどんな表情をしているキャラクターを描きたいかというのを描き始めるとき、もしくは描いている途中にしっかりと決め切ってほしいです。その決め方がうまくいっている作品それがしっかりと決まっていて、あぁこのコマが描きたかったんだなこの表情が描きたかったんだなと読者に伝わる作品が良い作品かなと思っています。
そういう意味でいうとどの作品もすごく魅力的なストーリーで魅力的な絵柄だったが、どの感情を伝えたいかというと、実はちょっとずつぼやけているものが多かったかなという印象です。TwitterやInstagramなど長く載せることができない、短いSNSをつかって、そこに自分の描きたい感情を載せてみる、そして、それが多くのフォロワーに伝わるのかということを確認するというのをやってみてほしい。
今回は世界中のみなさんの作品を読ませていただいて非常に光栄でした。ありがとうございました。

《DC Comics artist Javier Fernández》
去年と比べてエントリーが非常に多かったです。同時に応募作品のクオリティも驚くほど高くて、プロのコミックアーティストとしても「これはすごい!気合を入れないと。」と思いました。レベルで言えば、参加者の多さに引けを取らない、高品質の作品が沢山ありました。作品審査が本当に難しくて、客観的、批評的な審査をしつつ、個人的に贈りたい点数を加味する必要がありました。
(テーマに対して)驚きましたね。難しいテーマだったと思います。「約束」というテーマは展開する余裕があまり無いと思いがちですから。友人同士とか、限定的すぎる設定になってしまう危険がある。だけど、皆さんがここまでテーマを広げられたのは素晴らしいです。少し制約が厳しいと思っていました。だけど、提出された作品を見るとわかるように、作者全員、テーマを思うままに描き切っています。提出された作品を見ればわかります。
参加者の皆さん、最後にお伝えしたいことがあります。今回、グランプリ、部門賞、入賞を選び、講評するのはとても大変でした。今年のレベルがあまりにも高かったためです。なので、プロとして生計を立てていて、ひたすら絵を描き続けている僕から、1人1人に「おめでとう!」と言わせてください。僕は素晴らしい未来をここで見ました。本当におめでとう、そして創り続けましょう。本当に素晴らしかったです。

《株式会社集英社 平塚 修一》
バラエティに富んだ国からたくさんの作品が寄せられ、とても刺激のある審査でした。今回のテーマが「約束」ということもあり、審査の上では「人間、キャラクターの心情・表情が魅力的に描けているか」を最も重視しました。登場人物に魅力を感じず、別に話がどうなっても興味ないよと読者が思ったらそこまでです。特に今回のような短編の場合は、キャラクターをいかに短時間で魅力的に見せるかが読者を引き込む鍵になります。描きたい絵や話があることはもちろん大切なことですが、そこに加えてキャラクターを命あるものとして魅力的に演出する意識を高めると、よりよくなる作品が多かったように思います。


以下は今回の国際コミック・マンガスクールコンテストの総合グランプリや各部門賞を受賞した作品になります。作品を通じて審査員の方々はどのように感じ取ったのかそれぞれコメントが書かれています。

『Our Grand Station』
ペンネーム: Caoqian(United States of America)
学校名: The School of the Art Institute of Chicago
言語: 英語



KADOKAWAから、作品に対する詳しいアドバイスが書かれています。

●平塚 修一(集英社)
熱の入った描き込みから生まれる、独特の作品世界が魅力的です。擬人化した動物たちを登場人物とすることで、画面的にもストーリー的にも重さと軽さのバランスがうまく取れていると思います。また、人間ではないキャラクターの感情・表情もよく描けていますし、一枚の絵としても心惹かれるコマがあったりと、多才さを感じました。
●佐渡島 庸平(コルク 代表取締役)
この方はデザインセンスがすごくある。
●集英社
動物のキャラクターとシリアスな世界観がマッチしており、抜群の雰囲気の良さでした。何度も読み返したくなるような、不思議な感傷がありました。
●KADOKAWA
荒々しいペンタッチで描く、シンプルなキャラクターが唯一無二の世界観を表現している。印象的なシーンをカラーで描くアイディアも良い。
●ソルマーレ編集部 (NTTソルマーレ株式会社)
登場するキャラクターたちがとてもかわいく描かれており、優しさやあたたかさを感じます。コミカルなキャラたちですが、背景までしっかりと描かれており物語世界観をしっかりと表現できています。 外界との境界に電車を使うなどアイデアもよく、ラストの旅立ちからあたらしい物語への期待も膨らむよい作品になっています。
●J-POP Manga
私たちの間ですべてのカテゴリーの中でトップを獲得しています。素晴らしいコンセプト、素敵なスタイルです。


『Eda & Roach』
ペンネーム: Madita Schwenke(Germany)
学校名: University of applied science Hamburg
言語: 日本語


●Javier Fernández
絵も色も繊細で自然に仕上がっています。回想に深さを演出することに重点を置いてみるといいかもしれません。例えば、カメラに近いものは少し彩度を上げて、遠いものは少し彩度を下げる等です。ですが、それを差しひいても美しい作品です。
●佐渡島 庸平(コルク 代表取締役)
この世界に入り込みたいと思うきれいな画だと思います。
●Wacom
不毛な荒涼とした環境の中で、美しい緑とオレンジの色使いで描かれた希望と命を描く、抵抗の物語です。
●株式会社アムタス
ひとつのお話としてよくまとまっていると思います。2人の絆がよく描かれていて面白かったです。
●Glenat
作画、物語性ともクオリティが高く、独自のスタイル貫いています。


『原諒 Forgiveness』
ペンネーム: 小河少年(Taiwan)
学校名: 朝陽科技大學
言語: 日本語



KADOKAWAから、作品に対する詳しいアドバイスが書かれています。

●佐渡島 庸平(コルク 代表取締役)
重いテーマを描こうとするチャレンジが作品から強く伝わってきました。
●平塚 修一(集英社)
感情の流れをコマ割りと演出でよく表現できている作品だと思います。全編を通じて叙情的なムードはとても魅力的でした。一方で、ドラマの構成が一人語り中心なものになっており、登場人物の物語が進展した、という感じに乏しかったように思います。2人の人物がそれぞれモノローグする、という構成よりは、どちらか片方に視点を絞った方が物語に動きが出たのではないかとも思いました。
●KADOKAWA
情景描写などの雰囲気作りが上手い。重いテーマにも関わらず、まっすぐに描いている点に好感が持てる。
●集英社
キャラクターの描き方と、全体を通した雰囲気の美しさによって、確かに希望と未来を描き出せている。この表現力を高く評価します。
●ソルマーレ編集部 (NTTソルマーレ株式会社)
現代社会において身近に起こりうる題材を取り上げており、読み手に考えさせる内容となっています。全体的には、みやすい絵柄とコマ割りがよくできています。亡くなった生徒と主人公にどのような接点や関係があったのかをもう少し描くことで、主人公の後悔の念と果たせなかった約束、なぜ教師になろうと思ったのかなどが読者に伝えられると思います。
●Ko-fi
目を見はるようなイラストで描かれた作品でした。仲間について考えさせられる青年期における最大の挑戦とそこから学ぶ教訓を含む物語に魅了されました。喪失感の強さ、そしてそこから学べる教訓を見事にとらえた作品です。
●里中 満智子
重いテーマだが、現代の大きなテーマの一つでもある。ごく自然に感情表現がされていて、主人公のモノローグだけで進行しているのに、それを感じさせない自然さがある。完成度が高い。


『Charlotte』
ペンネーム: cloud7(United States of America)
学校名: Leland High School
言語: 英語


●Javier Fernández
これは感慨深いです。大きな物語性がある作品であることは別として、私はサイレントコミックが好きなのですが、それは明確なアイデアやコンセプトを伝えるためです。この作品は間違いなくその好例です。言葉がなくても読者をさらって、予想外の展開を見せる。この作品を読んで私は本当に感動しました。
●平塚 修一(集英社)
幸せも不幸せも含め、いろいろなことがあった人生をセリフ少なくドラマチックに描けている前半、そして意外性のある後半の展開と、物語性が高かったと思います。温かみを感じるファミリーのシーンの画面もとてもいいですが、特に雪が降ってからのシーンは物語ともリンクして哀しく美しかったです。キャラクターの表情もそれぞれよく描けていたと思います。
●Wacom
感動的な物語でありながら、最後のひねりまで丁寧に仕上げている。
●KADOKAWA
ストーリーのテンポがとてもよく、セリフがなくても事情がはっきり伝わっている。ラストの展開は意外だったが、振り返ってみれば「なるほど」と納得できる。優しい絵柄だけに胸に残る作品になっている。
●集英社
こまやかな感情な流れをwebtoonならではの表現で書いており、長い映画を見終えたような、充実した読後感でした。縦の使い方の遊びも見事でした。
●Glenat
シャルロッテの正体が少しずつ明らかになる手法が巧みでした。


『MIDSUMMER TRAVELER』
ペンネーム: Echo(China)
学校名: 武汉纺织大学
言語: 日本語



ソルマーレ編集部 (NTTソルマーレ株式会社)から、作品に対する詳しいアドバイスが書かれています。

●佐渡島 庸平(コルク 代表取締役)
絵の迫力がすごい。これが作品集として自分の家に置いてあるだけでうれしいと思います。
●平塚 修一(集英社)
全体的に幻想的な雰囲気があり、作品の世界に引き込まれました。中国と思われる街並、古い家の中、自然の風景など、どこかこの世のものではないような独特な色彩感覚で彩られており、絵としての魅力が強い作品でした。
●Wacom
才能あるアーティストのペンで描かれた、母と娘の緊張した関係とつながりの感動的な物語。
●集英社
画力、雰囲気、短い中での話の展開、どれをとってもよかったです。一つ一つのコマが絵になっていて、そこから別な物語が膨らんでいくようでした。
●J-POP Manga
興味深いアナログタッチ、そして個人に焦点をあて、素晴らしいストーリー設定と雰囲気を兼ね備えた作品。
●Ko-fi
一コマ目から魅了され、感情にうったえる視覚的な旅ともいえる作品でした。美しい色彩と遠近法に導かれ、自分探しと絆の旅に没頭しました。
●株式会社BookLive
娘が欲しいと願っていた母の少女時代。癌を患った母の姿しか知らない娘が、溜池の向こうの不思議な世界で、少女時代の母と対面するファンタジックな描写が美しく、表現力のある作品でした。主人公の少女が不思議な世界に入る前に、現状の母との状況をもう少し丁寧に描いていると、主人公の涙の意味がもっとしっかり伝わったと思います。


『Youth Promise』
ペンネーム: SHeyll(France)
学校名: Human Academy Europe
言語: 日本語



東京ネームタンクから、作品に対する詳しいアドバイスが書かれています。

●佐渡島 庸平(コルク 代表取締役)
表情がいきいきしています。
●平塚 修一(集英社)
キャラの造形はよかったのですが、元のネームにあった起伏を少し削いでしまっているように思いました。7P目のラストのコマでは、お互い昔の約束なんて相手は覚えてない、だから待ち合わせの場所になんて行かない、と読者をある程度ミスリードしないとラストの意外性がなくなってしまうように思いますが、現状表情で半ばネタバレになっており、その結果最終ページのすわりが悪くなっていると感じます。
●集英社
人物の可愛らしさがよく出ているなと思いました。最終ページの余韻もよく、余白の残し方にセンスを感じました。
●KADOKAWA
キャラクターの表情がよく描けており、心の動きが読み取りやすい。コマ運びもテンポがよく軽快。
●ソルマーレ編集部 (NTTソルマーレ株式会社)
ネームに沿った作画がしっかりとできており、キャラクターの表情が豊かに描かれています。ラストもそうですが、成長した姿がやや子どもっぽいままなのが少し残念。10年という時の流れによる変化、子どもと時と変わらぬ表情の時もあると思いますが、真剣な表情を見せ成長した姿をみせるなど工夫するとよりよいと思います。
●株式会社BookLive
表情のパターン数が多く描けていたと思います。4p1コマ目は自慢気な表情ですが、明確な喜怒哀楽などのわかりやすい表情ではない場合、キャラクターの個性により多彩な表情を描き分けなければならないので、作者の力量が試されます。創意工夫してください。2p5コマ目、最初に登場する大人になった女性の正面顔は、子供時代と区別するため、4p3コマ目のように鼻は描いてあった方がいいかもしれません。ラストの表情は、2pから7pまでの二人の葛藤の末、結局どう変わったかを見せてほしかったです。それぞれがどういった決断をして約束の場所に来たのか、“男性の照れ隠し”というわかりにくい表情だったのが残念でした。未来を予感させる答えがほしかったなと。



今回ご紹介した作品以外の、すべての受賞作品と審査員の講評が公式ページに掲載されています。
『国際コミック・マンガスクールコンテスト2020 公式サイト』