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コラム
2016年12月15日

モーニング新人賞3賞紹介1:宍倉編集長「マンガの未来は新人が作る」


長年青年誌のトップグループを走り続けてきたモーニング編集部が、新人賞を3つに増やすなど新人獲得に本気です。宍倉編集長や、新人賞担当者の副編集長の皆様からお話をうかがいます。【PR】

 

 

【話者プロフィール】モーニング宍倉立哉編集長

モーニング編集部にて『GIANT KILLING』立上げなどの後、2012年にアフタヌーン編集長就任。2015年よりモーニング編集長に就任。着任早々、新人賞を3つに増やすなど積極策をとる。

マンナビ|モーニング紹介ページ:https://mannavi.net/magazine/400/

モーニング編集部編記事

宍倉編集長「マンガの未来は新人が作る」
宮本副編集長「モーニングゼロは月例賞なのに編集長が全作品に目を通すのが特徴です。執念だと思います。」
田渕副編集長「スタンダードなテーマを描いてオリジナリティが出ている作家はどこが優れているのか?」



マンガの未来は新人が作る


―アフタヌーン編集長時代に「編集長の部屋」インタビュー(*1)をさせていただいて以来、お久しぶりとなりますね。モーニング編集部はいかがですか

 モーニング編集長になって1年ほど経ちました。やはりモーニングはベテランの作家が多いことが特徴ですね。

 

―新人漫画家と接しているとモーニングはベテラン勢が強く、新人にはハードルが高いという印象を持っている人が多いように感じます。

でも実はモーニングって青年誌では珍しく、その時に出てきた新人が新連載してヒットを出し、その都度いわば「新しい雑誌」になってきた歴史もあります。近年では、江口夏実先生の『鬼灯の冷徹』、小山宙哉先生の『宇宙兄弟』、ツジトモ先生の『GIANT KILLING』鈴ノ木ユウ先生の『コウノドリ』などがそうですね。

 

―宍倉さんがモーニング編集長になって新人獲得に関してはどういった取り組みをされていますか?

もともと新人賞は2つあったんですが、月1回開催の「モーニングゼロ」を新設し3つにしました。これまでモーニングには月例賞がなかったんですよ。でもマンガを描いた新人はすぐに評価して欲しいと思うものです。評価というのは「賞を取る取らない」だけなく、自分の描いた作品がどんな手応えか編集者から感想がもらえるということです。投稿作品すべてに講評をつけてお返ししています。

 

―いわゆる少年誌・青年誌ですべての作品に講評が返ってくるというのは珍しいんじゃないでしょうか。労力も掛かるでしょうし。

大前提は「マンガの未来は新人が作る」ということを形にするということで、賞の新設だけでなくこれまで以上に新人獲得に積極的な手を打っていきたいと考えてます。

 

―「ちばてつや賞」と「THE GATE」の特徴を教えてください。

従来の2つの賞は、プロの描き手が評価することが特徴となります。「ちばてつや賞」(以下、ちば賞)はちばてつや先生、「THE GATE」(以下、GATE)は一色まこと先生、ツジトモ先生が審査員です。

 

―プロの漫画家が審査するとどういった違いがありますか?

創作者は作品の読み方が深いですね。編集者では気づかないようなところまで気づいてきちんと評価して下さります。新人漫画家さんたちにとっては、良い選考が出来ていると思います。あと特徴的かなと思うのは、選考をしていただいている先生方はお三方とも、ストーリーテリングはもちろんですが、よりキャラクターを大切にしてマンガを描く方たちなんですよ。

 

―ちば賞はモーニングだけでなくヤングマガジンなど講談社の雑誌を横断する総合的な賞、GATEはモーニング単体の賞というイメージがありますが。

ちば賞は、一般部門がモーニング編集部、ヤング部門がヤングマガジン編集部と、選考を個別に行っているので、雑誌横断の総合賞というわけではなく実質モーニング編集部単独の賞です。そういう意味ではちば賞とGATEとは変わりません。ただ、GATEのほうは、前身の「MANGA OPEN」の流れを汲んでいるため、原作応募などなんでもありという特徴があり、そこが違いといえば違いです。



打たれ強い編集者と一緒に仕事すると、打たれ強い漫画家になれると思います。


―他社さんにない特徴として、講談社さんは一つの編集部の人員が多いと聞きます。モーニング編集部の人員は何名くらいなのです。

部員は「モーニング」、「モーニング・ツー」の両方に関わっていまして、全員で三十数名います。人が多くてよいところは、みんな興味が違うので、いろんなタイプの編集者がいることです。だからこそさまざまなタイプの漫画家に対応できることです。

作家側に編集者を変えたいという希望がある際に、モーニングでは前向きに検討することをしています。

1から10まで作家の希望をすべて聞き入れるというわけにはいかないのですが、相性が悪いと思ったまま打ち合わせを重ねてもよい作品は生まれないと考えています。もちろんお友達ではなくて仕事相手としての相性ですが。

 

―私も、必ずしも新人漫画家の全ての希望が通ってしまうのも良くないかなとは思います。

そうですね、読切を数回掲載したとか連載を1度経験してからなどの話になるかと思います。

連載経験者であれば編集長が検討します。新人賞受賞くらいの方なら、各賞のチーフ(この後インタビューに出てくる副編集長の方々)に相談していただくくらいがちょうど良いかなと思います。

 

―モーニングは、編集長の目線で見るとどんな編集部ですか?

モーニングの編集部員は新人と打合せすることについて非常に熱心ですね。モーニングの新人賞に応募してくださったみなさんを裏切らないと思います。もちろん新人に対して熱心なのは、それだけ才能のある方がたくさん来るからです。

 

―熱心とは具体的にどのようなことでしょうか。

編集者は連載作品の編集でも忙しいわけですが、モーニングでは新人作家に使う時間が非常に長いように感じます。

それに諦めがとても悪いんですね(笑)僕がダメだって言っても何度もネーム持って来たりだとか。でもそれだけ自分が担当している新人の作品を世に出したいという強い想いがあるんじゃないでしょうか。打たれ強い編集者と一緒にやると、新人漫画家も打たれ強くなるんじゃないかなと思うことはあります。

 

―モーニング編集部の新人漫画家に対する熱意が伝わってきました!ありがとうございました!

つづき

 

(*1)参考ページ:「編集長の部屋」アフタヌーン宍倉立哉編集長(2014年4月公開)

※ 出稿元 株式会社講談社モーニング編集部  文:マンナビ編集部