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コラム
2017年6月15日

人気講師ぶひぃさんに聞く、デジタル制作導入のコツ!「基礎を知らず、断片的な情報で何とかしようとするからつまずく」

3月に実施したデジタル制作アンケート「プロ漫画家の7割がフルデジタル!?-漫画家デジタル制作実態調査アンケート(漫画家編)-」では、現在はデジタル作画を使いこなしている方の中にも、「元々デジタルは苦手だった…」という方が多くいらっしゃいました。その中でも特に印象的だったのは、ツイッターでもデジタル作画について積極的に発信しているぶひぃさん。とても意外だったので、どうやって苦手を克服したのか、克服したことで何が得られたのか、直接ご本人にインタビューをさせていただきました!【PR】

 

ぶひぃさん@BUHII_dayo) pixiv ID【1758121】 

フリーの漫画家、イラストレーター、漫画アシスタント。知人の漫画家やアシスタントにクリスタを教えていたところ、口コミで講座を頼まれるようになり、クリスタ講師も始める。

漫画制作ソフトは新しいおもちゃ。まずは楽しく遊んでほしい

-まずは現在の活動について、教えていただけますか?

昨年から商業マンガの制作を中心に活動していて、WEB雑誌の連載や、紙雑誌に掲載などさせていただいています。 最近は、宙出版さんの月刊誌『aya』6月号に『高野課長がお気に入り』という読み切りが載りました。


その前は、企業広告などの実用系のマンガやイラストを描いたり、プロ漫画家のアシスタントをしていました。実用系の仕事は、企業広告だけでなく、社内マニュアルやプレゼン資料用素材、カードゲームのイラスト、幼稚園のラッピングバスのイラストなど色々させていただきました。

-デジタル制作については、どのようなきっかけで教えるようになったのでしょうか。

蜜樹みこ先生の現場で教えたのがきっかけです。チーフアシスタントを務めていたのですが、2016年になったら独立しようと決めていて。辞めても迷惑にならないように環境を整えようと思い、デジタル制作を導入してもらいました。そのとき、先生や他のアシスタントに教えたのが始まりで、そこから口コミで他の先生の現場からも教えてほしいという依頼が来るようになりました。

-なるほど。最初は家庭教師みたいな感じだったんですね。

教えているうちに、みんなが引っかかる部分が結構共通していることに気付いて、ツイッターやまとめなどで発信していくようになりました。現在、まとめは大量にありますが、私がデジタル制作で使用しているクリスタ(※)は多機能で、まとめ収録では掲載確認を取っていることもあり、未だに未完成です(笑)。
まとめの目次はこちら→https://togetter.com/li/979720
※クリスタ=CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント):多くのプロ漫画家やイラストレーターが使用している定番のペイントソフト。

-個別に教えてもらう場合、お金はどれくらいかかるのでしょうか?

時給1,500円としています。講師としてというよりも、ヘルプアシとして現場に入るような気持ちですね。少女マンガ系だと、チーフアシの相場が時給1,500円くらいのイメージだったので、この金額にしています。
詳細はこちら→https://togetter.com/li/996140

-もっと高くても良い気もしますが・・・価格を上げたり、仕事として増やしたりということは考えないのでしょうか。

私が一番やりたいのは自分の創作活動なので、講師をメインにするという考えはないですね。空いている時間に、困っている人や需要があれば協力させてもらう、という感じです。それに、お金をもらいすぎると、講師としてもっと勉強をしないといけないので(笑)。あくまで漫画家の端くれが、苦手な人に教えに行く、くらいのスタンスがいいかなぁと思っています。

-具体的には、どのように教えているのでしょうか。

デジタル初心者さんによく伝えていることは、「最初からできるようにならなくていい」ということです。すぐに仕事に取り入れたいと言う方もいますが、まずは新しいおもちゃや、新しい画材だと思って、たくさん遊んでほしいですね。技術や知識より先に、デジタルペイントは楽しい、と体で実感してほしいと思っています。

-面白いですね。もう少し具体的に教えていただけますか。

パソコンがそもそも分からないという方には、パソコンの使い方から教えます。CPUって?メモリって?フォルダって?という仕組みや基本的な用語です。分からないから苦手に感じるのであって、分かればとっかかりができます。まずは、苦手意識を減らすのが大事です。

-CPUの説明までするんですね。そこまで必要なのでしょうか?

自分が使う道具の最低限のことは知ってほしいと思いますし、実際にCPUやメモリはソフトの動作環境に影響します。ただ、イメージがつかめればいいので、例えを使います。CPUってパソコンの脳みそなんですよ、数字が上がると、頭が良くなるんです、とか。メモリは作業スペースの広さなんです、脳みそが優秀でも作業スペースが狭いと困るじゃないですか、という具合です。

-おお!分かりやすいですね。

私も最初、詳しい友人にこう教えてもらいました(笑)。とにかく、専門用語を使わないことが重要です。専門用語が多いと、そこでつまずいてしまいます。もちろん、絶対に覚えてほしい専門用語は覚えてもらいます。クリッピングとか、ショートカットとか、後から自力で調べよう、作業工程--つまりメイキングですね、これらを試してみようと思ったとき、知っておいた方が良い言葉です。ただし、その説明では専門用語は使いません。実際に見せたり、図を多用して、聞いたり読んだりしなければならない文字の量をできるだけ減らすのが大事だと思います。

-個別に教わる方というのは、どういう方が多いのでしょうか。

キャリアのあるプロの方も多いですね。例えば少女マンガなら、紙の雑誌は中高生など読者層がずっと同じですが、ベテラン作家さんの固定ファンは社会人になって、雑誌のテイストと合わずに載せにくくなることもあります。でも、固定ファンがガッチリついているので、社会人も買いやすい電子で連載、というケースも多いようで。

-確かに、そういった活躍の仕方をされている作家さんは増えている気がしますね。

そういう方は、原稿はアナログで受け取ってもらえますが、表紙や予告カットなど、カラー原稿だけでもデジタルに、と編集部に言われることも多いようです。紙と電子で同時配信などもありますし、編集しやすいデジタルデータの需要は大きいのだと思います。
そういった方の場合、まずはカラー(表紙や予告カット)で商業入稿できるようになりましょう、と言います。カラー原稿を描くことは、デジタル制作の基礎スキルです。機械オンチの自分でもデジタル制作ができるようになった!と自信をつけてもらえます。

-それぞれの方の状況に応じて教えているんですね。

そうですね。皆さんやる気はあるけど、どうやったらいいか分からない、ということが多いです。なので、今の段階なら、線画はアナログで仕上げだけデジタルにするのがいいとか、フルデジにしてみようとか、希望を聞いてからステップを具体的に提示するようにしています。できると楽しいですし、小さいことでもできた、というのがあれば、基礎・基本を習得するのも楽しくなりますから。

-同じデジタルでも、コミスタ(※)からクリスタへの移行など、ソフトの違いでつまずく人も多いと思います。その辺りはいかがですか?

そういう方は、クリスタの仕組みを分かっていないことが多いですね。コミスタだったらこれがこうやってできたのに、と言われます。それってクリスタがコミスタの進化版だと捉えているからなんです。クリスタでも同じ結果は出せますが、手順が違うことを受け入れにくいようです。
そのときは、コミスタはガラケーで、クリスタはスマホ、全く違うものだし、これって時代の流れなので仕方ないんです、と説明して、意識を変えるようにしています。代わりに、こんな便利なことができますよ、と言ってとにかく興味を持ってもらう感じです。

また、コミスタから移行して遅いと言っている人は、メモリ4GBのPCを使っていることが多くて。コミスタが4GBでも使えたからですが、クリスタでマンガ制作をしようとすると、4GBでは難しいですね。カラー1枚程度なら大丈夫ですが、商業モノクロ32Pとかになると厳しいです。今はどのパソコンでも8GBは搭載されているので、そういった世の中の流れも説明しています。
※コミスタ=ComicStudio(コミックスタジオ):デジタルマンガ制作ソフト。現在は販売終了している。後継ソフトはクリスタ。

-世の中の流れは、受け入れていくしかないわけですね。

そうですね。とは言え、私も未だにガラケーを愛用しているので、コミスタから離れたくない気持ちも分かります。必要がないなら、無理に覚えなくてもいいと思います。タイミングは人それぞれですから。
ただ、ディスプレイやモニタの解像度が上がって、物理的にコミスタが使えなくなる日も近いと思います。トーンやペン先の廃番が避けられないなら、別の方法を探すしかない。デジタルも画材なので、そこはアナログと同じです。

 

 

基礎を知らずに断片的な情報で何とかしようとするからつまずく

-ご自身は、どのようにしてデジタル制作を学ばれたのでしょうか。

漫画の専門学校に通っていたとき、学校経由で、あるフリーペーパーの仕事のコンペがあったんです。美容系専門学校に配られる、求人情報誌みたいなもので、そこに載せる企画ページの一部をマンガにしたい、というものでした。ネームを出したら、ありがたいことに採用されましたが、デジタルで入稿してほしい、と言われて。それでフォトショップ(※)を使ったのが、最初でした。
デジタル制作については、その専門学校でも授業がありましたが、全く時間が足りなかったため、独学で身につけました。ただ、本当にパソコンが苦手で。Macを買ったものの、ネットで検索して出てくるWindowsの情報をMacでも使えると誤解して、WindowsとMacはキーボードのボタンが違うのに気づかず、説明と違う!どうなってるの?もうムリ!というスタートでした。
※フォトショップ=Photoshop:プロのデザイナーや写真加工の世界で有名なグラフィックソフト。

(←デジタル入稿のきっかけとなったフリーペーパー)

-今の状態からは信じられないです!では、最初はフォトショップから使い始めたのですね。

そうですね。こうして一つ採用されたことが自信になり、広告などの実用系マンガでお小遣いくらい稼げるのでは、と考えて、ランサーズに登録しました。ちょうどカードゲームが広がり始めた時期で、そのイラストなどの仕事が来るようになりました。同時に投稿もしていたので、持ち込んだり、月例賞に出したり、とアナログと並行して色々やっていましたね。

-デジタル制作を本格的に学ぼうと思ったきっかけは何でしたか?

専門学校時代の2つ目のアシスタントの現場で、コミスタを使い始めました。ただ、結論から言うと、コミスタは習得できませんでした。他のアシスタントさんは自力で習得しましたが、私は全然できなくて。自分でソフトも買ったし、本も買いましたが、フォトショップとの違いに戸惑うことも多く、使いこなせるようになりませんでした。並行してフォトショップを使った仕事もあったので、両方やらなければならなかったことも、習得を難しくした要因だと思います。
結局、アシスタントの現場でやらせてもらえたのは、セリフ打ち、ごみ取り、スキャン、ベタ、出力くらいです。足を引っ張っている感覚があり、とにかく申し訳ない気持ちでした。自分の頑張り方が違う感覚はあっても、どう変えればいいのか分からず、不安で、ソフトの分からないことが分からない状況でした。

-その現場はどうしたんですか。

最終的にはクビになりました。技術の面もありますが、1週間泊まり込みで、朝8時半から夜2時まで働くような現場だったので、体調を崩してしまって。通いにしてもらうなど気遣ってもらいましたが、足を引っ張っているのは分かっていたし、自分が悪いのも分かっていたので仕方ないと思います。働いて生活費を稼ぎつつ、デジタル制作について学びつつ、投稿用の自分の作品も制作しつつ、というのは本当にきつかったです。ちょうど成績も停滞していて、受賞をしても評価が頭打ちで焦っていたので、自分の創作とアシスタントの仕事のための技術向上のバランスが取れなくなっていました。
でも、ペン線の質が上がったり、トーンがすごく上手くなったり、マンガの作り方について学べたり、とても成長できた現場だったので、感謝しています。

-上手く習得できなかった理由は、何だったと思いますか?

コミスタにおける基礎がなかったんだと思います。作業に必要な一部の機能は理解していても、全体像が分かっていませんでした。最低限、押さえないといけないことを押さえずに、小手先や付け焼刃で何とかしようとしていたんです。
自分がそうだったから強く思いますが、つまずくのは、断片的な情報で対応しようとするからです。断片的な情報をかたっぱしから試しているだけだと、混乱しがちです。重要なのは、覚える順番だと思います。
あとは単純に、学ぶ時間が足りなかったですね。なので、実生活が忙しくて、新しいことを独学で習得するのが大変、という方の気持ちはよく分かります。

-その後、どのようにしてデジタル制作の苦手を乗り超えたのでしょうか。

デジタル制作に再びチャレンジしたきっかけは、ラブホの上野さん(@meguro_staff)です。今はコミックス化やドラマ化もされていますが、当時は文章のつぶやきだけで、フォロワーも2,000人くらい。togetterなどで話題になり始めた頃でした。その上野さんが、ラブホのあるあるマンガを作りたいということで、作画担当を募集していたんです。
私、もともと下ネタが好きで(笑)ラブホ女子会を主催しているくらいラブホも好きだったので、ツイッターで上野さんのことを知ってから、ひそかに応援していました。募集を見て、「ラブホのマンガが描きたい!」とすぐに応募を決めました。ただ、載せるのはツイッターなので、データでほしいということで。それで、そろそろデジタルでマンガを描けるようにしなきゃ、と思ってクリスタを導入しました。それが2014年の夏あたりです。
ちなみに、ラブホの上野さんのコミカライズは別の方ですが、twitterのラブホあるあるの作画はやらせてもらうことになり、いまも上野さんと一緒にコミケに出たりしています。

-それはそれですごい縁ですね(笑)。クリスタはどうでしたか?

最初から天国でした。フォトショップと近いので、コミスタのように手も足も出ない感じはなく、これなら分かるかもしれない、と思いました。とは言え、フォトショップでは、アナログ線画取り込みのパス塗りしかしていなくて、クリスタで初めて「デジタルには彩色用ブラシがある」と知ったくらい知識が偏っていたので、それなりに大変でした。当時のツイッターを振り返ると、こんな感じです。

しかもデジタル再開を機にPCをMacからWindowsに変えたので、元々のデジタルオンチを発揮し、悪戦苦闘でした。かな入力ができなくなってパニックになったり、スパイウェアにかかって友人に何時間も電話したり・・・というグダグダさでした。ですが、色々な人に助けてもらって何とかやりました(笑)。

 

低いハードルを一つずつ超えていくことで、やる気が続く

-デジタル制作を取り入れて良かったことはどんなことですか?

時間の余裕ができたことです。毎回やることの無駄を省くのはすごく大事で、目新しい機能を導入するよりも、少しずつの無駄を省いた方が、トータルで得られる余裕が大きいと考えています。
アナログ時代の話に戻ると、アシスタントをしていたとき、トーン整理を徹底しただけで、すごく効率化できたことがありました。繁忙期に頼んでいたヘルプアシ、2人×2日が不要になったくらいです。そういう効率化のタネがデジタル制作にはあると思います。

あとは、アナログと比べて疲れなくなりました。導入時は不慣れで疲れましたが、アナログだとアシスタントの進行や困ったことがないかと気を遣いますし、雇った分の交通費や食費などのコストも稼がなきゃというプレッシャーもありました。今はその分のお金が手元に残るので、お金の都合もつけやすくなりましたし、部屋も散らからず、片付けなきゃって負い目も減りました。
それと、電子の仕事を受けやすくなったということも、良かったことですね。

-デジタル制作を人に教えるようになって、良かったことというのもありますか?

人脈はすごく広がりましたね。あとは様々な人に教えることで、自分が分からないことの発見にもなります。それが自分の制作や教え方に活かせるので、より成長できていると思います。

-最後に、デジタル制作を苦手と感じている方に、メッセージをお願いします。

クリスタは多機能で、使っている人も多いので、良くも悪くも情報過多です。ちょっと調べただけで色々な情報が出てきますが、基礎・基本がないままにそれを試しても混乱してしまうと思います。大事なのは、クリアするハードルを小さく、低くすることです。段階を踏み、焦らず長期で臨む姿勢が必要だと思います。それでも早い人は、デジタル初心者でも2カ月半でカラーもモノクロも習得しますし、月90Pの連載をしていた蜜樹先生も、初めてカラーの入稿したのは3ヶ月目、モノクロ入稿は1年で何とかなりました。

デジタル制作に挑戦しようという人は、絵を描くのが好きで、漫画も好きで、やる気もある人です。そんな人が挫折してしまう原因は、ごほうび不足だと思います。ごほうびというのは、できたという実感ですね。逆に小さいハードルを設けて、小さな「できた」を積み重ねていけば、やる気は続きます。挑戦したいというモチベーションを折らない方法をとってほしいと思います。

-ありがとうございました!

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※ 取材/文:マンナビ編集部 協力:株式会社セルシス

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