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コラム 2017年4月25日

プロ漫画家の7割がフルデジタル!?-漫画家デジタル制作実態調査アンケート(漫画家編)-

「漫画家はデジタル制作をどのようにやっているのか?」「デジタルツールは何を使っているのか?」「デジタル制作で工夫していることは何か?」など、今まであまり大規模に調査されてこなかった部分に焦点を当て、2017年3月にアンケートを実施し、250名を超える漫画家の皆様に回答をいただきました。今回は漫画家編の集計結果をご報告申し上げます。調査に協力してくださった漫画家の皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。【PR】

 

アンケート基本情報

有効回答数:263件
収集方法:トキワ荘プロジェクト入居者・OBOG、過去トキワ荘プロジェクトのイベントや講習会に参加した方、全国の教育機関などへのご連絡および、TwitterなどのSNS上での発信を通じて収集
性別:男性30.4%、女性69.6%
年代:10代1.5%、20代25.9%、30代38.8%、40代22.8%。50代10.6%、60代以上0.4%

漫画家としての状況(最も近いものを択一選択):

※「その他」を回答された方の多くは、イラストレーター、デザイナーなどとの兼業の方でした。一部、趣味で同人を描く程度という方もいらっしゃいました。

 

◆プロ漫画家の7割が「全てデジタル」と回答

 

有効回答263件のうち、実に95%以上の方が何らかのデジタルを使用しているとの回答でした。もちろん、デジタル制作アンケートなので「全てアナログ」の方の回答はそもそも少ないことが考えられます。しかし、「全てデジタル」が57.8%という結果を見ると、デジタル制作がいかに浸透しているか、ということも分かります。

*マンガ制作時のデジタル使用状況(総回答数263)(択一選択)

これを世代別にしてみると、このようになります。

*世代別 - デジタル化状況

若い年代の方がデジタルに移行しやすいのでは、と想像しがちですが、実際には年代別の違いはほとんど見られません。むしろ、10代、20代の方がまだ「一部デジタル」や「全てアナログ」に留まっており、30代以降になると「全てデジタル」が半数を超えるという結果になっています。

次に、漫画家としての状況別の数字を見てみます。

*漫画家状況別 -デジタル化状況

プロ漫画家の72%が、「全てデジタル」と回答をしていました。新人漫画家になると半分以下に減り、漫画家志望者になると3割程度に下がります。先ほどの年代別のデータと合わせると、デジタルへの移行状況は年齢ではなく、漫画家としての状況に左右されていると考えられます。

では、具体的にはデジタルツールをマンガ制作にどのように活用しているのでしょうか。
(以降、特別な断りがない場合は、「全てデジタル(152)」「一部デジタル(99)」と回答した、合計251名の回答者のデータを基礎数値として各集計を算定しています)

*デジタルで実施していること(複数選択)

塗りやトーン、効果などの仕上げ段階では90%以上の方がデジタル作業をしていると回答しています。一般に、アシスタントが作業する工程であるほど、デジタル作業の実施率が高いように見えます。また、背景作画や登場メカ作画の補助ツールとして使用される3D系の使用率が4割を超えていることも、デジタル制作の浸透率の高さを物語っていると考えられます。中には、作品により、フルアナログ/フルデジタルを使い分けると回答した方もいらっしゃいました。

では、具体的にどのデジタルツールを使用しているのでしょうか。

*主に使用するツール(複数選択)

2012年にコミスタの後継ソフトとして開発・販売開始されたCLIP STUDIO PAINT (以降クリスタ)ですが、その使用率は75%を超えています。次に多いのはフォトショップですが、フォトショップのみを使用していると答えたのは122名中7名のみで、あとの109名は他ソフトとの併用でした。今回、デジタル作画環境に対するアンケートだったため、カラーイラストなど一部の用途にだけフォトショップを利用している方も多かったのでは、と推測されます。

そこで、主に使用するツールが単一だった方のみを抽出して、集計をしてみました。

*主に使用するツール(単一回答者102名の内訳)

複数ソフト併用の場合、何をメインにしているのかまでは回答を得ていないのですが、少なくとも単一回答者においては、クリスタのシェアが圧倒的であることが分かります。

次に、使用するタブレットについても聞きました。

*メインに使用するタブレット(回答数252)(択一)

一般に、高価だと言われている液晶タブレットの使用率が50%を超えていることは、注目に値します。それだけ必携のツールに近づいたということでしょう。一方、感度が液晶タブレット並みの新製品が出始めた、新興のタブレットPCをメインで使用する段階には、まだ至っていないという印象です。

 

◆デジタル制作のメリットはスピードアップではなかった?

 

デジタルツールを使用している方は、どんな効果を期待し、また感じているのか。デジタルツール使用の背景も伺いました。

*デジタル制作を始めた理由はなんですか?(テキスト回答)

やはり、「コスト削減」「スピードアップ」というところが、デジタルツールの導入理由として大きいようです。また「納品が便利」という点は、特に地方在住の漫画家にとっては、郵送と比べて締め切り時間に1-2日の余裕が出来ることが歓迎されています。

なお、その他として「編集者や出版社の要望から」といった外部要因や、「フルアナログで制作していた時代に、印刷工場まで見学に行ったら、結局後でスキャンされ、データ処理されていたのを見たので。その際、線画が太く印刷され、閾値を自分で調整したいと思った。」といった原稿の完成度に対する理由も挙げられていました。

では、実際にデジタル制作をしてみてのメリットはどうでしょうか。

*デジタル制作はあなたにとってどんなメリットがありましたか?(テキスト回答)

始めた理由と同様に、作業時間が短縮やコスト削減がされたという回答が目立ちますが、「描き直しが楽」という回答も多く見られました。アナログの修正は、ホワイトが重なることや配置をずらす際の手間、拡大縮小などの作業に、難しさや面倒さがありますが、デジタルの場合はここが改善されていることは間違いないようです。また、クオリティがアップしたという回答も、一般に精緻な描写はアナログが向くということに反する部分としては注目に値します。

片付けが苦手であったり、綺麗好きだったりする方が、ごみ問題や体に付着するインクやトーンなどの問題が解消されたと回答している点も、非常に実用的な理由で、興味深く感じました。ここには、原稿保存のスペースが不要になって、片付くようになった、という意見も含まれます。

また、子育てをされている漫画家さんの「カッターやペンなど危険な制作道具を置く必要がなくなったので、安心して制作できる」という回答や、「老眼になってきたので、拡大できるのが助かる」という回答もあり、ご自身の状況の変化やマンガ制作の環境を考えたときにも、デジタル制作は漫画家の味方になるという点が面白いと思いました。

メリットとして最も多く挙げられた、作業時間の短縮について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

*デジタル導入後の1作品(話)あたりの作業時間は?(択一)

「減った」という回答が48%というのは、少し意外な結果でした。もちろん、半分近くの方が、作業時間が減ったという回答をしているので、「作業時間を減らしたい」と考えている人にとって有効であることは間違いありません。一方で、「同じくらい」や「増えた」と回答した方の多くは、ある作業にかかる時間が減った分、ほかの作業に時間をあてていたり、より細かい描きこみをしたり、作品のクオリティ向上に繋げているため、作業時間自体は減っていない、ということでした。作業が効率化したとしても、それでできた時間をどう使うかは人それぞれ、ということが分かりました。

さて、デジタル制作のデメリットには、どんなものがあるのでしょうか。

*デジタル制作のデメリットはありましたか?(テキスト回答)

その他「試し刷りをしないと仕上がりがどうなるかわかりにくい」「アナログ信者からのいわれのないデジタル批判」「アシがいないのが寂しい」「色紙が描けなくなる」「編集が原稿を受け取る顔が見えない」「人とのコミュニケーション減る」など、なにか漫画家ならではの業のようなものを感じられる回答もありました。

本アンケート全体を通して「アナログ同様の仕上がりを目指すことが大変」という意見が1-2位を争う数、見られました。現在のプロ漫画家の中には、もともとアナログ作画であったところからデジタルに移行した方が多くいるため、自分の持ち味や技術がデジタル化によって失われることに危機感を持つ方が多いということが考えられます。また、PCやデータが壊れる、消失するということに不安を感じている人も少なくありませんでした。

 

◆アナログもデジタルも、独自の制作技術構築が必要という点では同じ

 

次に、デジタル制作に移行するプロセスについて、見てみたいと思います。

*もともとデジタル(PCやネット)は好きor得意でしたか?(最も近いと思うもの択一)

現在、デジタル作画をしている方の中では、4割の方がPCが得意と回答しています。デジタル移行の初期は、得意な方ほど早くデジタルに移行しているのであろうと想像されます。一方、得意というわけではない6割の方もデジタルを取り入れているということは、それだけ普及してきたとも言えます。

*デジタルを取り入れるにあたり、工夫したことはありますか?(テキスト回答)

取り入れるプロセスにおいて多かったのは、手順の一部をデジタル化し、少しずつ範囲を広げていった、という回答でした。具体的には、以下のような回答です。

・はじめはトーン作業だけをPCでしていた。だんだん黒墨、ペン入れ、ネーム、プロットづくりとPCでできることを拡張し、結果フルデジタルになった。

・読者に違和感の無いよう少しずつデジタルへ移行(予告カットの仕上げのみデジタル→扉絵の仕上げのみデジタル→本編仕上げのみデジタル→小さいコマでデジタル作画を数コマ試す→少しずつデジタル作画のコマを増やす→フルデジタル)

・初期は、出来るだけアナログ原稿で出来る事以上の事は行わないようにし、再現に務めた。

また、作業に慣れるまでの工夫としては、以下のような回答がありました。

・アナログでしていた感覚に近くなるようにしている。ひたすら描き、アナログ時代の自分の原稿と擦り合わせるしかない。

・アナログで思い通りの線をひけるのは何故かということを自分の脳内で観察して、デジタルでも同じ感覚を再現しようとしてみたらうまくいった。

・ペンタブの描き味がアナログと違うので、すり合わせるため色々なツールを試して筆圧をかなり調整し直した。慣れてからも定期的に調整する。ソフトによって描画の感覚がかなり違ってくるように思う

・アナログでの技術を維持しようとしないこと。技術革新は古い技術を捨ててこそだと考えた。アナログに戻る道を捨てれば苦手でも進むしかない。アナログが得意ならデジタルに移行する理由はないかと考える。

・アナログでの絵の練習を欠かさない(デジタルで描く時もアナログの感覚は必要だと思うから)アナログで漫画を描いたことが殆どないので、ペンの太さやトーンの濃度等が咄嗟に把握できないため、印刷したトーン表を手元に置いている。

さらに、このように工夫を重ねている方々もいました。

・自分に合わせたテンプレートを作ったり、マスキングやアクションの機能を把握して自分で作ったりして時間短縮してる。苦手なのは詳しい人に教わったり、講座サイトを見たりして使える機能を増やしていった。

・すべての工程をデジタルで一貫して行うことで作業の効率化を図っています。スマホでプロット、Windowsタブレット(ASUS VivoTab Note 8)でネーム、メインPCで下書き以降の作業を行い、すべてをクラウドサービスで同期させています。また、レイヤー構成をテンプレートに保存したり、画像素材を購入・自作して繰り返しになる作業を省略できるよう努めています。

・いかにもデジタルで描きました、という画風が好みではないので、デジタルでアナログ感を出すことに気をつけている。(インクの溜まりとか紙に描いているジャギ感とか自然な縁取りとか…) でもそうすると効率という点ではアナログと大して変わらない。。

・特定のソフトの機能に頼っていると、そのソフトがなくなったりすると大ダメージなので、ほとんどのソフトで対応可能な機能中心で作業するようにしている

そもそも、漫画家の制作工程は100者100様と言われますが、デジタルという一つのツールを自分の制作したいものにどう使っていくのか、アナログでのやり方を変えるのか、変えないのかということも含めて、様々な回答が得られました。多くの漫画家がアナログ時代から独自の技術を構築していったように、デジタル制作についても同じような独自技術の構築の努力が、それぞれの現場で積み重ねられてきていることが想像されます。

***

今回のアンケート調査を通じて、デジタル制作の是非がどうか、という視点から、どのようにデジタルツールを活用し、より良いマンガ制作や制作環境にしていくのか、という視点に移行していることを改めて感じました。

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※ 取材/文:マンナビ編集部 協力:株式会社セルシス

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