【編集長の部屋7】E★エブリスタ 池上真之社長①「エブリスタはネット界の文芸誌みたいな位置付けで、漫画原作者を育てます」
「編集長の部屋」コーナー7人目は、株式会社エブリスタ 代表取締役社長の池上真之さんです。E★エブリスタは、2010年6月にサービス開始した、携帯、スマホ、Web向けに小説やコミックを投稿できるコミュニティサイト(UGC)です。サービス開始から既に4年以上経ち、多くのユーザーを獲得し、多くの作家のデビューを支援しています。エブリスタ全体には編集長にあたる方はいないのですが、その代表として池上さんにお話をうかがいます。(※肩書は取材当時)
ネット界の文芸誌みたいな位置付けが大きいと思います
―エブリスタ設立の経緯を教えてください
E★エブリスタは、Webとガラケー向けに、小説やコミックを配信するコミュニティサイトです。
株式会社エブリスタは2010年4月にNTTドコモとDeNAの合弁会社として設立した会社になります。元々、モバゲーの中に携帯小説のコーナーがあり、ユーザーの人気を集めていたのですが、事業の形には当時まだなっておらず、そこを事業化するために、ドコモと一緒に合弁事業をしていくということで立ち上がりました。
―小説が多いが、マンガもあるサイトということですね。エブリスタは何を目指してきたのですか?
立ち上げ時より、みんながスターになれる場になれるようにと、Everybody Star ということでエブリスタと名付け、開始しました。プロとアマの垣根を失くして、その中間に連続的に存在するようにしようと考えてきました。元々、プロとアマの間に、高い垣根があったので、その間に場を作って、プロとアマの間の懸け橋になれる存在になろうと考えていました。
―ネット界の同人誌販売会という感じでしょうか
というよりも、ネット界の文芸誌みたいな位置付けが大きいと思います。同人のサークル的ノリと言うよりは、よりプロに近い所を狙っています。
― 文芸誌と言うと、衰退しているイメージがありますが
紙の世界ではそうかもしれません。私が文芸誌と言ったのは、エブリスタを「作家が成長する場」と考えた場合、読者がいてライバルがいて、磨きあって行ける場として、文芸誌のイメージに近いと思ったという所です。ネットがある前提で、そういう場を作りたいという思いが強いです。
紙の文芸誌は減っているので、作家が育つ場も減ってきていると聞いています。ネットの世界でそういう場が出来ると良いと思っています。
―今のエブリスタパワーを教えて下さい
日次のユニークユーザー数が100万人です。(アプリとブラウザは重複計算)母艦となるアプリのダウンロード数は600万ほどです。作品単位で切り出す形でコミックアプリの配信も行っていますが、こちらは12月にダウンロード数が累計1,000万を超えました。
― 凄いパワーですね!しかし、実はあまりそのパワーが数値として聞こえてこない印象もあるのですが。やはり、ガラケー時代からのお客さんが続いていて、所謂マイルドヤンキー層に受けている部分があるのではないでしょうか
そうですね、都心部で見ている人が少ないので、メディアに扱われる機会が少ないかもしれません。ユーザー数は、他の同じようなサービスに比べると、地方のほうが多いです。地方に行った際に地元の方とお話しすると、エブリスタの作品のことを良くご存じだったりします。
―そういった最終ユーザーの方は、エブリスタの作品を読んでいるという認識は持っているのですか?
それが、作品ほどは持っていないのです。『王様ゲーム』や『奴隷区』『通学シリーズ』『偽コイ同盟。』など有名作品名は、みんな知っているのですが、サービスとしては「モバゲーだったサイト」みたいに言われることも多いです(笑)エブリスタ自体の認知と言うのは後手に回っている感じはしますね。
エブリスタは、サービス名ではなくて、作家をスターにするのが目的ですから、それで良いと思っています。映画化した時も、作家や作品にフォーカスして紹介や売り込みはしますが、あまりエブリスタと言うプラットフォームの話は前に出しません。
―コンテンツの展開先は、どちらになるんですか?
エブリスタのサイト以外では、docomoのdクリエイターズやモバゲーなども、展開先になります。
―その2つにコンテンツを出すと、また莫大なユーザー数ですよね
E★エブリスタ躍進の切り込み隊長にして起爆剤となった『王様ゲーム』
これまでのマンガがヒットしていく道筋とは少し違う広がり方をしている
マンガボックスがコミックス中心に、エブリスタは漫画原作者を育てていく形を強めていく
―エブリスタの中でのマンガの位置付けを聞かせてください。小説がマンガに展開するパターンと、コミックと言う事でマンガをアップするパターンがありますよね
その辺りは、この半年の中でも変わってきたのですが、エブリスタ自身が、現在は親会社のDeNAと一体となってヒット作を作って行こうという取組が出てきました。エブリスタも順調に成長しているのですが、DeNAはマンガボックスを開始しました。今は、エブリスタもマンガボックスも一体となって、ヒット作品を作っていこうという動きになっています。
そうした中で、マンガボックスインディーズとエブリスタのコミック部門は被っていく所があると思います。そこで、今後のエブリスタは、よりスマホ小説から始まる漫画原作のほうに向かっていくと思います。
―なるほど。マンガボックスがコミックス中心に、エブリスタは漫画原作者を育てていく形を強めていくと
そうですね。とはいえ、販売プラットフォームとしてマンガを売っていく事は継続します。
エブリスタの小説については、だいたい40ページ以上のものを、1冊40円くらいで販売しています。これはなかなかパワーが合って、毎日、トップの小説は(1日で)1000部を超えるくらい売れています。
コミックでは、40ページを40円くらいで販売(作家が値付けを出来、最大1冊120円に出来る)しています。1位で100部くらいです。
ともに、日本有数の売れ行きのプラットフォームだと思います。
こういった形で販売するようになったのが、2013年の8月からなのですが、これまでエブリスタの中で、累計で100万円以上を売ったという作家が、20人以上います。
―それはパワフルですねぇ。マンガボックスとの位置付け的にはどのようになりますか?
現時点でマンガボックスには、作品を課金して販売する形はありません。ですので、広く沢山の人に読んでもらいたいのならマンガボックスのインディーズに、課金して販売したいなら、エブリスタに載せてもらうのが良いと思います。
―エブリスタは、マンガボックスインディーズと同様に、編集者のいないセルフパブリッシングの形ですよね
そうです。
それから、漫画原作者を輩出していく形としては、今後は、エブリスタの中で小説を投稿した方を、マンガボックスや、エブリスタ内のエジコミやヤンマガ海賊版というサービスで、漫画化するという形にしていこうと思います。エジコミ(エッジスタコミックス)でマンガを描かれている作家さんの中には、エブリスタに作品を投稿されていた方もいらっしゃいます。
―エッジスタコミックスやヤンマガ海賊版の位置付けを教えてください
エブリスタの中で、小説として投稿されたものを、マンガとしても読んでいただけるように、つくりました。
― エブリスタでマンガを描いている人にはどんな傾向がありますか?雑誌でもなく、こういうセルフパブリッシングのプラットフォームを選んだ理由はあるのでしょうか
エブリスタでは、エブリスタコミック大賞などイベントを良くやっていました。そこで、投稿者同士で仲間を見つけて、作家仲間や読者と気軽に話しながらコミュニティが出来るんですね。エブリスタの作家同士でコミティアに出展するなどしていました。
そういった仲間が出来るということが良かったのかもしれないですね。そういう意味では、他のサービスよりも作家同士のSNS的な要素が強かったのかも知れません。
このマンガがすごい!WEBなどでも評価された実力作。
パニックホラーものの最先端と言える。
【編集長の部屋7】E★エブリスタ 池上真之社長②「サービス開始4年で累計10億円位はクリエイターにお戻しできていると思います」へ続く
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