【ストーリーの作り方】8Pマンガのプロット・少年マンガ編【東京ネームタンク】
このシリーズでは「国際コミック・マンガスクールコンテスト 2020 - CLIP STUDIO PAINT」の作画部門の課題ネームが作られる過程を解説します。
解説:マンガスクリプトDr.ごとう
■コミックスクールコンテストとは
全世界の学生を対象としたマンガ、イラストコンテスト。入賞者には、賞金やデジタル制作に最適なソフトウェア、ペンタブレットを進呈するほか、メディアで作品発表のチャンスも!さらに、プロクリエイターや編集者から作品に対する講評も受けられ、スキルアップにもつながります。新たに作画部門やWebtoon部門など4部門が追加され、入賞のチャンスも広がりました。
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【8Pマンガのストーリーを20分で作る!】
コンテストで使われるネームは8ページです。
「約束」をテーマに、少年マンガと少女マンガをそれぞれ想定してプロットを作成します。
今回は少年マンガのプロットを作るまでを解説します。
【プロットに課題を設定する】
まず、コンテストの概要から求められる作品の形を考えてみます。
・作画部門用の資料であること
・世界中の学生が応募すること
・テーマは「約束」であること
この三点をふまえると、作品には以下の三つの要素が必要です。
・絵として見映えのあるシーンがあること
・できるだけ世界中の人に共感してもらえる普遍的な題材
・読んだ後に「約束」について考えさせられるストーリー
【テーマについて考える】
約束とは何か
「約束」とはどんなものか、「約束」のどんなところを描きたいかを決めておくと、テーマの輪郭がハッキリします。
読んだ後に「約束っていいものだなぁ」と思ってもらえるクライマックスに物語を導きましょう。
約束が良いと思える時は次のような場合です。
・約束を誓ったとき
・約束をかなえたとき
どちらをクライマックスにするかで、作り方が変わります。
約束を誓ったクライマックスなら主人公が未来に向かってふるい立つ姿、約束をかなえたクライマックスなら、主人公のひたむきさが報われた姿が描かれるはずです。
主人公像
どんな主人公が約束をするのか考えます。
ここでは少年マンガ向けの主人公ということで、男の子が夢をかなえるため前進する姿が共感を呼ぶでしょう。
ですので、クライマックスは主人公が約束を誓う場面になります。
約束を誓って気持ちがふるい立つまでは、その逆で主人公は何か踏ん切りがつかない状態にあるはずです。
主人公がふるい立ち、覚悟を決める姿が、そのまま読者のカタルシスにもなります。
【課題をクリアする】
それでは、作品に設定した課題をクリアできる題材を考えていきます。
見映えする普遍的な題材
作品には見映えのするシーンが欲しいですが、会話で約束するだけでは動きのない地味なシーンになってしまいます。
ここは作品の題材をスポーツマンガにして解決します。スポーツなら世界中の読者に共感されやすいです。
世界中で普及しているスポーツといえば、やはりサッカーでしょう。たとえばシュートするシーンが見せ場になりそうです。
約束の相手を決める
それでは「主人公」が「誰」とサッカーに関する約束をしたのか考えてみます。 サッカーする少年の周りにあるものを考えると、真っ先に思いつくのはボールです。大事にしている愛用のボールと約束をする…という物語がイメージされます。 ですが、しゃべらないボール相手だと、主人公の一方的な約束になってしまって、盛り上げるのが難しそうです。
約束の相手はやはり人間がよいでしょう。 サッカーをしている少年の周りにいる人間といえば…ともにプレイする友人、コーチがいます。 ただ、身の周りの人間と約束しているというのも、普通過ぎてこれも盛り上げるのが難しい予感がします。
そこで、ボールを擬人化させてみます。主人公の友人をボールの化身として登場させるのです。
擬人化を使うことで、ボール相手にも会話が成り立ちますし、意外性につながります。
題材を決める
「愛用の道具が擬人化して登場する物語」になると決まったところで、どんなスポーツならより盛り上がるのかもう一度考えてみます。
サッカーだと、愛用のボールがあっても、試合本番も一緒にいるパートナーといった感じがしません。
主人公と道具がもっと密接なかかわりを持つスポーツということで、題材をテニスに変更します。
テニスプレイヤーなら愛用のラケットを練習、本番を問わず扱いますから、苦楽を共にしてきたドラマ性を持たせられます。
絵としての見せ場はスマッシュになるでしょう。
読者が考えさせられる約束
約束の内容を決めるために、主人公と愛用のラケットがどんな関係なのかを考えます。
愛着がわくほどのラケットということは、相当長く使っていたはずです。お互いのことをよく知っているパートナーとして関係を築いて来たわけです。
ですが、物にはいつか寿命が来ます。
ラケットをいよいよ手放さなくてはならないなら、主人公は落ち込むことでしょう。
そこにテニスラケットの化身である少年が現れます。主人公の前に現れた少年は、落ち込んだ主人公を励ます役です。
「道具なんて使いつぶしてどんどん練習したほうが良い」「道具は道具、君は君」と主人公を諭します。
それは、彼自身が道具であり、自分自身を犠牲にして、主人公に前に進んでほしいからです。
この二人の関係から主人公が前に進むために必要なのは、友との別れを乗り越えて目的を達成する覚悟だと分かります。
ですので「たとえ友であるラケットを捨てても、必ずテニスで成功する」という約束を二人は結ぶことになりそうです。
【プロットを作る】
素材が揃ったので、下記のようなプロットにまとめました。
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主人公はテニスプレイヤーの少年。
愛用のラケットとテニスに励んできたが、ラケットに寿命がせまり、練習に身が入らない様子である。
そこに別の少年が現れて、愛用のラケットに執着しないでとにかく練習するように主人公を後押しする。
練習しているうちに、主人公は少年が愛用のラケットの化身だと気づく。
「必ずテニスで成功する」と約束を誓った主人公は会心のスマッシュを決める。
愛用のラケットは壊れるが、主人公がテニスへの思いを新たにして物語は終わる。
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このプロットでは主人公の前に現れる少年が、実はラケットの化身だと読者にばらすタイミングが重要でした。
8ページと短いネームですので、見せ場に近いタイミングでばらすことで、シンプルに盛り上がるようにしています。
ネームを作るときは、このプロットをどれだけ絵で表現できるか考えていきます。
▼ごとう隼平:マンガスクリプトドクター/東京ネームタンク代表
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▼マンガスクリプトDr.ごとうとは
少年漫画、少女漫画、恋愛漫画、異世界漫画、様々な漫画ストーリーの作り方・テクニック・コツを紹介しています。そのほか漫画紹介やイラストメイキング、クリップスタジオの使い方・iPadデジタル作画環境についてなど、幅広くお話ししていきます。
▼東京ネームタンクとは?
東京ネームタンクは漫画ストーリーを専門とする教室&研究室です。
大人気講座『ネームできる講座 Plus』では3日間の講義で32Pのネームを作ります。
講座の特徴はストーリーを構造から学ぶこと。
これまでの漫画の描き方の講座や本にありがちだった、ある漫画家先生の特定の方法というものを極力排除し、日本の商業漫画に共通する要素と構造は何なのか、を徹底的に精査。
10年以上の研究と実践から完成した「NDS」(ネームできるシステム)により、年間200作品以上の読切作品を制作し、専門学校と比較して圧倒的な数の受賞、デビュー、掲載、連載作家を輩出。初心者、漫画家志望者からプロ漫画家まで幅広い支持を得ています。
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