【漫画家になるには 後編】瞳を3ミリ細めるだけで効果倍増の省エネコマワリ添削【東京ネームタンク】
こんにちは、東京ネームタンクごとうです。 今日は少し前に添削した作品の続きです。昨年末の「受賞できる講座」で扱った作品ですが、今回のところまでで一旦おしまいです。
▼前編記事
【漫画家になるには】コマの役割を知り、初稿⇒2稿目を乗り越える【東京ネームタンク】
▼中編記事
【漫画家になるには】ハマってない?「コマ割りのループ」【東京ネームタンク】
さて前回5Pまでブラッシュアップしました。今回は6P・7Pに着目してください。どこをどう直すと効果的になるでしょうか。
綾瀬ありすさんの「映画館にいる間だけ恋人になれる先生と生徒の物語」です。
前回5Pまで修正した作品
木瀬さんかわいいよ!
6・7ページ、より良くするにはどうしますか?
まずはみなさん考えてみてください。どのようにアドバイスしますか?少し自分で考えてもらってから読み進めると学びになると思います。
では…ここから添削編です。
6・7Pでよく描けているのは、彼女の横顔ですね。もしこの横顔を、たとえば「正面顔にアングルを変えた方がいい」など、考えてしまった人は要注意です。
まずそもそもの発想として、ここで作者の綾瀬さんがどこを描きたかったのか、しっかり感じ取りたいです。そのときにこの横顔は楽しく熱量を持って描けていますよね。ここを効果的に引き立てる、という発想が必要になります。
その大元の魅せるべくもの、を変更してしまったら一体何を見せていくページにするのか、作者の綾瀬さんとよく相談し物語の根本から変更しなくてはなりません。しかしせっかく気持ち良く描いた絵が描けなくなる修正案を、モチベを保って描けるでしょうか。
ダメ出しするのではなく良い場所を探す
実際このページから、作者の綾瀬さんが横顔萌えであることまで見抜けるといいですね。たしかめてみたところ、やはり横顔大好きだそうですよ。
さてではとくに7P3コメ目の木瀬さんの横顔のアップ。ここをどうするとさらによくなるでしょうか。そのように考えを進めていきましょう。
まず6P下の木瀬さんの良い表情。恋してる良い感情が描けてますね。
前回の記事でもお話ししましたが、この感情は「ちらっ」と何かを見て生じた感情です。そしてきっとこの「ちらっ」と見たものは先生の「手」ですね。
だとするとその「手が気になった」ということを強調したほうが、その感情が引き立つと思います。
そして7Pです。ここで「手」が気になり…再度「手」を見ての感情が大ゴマで描かれます。しかしここはやや6P下の感情と似てしまっているかもしれません。
似た感情の連続を防ぐことと、もうひとつストーリーを進めるために、そろそろ感情的に「こうしたい」という能動的なものが出てきて欲しいタイミングです。
能動的な感情を加えた修正後
7P大ゴマに「手を繋ぎたい…」という想いを入れてもらいました。
7P大ゴマが少し受け身の感情になっていたんですね。何か感情を受け止めているように見えていたものを、満たされていない欲求がある感じを増してもらいました。
実際にはほんのわずか目を細めてもらっただけです。
しかし通して読むとだいぶ読み味が変わると思いませんか?
コマワリの仕組みを知って効果的に修正する
コマには役割があります。まずはそれを正確に知ること。そうすることでもともと魅せたかったものがなんなのかしっかりと認識し、効果的にすることができます。
そして改めてお伝えしたいのは必要以上の修正をしない、ということです。今回は最小の修正でグッと良くなった良い作例だと思います。
コマワリの趣向こそ作家性になります。自分の好きな表現を生かす、というのも大事なことです。
例えばある一コマが正面顔であるか横顔であるか、というときに「読者への感情の伝わり方」が変化します。これはほとんどの場合、そこに優劣はありません。好みかどうかです。漫画は感情の伝え方の趣向が人それぞれに違うからこそ、そこに作家性が生まれます。
ここをこういうアングルにしたほうがいい、と安易に言ってくる人も多いなと感じていて、注意が必要です。それはその人の伝え方であって作家性なので、そのまま受け取ったら自分の作品でなくなってしまいます。
自分が描きたかった場所を大切に、そしてそれがより効果的になるにはどうするか考える。 改めて、コマワリの仕組みを知っていれば、目を3ミリ細めるだけでグッと効果的にすることも可能です。しっかり学んでいきたいですね!
転載元:https://note.com/nametank/n/n500951062138
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これまでの漫画の描き方の講座や本にありがちだった、ある漫画家先生の特定の方法というものを極力排除し、日本の商業漫画に共通する要素と構造は何なのか、を徹底的に精査。
10年以上の研究と実践から完成した「NDS」(ネームできるシステム)により、年間200作品以上の読切作品を制作し、専門学校と比較して圧倒的な数の受賞、デビュー、掲載、連載作家を輩出。初心者、漫画家志望者からプロ漫画家まで幅広い支持を得ています。
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