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コラム
2021年11月30日

漫画編集者の約9割がデジタル制作に好意的 ―漫画編集者実態調査アンケート―


マンナビでは、漫画業界の最前線で活躍されている漫画編集者の皆様にアンケートを実施しました。2017年の調査時と比べると、媒体は漫画誌だけではなく、WEB配信サービスやWebtoon形式(縦スクロールマンガ)の電子コミックアプリ、漫画投稿サイトの増加など多様化がすすみ、編集者を取り巻く環境、漫画家の制作環境も大きく変化しています。この4年間で「漫画編集者から見たデジタル制作について」や「漫画家を発掘する際の手段や見ているポイント」などが変化しているのか、出版社、編集プロダクション所属、フリーの編集者の方に幅広くお伺いし、182名の漫画編集者の方からご回答をいただきました。調査に協力してくださった編集者の皆様に感謝申し上げます。


アンケート基礎情報
有効回答:182人
収集方法:出版社や編集プロダクションなどに所属する漫画編集者へ直接メールでご案内。 また、漫画業界に勤める方を通じてその他の漫画編集者へご案内。


Q1 勤務形態(択一選択)




Q2 担当媒体(複数選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

ご回答いただいた方の57.7%はいずれかの媒体1つを担当されていました。36.3%は雑誌とWEB・電子コミックサイトや雑誌とマンガアプリなど、電子と紙の媒体を兼務されています。



Q3 担当の漫画ジャンル(複数選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

106人の方(58.2%)はいずれか1つを選択されている結果でしたが、他の76人の方(41.8%)は少年漫画と青年漫画を担当、少女漫画と女性漫画を担当といった複数ジャンルを担当されていました。



Q4 主に取り扱っている形式(択一選択)




Q5 定期的にやりとりしている連載中の漫画家の人数(記述形式)




Q6 定期的にやりとりしている連載を目指す漫画家の人数(記述形式)



連載中の漫画家を担当している編集者の担当人数は5人までが52.7%となり、平均は6人という結果になりました。また、連載を目指す漫画家への連絡は平均は11人、最高で200人(!)となり漫画編集者の多忙さがうかがえます。


◆デジタル制作が主流に!担当漫画家は全員アナログ制作が前回から21.3%減少


Q7 担当漫画家のデジタル・アナログ比率(択一選択)


2017年調査時は「フルデジタル」「一部デジタル」は合計78.2%という結果でしたが、2021年時では「全員デジタル」「概ねデジタル」は97.8%と大きく増加しています。別途実施した漫画家実態調査アンケートの結果からわかるように、デジタル制作ツールがパソコンだけではなく、iPadなどにも対応したことで、デジタル使用率が増加したようです。そのような状況下で、デジタルで漫画制作することについて漫画編集者はどのように感じているのかを、データを見ていきましょう。


◆漫画編集者の9割以上がデジタル制作に好意的


デジタル制作を1(おすすめしない)から5(おすすめする)までの5段階評価、およびその理由についてアンケートいたしました。漫画家が作品を制作する際に使いやすいツールであれば、デジタル・アナログどちらでも作品の評価に影響することはありませんが、漫画編集者はどう感じているのか見ていきたいと思います。

Q8 デジタルで漫画制作されることに対しての考え(択一選択)


おすすめ度4と5で87.3%という高い数字となりました。具体的にそれぞれを選択した編集者の意見をご紹介します。

●4を選択された漫画編集者のご意見
・最近はデジタル作家さんの方が多いので、素材や知見などもデジタルの方が収集しやすくやりやすいのではないか。また受け取る側としてもデジタル原稿の手軽さがありがたいです。
・原稿の取り扱いが容易。技術の向上とデバイスの進化の両方の恩恵を受けられる。リモートでのアシスタントを雇いやすいなどメリットがとても大きい。わずかな欠点として原画展が開催できない、高い基礎技術はアナログのほうが得やすい、など小さなデメリットもあるように感じる。だが(特に地方在住の)作家さんにとってはメリットのほうが圧倒的に多いように思う。
・編集部の入稿作業がスムーズ/アシスタントさんが見つかりやすい/若い作家さんの場合、デジタルに変えて画面が華やかになることが体感でほぼ100%(アナログで世界観を作りきっているベテラン作家さんの場合は、デジタルになってがっかりしてしまう場合もちょっとある…)

●5を選択された漫画編集者のご意見
・1.アシスタントさんを在宅で雇える(通いだと経費が莫大にかかるので)2.原稿受領のやり取りがスピーディに出来る。締め切り時も、アナログ時より少し時間の猶予が出来る。3.修正もすぐに出来て便利
・デジタル環境があれば、地方住みの新人作家さんもアシスタントに入れて、スキルアップが図りやすい。また、昨今のコロナ禍で殊更、通いのアシスタントの雇用口が少なくなっているので、雇用者/被雇用者ともにデジタル環境は導入しておく必要性が高まっていると考えます。
・修正や原稿のやりとりが楽。SNSでの宣伝などが当たり前になってきたので、レイヤー分けしてもらったり用途に合わせての加工が楽。

自分が表現しやすい描きやすいということであればアナログ制作でもよい、という意見を多数いただきました。一方でデジタル制作は、原稿の取り回し、人材確保、ノウハウの共有、プロモーション活動等の面でメリットがあるとのことです。


◆直接原稿受け取るスタイルは今や珍しい状況


ドラマなどでは、編集者が漫画家のアトリエで直接漫画原稿を受け取るシーンなどを見かけますが、実際はどのように原稿を受け取っているのか質問しました。

Q9 漫画家からの原稿データ受け取り方(最大3つまで選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

直接原稿を受け取るスタイルは22.5%、郵送が24.7%というデータに対し、DriveやDropboxなど外部サービス経由で原稿データをやりとりすることが83.5%と最も多い方法でした。デジタルで漫画制作をする漫画家が多いため、オンラインで受け取る方法が多く用いられているようです。


◆6割近くの漫画編集者が気になった漫画家に直接コンタクト


漫画編集者はどのような方法で漫画家を発掘しているのかをお伺いしました。

Q10 漫画家発掘で用いる、重視している方法(最大3つまで選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

さまざまな発掘方法があるなか、2位の「漫画賞」(52.7%)は、編集者に作品を見てもらえる場として、応募する漫画家にとってもチャンスの場となっています。また、近年はコロナ禍の影響もあり、「編集部公式サイトなどを通じたWEB持ち込み受付」が直接持ち込みを上回りました。


◆半数以上の漫画編集者がオンライン出張編集部に積極的


出張編集部とは、漫画編集者が同人誌即売会や学校・専門学校に訪問し、漫画原稿の持ち込みを受け付けるイベントです。遠方に住んでいるなど出版社に出向いて編集者へ訪問するのが難しい漫画家や、アポイントをとって出版社に持ち込むことに尻込みする漫画家の卵にとっては、気負わず直接漫画編集者に自分の作品を見てもらえるチャンスの場となっています。漫画編集者も、これまで発掘できなかった漫画家や才能を発見できる場として重要なイベントととらえています。今回はその出張編集部のオンライン版があったら参加したいかを質問しました。

Q11 オンライン出張編集部への参加意欲(択一選択)


1(参加しない)~5(参加したい)の5段階で意欲をうかがいましたが、3から5までが93.4%と高い結果になりました。出張編集部をオンラインで実施することで、個別の持ち込みでは尻込みしてしまう漫画家にも、気軽に参加していただけるのではという期待感がうかがえます。


◆漫画編集者は持ち込みに来た漫画家の何をみているのか


持ち込みにきた漫画家と会う際にどういったところを見ているのか、選択肢の中から最大3つまで選択していただきました。

Q12 持ち込みにきた漫画家と会う際に重視している点(最大3つまで選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

「画力(62.6%)」「アイデア(54.4%)」「読者の目を意識しているか(42.3%)」と、上位は作品の内容という結果になりましたが、「コミュニケーション能力(20.3%)」「自分と感性が合うか(15.4%)」といった漫画家のパーソナリティも重視されていることがわかりました。その他の回答にはキャラクターやセリフのセンス、自身の作品への理解などがありました。


◆半数以上が海外の漫画家獲得を意識、既に動き出している編集者も


海外市場でマンガの評価が高まるなか、漫画家になりたいと考える海外のクリエイターをコンテストやTwitterなどのSNSを通じて見かけるようになりました。日本人とはまた違った魅力溢れる表現をする海外の漫画家の獲得に対して、漫画編集者はどのように考えているのかうかがいました。

Q13 海外漫画家の発掘状況(択一選択)


「将来的には発掘したいと考えている程度(30.2%)」「発掘したいが手段がない/言語の壁がある(24.2%)」など発掘したい気持ちがある漫画編集者が50%以上となり、「積極的に探している最中(6.6%)」と合わせて61.0%となりました。最近では出版社が海外企業と協力してマンガ賞を開催するなどの動きも見られますので、少しづつ国を跨いだ漫画家の活躍の場が広がっていきそうです。


◆アジアに続き北米、欧州へのマンガ配信にも積極的


大きなマーケットの可能性がある海外市場。どのような国・地域に展開したいと考えているのか聞いてみました。

Q14 マンガ配信にチャレンジしたい国・地域(複数選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

日本と感覚が近いと感じられるアジア(79.1%)だけではなく、北米(42.9%)や欧州(37.9%)にも興味ありという結果となりました。


◆見開きの漫画編集者からもWebtoonは勢いを感じるコンテンツと評価


縦スクロール形式の漫画はWebtoonなどとも呼ばれ、スマホのサイズに収まるように縦方向にスクロールして読み進める漫画表現です。その縦スクロール形式の漫画について聞いてみました。

Q15 縦スクロール形式の漫画について、どのように感じているか?(記述形式)

・純粋に漫画の表現方法のバリエーションが増えたので楽しいことだなと思っています。縦スクロール漫画はユーザーの増加傾向にありますし、若年層でシェアが増えていく可能性は十分にあるのではないでしょうか。現在の見開きタイプの漫画に完全にとってかわるとしても、先のような気はします。
・新鮮な感覚で楽しんで読める新しい漫画との出会いだと思う。作風はページ見開きより細かい動きと人の感情を細かくリアルに見出だせてて、映画のような作りだから、今後もたて読み版が増えてくるかと。
・独自の形式として見せ方も研究されてきており、縦スクロールならではの演出が出来る点は、新しい表現方法に繋がっていると思います。ただ従来の漫画のコマを縦スクロールにした場合、どうしても横幅が決まっているため横長のコマが小さくなってしまいます。漫画表現としては見開きでドーンというのが印象的な表現として用いられていると思いますが、大ゴマを縦長にしか使えないのは感動の部分で少し弱くなってしまうのではないかと思います。今後もスマートフォンで読むことに特化した形式として縦スクロールは受け入れられていくと思いますが、漫画好きは見開きやめくりといった演出が用いられるページ形式の漫画に残るのではないかと考えます。
・日本では現在は見開き(またはそれをもとにした単ページ)での形式に慣れている読者がまだ圧倒的に多いこと、また縦スクロール漫画が従来型漫画を駆逐するほどの付加価値は(まだ)持ってはいないと考えているので、爆発的に広まるとは思えないが、誰もが持っているスマホで気軽に読める・スマホの使い方(スクロール)に最適化された方式であることから、徐々に広まってくるとは思う。将来的には従来の見開き漫画と共存すると考えます。
・漫画読む手段として注目がされているが、得る情報量と手指の操作量が伴っていない&デジタル以外での販売が難しい(紙で売るときはコマに直している)ので、いつか廃れてしまうのではないかと個人的には思う。
・日本だけで展開していくのは難しいと思います。 ウェブトゥーンのメリットは読みやすさ+ローカライズした際の違和感のなさですのでもっと海外を目指して作っていくべきです。 またここ3年くらいまでは順調に伸びていくと思いますが、5年後には結局定着しきれず中途半端な位置に落ち着いてしまうのでは無いでしょうか

半数の漫画編集者からは「勢いを感じるコンテンツ」「新たな市場の可能性を感じる」「新たな漫画表現が生み出されて魅力を感じる」という声をいただきました。現在見開き形式に携わる漫画編集者の多くは好意的に捉えられているという結果でしたが、「従来の見開き形式と縦スクロールは共存していくもの」といった意見や、「起爆剤が必要」「一時的な盛り上がり」「海外はまだしも国内では見開きで満足しているので伸びない」という意見もいただきました。


◆約半数が漫画原稿テンプレート統一化を希望


出版社によって、また同じ出版社でも編集部によって漫画原稿のサイズに違いがありますが、現場の漫画編集者はどのように考えているのでしょうか。

Q16 漫画原稿のテンプレート統一化(択一選択)


統一を希望する回答が合わせて48.9%となったことから、原稿仕様の違いによる不便さはあるようです。漫画制作アプリの中には大手出版社の漫画原稿テンプレートを搭載しているものもありますが、漫画家・編集部・印刷会社などの関係者間で制作・入稿がスムーズ行われるよう、原稿テンプレートの統一が期待されます。


◆5割以上は担当漫画家に直接アシスタントを打診


編集部公式や漫画家自身のTwitterアカウントでアシスタント募集をみかけますが、実際にはどのようにアシスタントを募集されているのでしょうか。

Q17 アシスタント募集方法(複数選択)

※ %の数値は回答者全体における回答数の割合

「担当している漫画家・漫画家志望者に直接打診(53.3%)」「漫画家自身が探している(46.2%)」の順で回答が多い結果となりました。3位の「GANMO(44.5%)」は別冊少年マガジンで「UQ HOLDER !」を連載中の赤松健先生が管理人代表を務める、漫画家とアシスタントのマッチングサービスです。


今回は182名もの現場で働く漫画編集者の方々にアンケートを実施することが出来ました。ご協力いただいた皆様に、改めて感謝申し上げます。今回の調査結果が漫画に携わる皆様の参考になれば幸いです。

調査協力:マスケット合同会社

2021年の実態調査アンケート結果はこちら
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