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コラム
2016年12月22日

グランドジャンプ新人賞「R30漫画賞」:R30な諸君!君の才能でマンガ界にRしないか?


今年、創刊5周年を迎えたグランドジャンプが、初の新人賞「R30」を創設しました。リベンジ、リスタートなど、様々な思いを込め、30代に特化したユニークな新人賞の特徴や求める作家像を、担当者のお2人にうかがいました。【PR】

  【話者プロフィール】 グランドジャンプ編集部 小野寺宏次さん

これまでの主な担当作品:「BLEACH」、「ピューと吹く!ジャガー」、「SKET DANCE」、「バーテンダー a Tokyo」、「怨み屋本舗」 編集者歴:8年、グランドジャンプ歴:1年半、普段されている仕事:最近は漫画原作家の城アラキ先生とBARを取材することが多いです。

  【話者プロフィール】 グランドジャンプ編集部 金成圭さん

これまでの主な担当作品:『地獄先生ぬ~べ~NEO』『霊媒師いずなAscension』『不能犯』『HUNTER×HUNTER』『トリコ』『家庭教師ヒットマンREBORN!』『そしてボクは外道マンになる』『SKET DANCE』編集者歴:入社9年目(週刊少年ジャンプに8年在籍)、グランドジャンプ歴:6ヶ月、普段されている仕事:『ぬ~べ~』『いずな』『不能犯』の打ち合わせ・入稿・校了。あとは記事ページや、雑誌全体の記念企画などを担当しています。


いつの間にかいなくなってしまう30代の作家さんたちのために、受け皿を作りたかった。

―グランドジャンプ創刊5周年おめでとうございます。早速ですが、新人賞「R30漫画賞」の出来た経緯を教えてください。

金:グランドジャンプは、今年創刊5周年を迎えたのですが、この機に、新たな才能を迎え入れるためにも、R30を新設しました。青年誌のマンガ賞としては後発ですので、思い切って特徴のある賞にしようと考えました。

―その特徴が、名前にもなっている「R30」というわけですね。その狙いはなんでしょう?

小野寺:R30という名前の通り、アラサーや30代の「マンガを描きたい、描いてみたい」という作家を、お誘いしている賞です。

 私も金も、もともと週刊少年ジャンプ編集部(以下、少年ジャンプ)にいたんですが、少年誌では20代の作家さんは重宝されやすい。一方、30代になった作家はなんだかいつの間にか、彼らの場所がなくなってしまっているような気がして・・・

自分たちが青年誌に配属されたので、グランドジャンプが、そんなR30作家の場所として機能できたら良いなと考えました。

―30代の作家さんは、なぜいなくなってしまうのでしょうか?

小野寺:おそらく、30代になると週刊連載は体力的にしんどくなっていくし、一度連載打ち切りになると、時間、体力、根気と、あらゆる面でそこから盛り返すのは、大変なことだと思うんです。それで離脱してしまう人がいるのではないかと考えています。

20代の作家が、色々なチャレンジを続けて歳を重ねると、少年誌の想定読者と年齢が離れていき、雑誌と作家の間が離れていってしまうことも原因のひとつかも知れません。

-そこで、青年誌であるグランドジャンプが、そこをなんとかすべく作ったのがR30ということですね。

小野寺:Rはリベンジ・リスタート・リアライズなど、色々な意味を込めています。それら全てを掛け合わせ、「君の才能でマンガ界にRしないか?」というメッセージを打ち出しています。

 (c) 坂本眞一/集英社 (c)増田晶文・松本救助/集英社 
(c)横幕智裕・モリタイシ/集英社 

-グランドジャンプは、編集者も30代がほとんどということも聞きましたが。

小野寺:はい。全員がそうです。更に連載作家さんも30代以降の方が多いですね。

また、グランドジャンプは、想定読者も30代からという雑誌です。連載作品には、『地獄先生ぬ〜べ〜NEO』や『キャプテン翼ライジングサン』など、今、アラサーの人たちが、昔読んでいた作品もあれば、結婚して、子供も生まれ、仕事もし、お酒も飲むという、大人向けの漫画もあります。そういう大人向けの漫画、うちの雑誌にありますよと、多くの人に伝えたいです。

-読者の方にも、R30という傾向があるんですね。色々な新人賞を見てきましたが、ここまではっきり応募コンセプトを前にだしている新人賞は珍しいと思います。「どんな人でも来て下さい。」というメッセージは、時によって、漫画家にとって「自分が対象だ」というメッセージにつながらず、結果的に何も言ってないことに等しいもありますし。

金:とはいえ、決して20代の作家を対象にしないというものではないです。20代でも、40代以上でもウェルカムです。年齢だけで門前払いということはありません。

―20代でも良いのですか?

小野寺:例えば、少年ジャンプに持ち込んで来る20代前半であっても、明らかに大人向けの作品を描く人もいるんです。

大人にとっては共感できても、少年たちに読んでもらうには「きつい」「つらい」「悲しすぎる」みたいな話が上手い作家さんも少年誌に持ち込んでくるのですが、泣く泣くエピソードを切ることもありました。

金:「少年漫画ナイズ」という言葉をみんなが使うかは分からないけど…(笑)、少年漫画の傾向にはまらない、例えば青年漫画が向いていそうな作家でも、上手く少年漫画に寄せられるかな~みたいな話はよく出ましたね。

あとは、単純にエロの壁もありますしね。

―乳首基準とかありますよね?

金:少年誌は乳首については自主的に規制しているところが多いですよね。グランドジャンプは、なんなら乳首だらけです(笑)

小野寺:お酒も、規制なしで出せますね。少年誌ではお酒、たばこは難しいということが多いですが。

―大人向けの話を受け取れる、新人賞ですよという特徴もあるのですね。募集開始からしばらく経ちましたが、応募作品の傾向から見えてきたことはありますか?

小野寺:「どこかの編集部でつらい思いをしてきた人なのかな?」という人や、絵柄が古い作家さんがいたりもしますね。普通の雑誌では良くないことかも知れませんが、R30では絵柄が古くても、気合の入った作品なら、良いと思います。R30のRはリベンジのRでもあるので、諦めきれないとか、まだ死んでないぞみたいな。

ともかく、青年誌業界における後発の賞であるにも関わらず、送ってきて下さるのは嬉しいですね。公式Twitterでも、R30のツイートは反応が良いです。「自分のことを対象にしている」と思ってもらえるのかも知れません。

金:大きな意味で、30代とか、オーバーサーティーとか、そういう言葉にひっかかりがある人は、みんなおいでよということです。勿論、作品が青年誌向けと言われた、大人びた作品を作る若手でも大歓迎です。

30代で漫画家を目指すということ

 ― 一方で、例えばトキワ荘PJでは入居に30歳制限を設けたりしています。30代が近づいてきた人には、就職しながら漫画家を目指すなど、長期戦を勧めたりしていますが、、、

小野寺:逆に、そういう、しんどい状況をマンガにしたら良いと思います。少年漫画では、勝ち続ける作品が良しとされますが、大人は別に勝つばかりではないじゃないですか。

R30のRには、リベンジ、リスタートなど、テーマを込めています。これは「一度負けている人」こそ欲しいという意味なんです。一度漫画そのものを諦めて、また戻ってくるというような人も歓迎です。

金:今まで漫画を全く描いた事は無いけど、面白い人生を歩んできた方で、ストーリーテリングの力があれば、我々のほうで作画の担当をつけるなどもできると思います。

-ちなみに、R30の対象になるようなイメージの、現役プロ作家のお名前はあげられますか?

小野寺:『SKET DANCE』の篠原健太先生は、一度社会人の経験がおありです。

-そういう作家さんは、何か違いがありますか?

小野寺:情熱があるのは勿論として、ある種ビジネスとしてマンガを冷静に捉えているところがあると思います。読みやすい描き方の工夫とか。原作に対する読み込みの深さとかですかね。締め切りを守ってくれるとかも(笑)

『キングダム』の原泰久先生も社会人経験を経ている方ですね。

孤独と孤独が繋がっていくような作品が好きです。

-お2人は、具体的にどんな作家に来て欲しいですか?

小野寺:個人的な趣味でいうと、孤独そうな人でしょうか。誰にも言ってない秘密を持っているとか、変な職業についているとか、ちょっと闇やトラウマを抱えているとか。

永田カビ先生の『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』とか、誰にも言えない自分だけの体験を描いている作家さんが増えている気がします。孤独と孤独がつながっていくような作品が好きです。

-孤独と孤独が繋がる??

小野寺:描き手の孤独が描かれていると、同じような孤独を感じている読み手側も「私のことが描かれている」みたいに感じる瞬間があると思うんです。そういうものが読みたいですね。

-なるほど、金さんはいかがですか?

金:ある意味で打算的だったり、たくらみのある方が来てくれたら良いなと思っています。雑誌のターゲットや、刺さるテーマの本質をしっかり捉え、面白さを他人がわかるように説明できる人とかですね。

例えば、ぼくは盆栽のことはわかりませんが、盆栽の品評会のこととかを、思いきってスポーツの世界になぞらえて、判りやすく、面白く説明出来る人などは良いかなと思います。あくまで例えですが…(笑)

―自分の好きなことを、きちんと説明できるということでしょうか。

小野寺:清野とおるさんは、そういった表現が上手いですよね。『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』みたいな。

金:食品メーカーの営業をしていた人が、新商品のプレゼンをしていたとして、そういう経験は生きてくるかも知れませんね。

―なるほど、自分だけの経験の他にも、普通の社会人経験も、R30には生きるのですね。

小野寺:社会人を経た人はある種、客観的な編集者目線を持ってるということも言えるかも知れません。

先日、甲斐谷忍さんと栗原正尚さんが、本誌の対談でも語っていましたが、「私は会社員をやっていたので、編集の話が良くわかった。」というようなお話はされていましたね。

引用:グランドジャンプNo20特大号「GRAND TALKs 元社会人対談」

-30歳を越えた時、求められるものは変化

栗原正尚先生:働きに出てると理不尽な思いもするじゃないですか。そんな納得いかないと思ったことは、俺は漫画に活きていると思いますね。(抜粋)

甲斐谷忍先生:僕はもうガチガチのサラリーマンだったので、編集者の気持ちがわかる。新人さんが「担当と意見が合わなくて」なんて言うんですけど。いやいや編集の立場って、漫画をビジネスに繋げないといけないから、そりゃ言うでしょって。単に描きたい漫画を載せてくださいって持ち込む人には、その辺はわからないかなとは思いますね。(抜粋)

もう一度、また一緒にマンガ作ってみない?とことん付き合うよ。

-最後に、R30に興味を持って下さった漫画家の皆さんに、メッセージを、、、そうですね。誰か特定の人をイメージしてもらい、その方に向けて出すような形で考えていただけますか?

小野寺:「最近何してんの?飲み行こうぜ。」みたいな(笑)。一度は離れた作家も、長い時間を経て、また会って一緒にマンガをつくりたいですね。

金:グランドジャンプに異動して半年ですが、それまで長い間少年誌の編集と漫画家とい関係で、一緒に仕事をしてきました。少年ジャンプの編集者をしていると、そこにいる新人作家が、どれだけ少年ジャンプに憧れているのか良くわかるんです。

とはいえ、心の中で、「いい歳だし、もともと青年誌向きだといわれているし、一度連載はしたけども、いまはなかなかつらいだろう」と。「一度、とりあえず一緒に飲みに行こうよ。それで、君が良ければ、もう一回2人3脚でやってみようよ」という作家はいっぱいいます。

-お2方の漫画家さんへの気持ちが良く判りました。ありがとうございました!

※ 出稿元 株式会社集英社グランドジャンプ編集部  文:マンナビ編集部




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