漫画のネタ出し・詰まった時の対処法【漫画家調査レポート】
漫画家志望者や商業連載を経験した漫画家みなさんが悩まれる漫画制作過程の『ネタ出し』。「ネタ出し方法を調べてみたけどイマイチよくわからない・・・」「他の漫画家はどういう風に考えているか知りたい」そういう方々に向けて、今回は少年・青年・少女・女性向け漫画作品を連載・生み出した漫画家のみなさまから、普段実践されている漫画のネタ出し方法やネタに詰まった時の対処法について伺いました。
漫画のネタ出し・詰まった時の対処法についてコメントいただいた漫画家のみなさま
安藤正基 先生・池田春香 先生・おしおしお 先生・佐倉おりこ 先生・桜井のりお 先生・真田つづる 先生・末次由紀 先生・殿ヶ谷美由記 先生・二ノ宮知子 先生・万丈梓 先生・ムサヲ 先生
※五十音順で掲載
●安藤正基 先生
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【漫画作品】
・八十亀ちゃんかんさつにっき
・ぶんぐりころころ
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
一気にすべてを解決するアイディアというのは、なかなか浮かばないものです。僕が漫画家志望時代から続けているのは、「どんな些細なネタでもメモに残しておく」ことです。今すぐには使えなさそう、発想の種の種でもいいのでメモをし、定期的に見返します。メモするのは「たった一言のセリフ」でも「気になった単語」でも何でもいいです。僕はiPhoneのメモ帳機能アプリに入れて、どこでも書け、いつでも見返せるようにしています。実際に「文房具漫画」というだけのメモを数年後に見返し、文房具を題材にした漫画を連載したこともあります。時間を置くことで客観性が増し、クリアな状態でネタと向き合うことができます。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
「横になり目を瞑る」「お風呂に入る」など、音楽や映像など余計な情報がない状態で思考を巡らせると、さっきまで思いつかなかったアイディアがすっと出てくる時があります。机に向かって出るアイディアは、あんまり期待できないことが僕は多いです(笑)
●池田春香 先生
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りぼん編集部企画YouTube『まんがみたいな恋がしたい♪』
【漫画作品】
・ロックアップ プリンス
・たったひとつの君との約束 ~また、会えるよね?~(原作:みずのまい)
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
ネタの出し方は生活する中で疑問に思った事や惹かれた事を、それが高校生活の中なら…ファンタジーの中ならどういうキャラが行動して起きるエピソードなのかと組み立てていきます。具体的に最近だと、ニュースなどから「人は知らない事が怖いんだなぁ」と思いファンタジーの舞台で植物を枯らす魔法を使う怖がられている女の子の話を描きました。実生活で感じたことを、スライドさせたり発展させてネタにしています。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
ネタに詰まった時は、知らず知らずのうちに影響を受けるのが怖いので、なるだけ仕事から遠い事をやります。一番多いのは友達や担当さんと雑談すること、あとは掃除、料理、お散歩などです。ネタが自分の中に全く無い人って逆にあまりいない気がしていて雑談や家事などは、自分の中にある興味や考えを整理してくれて「あっコレがネタだったんだー!」って発掘する感じです。
●おしおしお 先生
Twitter / pixiv / WEBサイト
【漫画作品】
・しかのこのこのここしたんたん
・さくらマイマイ
・神様とクインテット
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
日常生活でネタにできそうな出来事や会話をメモして、そこからふくらませてネタに落とし込むことが多いです。キャラクターごとに「本当にこの子はこういう言動をとるのか」ということに注意しながら、ネタの取捨選択をしています。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
数時間でもいいからいったん時間を置いて、テレビを見たり家族と(ネタとはまったく関係ない)世間話をします。ネタが出ない時は視野が狭まってる状態なので、とにかく他に目をやってみてヒントを探します。それでも思い浮かばない時はネタを出す前の段階でそもそもつまづいてる可能性があるので、その原因を探ります。
●佐倉おりこ 先生
Twitter / YouTube / WEBサイト
【漫画作品】
・すいんぐ!!
・四つ子ぐらし(原作:ひのひまり)
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
テーマとなったところに取材に伺い、実際に経験したことはネタにしやすいです。例えば、漫画「すいんぐ!!」はゴルフをテーマにした作品なので、実際にコースを体験することでしか得られないような小ネタもゲットできて、漫画での表現もよりしやすくなります。面白いホールや住んでいる生き物、ゴルフ場の雰囲気なども目で見て表現できます。注意点は、誤った情報を漫画で描かないように、題材などに対する勉強も必要になります。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
一番どのシーンを魅せたいのか、一番何を描きたいのかを決めて、そこに繋げていくためにストーリーを肉付けすると考えやすいです。あと、キャラクターの立場に立って考えてみると、こういうときこの子はどうやって行動するのかなど、キャラが頭の中で自然と動いてくれます。自然と動いてくれないときは、キャラクターの設定や個性がまだ弱い可能性があるのかもしれません。
●桜井のりお 先生
Twitter / pixiv
【漫画作品】
・僕の心のヤバイやつ
・ロロッロ!
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
家ではくつろぎ過ぎて頭を使えないので、基本的にカフェやファミレスで考えています。「こういうキャラを描きたい」みたいな所から入ることもあれば、流行ジャンルを自分ならこうする…といった作り方もあります。説明的でもいいので極力わかりやすい導入を心掛けています。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
別の話(展開)を考えます。参考になりそうな漫画や映画を観ると逆に悩んでしまうタイプなので全然違うジャンルのものを、ただの娯楽として楽しんだりしています。
●真田つづる 先生
Twitter / ハウツー本「いまからまんがを作ります。」
【漫画作品】
・私のジャンルに「神」がいます
Q1-1:ネタの出し方
マインドマップを書いてみることをお勧めします。マインドマップとは、ひとつのテーマを中心に、次々に言葉を繋げていく放射状の図のことです。例えば「ラブコメ」を作りたいなら、用紙の中心に「ラブコメ」と書きます。そこから「主人公」「ヒロイン」「ライバル」…など、思いつくままに言葉を繋げていきます。この方法の良いところは、頭の中にある雑多なアイデアを「見える」ようにすることができるところです。
ただ雑多に言葉を繋げていくだけでも、「私、この言葉を見るとわくわくする」「私の好きなキャラの共通点はこれだったんだ」「そういえば、最近観た映画でも…」というように、心の中に眠っている「ネタ」を掘り起こすことができます。
自分が「わくわく」を感じる言葉に注目して、言葉を繋げていくといいですね。自分が「描きたい」と感じるものが明確になっていくはずです。アイデアが広がると書くスペースが足りなくなることがあるので、デジタルでの作業をおすすめします。
Q1-2:考えたネタに対する注意点
ただ何となく「こういうのが人気だから」「今流行っているから」といったような理由でネタを選ぶのはお勧めしません。自分の「描きたい」気持ちに合致しているか、そのネタにわくわくするか、そういった自分の内側から自然に発せられる気持ちを大切にしてください。
「こういうのが人気だから」というだけの理由で漫画を描けば、読者に伝わってしまいます。読者は「あなたらしさ」に興味があります。あなたがどんなものに「わくわく」を感じ、生き生きと漫画を描けるのか、自分を探ってみてください。自分を探るには、先ほど説明したマインドマップが役に立ちます。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
1,一旦作業から離れて、映画を観る、街に出るなど他のことをしてみる。思いもよらぬところからヒントが降りてくることがあります。
2,人と話す。「こういうところで詰まってるんだけど…」という話題から始めて、連想される漫画の話、最近読んだ本や観た映画の話、お互いの体験談など、話を広げていきます。すると、思わぬタイミングでネタが降ってきたりします。
1と2どちらも、楽しみながら「視野を広げる」「インプットする」ための方法です。
●末次由紀 先生
Twitter / Instagram / 00:00 Studio / ちはやふる基金
【漫画作品】
・ちはやふる
Q:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
ネタは1日で急には出てこないので、常日頃からアイデアのノートを作っておくようにしています。物語は「キャラクター」と「突き崩していきたいテーマ」がないと動き出さないので、出会った人がふと口にした癖の話やびっくりしたエピソードなどをたくさんメモしています。何か描こうと思った時にそのノートを端から端まで見返すと、自分以外の誰かの思いもかけない個性や考え方の蓄積に触れらて、「こんなふうにものを考える人が、突然ヤンキー娘を養子にもらったらどうするだろう?」など組み合わせて考えたりします。
注意点は「時間を決めて作品にする」ことかもしれません。完成度が高まるまで考え続けよう、と思っていたら決して出来上がりません。時間の制限を作って「○月の締め切りに上げる」と決めるのが、アウトプットをやり遂げるコツです。
●殿ヶ谷美由記 先生
Twitter / pixiv / Instagram
【漫画作品】
・氷属性男子とクールな同僚女子
・だんだらごはん
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
基本的には「読者としての自分」が読んでどう思うかという目線で考えます。
自分はどちらかと言うとエンターテインメント色の強い作品が好みで、そういう方向性の作品を描きたいと常々思っているので、特に「描き手としての自分」の満足ではなく「読者の自分」が納得するものを心がけ、独りよがりなネタにならないように気を付けています。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
ネタが詰まった時は、詰まった場所そのものよりも前の展開やセリフが間違っているせいで流れがおかしくなっている事が非常に多いので、詰まったコマやページを何度も描きなおすよりは、詰まった場所の1~2p前のページから見直すと早く抜け出せると思っています。
●二ノ宮知子 先生
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【漫画作品】
・七つ屋志のぶの宝石匣
・のだめカンタービレ
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
ネタは本を読んだり、人と話している時に面白いと思ったことを使う時もあれば、取材に行って取ってくる時もあります。ストーリーを先に決めて、それに合うネタやキャラを考えだしたり取材で取ってきたり、逆にネタありきでストーリーを決めたり。ネタは料理でいうなら材料。カレーを作りたいからカレーに合う材料を探しに市場へ行くこともあれば、市場で旬の野菜を買ったのでそれに合う料理を考えることもある。後者は自分じゃ考えつかなかった料理(ストーリー)が生まれることが多いので、わたしはとりあえず市場(取材や勉強)に行ってみるのが好きです。
そしていい食材が揃っていても、美味しい料理ができるかどうかはシェフの腕次第。プロとして毎回なんとか食べられるレベルの料理にはしているつもりですが、自分的には満足できない料理の時もありますし、あそこでスパイスをもっと入れておけば…なんて反省もよくします。それから、調理するのがあまりに難しい食材(ネタ)を買ってきてしまって、使えないまま捨てることも多々あり。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
冷蔵庫が空っぽなら買い物へ行った方がいいですね(人と話したり本や映画、取材へ)。買い物へ行く時間がない時は、食材がモヤシひとつでも、持ち前の調味料と料理のテクニックでどうにかするしかないですよね。いいキャラがいれば助けになる時もあります。
●万丈梓 先生
Twitter / pixiv / Instagram
【漫画作品】
・恋する(おとめ)の作り方
・変則系クアドラングル
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
「絵を書きまくって案出しする」というやり方があまり得意ではないので、まずは頭の中でとにかくキャラ同士を会話させます。その時はセリフだけではなく、絵としてどのような場面・表情で喋っているかも頭に思い浮かべます。その中で、キャラがいい表情をしたり心に来るセリフが思いついたら、その場面を一番盛り上げられるようにセリフプロットやネームを組み立てます。文字で脚本のようにシーンを書き出すという方法もあるのですが、それをすると結果的に絵にする時に詰まることが多い気がします。(あくまでキャラ漫画という前提ですが)まずは見せたいシーン優先で、それを起点にフリやオチなどを後からロジカルに作っていくとブレにくいと思います。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
漫画で大事なことは「演出力」だと思っているので、とにかく日頃からドラマや映画・漫画やアニメで「心に来る演出」を体験しておくことが大事かなと思います。なので気分転換にそういうのを見返してもいいかもしれません。自分の書きたい傾向の音楽などを流しながら、それに沿って自分のキャラでアニメのOPを勝手に作って遊んでみたり、いいBGMに合わせてセリフを言わせてみたりすると、そこから「絵になるシーン」がぽんと出てくることもあります。
机の前に座っていても何も思いつかない場合が多いので、お風呂に入ったりボーっとしている時に精神内のキャラ世界に没入して考えるといいアイデアが思いつくことが多いです。
●ムサヲ 先生
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【漫画作品】
・恋と嘘
Q1:ネタの出し方・考えたネタに対する注意点
ネタの出し方…ちょっとした用事で通り慣れた道を自転車に乗ってたり原付で走ってる時に浮かびやすいです。徒歩でも浮かぶ時はあるんですが何かしら目的があって仕方なく歩いてる時の方が浮かびやすい気がします。よーしネタ出しするぞ!って歩き始めて浮かぶ事はわりと珍しいです。
あと時事ニュースやネットの話題は何年も前から日課でチェックするようにしてます。
注意点…担当さんや身内にどう思う?って意見を貰ったりします。第三者から見てどうか?はかなり聞く方です。
Q2:ネタに詰まった時の対処法
クロッキー帳にひたすら思いつくものを文字で書いてみたり寝たり散歩します。寝るのが多いかな。
あと私は人に話すために話を整理しながら口に出して言葉にしていると、自分が何がしっくり来てないのか?や何に納得できてないのかが具体的に見えてくる事が多いので、担当さんに電話で延々と話を聞いて貰ったり壁打ちの壁になって貰います。
いかがだったでしょうか。各誌で活躍されている漫画家みなさま多様な漫画ノウハウを持たれていました。それぞれの漫画家の手法ノウハウを学び、自分に合ったものは何か考え実践し、今後の漫画制作に活かしてみましょう。みなさまの漫画作品楽しみにしています!
最後に今回ご協力いただきました漫画家のみなさま、安藤正基先生・池田春香先生・おしおしお先生・佐倉おりこ先生・桜井のりお先生・真田つづる先生・末次由紀先生・殿ヶ谷美由記先生・二ノ宮知子先生・万丈梓先生・ムサヲ先生、ご協力いただき誠にありがとうございました。
■ オリジナルキャラクター(オリキャラ)の作り方
漫画のネタ出しと同様に重要な『オリキャラの作り方』。漫画のキャラクターを生み出す際どこから作り上げていくのか、魅力が足りない時の対処法や新キャラを追加する際に気を付けていることなどを商業連載されている漫画家に伺いました。是非こちらも合わせてご覧ください。
■ アンケート
「可愛いキャラが描けない」「キャラクターの設定で悩んでしまう」など漫画を描いて悩まれることはありませんか?色んな漫画家の意見を聞いてみたいことがございましたら、下記のアンケートフォームにご記入ください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。
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