【アルファポリス】プロ漫画家インタビュー!専門学校時代やデビュー後のエピソード/三輪ヨシユキ先生
数万人を巻き込んでデスゲームと化したオンラインゲーム「THE NEW GATE」は、最古参プレイヤー・シンの活躍によりついに解放のときを迎えようとしていた。しかし最後のボスを倒し脱出することができたと思った瞬間、突如未知の光を浴び、500年後のゲーム世界に飛ばされてしまう!最強プレイヤーの新たなる無双バトル伝説開幕!
コミカライズ作品情報はこちら
原作小説の連載情報はこちら
三輪ヨシユキ/漫画
長崎県出身。「神と一緒に」(スクウェア・エニックス、全4巻)で連載デビュー。躍動感ある絵柄と迫力ある構図で魅せる実力派作家。
風波しのぎ/原作
千葉県出身。本作『THE NEW GATE』を2012年初頭からWebで公開し、2013年12月、同作で出版デビューを果たす。
――漫画家インタビュー二人目の先生は、「THE NEW GATE」の三輪ヨシユキ先生にご登場願いました!まず、お聞きしたいのが漫画家を目指した、もしくは意識したのは何歳ごろですか?
三輪ヨシユキ
実は、最初漫画家を目指していたわけではないんです。そもそも子供の頃、島に住んでいてしかも結構な田舎で本屋があまりないという環境だったので、漫画自体ほとんど読んだことがなかったんです。ですから、意識したのはいつと言われると……専門学校でイラスト専攻に入ったときに授業で、初めて漫画の描き方に触れた時が最初です。
――えっ、そうだったんですか! でも専門学校のイラスト専攻に入ったという事は、絵は好きだった?
三輪ヨシユキ
絵は昔から好きで、親が言うには2〜3歳くらいから、外で遊ぶより、家の中で〇や△、線などを組み合わせたりして人や動物など色々描いていたそうなのですが、自分で本格的に絵を意識して描いたのは、小学生の時ですね。当時毎週土曜日、アニメのゴールデンタイムと言うものがあって「ドラゴンボール」や「幽遊白書」や「セーラームーン」が放映されていてそれにドハマリ。それを見て真似して描いていました。もう悟空とか、授業中ノートの端とかに延々と(笑)。それと「SLAM DUNK」も大好きでよく落書きしてました。
――なるほど、では落書きから本格的に絵を描き始めたのはいつですか? 誰かにならったりとか、中学生とかになって美術部とかに入部したりしたのですか?
三輪ヨシユキ
いえそれが、落書きは自分の趣味としてずっと描いてはいたんですが絵を本格的に描こうと思ったことはなく、クラブもテニス部に所属してました。ですので、中・高と絵や漫画をプロとして意識したことはほとんどなかったんです。
――そんな三輪さんがなぜイラスト科のある専門学校に入ろうと?
三輪ヨシユキ
高校3年になると進路指導がありますよね。そこで将来何したいんだって聞かれたら、考え込んじゃって。どうしようかと思ったとき、ずっと落書きですけど絵を描いていたので、ぽろっと絵を描いて暮らしたい。みたいなことを言ったら、後日、絵関係の学科がある専門学校のパンフレットをもってきてくれて。あ、本気にしてくれたんだ、絵を勉強するところってあるんだ、って。それで専門学校のイラスト専攻に通って勉強する事にしたんです。
――専門学校に入られて、絵の勉強はどうでしたか?
三輪ヨシユキ
それまで自己流だったので、絵を描く道具の名前すら知らず戸惑いました。それと絵を仕上げる工程の多さ!それまでは鉛筆とかボールペンでガリガリ一発描きで描いていたので、アタリ⇒下絵⇒ペン入れ⇒仕上げ⇒完成、という工程すらもおぼつかずの状態でした。周りは普通に知っていることが私には、初めてのことばかりで、本当に何も知らなかった。
――なるほど覚えなければならないことが多かったのですね。絵を描く方はどうだったのですか? 実技の授業とか?
三輪ヨシユキ
知識はあれでしたが、人物のデッサンの授業とかは、バランスやパースが最初から取れました。これは、小学生の頃からの落書きが役に立っていたと思います。アニメだと絵が動くのでじっくり見て描くことが出来ない。パッと見た場面を覚えて、それをザッザッと描いてゆくというのを繰り返していたのですが、それのおかげか授業でもパッと見てそのまま描くことができました。周りが苦しむ俯瞰や煽りの構図なんかも見たままをそれほど苦なく描くことができましたし、何より「授業中に絵を描いて怒られない」環境(笑)が楽しく、それでますます絵を描くことが好きになって、絵の描き方の知識が増えるとどんどん試して、卒業までに絵の力をかなり上げることができました。
――まさに好きこそ物の上手なれ、だったのですね!そしてここで漫画に出会うと。
三輪ヨシユキ
はい、漫画を描く授業があってそこで初めてネームやコマ割というものを知りました。正直に大変でした。特にネームが!私はビジュアルから入るので、カッコいいシーンや綺麗なシーンのエピソードを延々と考えてしまい、あっちもこっちも手を広げてまとまらないんです。コマ割とかも最初は引き出しがなさ過ぎて同じパターンのコマを何ページも並べてしまって単調に。自分は漫画を描くの下手くそだなぁと落ち込むことがよくありました(泣)
――あまりいい出会いではなかったのですね、でも今漫画の仕事についていますが、何か漫画に向かうきっかけがあったのですか?
三輪ヨシユキ
授業の時に先生から「最初からイラストでは食べていけない。漫画を描いて有名になってからやっとイラストの仕事が回ってき始める。だから、まず漫画を描けるようになりなさい」って言われたんです。確かに当時、ゲームも小説も今ほど隆盛ではなく、イラストの仕事は少なかったし、先生も元々が漫画出身だからよけいにそういう話になって「あー、こりゃ漫画描くしかないのか」って。それで漫画の勉強をするために専門学校の先生で現役で仕事していた方のところに手伝いに行っていたら、卒業後に専属アシスタントに採用されたんです。
――アシスタントではどんな仕事を担当していたのですか?
三輪ヨシユキ
最初は、枠線引きにベタ、消しかけ、効果線、慣れてくるにしたがって背景も描くようになりました。
――苦労した想い出などありますか?
三輪ヨシユキ
先生の描いた人物がいて、その後ろに背景を描いたんですがパースが合わず人物が巨人になったり小人になったり。また先生の絵の線の太さと合っていなくて、それもショックでした。でも落ち込んでいても次の仕事はどんどんくる。同じことをしてはまずい、次はもっとよくしようとパースの本を読み漁って線の使い方を覚えたり、背景を指が裂けそうになるほど描き続けたりして、どんどん直していって、数ヶ月でなんとかOKを出してもらえるレベルに持っていきました。絵だけが取り柄だったので必死でした。
――まさに、下積み時代。描きつづけて体に覚え込ませたのですね。ではアシスタントをしながら自分の作品を投稿していたのですか?
三輪ヨシユキ
そうですね、アシスタントをしつつ投稿をして4年目くらいにやっと商業誌デビューし、上京するまでお世話になりました。漫画の基礎などいろいろ覚えさせていただき、とても感謝しています。
背景のパースなどがしっかりしているのはアシスタント時代にしっかりと修行していたから。
――デビュー後は順調でしたか?
三輪ヨシユキ
それが、デビュー後も読み切りが2回ほど載ったのですが、なかなか波に乗れず、どれも連載までいけませんでした。描いては直し、直しては描きの連続で頑張っていたのですが徐々にネームに疲弊してしまい、行き詰ってしまいました。
――どうやってその行き詰まりから脱出したのですか?
三輪ヨシユキ
頑張っていた雑誌の読者年齢層は青年向け、それと自分の描く作品の方向のずれが、行き詰りの原因だと思えたので、心機一転するために少年向けの作品を描き、特に絵柄を丁寧に、目に留まるようにと気合を入れて、手塚賞に挑戦。それが佳作になりました。
――どんな作品だったのですか?
三輪ヨシユキ
サンタクロースの跡継ぎである姉弟のファンタジー作品です。サンタクロースは男しかなれず、姉はあきらめざるを得ないのを見て、ちょっと弱いダメ弟が奮闘する話を描きました。私の持ち味はやはり絵で、可愛い女の子とちょいダメな、でも元気で頑張る男の子の表情と感情を最大限に出しました。それで賞をとれたことは大きかったです。これで作画に目覚めたというか、作画に集中するためにはどうすればいいかと考え始めたきっかけの作品でもあります。漫画家として生きるために「自分の武器はなんだ?」と必死で考えに考えました。もしかしたら漫画にしっかりと向き合ったのもこの時期かもしれません。今までイラストの仕事をもらうまでのつなぎ的な心がどこかにあったのかも、と反省もありましたし。でもやりたいと思っていた原作付きは、特に少年誌では当時あまりなく、その後いろいろ紆余曲折あって、こちらもうまく進めることが出来ませんでした。
――そのあとは経歴をみますと再び青年誌にいっていますね。
三輪ヨシユキ
はい、ヤングガンガンさんの漫画賞で奨励賞をいただきました。その当時は、まだ青年誌と少年誌の間のような読者層でしたので合いそうだと考えたのと青年誌寄りの雑誌の方が原作付き作品が多いのでチャンスもあるかなと思い、可愛い女の子の作画に気合をいれました! そこの編集さんと打ち合わせ中に作画に集中してみたいと言ってみたところ「こんな原作があるんだけど作画しない?」という流れで、話をいただき、それが連載デビュー、コミカライズデビューとなりました。考えていたことが偶然にもすぐに訪れた。なんて運がいいんだと感謝しました。
――読者層と自分の持ち味をうまく考慮したのですね。運がいいとおっしゃいますが、その運を引き寄せるために考えて発言してますし、また実力がなければ連載は続けられませんから、運だけではなく実力もついてきていたのだと思いますね。連載はどうでしたか?
三輪ヨシユキ
月一、たまに隔月掲載もありで、連載のペースになれるのが大変でした。時間に追われながら、毎回描き終わって掲載雑誌を見ると、ここもっといい表情にできたかも?とか、もっと感情を入れられたかな?とか課題が噴出でした。でもそれを次回はクリアするぞ、さらに良くするぞと頑張っていましたね。海外の翻訳コミカライズでしたので、とにかく読者に読みやすく、分かりやすく、そしてかっこよくをモットーに3年ほど走り続けました。
――その後が「THE NEW GATE」ですね!
三輪ヨシユキ
はい、連載が終わりかけていて次はどうしようかなと考えていたところ、お声かけていただきました。
――Web媒体でしたが、どう思いました?
三輪ヨシユキ
私は紙媒体が好きで、雑誌のように毎回連載が載っている号が買えないのはちょっと寂しいかなと思いましたが、ただ地方だと書店も少なくコンビニにも入っていない雑誌も多いので、かえってWebで読めるとスマホを見せればいいので読みやすいかなと。実際連載開始したあと親のケータイをスマホに機種変して連載を見せました。それから親は毎回読んでは感想くれます(笑)。地方は、雑誌だとなかなか探すのも買い続けるのも難しい場合が多いので、それを見ていても今はWeb、というかスマホで読める方が読みやすいのだなと時代の移り変わりを実感しています。
――「THE NEW GATE」ですが、ファンタジーとバトルが多めの作品ですがどうですか?
三輪ヨシユキ
私は、先ほども言いましたが、オリジナルの作品世界全体を構築するいわゆるプロットとネームをまとめるのが苦手で、それよりもすでにある世界設定の中で、いかにその世界のビジュアル設定をよく表現するか、描くかを考える方が好きなんです。だから「THE NEW GATE」は設定がしっかりした作品で、想像力が広がって作画に気合が入ります。ファンタジーと現代風の衣装を織り交ぜて色々な絵を描けるのがうれしいですね。バトルに関しては、実はちょっと苦手だったので、作画するにあたって、アクションのポーズが載っている本と剣術の本などを買って常に勉強しています。やはり、立ち居振る舞いに説得力がないとつまらなくなってしまいますから。まあ、まだまだ修行中なのですが(笑)
――描く上で注意している点などありますか?
三輪ヨシユキ
そうですね、小説は言葉を重ねることで面白さを出しますが、漫画は文字が多いと読まれなくなるので、説明過多、でも不足にもならないようにバランスに注意することや、読者層に合わないような子供っぽい少年誌風の絵柄にならないように気をつけています。女性キャラの好感度も大事にしていますよ。美人で、可愛く、セクシー(笑)。それとバトルシーンなどのシリアスな回と日常のほのぼのギャグ回のメリハリをしっかりつけて描くことも注意しています。幸い主人公のシンが、シリアスとほのぼの&ギャグの両方を描けるメリハリのきいた性格なので描いていて楽しいですね。
――周りの反応などはいかがですか?
三輪ヨシユキ
毎回、連載が公開されると私のツイッターに感想をいただいたり、コミックスが出た時には「買いました!」という嬉しいツイートをしてくださったりと反応が雑誌より早い気がしますね。たまにタイムラインを見逃すときがあるのが申し訳ないですが、それだけ多くの方に支持されている作品でもあるので、長く続けていきたいと思っています。
――それでは、ここからは実際に漫画を描くときのスケジュールや作業工程などをお聞きしたいと思いますので宜しくお願いいたします。
三輪ヨシユキ
こちらこそ、宜しくお願いいたします!
――漫画制作時の道具やスケジュールについてお聞きします。いつからデジタルで、いつまでアナログで描いていたのですか?またその時に使っていた道具、例えばペンの種類などもよろしければ。
三輪ヨシユキ
連載デビューした作品「神と一緒に」の時にデジタルに移行したので10年前くらいですかね。ただこの時は、半デジタルで、下絵まではつけペンで入れて、それをスキャニングして仕上げをデジタル処理していました。それ以前が完全アナログです。ペンは最初、Gペンを使っていましたが、スーッとすべるような感覚がちょっと自分には合わず、うまく描けないなと思っていたんです。ですが、アシスタントに入った時に先生が丸ペンを使用していて、線の太さを合わせるために、私もそれを使ったら、適度に引っ掛かり、また一本で細い線から太い線まで描けて使いやすかったので、それ以来、丸ペンでした。
――丸ペンですと紙を引っ掻いたりして使いにくいと、聞きますが、そこはどうですか?
三輪ヨシユキ
いやー、相当引っ掛けましたね。私は筆圧もかなり高いので、紙をガリガリっと削る感じでした。ただその引っ掛かる感覚がかえって手になじみ描きやすかった。曲線を描く時に手を返すとガリリと引っ掻けるんですが、筆圧が高いおかげか、抑えが効いていて、インクが跳ねたりせず、太い線がしっかり描けてメリハリが出るんです。
机に向かって仕事するのが苦手なので座椅子やソファーが仕事場。
――筆圧高いとペン先を潰しちゃって頻繁に替えなくてはいけないと聞きますが?
三輪ヨシユキ
ええ、もうまさに。ペン先に紙の削りカスがついて、すぐ使い潰しちゃうんですよ。…なんですけど、面倒くさがり屋でペン先が潰れているのに、まだ大丈夫だろう、とか替えずにいると……、せっかく完成しかけた背景とかにペン先に余分に溜まったインクが、ボトトって! 「ギャ」って叫んだこと、何度もありますよ(笑)
――それは災難でしたね(笑)
三輪ヨシユキ
毎回ホワイト修正しながら、「前のコマ描き終えた時に、なぜ替えなかった自分っ!」って突っ込んでましたね(笑)。そんなんだから原稿用紙も110kgのものだと穴が開きまくりの机黒く汚しまくり。なので原稿用紙は135kgの厚さのものを使用していました。これもたまに穴開いちゃう時がありましたが(笑)
――(笑)。
――デジタルへ移行した切っ掛けはなんだったのですか?
三輪ヨシユキ
トーンストックがなくなってしまって、地方在住だったため、すぐにトーンの調達ができず、もう強制的に仕上げのみコミスタに移行せざるを得なかった。それ以降はネームから線画まではアナログ、仕上げはデジタルでした。
――フルデジタルへ移行したのはなぜなんですか?
三輪ヨシユキ
今度は原稿用紙のストックがなくなってしまって。もうどうせだったら、すべてデジタルでやってみるか、という感じで移行したんです。その時にちょうどクリスタ(編注:クリップスタジオ)が出ていて、実はコミスタ(編注:コミックスタジオ)、よくわかってなかったので、いっそクリスタを一から覚えたほうがいいのでは、と使い始めました。それからは、ネームから仕上げまですべてデジタルで描いています。
――アナログ時代とどう違いますか?
三輪ヨシユキ
なんといってもスピードが格段に上がります。修正とかトーン貼り替えとか、ボタン一発で直せちゃいますから、すごい作業が楽になりました。それと私は筆圧高いっていいましたが、鉛筆で下絵描くじゃないですか、それをペン入れしたあと、下描き線を消しゴムで消すんですが、うまく消せないんですよ。鉛筆線が筆圧のせいで溝のようになってて、かなり力を入れないと消えてくれない。すべてのページを消しかけすると指がちぎれそうになり、もうこの時だけは消しかけだけのアシスタントがほしいと心から願いましたね(笑)。それがデジタルだと簡単に消せる、もう天国ですよ! アナログ時代、この消しかけ作業がいやでいやで、途中からネームを下絵代わりに、直接ペン入れし始めたくらいですから。
――え? 下絵、描かないのですか!? 失礼かもしれませんがあのかなりラフなネームから線画を一発描きしてたんですか??
三輪ヨシユキ
ええ、あのネームから(笑)。新人時代の途中から下絵が面倒になり一発描きです。絵の構図やパースはある程度、パッと見て直感的に描き出せたので、頭の中で組み立てて、どんどんペンを入れていきます。ただ、実は、何度も直してしまうリスクを回避している面もあります。例えばアナログ時代、入り組んだ構図の絵柄や動きのある絵など、おおまかにアタリを入れた後、気合を入れて鉛筆で下絵を描くとその線が一番輝いてしまったんです。そしてその後、2回目となるペンを入れた線が、気合が乗らずのっぺり、あっさりしてしまうことが多く「ああっ、あの輝いた線が再現できない!」という悔しい思いを何度味わったか。そして何度描き直したことか! そのせいで、締め切りがヤバイことにもなったので、いっそ一発で気合を入れて描いた方が、輝く線を描けるようになるのではと。結果、連載デビューできたので、切り替えてよかったと思います。
――おお!それではその話は次回の作画の工程をお聞きする時に実際にどうやっているか、お聞きします。逆に気を付けている点などはありますか?
三輪ヨシユキ
気を付けているのは、統合前のデータは必ず残しておく、とかでしょうか。うっかり統合データしか残していないと大変なことになります。ちょっとした修正のはずが、レイヤーが分かれていないために1ページ丸々修正になる恐ろしさ(泣)。
――ああ、確かに。レイヤーが分かれていれば、部分だけの修正で済みますが、分かれていないとすべてのコマに手をいれなければならなくなりますもんね。
三輪ヨシユキ
そうなんです。面倒くさがりとしては考えただけで悲鳴がでてしまいますね(笑)
――(笑)、では現在(取材当時)はどんなデジタル機器を使用していますか?
三輪ヨシユキ
液タブ「Cintiq Companion 2」を使用しています。それをそのまま、パソコンのデスクトップにはつなげずに使っています。
――どうしてつなげてないのですか?
三輪ヨシユキ
机に向かっての仕事が得意でないのと手元を見ながら描けないのが苦手で、それと持ち運びできるのが大きいですね。現在6歳(取材当時)の息子がいるのですが、締め切りに合わせるように熱を出したり体調を崩すことが。その場合、寝室に1人寝かせるというのは無理なので、となりで作業できるようにと。ただ気を付けないと、うっかり寝てしまうことも。起きたら何描いてたんだか、わからない時があったりしますね(笑)
これが、三輪さんの愛用タブレット。漫画はもちろん落書きにも重宝。
――結構、幸せな構図かもしれませんね。では、次は制作作業の1か月のスケジュールを教えてください。
三輪ヨシユキ
所要時間としましては、ネーム3日→ネームを下描き代わりにして線画10日ほど→仕上げ1日半、くらいです。原稿自体は2週間で完成しますが、並行した他の仕事、子育て、その他諸々でいつも締め切りギリギリになってしまいます(汗)
下絵を描かずにすぐにペン入れなので作業時間がかなり短縮できている!
――休みは、どこらへんで取るのですか?
三輪ヨシユキ
ネームの後、頭を切り替えるために取ることが多いですね。チェック待ちもありますので。ただ、アルファポリスさんは、原作者さんとの関係もかなりよいようで、原作者さんのお返事が半日から1日で戻ってくることも多く、とても早くて助かっています。前作は、海外版権物で、海外へ送る関係上、どうしても何日か待ち時間がでましたから。
――作画スケジュールを見ると下絵の工程がないのでやはり線画の期間が短いですね。通常15日くらいはかかりますよ。
三輪ヨシユキ
これは漫画家仲間にも「よく一発描きで描けるね」と半分呆れられながら言われますが、なれれば相当時間を稼げて良い方法ですよ。あと毎回、自分の線と真剣に向き合えます。何も考えずに線を引いてしまうより、いい線が引けると思っています。
――線画と仕上げの間に休みは設けないのですか?
三輪ヨシユキ
線画と仕上げは、調子が良ければ、一気に仕上げます。ただ、どうしても筆が乗らない時があり、その時は一旦作業はやめて、落書きを始めます。実は、落書きを始めるのは、調子が上がらない時なんです。好きな落書きで線の調整をしているというか、落書きが終わると調整ができて、また取り掛かれることが多いですね。それでも無理なら、今日はもう仕事しない方がいいと割り切って一切仕事せず、息子と一緒に猫や犬と戯れます。徹夜も息子を送り出す関係上、基本的にはしません。
おやつをじーっと見ながら並んで待つ姿が愛らしい。
――昔からそうだったのですか?
三輪ヨシユキ
いえ、若い頃はひとりで作業をしていて家族もいず誰にも迷惑をかけないので徹夜続きでした。徹夜するたびに疲労がたまり、完成原稿送る前の最終チェックで、最初のコマで、男が右にいて、女が左にいる構図なのに、次のコマで瞬間移動が起こっていて、男女が逆になってる! とかあって、慌てて直すとかありました。時間の使い方が甘かったですね。今は、計算して使っています。息子との時間を確保するため、1日の作業時間は減っているんですが、内容はギュッと凝縮している感じで、今の方が原稿の仕上がりがいい気がします。
――では次は、1日の仕事のない時とある時のスケジュールをお聞きします。まずは仕事のない日ですが、朝は猫に起こされるのですね(笑)
三輪ヨシユキ
ええ、6時過ぎ頃、ご飯を催促するために猫が起こしに寄ってくるんですが、眠いのでしばらく寝たふりをします(笑)。でもしばらくすると、コイツ起きる気ないなと思うのか、寝ている私の上にズカズカと乗ってきて、仕方なく起きます(笑)。仕事のない日は、たいてい原稿完成後の数日なので、息子やペットたちと戯れることが多いですね。それとぼーっとする時間も取っています。これは、次の仕事のために頭の中を整理するのとクリアにするためです。連続で働き続けてしまうとやはり疲労がたまって作画の質が落ちるので。また、私は4時間くらい寝ると起きてしまうので、だいたい2時から3時あたりに1回起きてテレビみたり、ペットと戯れたり、と何かしてから、また寝ます。
しっかりとしたサイクルが出来上がっているスケジュール。「ただし、不測の事態は考慮していないバージョン(笑)」とのこと。
――では次は、仕事がある1日ですが、仕事時間は約12時間くらいでしょうか?
三輪ヨシユキ
仕事のない日のぼーっとする10時から16時までと睡眠の前半部分21時から3時までが、そのまま仕事に変わります。若い頃は、1日に18時間〜20時間ほど仕事していましたが、今はこのくらいですね。短くなっていますが、効率は上がっていて、若い頃いかにだらだらと描いている時間があったか実感しますね。前半と後半に分かれているのも、ちょうど疲れがたまってくる時間に切り替えができるようになっています。まあ、これは息子の送り迎えや夕飯があるためで偶然ではあるんですが(笑)
――なるほど(笑)。仕事の最中は、何かテレビを見たり音楽を聞いたりするのですか?
三輪ヨシユキ
録画してある2時間映画や海外ドラマなどを延々と流しています。実はこの2時間でリズムを取っているんです。この映画が終わるまでに5枚仕上げる、みたいな感じです。トイレタイムもこのタイミング(笑)。リズムを作るために流しているので、同じ映画を前後半合わせて6回流すこともざらです。セリフ全部覚えちゃいましたよ(笑)。
――スケジュールは切り替えとメリハリをかなりうまく使っている印象ですね。
三輪ヨシユキ
そのつもりなんですが、なぜか不測の事態が起こったりして……、この間も天気の悪化で停電になったり……、なんだかんだでいつもギリギリになりすみません。
――いえいえ、きっとギリギリまでこだわってくださっていると信じていますから。それでは、次回は実際に漫画を描いているところを解説とともに紹介させていただきますので、よろしくお願いいたします。
三輪ヨシユキ
うわ、その期待を裏切らないように気をつけます!
アルファポリスとは
アルファポリスはエンターテインメントコンテンツのポータルサイトです。オリジナルの小説・漫画を投稿したり他の人の作品を読んだりすることができます。『ダィテス領攻防記』『Eランクの薬師』『月が導く異世界道中』などの作品が漫画化されています。
公式ホームページはこちら
公式Twitterはこちら
新人社員・アルファカのTwitterはこちら
投稿漫画募集!
アルファポリスでは、3つの制度で漫画家志望のみなさまを支援しております。
・投稿インセンティブ
作品の人気度に応じて投稿インセンティブスコアを作者に還元!
貯まったスコアは現金やギフト券などに交換できます。
・1500pt出版申請
作品の人気度に応じてカウントされる24hポイントが1500pt以上の作品は「出版申請」が可能です。
「出版申請」されたコンテンツに対しては、アルファポリス編集部が書籍化や公式連載化を検討します。
・評価申請
16ページ以上の内部投稿作品は評価申請をすることができます。
プロの編集者から詳細なアドバイスを受け取ってステップアップ!
アルファポリスの投稿漫画詳細はこちら
漫画家としてデビューしたい!という方向けにマンナビでは漫画コンテストや持ち込み先情報を掲載中です。自分に合った漫画賞や持ち込み先を探してみよう!
▷マンガ賞・コンテスト一覧
▷マンガの持ち込み先一覧
▷WEBマンガサイトの投稿先一覧
▷漫画家エージェント一覧
▷出張漫画編集部
▷漫画家・編集者による漫画ノウハウ記事
▷漫画家実態調査アンケート
▷漫画編集者実態調査アンケート