【グランドジャンプ】「#DRCL midnight children」単行本発売記念!坂本眞一先生へインタビュー
2021年1月から集英社が発行する青年漫画雑誌『グランドジャンプ』で『#DRCL midnight children』の連載中の坂本眞一先生に、新連載の準備や挑みたい漫画表現、Galaxy Note20 Ultra 5G、Sペンの使用感について先生のお仕事場でインタビューしました!
※インタビューは2020年12月に実施いたしました
前回実施した坂本眞一先生のマンガ制作技法やキャラクターデザインなどのお話はコチラ!
▷【グランドジャンプ】デジタルでマンガを描く!「イノサンRouge」坂本眞一先生インタビュー
漫画家。2010年、「孤高の人」で第14回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。2015年から2020年まで、集英社『グランドジャンプ』で『イノサンRouge』を連載。2021年1月20日発売の『グランドジャンプ』4号より『#DRCL midnight children』の連載を開始し、2022年2月18日に待望の第1巻が発売予定。
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マンガ家になるという目標をたてた時から、ホラーという要素は必ずどこかでやりたいと思っていました。
—フランス革命(1700年代末)に続いて、ドラキュラ(1885年が舞台)を題材にした『#DRCL midnight children』の連載を2021年1月から始められましたが、ドラキュラをテーマに選んだ経緯を教えていただけないでしょうか
坂本
マンガ家になるという目標を立てた時から、ホラーという要素は必ずどこかでやりたいなという気持ちがありました。
『孤高の人』、『イノサン』と続けて、3番目の作品というのは、自分の作品作りにおける世界観が完成される位置だと思っているので、ここで自分のやりたかったホラーを持ってくるという意味合いは大きいと思っています。
あとは、今はSNSもそうですし、マンガを描けば日本だけではなく世界と繋がれる状況なので、日本だけでなく、多くの読者に対してお届けできるキャラクターは何かと考えた時に、「ドラキュラ」が浮かびました。ドラキュラはどの国の人も知っている有名なキャラクターと言えますよね。
—ホラーをやりたいと昔から思っていたとの事ですが、そのきっかけは何ですか?
坂本
『週刊少年ジャンプ』に出会う前の小学校低学年の時に、自分たち子供の間で、恐怖コミックスを貸し借りして読むのが流行っていた時期がありました。ちょうど世間でもオカルトが流行っていたんですね。
自分の中でマンガというものに対しての一番最初の入り口が、ホラーマンガだったんです。
その後、『キン肉マン』と『北斗の拳』という、マンガの中でもよりキャラクター性の強いものに出会って、またキャラクターマンガというところに入っていくんですが、やっぱりその時の「マンガを読んで怖かった恐怖体験」を自分の中から出してみたいという思いが今でもあります。
—ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』を漫画に落とし込む際に、大切にしている事はありますか?
坂本
一番はドラキュラという、人々の生活を脅かす外敵であり、障壁となる存在をどうやって克服していくのかというところを大事にしています。
それは性差であったり、人種の壁であったり。そういったものを越えて人々が一つになって協力して、人間の敵であるドラキュラというものを克服していく物語なので、その人間ドラマを大事にしていきたいなと思っています。
—読者に楽しんでほしいポイントもそういった部分でしょうか
坂本
そうですね、今の日常、僕たちが生きている世界にもある問題を、マンガのキャラクターたちが苦しみながら、どうやって乗り越えていくかというところを見ていただいて、共感していただけたらと思っています。
あとは、恐怖描写ですね。読者を怖がらせたい、ちょっと絶望に落としてみたいなって気持ちもあります。でも一番描きたいのは人間ドラマです。
—今回の『#DRCL midnight children』で取り組まれた表現上のチャレンジはありますか
坂本
今持っている自分の常識を覆す事ですね。
どんどん世の中のスタンダードというものが変わっていく状況だと思うので、自分がそこに追いついて、世の中のスピードと一緒のスピードで走って、付いていくというのが、今回の物語を書くにあたっての大きな目標ですね。
目の前にあるものが当たり前だという風に思わずに、もっともっと自由に捉えたい。 男女の恋愛が普通と言えない世界になってきているじゃないですか。今までは、マンガを描いていけば、ヒロインと主人公が恋に落ちる、というのが定番になっていたと思うんですが、それすらも常識として疑っていくという姿勢で、自分の中の常識をどんどんひっくり返していきたいです。
そこが、『イノサン』からもう少しハードルを上げた自分の中でのチャレンジだと思います。 絵的なところでいうと、『イノサン』では画面を密に、装飾服飾を凝って画面を埋め尽くしていったんですが、今回は闇の世界や、空間をふんだんにつかった演出で画面作りをしていきたいと思っています。その二つがチャレンジですね。
—『イノサン』では輪郭線を無くす表現を突き詰めたいと仰っていましたね
坂本
そこも引き続き挑戦していきたいですね。特に今回は、ゴシックホラーなので。
ゴシックは「存在がおぼろげで確定しないという」定義があるので、アナログ原稿ではできないような表現ができる、砂(ディザ)のようなスプレーブラシなどを使用しています。背景も昔は輪郭としてペンを引いていましたが、それすらも今は疑いを持って、線を引かずにトーンと色の質感で陰影と立体感を着けていくという方法を模索しています。
—コロナ禍で現地の取材なども難しいかと思いますが、どのように資料(実際の服や本など)を集められているのでしょうか?
坂本
今回は一度もイギリスに足を運べないので、知り合いを通じて、現地に滞在しているカメラマンさんに取材を依頼して、ドラキュラの舞台であるウィットリーに行っていただいたり、ロックダウン前のロンドンでドラキュラゆかりの場所を取材していただいて、なんとか背景の資料を集めました。
あとは、ジョサイア・コンドルという、ドラキュラの舞台となった年代を生きた建築家の方が日本でたくさん建造物を作っていて、実は当時のイギリスと同じ様式の建物が東京都内にたくさんあるんです。そこに足を運んで写真を撮ったりしています。 意外と日本で撮った写真で物語ができちゃうんじゃないかってくらい、今回の舞台に役立ちました。どうしても前回のイノサンのフランス・ロココの様式だと身近にないんですが、18、19世紀の様式の建物は意外と身近にあるので、資料には困らないですね。
—ドラキュラをモチーフにした作品は、小説・映画・マンガなど数多くありますが、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』以外で、坂本先生が影響を受けたもの、面白かった作品などありますか
坂本
子供の頃繰り返し見ていたホラーといえば、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』とか、フランケンシュタインとか狼男とか、そういう、幽霊ではないモンスターものですね。何故そこに現れてそこにいるのか定かでないようなものに子供の頃は夢中でした。
幽霊だと直接的な恨みがあったりしますが、彼らには無いんですよね。ドラキュラ自身も無差別なので、今回のコロナ禍の状況においてドラキュラという立ち位置がとてもリンクすると思いました。コロナは感染する対象を選ばないですから。そこがモンスターの面白いとこかなと思います。
坂本先生が追求した新たな表現を是非体感してください。
@mangaart.jp これは漫画か、絵画か、映画か? 『#DRCL midnight children』の坂本眞一が描くゴシックホラータイムラプス。 music by Hiromichi Sakamoto #DRCL #坂本眞一 #timelapse #mangaartist #漫画家 ♬ オリジナル楽曲 - Shueisha Manga-Art Heritage
去年一番の変化は、外で絵を描く機会が減ってしまったことです。
—前回(2018年11月)のインタビューでは、iPadを使用してネームを書いているとお伺いしましたが、その後、メインのパソコン以外での漫画制作環境について変化はありましたか?
坂本
コロナによる自粛がすごく大きく影響していて、外で絵を描く機会が減ってしまいました。そのため机の上で終始制作しています。漫画制作環境の変化といえばそこかなと思います。外に出なくなったことはここ一番の事件ですね。
—以前カフェで作業することもあると仰っていましたが、自粛生活では難しいですね。
坂本
そうなんです。カフェでゆっくりはできないので、そこがものづくりの中での一番の変化です。夜中に出かけるのが結構好きだったんですが、時短営業で10時でお店が終わってしまう時期もあり、家の中で作業するようになりました。
手のひらの中で全て作業できる、世界が作れるという、全能感というか、そういう不思議な感覚があります。
—Galaxy Note20 Ultra 5Gは筆圧検知機能がついていますが、Sペンでの描き心地や、線のレスポンスはいかがでしたか
坂本
まったく申し分ないです。こちらが描こうとしている意志というか、描きたいと思う線が素直に、流れるように描けるので、まず第一印象は気持ちいいなと思いました。ガラスの上にペンを走らせるという行為に違和感があるかと思っていたんですが、書いていて心地いいというか、ずっとこのペンを走らせていたいという妙な気持ちになりました。これはペン先の質感で計算されている事なのか分からないんですが、すごく気持ちいいです。
—ありがとうございます。では描いていて不便なところはありませんでしたか?
坂本
手のひらで収まるサイズの原稿は最初、ちょっとどうなのかな……という戸惑いはありましたが、描いているうちにどんどん没頭していく感覚は普段の作業で使っている液晶ペンタブレットと変わらなかったため、画面の大きさには全然ストレスを感じませんでした。
逆に、俯瞰で画面を見れるという意味では、この大きさも悪くないと思います。
—PC版のCLIP STUDIO PAINTとスマートフォン版ではUIの配置が違いますが、いかがですか?
坂本
PC版で道具の使い方は分かっているので、一度覚えてしまったら、こっちとこっち(PCとスマートフォン)の書き分けはあまりハードルが無いと思いました。初めてに近い状態でもすんなり作業できたので。
—クリエイターさんが新しい環境になる時に、UIで苦戦される方が多いのでそう言っていただけるとありがたいです。
坂本
本当にすんなりと自分の感覚に馴染んでいけました。なんだろう、不思議な感覚ですけど、手のひらですべてが作業できるという、全能感っていうんですかね。小さいけど手のひらでものを作れる、この中で世界を作れるという万能感というか、そういう不思議な感覚があります。この中で作品を作れる面白さ、可能性を、この小さな画面からからでも感じられるのが凄さだと思います。
—CLIP STUDIO PAINTはPCからiPad、Androidというかたちでマルチデバイスに対応してきましたが、今後スマートフォン含めて活用できそうなシーンはありそうですか?
坂本
やっぱり場所を問わずに描けるというのも一番でしょうし、スマホで描ける一番の凄さは、思い立った時に描きたいものが形にできるという便利さですね。どうしてもPCで作業する時は、電源を入れてソフトを立ち上げて……という自分を高めていく儀式が何段階かあるんですよね。スマホはそういう作業が無くて凄く敷居が低いので、すぐさま自分の思い描くイメージを落とし込みやすい、形にしやすいというスピード感が良いですね。
—2020年のアップデートでCLIP STUDIO PAINTにタイムラプス機能が搭載されました。以前から先生のTwitterやInstagramでは、タイムラプス動画を投稿されていますね。
坂本
SNSがこれだけ身近なものになってるので、マンガって完成した時に発信できるだけでなく、作っている最中も、きっと読者さんや見ている人にとってすごく面白いパフォーマンスだと思うんですね。なので簡単に作業風景を記録できるのは凄くありがたいです。
—先生はTwitterよりInstagramにタイムラプスを多く上げられていますが、どのように使い分けているのでしょうか。
坂本
ツイッターとインスタでは見る人の感覚が違っていて、ツイッターは情報を眺め見る、インスタは絵をふんだんに流していいイメージがあるので、遠慮なく上げてしまいます。まあちょっと遠慮してるとこもあるんですけどね(笑)。
結構海外のフォロワーさんがたくさんいてくれているので、海外の方に向けている時は、海外の方が起きている時間を意識して、夜中に上げたりしています。
—Android 9 以降(スマートフォン/タブレット)でCLIP STUDIO TABMATEが使用できることをご存じでしたか?
坂本
今さっき知って、衝撃でした。みなさん色々苦労して買ってきて試しているのは知っていたんですけど、自分が普段使っているものがそのまま使えるのはありがたいですね。
—坂本先生のスタジオは現在どのような体制で制作されているのでしょうか(通い、在宅など)。コロナ前後で変化したことなどがあれば教えてください。
坂本
どうしてもうちの職場だと、資料が膨大にあるので、リモートでやるとなると結構難しいんです。
まだ作品の走り出しなので、ある程度資料やテクニックの伝達が固まっていけば、リモートも可能だとは思います。今は新人アシスタントさんへの伝達や描き方など、直に教えるものがたくさんあるので、もうちょっと対面で仕事をしていきます。ただ間にプレートを入れたり、作業中はマスクを着けるとか、そういう事は継続して徹底してやっていきたいですね。
—以上です。ありがとうございました。
坂本
ありがとうございました。
新たなる吸血鬼伝説の幕が開く。恐怖は伝染し、人類を支配する…。
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2022年2月18日第1巻発売!
集英社グランドジャンプ公式サイト
(C)坂本眞一/集英社
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