マンダンラジオ出張掲載版#10 スピンオフとは?世界観を表現する難しさ
■マンダンラジオ 漫画家2人が漫画について語るラジオ
漫画家として活躍されている安藤正基先生が中心となって、漫画に関するアレコレをテーマに様々なゲストを招いて、ゆるく楽しく語り合うラジオ企画!毎月下旬頃にYouTubeにて配信中!
公式Twitterアカウント
YouTubeチャンネルページ
※2020年11月29日にYouTubeにて配信された内容を許諾を得て一部記事化内容を再構成しております。是非、本編アーカイブもご覧ください!
■スピンオフ漫画とは?
安藤正基:
一口に言っても、漫画作品にはストーリーから作画から何でも自分で考える漫画をはじめ、原作(話を考える担当)と作画(絵を描く担当)で分かれて制作する漫画、小説やアニメなど他媒体で展開されているものを漫画にするコミカライズといった種類がありますが、もう1つ『スピンオフ』というジャンルの漫画があるんですよね。これは元々ある漫画作品に出てくる特定のキャラクターだけにスポットを当てたり、シチュエーションを変えたりして新たな漫画を作るものになります。ただ、こうやって説明してもスピンオフの制作スタイルって正直良く分からないじゃないですか。
ちると:
人様の作品でしょ?気は使うし、大変そうなイメージがある。
安藤正基:
今回はそんなスピンオフに携わっている漫画家がいるのでお呼びしたいと思います。平野稜二君です!
平野稜二:
初めまして、平野稜二です。今はKADOKAWAでFate作品の『帝都聖杯奇譚 Fate/type Redline』の作画を担当しています。どうぞ、よろしくお願いいたします!
安藤正基:
超人気作品『鬼滅の刃』のスピンオフ『鬼滅の刃 外伝』『きめつのあいま!』も担当していたよね。スピンオフ中のスピンオフを担当、しかもバトル漫画と4コマどちらも描かれる漫画家は普通はいないよね(笑)
平野稜二:
ジャンプ編集部には機会をいただけて本当にありがたいです。
■実際に鬼滅の刃のスピンオフを描かれた時の気持ち
安藤正基:
早速ですが、スピンオフってどのくらい自分で考えられますか?コミカライズ漫画だと脚本がしっかりして7~8割な印象があるけど。
平野稜二:
そうですね。テーマとして富岡義勇の外伝を描いていきましょうは決まっていて、そこから「じゃあネーム描いてみてください」という流れでした。
ちると:
それだけ!?
平野稜二:
その後に描いた『煉獄杏寿郎外伝』は鬼滅の刃の本編ストーリーに関わってくる話があるので擦り合わせて描いたのですが『富岡義勇外伝』の時は正直どう構成しようかとは思いましたね。
安藤正基:
でも言い換えれば、ある程度自由に描きたいやつ描いていいよという雰囲気かな。
ちると:
実際に拝見しましたが、平野さんの趣味が入っていましたね。
平野稜二:
そうですね。自己流の作風や構成になっているのかなと思います。目標としては『鬼滅の刃』を読んでいなかった人でも『鬼滅の刃』の世界観や魅力が伝わるように意識していました。なので鬼や鬼殺隊の説明など一般の読者にもわかりやすく伝わるようにと考えつつ描いていきました。
ちると:
ちょっと気になったんだけど、『富岡義勇外伝』と『煉獄杏寿郎外伝』のスピンオフ漫画を担当した訳だけど、この2つは制作する側的に空気が違ったのかな?
平野稜二:
そうですね。世の中の空気感も丁度変わったと言いますか、アニメ放映が1つのキッカケで今まで以上に多くの読者が注目するようになりましたよね。その時に「煉獄杏寿郎外伝を描きましょう」という話になったので、皆知っているしどうしようとプレッシャーや戸惑いはありました。どこまで内容に踏み込んでいいのか、ネタバレしていいのか悩みました。『富岡義勇外伝』は他人行儀感と言いますか、あまりお話に絡まないように本編には影響しないように描いていました。なので『煉獄杏寿郎外伝』では担当編集者伝手に『鬼滅の刃』の本編で語っていない設定やお話を吾峠呼世晴先生から情報いただいて制作していきました。セリフやキャラの描写とか確認してもらってから作画に入りましたね。
安藤正基:
かなりやりとり、ガチガチにチェックしてもらってというスタイルだったんだね。平野君自身、元々鬼滅の刃のめちゃくちゃファンだったよね。
平野稜二:
好きですね(即答)
ちると:
最初の連載当初から推していたよね。
平野稜二:
吾峠呼世晴先生が初めてジャンプの漫画賞で受賞された『過狩り狩り』という『鬼滅の刃』のベースになったような作品がありまして、その作品もめちゃくちゃ好きでした。
■スピンオフを描かれた経緯
ちると:
どういった経緯で平野さんに『鬼滅の刃』のスピンオフのお話があったんですか?
平野稜二:
元々『鬼滅の刃』が好きで担当編集者ともそういう話をしていたんですよね。少年ジャンプで連載していた『BOZEBEATS』が終了して落ち込んでいる時に担当編集者から『鬼滅の刃』がアニメ化する話を聞きまして。聞いた瞬間は大好きな作品だったので純粋にテンション上がったのですが、その際に「スピンオフを立ち上げようという話があるけどやってみる?連載終わった後だから休みたい?」と言われました。即答でやらせていただきますとお答えしましたね(笑)
ちると:
ファンの雰囲気も兼ね備えているというか、なんだかスピンオフに向いているような性格だよね。
平野稜二:
他の漫画家と比べると自分の作品を描きたいというこだわりは特別強くない方かな。お題出された作品でみんな喜んでくれたら凄い嬉しい気持ちの方が強いですね。
■吾峠呼世晴先生の世界観を表現したい
安藤正基:
ここで視聴者からの質問読んでみたいと思います。「鬼滅の刃外伝の絵柄が吾峠呼世晴先生にとても似ていて驚きました。どうしたらあそこまで寄せられるのでしょうか?」といただきました。勿論、吾峠呼世晴先生の絵柄に寄せつつも平野くんの良さもあって良いよね。
平野稜二:
『富岡義勇外伝』の時は頑張って絵柄寄せたつもりだったんですが、自分の絵柄に近い雰囲気だったのでもっと寄せたいとは思っていました。『煉獄杏寿郎外伝』のお話いただいた時に改めて頑張って模写とかしていたんですけど、やっても似せれなかったですね。線の太さやタッチは寄せれたのですが、吾峠呼世晴先生にしか表現できない雰囲気が中々出せなかったです。模写していけばいくほど、吾峠呼世晴先生の絵の魅力に絶対勝てない、ただの劣化版になっちゃうと思いました。
安藤正基:
本家の真似しようとしたらそうなるよね。
平野稜二:
ただ、幸いアニメが放映されるタイミングだったので、アニメの方に近づけるようにしました。僕より絵がうまい方々が寄せにいっているので。そこに似せていけば、自ずと近いものになるのかなと思いました。漫画のタッチや線や表情は吾峠呼世晴先生の真似をするようにして、絵の整合性みたいなところはアニメ見つつ描いてみました。
安藤正基:
僕も読んだときに伝えたけど、富岡義勇外伝のときより煉獄杏寿郎外伝の方がより世界観を再現しようとしている感が伝わってきましたね。あれは素晴らしかった。
いかがだったでしょうか。他にもスピンオフ漫画で大変だったことや裏話なども語られているので動画も是非ご覧ください!
その他、マンダンラジオの記事はこちら!
▶ 安藤正基先生×ちると先生「漫画家はコミュ障でも良いのか!?」
▶ 安藤正基先生×ちると先生×猪ノ谷言葉先生「週刊連載漫画家のスケジュールと原稿が早い人遅い人の違い」
▶ 安藤正基先生×植野メグル先生「漫画のジャンル決めや描く際に使っている資料」
▶ 安藤正基先生×新島秋一先生「ご当地漫画を連載すると新発見がある」
▶ 安藤正基先生×平野稜二先生「週刊少年ジャンプで連載された漫画家から見た『バクマン。』」
▶ 安藤正基先生×荻野純先生「漫画家とアシスタントの関係」
▶ 安藤正基先生×ちると先生「漫画家と就活との天秤・デビュー前後の苦悩」
▶ 安藤正基先生×ちると先生「漫画家は自分が体験したことしか描けないのか」
■出演者
MC漫画家:安藤正基
一迅社の月刊ComicREXにて「八十亀ちゃんかんさつにっき」(既刊11巻)という名古屋を舞台にした漫画を連載中。2019年~2021年にわたりTVアニメ3期放映。過去にはメーカー公認文房具コメディ漫画「ぶんぐりころころ」(全2巻)をマンガボックスにて連載。
MC漫画家:ちると
KADOKAWAにて成人男性が女子小学生に甘える漫画「とっても優しいあまえちゃん!」(全4巻)やニコニコ静画にて「白魔導師シロップさん」(全2巻)、少年ジャンプ+にて「先輩!俺の声で癒されないでください!」(全2巻)を連載。7月16日より『マジメサキュバス柊さん』を連載開始。
ゲスト漫画家:平野稜二
集英社 週刊少年ジャンプにて狼に育てられた記憶喪失の少年”環”がBOZE(ボウズ)と呼ばれる退魔部隊に入隊し、自分の記憶をめぐるバトル漫画「BOZEBEATS(ボウズビーツ)」(全2巻)を連載。その後は『鬼滅の刃 外伝』『きめつのあいま!』『帝都聖杯奇譚 Fate/type Redline』を連載。