別冊マーガレット編集長が答える!マンガ賞や持ち込みの疑問
別冊マーガレットは集英社が発行する、小学生からOLまで幅広い世代が楽しめる少女コミック誌です。『君に届け』『アオハライド』『俺物語!!』などアニメ・実写化された人気作品をいくつも輩出しています。
新人育成にも力を注ぎ、毎月開催される『別マまんがスクール』やグランプリ受賞者に本誌連載が確約される『別マ新人まんがグランプリ』といったコンテストを定期的に開催し、新人がチャレンジできる環境を作っています。また、昨今のコロナ禍の状況でも気軽に持ち込みができるよう『オンライン持ち込み』もスタートし、自宅からでも簡単に編集者のアドバイスを受けられます。他にもTwitterにて『質問箱』を開設し、別冊マーガレット編集長自ら漫画家の悩み相談を受け付けています。
今回はその質問箱の中から皆様も悩まれているだろう質問と回答をまとめさせていただきました。中々聞くことができない編集長からのアドバイスを見て、自分自身の漫画制作に活かしてみましょう!
●別冊マーガレット
●マンガ賞
●持ち込み
●漫画家を目指したい
※選択後、該当箇所まで遷移します。
別マに載ってる漫画(過去現在問わず)が好きな人が向いてると思います。読者と一番好みとか波長が合ってると思うので。あとは「青春のきらめき」とか「恋愛のときめき」と聞いてワクワクするような人が向いていると思います。
基本的には中高生の女の子を想定していますが、実際は幅広い読者層に支持されています。実際の年齢よりもマインドや気分の問題なんだと思います。編集部で「こういうコンセプトで」という合言葉のようなものは特に決めてませんが、人を好きになることの楽しさや美しさみたいなものを求めて読んでくれている人が多いと思います。
「少女漫画」といっても幅が広すぎるので、ここでは少女漫画の主流である「恋愛漫画」について個人的な意見を述べたいと思います。
僕は入社10年経ってから初めて少女漫画誌(別マ)に異動してきました。そこで初めて「恋愛漫画」と本格的に向き合うことになったのですが、正直に言えば最初はナメてました。いわゆる「少女漫画」もほとんど読んだことがなく、「色恋沙汰」という言葉に象徴されるように「恋愛」を軽く見ていたんですね。ところが色々と名作や人気作と言われるものを読んだり、実際に自分が担当編集として関わったりして、その先入観は簡単に崩れ去りました。
誰かを好きになったり憧れたりするのって、何をカッコいいと思うかと同じく、その人のアイデンティティに深く関わるものなんです。フラれたときには自分の全人格を否定されたような気持ちになり「自分に何が足りなかったか、欠けていたのか」と深く自分と向き合ったりしますよね。「恋愛漫画」って、単に「誰と誰がくっ付いた」「惚れた腫れた」なんて単純なものではなく、人間という生き物に対する深い洞察や内省的な思考が求められるものなんです。そして「そういうことについて私はこう思う・感じる・考える」みたいなものが作家性で、人によって様々です。そういうことに気づいてから、少女漫画に携わるのが面白くなってきたので、それが「少女漫画としての面白さ」だと思います。
こんな風に書くと小難しいものを求めてるように受け止められてしまいそうですが、全然そんなことはないです。あなた自身が「私はこういう人をカッコいいと思う」「こんな恋愛に憧れる」「こんなときに胸がときめいた」と思ったものを“正直に”描いてみてください。「みんなが好きそうだから」とか「流行ってるから」というのもアリですが、そこにきちんと「だって自分も好きだから」がないと簡単に見破られてしまいます。漫画は「人の心を動かす」ことが大事で、そのためには「自分の心も動いてる」ことが検品作業として必要なんだと思います。
まず作品を評価する際は、最初から「絵はどうだろう? ストーリーはどうだろう?」みたいに部分的に評価はせず、全体の印象で「面白いかどうか?」で判断することが多いと思います。細部の評価は、全体の印象が「もう少し食い足りない感じがするな」というときに、どこに原因があるのかを考えるために必要になってくるという感じです。
絵に関しては、細かなデッサン力よりも、少女まんがなので「華やかさ」や「かわいらしさ」が大事だと思います。その「華やかさ・かわいらしさ」が何から生まれるかを考えた上で、具体的な方法・技術の話になってきます。
ストーリーについては、結局は「何を描こうとしているか、伝えようとしているか、面白がろうとしているか」を汲み取ったうえで、その表現方法が適切かどうかというジャッジになると思うので、一概に「こうすべき」みたいな言い方は出来ないです。敢えていうなら、見せ場は作れているかとか、導入は読者の興味を引くように作れているかとか、そんな感じではないでしょうか。ひとつアドバイスをするなら、物語の進行とともに、主人公の感情(恋心、不安、緊張、恐怖など)が徐々に大きくなっているかどうかを考えると良いと思います。脚本術の本などに「主人公を追い込むと話が面白くなる」と書かれていることが多いのはそういう意味です。"
まず投稿されたすべての作品を編集部員が手分けして読みます(一次選考)。そこで選考された作品を全編集部員が回覧した後にデビュー者決定のための会議を開きます(二次選考)。この会議は編集部員が全員参加します。デビュー者決定のための会議は毎月上旬に開かれるので、連絡もその時期になります。受賞者への連絡は、基本的にはデビュー者の方のみですが、担当が付いてる投稿者の方へは個別に連絡がいくと思います。
短いページ数だから簡単に思えますが、16Pに話をまとめるのって実は結構難しいんですよね。まずは、シーンやセリフ、気づきなど、何が一番描きたいのかを整理することから始めてみると良いと思います。他の方からの質問への回答にも書きましたが、出会いから恋愛成就までをすべて描こうと思うと16Pでは収まり切りません。物語全体のどこを切り取るかがポイントになります。短い話を長くする(膨らませる)のは簡単ですが、長い話のどこを切り取ればお話としてまとまるかを考えると構成力が養われます。頑張ってください!
別マで描いて頂いていた元漫画家さんや、別マで働いていた元編集者の方などに手伝って頂いたりしてます。その熱量に編集部員も驚かされます。私が入社する以前、大昔の話になりますが、ある投稿者がスクールで落選してしまいました。ところが批評シートをお願いしていた方から「この人は絶対デビューさせた方がいいよ」と言われデビューすることになったそうです。その投稿者はその後、彼女がいなければ、少女漫画の歴史が間違いなく変わっていたと断言できるくらいのレジェンド中のレジェンドになりました。批評をお願いしている方々は、そういった慧眼の持ち主です。批評用紙を受け取った方は是非熟読してください。
新人まんがグランプリへの投稿は、開催時期によってバラつきはありますが、全部で80~120本くらいの応募があります。ネーム部門への投稿が一番多いですね。まんがスクールは毎月20~30本くらいです。新人まんがグランプリは3か月に一度なので、月平均にすると同じくらいですかね。毎月何名というような枠は設けていないのでデビューの基準は同じです。
新人まんがグランプリは今月末が第4回の締め切りですが第5回からは新たな部門を新設します。来月13日発売の別マ3月号、もしくは同日更新の公式HPをご覧ください!
「まんがスクール」と「新人まんがグランプリ」で特に審査基準を変えてはいないです。画力や構成力なども参考にしますが、そういった技術はある程度描き続けていけば段々と成長していくものなので、投稿段階ではそれほど気にしません(勿論技術が高ければ評価は上がりますが)。それよりも、その人が「描こうとしているもの・イメージしているもの・面白がっているもの」を出来るだけ汲み取って見るようにしています。
投稿作を評価する際は主に次の3つのポイントを見ています。①画力 ②物語を作る力(構成力) ③センス(描こうとしているものが面白いか、オリジナリティがあるか)。他にもいろいろと細かいポイントはありますが、まずはこんな所です。それぞれの賞に差がつくのは完成度の差ですね。
審査基準を変えてるつもりはないですが、ページ数の多寡によって扱える内容にも違いが出てくるので、それによる所が大きいのかもしれません。
他の投稿者の方が、自分の立ち位置を知る参考になればと思い掲載しています。「自分と同い年の人は、このくらい描けるのか~」みたいな感じで。
デビューが決まり雑誌に掲載されたものは基本的にはSNSに上げないで欲しいです。ただし別マでは投稿者に幅広く読んでほしいので、デビュー作は別マHPで公開しています。それ以外のものはSNSに上げて貰っても構わないと思いますが、いちおう担当にひとこと言って貰えると有難いです。
見て欲しいというのであれば見ますよ。持ち込みの際にそのように言ってください。数は多くないですが担当は持ってます。
だいたい覚えてますよ。まんがスクールや新人グランプリのの選考会議では、よく「前回の投稿に比べてどうなったか」といったことが話題になります。
持ち込みの場合は、持ち込みを受けた人間が担当につきます。スクールや新人賞などに投稿して貰った場合は、希望者が担当につきます。担当希望が複数いた場合は当人同士の話し合いによって決まります。
全然遅くないですよ! 咲坂先生は色々なインタビュー記事で話してますが、いったん就職した後に「通勤電車が大変なので家で出来る仕事がしたい」と考え、そこから漫画を描き始めたそうです。詳しくは好評発売中の『思い、思われ、ふり、ふられ フィルム&イラストレーションズ』の中のインタビュー記事を読んでみてください。巻末に掲載されている河原和音先生との往復書簡も多くの漫画投稿者・別マ志望者に役立つ内容だと思います(宣伝でした)!
数的には圧倒的に女性の方が多いですが、男性もいます。男性だから不利になるということもないですが、もしあるとすれば少女漫画の摂取量(知識・感動体験)ですかね。でもそれも性差というより個人差なので気にしなくて大丈夫だと思いますよ!
今の年齢がいくつなのか書いていないので分かりませんが、地道に絵の練習を続けているのは立派だと思います! 質問に対するお答えですが、最初から完璧を求めず、今の自分がどのくらいの位置にいるかを確認するためにも投稿することをお奨めします。
どれも大事だと思いますが、あえて順番を付けるとすれば ②>①>③>④ といった感じでしょうか。②の「話の上手さ」というのはキャラ作り含めてのことで、①「絵の上手さ」というのは単にカッコいい男の子・かわいい女の子が描けるといったものではなく、演出・構図を含めてのことです。④の「筆の速さ」は締め切りを守ってくれさえすれば遅くても問題ないです。
サービス精神があるのはとても良いことだと思いますが、サービス精神と読者をバカにすることは紙一重です。「みんなを楽しませたい」は「みんなどうせこういうの好きでしょ?」になってしまう危険性があるんですね。そういうものを読者は敏感に嗅ぎ取ります。その二つを分けるのは「自分もしっかり楽しんでいるかどうか」だと思います。「みんなもきっと好きだし、自分もこういうの大好き!」って気持ちが大事だと思います。
経験の有無はあまり関係ないと思います。大事なのはキャラクターになりきって考え、作品世界に没入することです。「自分がこの立場だったら」「この人だったら」と想像力を最大限発揮して、自分にとって「本当のこと」を描くことが大事だと思います。
優秀な刑事は「犯人の行動を推察する」のではなく「犯人になりきって考える」んだそうですが、それと同じことだと思います。
映画・演劇の世界では、このようにキャラと自分の内面を同化させる手法を「メソッド演技法」と呼んでいるそうです。いわゆる「役作り」と言われるもので、漫画を描く際にも大事な作業過程だと思います。
20年、30年描いてるという方も担当させてもらいましたが、そういう方たちに共通しているのは「“面白さ”に対する貪欲さ」ですね。研究熱心が旺盛で、新しいものを積極的に取り入れてる印象です。それはプロ意識の高さでもあるんでしょうが、漫画を描くことを心底楽しんでいるんだと思います。いくらプロ意識が高くても楽しくなければ長く続けるのは難しいですよね。「好きこそものの上手なれ」ということだと思います。あとは人間という生き物に対する好奇心の強さ。よく「好奇心が大事」と言われますが、それは世の中や他人に対してだけでなく、自分自身に対してもです。なぜ自分はそう思ったのか、感じたのか、考えたのか。漫画って結局は「人間の心を動かすもの」であるので、どうやって人間の心を動かすものを描くかを考える際に、一番のサンプルは自分自身なんですよね。
ここでひとつ知っておいて欲しいのが、人間は思っているほど自分のこと(自分の心に何が起こっているか)が分かっていないということです。ある有名な歴史学者は「経験する自己」と「物語る自己」を分けて考えることが大事だと言っています。感動や恐怖、興奮などの生理的現象に、どういう名前を付けるかによって、その生理的現象の意味が決まってくるといった意味です。先ほど別の質問の回答に「面白さの要因を深掘りして考えましょう」と書きましたが、それと似たようなことです。「辛くて美味しい」と感想を言葉にした瞬間に、「じゃあ辛い物を作ってみよう」となってしまいますが、実は美味しさの秘訣は別なところにある可能性もあるわけです。自分の心を動かしたものが何であったかを慎重に言葉にしないと、再現する際に間違ってしまうということですね。これについては『「カッコいい」とは何か」(平野啓一郎著・講談社現代新書)に詳しく書いてあるので、興味のある方は是非読んでみてください。
昔ある漫画家さんがおっしゃっていた「あらゆるものを疑ってかかる懐疑精神と、あらゆるものを受け容れる寛容さを持ってください」という言葉です。懐疑精神は物事の本質を見極めるのに必要で、寛容さは、独善性を避け、多様性を身につけるのに必要なんだと思います。
上記の質問回答の他にも、賞/コンテスト/コンクールの疑問や漫画家を目指す上での悩みなど、多くの質問に回答されていますので、是非そちらもご覧ください。質問箱はこちら!
■別マまんがスクール
毎月月末締切で開催中の漫画賞!人気まんが家への最速ルート!豪華賞品&きめこまかいサポートであなたをデビューまで導きます!『別マ』で未来のスターを目指そう!!
初投稿の方にはデビュー応援グッズプレゼント!
★インタビュー集「ペン子のまんが家さんに会いたい!」
連載作家の創作の秘訣を大公開。この本でしか読めない内容です!
★香魚子先生による「モモ先生とヒナちゃんの実践まんが塾」
作画やストーリーづくりをまんがで学べる小冊子。人気作家のまんが道具もご紹介☆
★別マ連載作家による「プレミアム作画DVD」
ここでしか見られない!プロの作画テクニックを手元から撮影した永久保存版!
★別マ連載作家による原寸大原画見本集
作画テクニックのワンポイント解説つき美麗原画見本集です♪
詳細はコチラ
■別冊マーガレット オンライン持ち込み受付スタート!
専用ページから作品データを送るだけ!
メールか通話(電話、LINE、Zoom、Skypeなどで)でアドバイスがもらえちゃいます!
皆様の力作をお待ちしております!
●投稿は24時間受付中!
●アナログ原稿のスキャン・写真での持ち込みもOK!
●編集部員が必ず目を通します!
※お申込みから1週間以内に折り返しご連絡させていただきます。
(土・日・祝日および12/28~1/4を除く)
詳細はコチラ
■各種リンク
記事制作協力:別冊マーガレット編集部
漫画家としてデビューしたい!という方向けにマンナビでは漫画コンテストや持ち込み先情報を掲載中です。自分に合った漫画賞や持ち込み先を探してみよう!
▷マンガ賞・コンテスト一覧
▷マンガの持ち込み先一覧
▷WEBマンガサイトの投稿先一覧
▷漫画家エージェント一覧
▷出張漫画編集部
▷漫画家・編集者による漫画ノウハウ記事
▷漫画家実態調査アンケート
▷漫画編集者実態調査アンケート