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コラム
2021年12月17日

マンダンラジオ出張掲載版#7 漫画家と就活との天秤・デビュー前後の苦悩

デビュー前後の苦悩


■マンダンラジオ 漫画家2人が漫画について語るラジオ


漫画家として活躍されている安藤正基先生が中心となって、漫画に関するアレコレをテーマに様々なゲストを招いて、ゆるく楽しく語り合うラジオ企画!毎月下旬頃にYouTubeにて配信中!
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※2020年6月27日にYouTubeにて配信された内容を許諾を得て一部記事化内容を再構成しております。是非、本編アーカイブもご覧ください!



安藤正基:
大体の方は、就活は大学3年生ぐらいの時から始めるじゃないですか。その就活しなきゃいけないという期間と漫画家になるという天秤の時、どう過ごされてました?俺の場合ですが、なんか変な気分になりますし正直嫌じゃないですか。親が聞いていたら申し訳ないのですが、正直就活する気が全然なかったんですよね(笑)

ちると:
当時の安藤さんからビシビシ感じましたよ、コイツは就職する気がないなと(笑)

安藤正基:
僕の場合は大学を卒業した後も、母親が漫画家デビュー目指していたということもあり大目に見てくれたんですが、父親が優しいけど暗にいつまで続けるんだという空気感は出してきていたんですよ。応援はしつつも心配してくれていた感じで、その優しさが正直痛かった。逆に漫画家なんか目指すなと言ってくれた方が反骨精神でいけてたと思うけど、実家で親のご飯を食べながらフリーターして漫画家になれるのかなれないのかという期間が辛かったね。

ちると:
バイトしていなかったらただのクズ野郎になっちゃってた。バイトしてギリギリ人権保ててるという。

安藤正基:
そうそう。大学生時代に本屋でバイトしていたのですが、大学の先輩で「咲けよ花咲け!」など描かれたモリコロスさんという方も働いていまして。カッコいいのが僕が大学1年生の時にモリコロスさんが大学3年生だったんですけど、僕がバイト入って1か月ぐらいに連載勝ち取ってバイトを辞めていったんですよね。トータルでも1年ぐらいと短い期間だったかな。だから長く働いていた僕に対して「あれ安藤君は・・・?」みたいな雰囲気が漂いまして(笑)いやぁ、苦しかった。大学卒業してからも就職した友達がお客様としても来店するから「まだバイトしているんだ」みたいな絶妙な雰囲気が辛かった。

ちると:
俺の時は、高校生の時に週刊少年ジャンプのストキンという原作志望者のための漫画賞を受賞したんだよね。その後はずっとネームを描いていたけど、ある時ぷつりと担当編集者から連絡が途絶えた時があったんだよ。あの時に何をもって漫画家志望者なのか考えちゃったよね。まだ絵がうまかったら漫画家なれるかもと周囲の空気感もあったと思うけど、絵が下手な上に担当編集者から連絡が来なかったから正直素人と変わらない立場に感じた。あの2年ぐらいの何も取り柄ないじゃんという時期が辛かった。漫画家志望者として序盤に戻された感じがなんとも。

安藤正基:
巻き戻る時あるよね。新連載始められても、前に人気作品出していたらブーストはかかるかもしれないけど、結局はその作品の面白さで勝負させられるから他に連載されている方と戦わないといけないし。
僕もちるとさんと同じような経験があって、週刊少年ジャンプで手塚賞や月例賞の最終候補チラホラ載るぐらいの時、担当編集者はいたけど、何人もいる漫画家志望者のうちの1人だから中々連絡もとれない時、担当編集者がいるのかいないのか正直わからないという生殺し状態が切なかった。
漫画家って壁がいくつかあるじゃないですか。新人賞に読切掲載・・・その次は連載と捉えると思うけど、僕はセカンドデビューだと思ってるんですよ。デビュー1作目は何か知らないけど載る人が多いのよね。新人賞の副賞として掲載されたり、あと僕のケースなんですが、ジャンプSQの美大芸大キャラバンという日本各地の美大芸大にジャンプSQの編集者が出張しに行って1位の作品は増刊に掲載という企画がありまして。僕はそこから掲載が決まったのですが、美大芸大の漫画家には勝ったけど、読切会議で勝ち上がった漫画家には勝ててないのよね。元からある枠に入っただけなのに、自分は勘違いして読切掲載いけるじゃんと思ってしまった。

ちると:
一番最初の読切って成功体験と失敗体験が共存している場合があるんだよね。

安藤正基:
もう7年ぐらい前だから言っていいと思うけど、アンケート結果が表紙より低かったからね(笑)言い訳すると、僕がデビューした時の表紙がToLoveるダークネスのヤミちゃんだったのね。負けるかとは思うけど、20ページぐらい描いた読切がプロ漫画家の描く一枚絵に勝てなかった、情報量だと僕のほうが多かったのに負けてしまったという出来事がかなりショッキングだった。納得いっていないとかではないけど自分の立ち位置を理解してしまったよね。頑張って次回作考えたけど、いや~載らん。

ちると:
本当に難しくて、その人にとってうまくいった事象でもあるから、もう一度チャレンジすれば載るだろうと考えるけど現実は載らないという。だからといって出版社恨んでいるとかはないけどね(笑)

安藤正基:
そうそう。だから僕はデビューからセカンドデビューまで2年空きましたね。その期間も漫画家人生で辛かったな。何が正しくて何が間違いなのか感情がぐちゃぐちゃになるんだよね。

ちると:
前向きに聞きたいけど、うまくいかなかった時期とアニメ化までいけた自分の変わった瞬間とかタイミング何かあった?

安藤正基:
全然マイナスに捉えないで欲しいんだけど、同じ雑誌に固執するのを辞めたよね。少年ジャンプからジャンプSQと似ているところでしか今まで描いていなかった。自分の見方を変えないといけないのではと考えた時があって、同じ担当編集者にずっと見せても同じようなことしか言われない、それを咀嚼しきれなかった僕が悪いけど、別の編集者に見せたら何か変わるんじゃないかと思って少年マガジンに出し始めた。同時進行でジャンプSQにも持っていってたけど、ジャンプSQと少年マガジンで作品が通った。あの時から変わったような。
もう一つ、固執していたことがあってネットに漫画をあげるなんてと考えていたよね(笑)

ちると:
ネット発の『八十亀ちゃんかんさつにっき』描かれている漫画家(笑)

安藤正基:
そこに至るまでに何があったのかという話よ。変わったのが『ラブライブ!』だよね。

ちると:
おっと『ラブライブ!』ですか。

安藤正基:
単純に『ラブライブ!』にハマったんですよね。それまで任天堂の作品の絵をちょろっと描いていたぐらいで二次創作とかやっていなかったんですよ。二次創作しようと思えた作品に出会えたのが初めてで。その頃は沈んでて漫画が描けなかった時期だった。だけど、『ラブライブ!』のPVを見た時にぐわっと何かがきた。そこからアニメやソシャゲにハマって、この子たちの話なら描けるかもと思った。ただコマ割りする気力はなかったから4コマからチャレンジしようと。ただ時間かけて描こうとすると出来なかったから、ワンドロっていう1時間以内で作品描きあげる企画に参加してみたんですよ。当時のことだから勘弁してほしいけど、そこそこ伸びると思っていた。

ちると:
あざとい(笑)

安藤正基:
一応商業でデビューした読切で載っていますのでと思っちゃったのよね。そういう気持ちもあってあまり伸びなかった。小賢しいものは伸びない、ファンはちゃんと見る。そういうの経験して今までのこと何か違うなと、この作品で自分が好きだったのは何かと考えた。当時自分の作風は前後関係ないギャグをぶっこむスタイルで整合性が取れていないものばかりだったので、ちゃんと目の前に出て楽しいことさせていただきます芸を発表しますという意識に変えてみたんだよね。そこから作品の見方が変わって、普段だったら描かなかったこともキャラのお陰で少し恥ずかしい展開も描けた。なんだか、そこから全ての歯車がいい方向に回りだして、担当編集者からも女の子が可愛くなったよねと言ってもらえたり。

ちると:
一見関係ないものが自分の足りないものだった的な少年漫画的な展開。商業でプロになりたいのに、二次創作して何の意味があるんですか的な(笑)

安藤正基:
そういう出会いがあってから二次創作への偏見もなくなったし、同人イベントも出たし、コミケにもいったし、自分が今までやらなかったことをやるようになってから世界が広がっていった。

ちると:
最後のピースというか成長のキッカケって真正面から解決しようと思っても中々難しいよね。コンペ落ち続けてどうしたらいいんだろうと思ったら担当編集者にネームをいっぱい出すという正攻法があるじゃん。でもそれは悩んでいる方はぶつかり終わっているというか、そこから頑張るのはさらに難しいから、視野を広げるとかが大事なんだろうなと思うね。


他にもデビューしたときの思い出や連載をとったときの気持ちなど語られています。
是非動画もご覧ください!



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■出演者


安藤正基 アイコン

MC漫画家:安藤正基
一迅社の月刊ComicREXにて「八十亀ちゃんかんさつにっき」(既刊10巻)という名古屋を舞台にした漫画を連載中。2019年~2021年にわたりTVアニメ3期放映。過去にはメーカー公認文房具コメディ漫画「ぶんぐりころころ」(全2巻)をマンガボックスにて連載。

八十亀ちゃんかんさつにっき 書影八十亀ちゃんかんさつにっき 書影ぶんぐりころころ 書影

ちると アイコン
MC漫画家:ちると
KADOKAWAにて成人男性が女子小学生に甘える漫画「とっても優しいあまえちゃん!」(全4巻)やニコニコ静画にて「白魔導師シロップさん」(全2巻)、少年ジャンプ+にて「先輩!俺の声で癒されないでください!」(全2巻)を連載。7月16日より『マジメサキュバス柊さん』を連載開始。
とっても優しいあまえちゃん! 書影白魔導師シロップさん 書影先輩!俺の声で癒されないでください! 書影



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