マンダンラジオ出張掲載版#8 漫画家は自分が体験したことしか描けないのか
■マンダンラジオ 漫画家2人が漫画について語るラジオ
漫画家として活躍されている安藤正基先生が中心となって、漫画に関するアレコレをテーマに様々なゲストを招いて、ゆるく楽しく語り合うラジオ企画!毎月下旬頃にYouTubeにて配信中!
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※2020年8月31日にYouTubeにて配信された内容を許諾を得て一部記事化内容を再構成しております。是非、本編アーカイブもご覧ください!
安藤正基:
今回のテーマは、定期的に語られる漫画家に関する話題の『漫画家は自分が体験したことしか描けないのか』についてお話したいと思います。当時(2020年8月頃)Twitterを中心にプロからアマチュアまでいろんな漫画家さんが色々な意見をツイートされたりと論争がありました。ちょっと僕らも漫画家視点で触れていきたいなと思います。
僕の意見としてはYESでありNOでもあるなと思っています。
ちると:
例えば連載中の『八十亀ちゃんかんさつにっき』でいえば経験したことはどこに当てはまるの?
安藤正基:
現実にある名古屋を舞台にしている漫画作品だから、全部経験していることじゃないといけないだろうとは考えている。ただ、自分の思い出に準じて描いている部分もあるけど、取材して新たに発見したことを描いたりしていることもあるから情報を刷新している感じだよね。
ちると:
『八十亀ちゃんかんさつにっき』は結構取材している漫画作品のイメージだね。
安藤正基:
そういう意味ではYES、少なくとも自分自身が経験したことは役に立つよねという感覚はある。ちるとさんは『マジメサキュバス柊さん』をはじめ、マニアックなフィクション傾向のある漫画作品を描いている訳じゃないですか。そのあたり、どうです?
ちると:
俺はそんなに経験したことしか描けないかというとそういう訳じゃないとは思うよ。でも、経験したことがないことを描くときは自分自身が酔わないといけないとは思う。
個人的な意見では、経験とか取材をしなくても自分がその良さを信じれたら描けると思う。勿論、調べたほうが作品が良くなることはある。例えば、野球のルールを大して知らなくてもこれが面白いんだというのが本当に信じて描けるなら漫画は描ける気がする。
安藤正基:
なるほどね。確かに『巨人の星』の梶原一騎先生は野球のルールを知らなかったり、『アオアシ』の小林有吾先生もそこまでサッカーに詳しくない話とか聞いたことがあります。むしろ知らない方が読者に寄り添えたりするのかな。
ちると:
そのあたりのバランスって難しいよね。内容が本格的だからって絶対面白い漫画作品になるのかというと違うし。
安藤正基:
『八十亀ちゃんかんさつにっき』も名古屋のことを詳しく描けば描くほど、面白くなっていくのかというとそれはまた話が違うだろうと考えている。勉強しにきている訳じゃないから、急に名古屋のこの風習はこういう歴史があって、こういう背景があるので今はこうなっていますと忠実に漫画で描いても怖いじゃん(笑)
ちると:
確かにね。
安藤正基:
この手の話の常套句で尾田栄一郎先生は海賊じゃないですというのがあるけど、尾田栄一郎先生も海賊のこと何も知らないで描いているという訳ではないじゃないですか。『ONE PEICE』を描くにあたって資料集めたりしただろうし。
経験したことって言われると、肌で感じたりとか実際に赴いたりとかしているというのをイメージすると思うけど、何かを読んで知識を得るのも一つの経験じゃないですか。そういう意味だと経験したことしか描けないという表現になっちゃうよね。
ちると:
結局、気持ちや描きたいものがあって、経験とか知識はそれの補強でしかないと思っている。それがなくてもパワーでいっぱい描ける漫画家はいるだろうし、流石に知らないと描けないという漫画家は資料調べたりするだろうし、どう描くか難しいよね。
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■出演者
MC漫画家:安藤正基
一迅社の月刊ComicREXにて「八十亀ちゃんかんさつにっき」(既刊11巻)という名古屋を舞台にした漫画を連載中。2019年~2021年にわたりTVアニメ3期放映。過去にはメーカー公認文房具コメディ漫画「ぶんぐりころころ」(全2巻)をマンガボックスにて連載。
MC漫画家:ちると
KADOKAWAにて成人男性が女子小学生に甘える漫画「とっても優しいあまえちゃん!」(全4巻)やニコニコ静画にて「白魔導師シロップさん」(全2巻)、少年ジャンプ+にて「先輩!俺の声で癒されないでください!」(全2巻)を連載。7月16日より『マジメサキュバス柊さん』を連載開始。
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