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編集長の部屋
2017年8月31日

LINEマンガ中野崇編集長②「新人の作家さんでヒットを出し、媒体のブランド力につなげる」

「編集長の部屋」の第12回目は、LINEマンガの中野編集長と、村田マネージャーのお二人にインタビュー!今後LINEマンガオリジナルを強化されていくということで、その詳細を伺ってきました。中野編集長はLINEマンガに移られて間もないということで、LINEマンガのこれまでの取り組みは編集チームマネージャーの村田さんから、オリジナルの作品作りや新人獲得については中野編集長からお話しを伺いました。

 

 

LINEとの連動で、1週間で100万人もの試し読みが実現

-LINEマンガの強みを生かした、具体的な取り組みというのはありますか?

村田:作家さんとか編集者がやりたいことって、いかにその作品を読者に読んでもらうか、ということだと思うんですよね。読んでもらわないと、売れるチャンスも生まれない。そのためには、まず読んでもらうタッチポイントをいかに増やすかというのが重要かな、と思っています。書店さんに行っても、今は全てシュリンクがされているので、読むことができません。書店さんに希望の販売促進ツールを聞くと、まっさきに試し読み小冊子と言われます。

-確かに、試し読みの小冊子はよく見かけるようになりましたね。

村田:LINEマンガは、その「試し読み」を気軽に仕掛けることができます。LINEマンガには日々、何百万という人が漫画を読みに来ますし、LINEマンガを使っていなくても、LINEと連携してアプローチできます。LINEとの効果的な連携施策の一つの例は、特定の漫画を読んだらLINEポイントがもらえる、というキャンペーンです。無料でもらえるLINEポイント目当てに漫画を読みに来るんですね。まだLINEマンガを使っていない人も、LINEポイントが欲しくて漫画を読む。読んでみたら面白くて、LINEマンガもDLして続きを読んでしまったという人たちがたくさん生まれています。この施策によって、1週間で新規の読者が100万人読む、ということも実現できるんです。

(↑1話を読むとLINEポイントが2ポイントもらえる)

-それはすごい影響力ですね。

村田:100万人に読ませるきっかけは作れるので、そこから先は作品次第ということですね。そこは作家さんと編集者の腕の見せ所でやりがいがあるだろうし、面白い仕掛けになっているな、と思います。

中野:これはきっかけとしては本当に大きいと思います。実際、紙の雑誌の発行部数が落ちている中で、数多くの読者を獲得できる媒体は限られています。この点はなかなか世間の読者さんも作家さんも知らない部分だと思いますし、もっと知ってもらいたいですね。

-それだけたくさんの人が読んでいるのは、本当にすごいことですよね。

村田:そうですね。LINEポイント付与というキャンペーンは他ではなかなかできないことですし、LINEのユーザーへ作品を直接プロモーションする機会が持てることは、LINEマンガのオリジナル作品の強みだと思ってます。LINEマンガというアプリを使っていなくても、こうやって気軽に読んでもらうことができて、何万、何十万というユーザーとのタッチポイントが生まれることで、それが面白ければLINEマンガに来てくれる人が増え、毎週読んでくれる人が増える。読んでくれる人が増えれば、紙や電子のコミックスを買う人も増えていくし、どんどん口コミで広げてもらえるし、というところでは、非常に良い循環は生まれていくなと思っています。

新人の作家さんでヒットを出し、媒体のブランド力につなげる

-今後の展開の目標はありますか?

中野:まだ書店さんにはLINEマンガのオリジナル作品専用の棚がないので、作品数を増やしLINEコミックス棚を作ってもらう!というのは目標の一つですね。ただ、一番大きな目標としては、LINEマンガのオリジナル作品からヒットが出る!ということです。特に新人の作家さんでヒットを出せることが媒体のブランド力につながると思っています。そういう意味で今後、新人作家さんの発掘には力を入れていきたいです。

-新人作家さんが大事だと考えられているのは、中野編集長ご自身の編集者としての経験の影響もあるのかな、と感じたのですが、いかがですか。

中野:漫画編集者はみんなそう考えると思いますね。新人の頃から作家さんを見いだして、一緒に取り組んでいった作品でヒットを出す、というのが一番やっていて楽しいし、やりがいがあると思うんです。紙の雑誌をやっていた時の実体験として、すでに他誌で実績のある作家さんのヒットももちろん大事ですが、まだ色のついていない新人作家さんで売れる、というのは媒体自体に勢いがつきます

-LINEマンガのオリジナル作品で新人を育てていく、ということの強化のために中野さんが編集長としていらっしゃったと思うのですが、ご自身のこれまでについても教えていただけますか?

中野:今年の1月にLINEマンガ編集部の編集長になったのですが、その前はスクウェア・エニックスにいました。ヤングガンガンやビッグガンガンといった青年誌の編集長を歴任しています。ヤングガンガンもビッグガンガンも立ち上げ編集長という形だったので、その経験を活かして、LINEマンガのオリジナル作品のクオリティー向上に力を発揮していければと思っています。

-最初からマンガ編集のお仕事をされているんですか?

中野:ずっと漫画編集の仕事しかしていません。最初は編集プロダクション(※)に所属していて、そこは大手出版社の単行本の編集作業を請け負うことが業務のメインだったのですが、たまたま、ある漫画誌の編集部に出向することになり、編集アシスタントのようなことをさせていただきました。プレゼントページとか予告ページとかを担当したり、セリフの写植指定といった、お手伝いのような形ではあったのですが、そこで漫画編集って面白いな、と思うようになりました。
※編集プロダクション…出版社や広告代理店などの依頼を受け、出版物や広報物などの主に編集実務を行う会社。

-最初は編プロにいらっしゃったんですね。

中野:そうなんです。しかし、当時その編プロでは作品の担当を持つことができませんでした。漫画の出版社でなら作品の担当ができると思い、某社が中途採用の募集をしていたので、受けてみたら運良く入れていただけました。そこでは4コマ漫画誌の編集をやっていたのですが、少年漫画やストーリー漫画の編集をしたいという思いが強くなった頃に、スクウェアと合併する前のエニックスの募集を見かけ、30歳という年齢だったこともあり、チャレンジするのもギリギリだろうと思って受けました。そこでもたまたま入れてもらうことができ、何年か少年誌の編集をしている中で青年誌の立ち上げの話が持ち上がり、ヤングガンガン、そしてビッグガンガンの立ち上げ編集長をさせていただいた、という形です。

-そこから、LINEマンガに移られたわけですね。

村田:最初に中野に会ったのは2年前くらいだったのですが、当時の中野は、ビッグガンガン・ヤングガンガン総編集長という肩書きで。その時は、LINEマンガの無料連載にビッグガンガンやヤングガンガンの作品を載せませんか、という提案からのお付き合いだったので、こういう形になるとは全く思っていませんでした(笑)
中野:ちょうどWEBやアプリの媒体が増え出した頃で、スマホで漫画を読む時代になっていくな、ということは感じていました。その中でLINEマンガがオリジナル作品を本気でやるとなると怖いな、と思っていて。どんな人たちが作っているんだろう、と興味を持って近づいてしまいました(笑)。そういった縁もあって、今に至っています。

アプリによって、漫画を読む気軽さが復活してきている

-中野編集長は電子媒体や漫画アプリというものを、どう見ていますか?

中野:雑誌作りの厳しさというのは、ずっと体験していましたので、漫画アプリに対する期待は大きいです。雑誌の部数よりも、ラインナップで売れている作品の単行本の部数の方が多い、というのは今や当たり前のことです。いかに雑誌を売っていくのか、付加価値をつけていくのか、ということを考え、付録など色々な取り組みをしましたが、なかなか思うようにはいきませんでした…。メディアミックスをすれば作品自体は売れますが、さらにそこから連載されている雑誌まで読んでくれるかというと、そう甘くはなくて……。
漫画アプリという媒体が浸透してきて、たくさんの人が利用している―—特に雑誌離れをしている10代の読者が気軽に漫画を読む機会が増えているのは、漫画業界にとって非常に良いことだと思っています。漫画に魅了された彼等の中から次代を担う漫画家さんが出てくる可能性がありますし、読まれる機会が増えることに比例して、アプリやWEB発の作品のクオリティーも自ずと上がっており、ヒット作が生まれる土壌が整ってきているので、近い将来ミリオンセラーの作品が間違いなく出るはずです。

-お話を伺っていると、漫画業界の動きに対する感度を高く持って行動していらっしゃるのかなと思うのですが、その感覚はどこから来るのでしょうか?

中野:もともと、単純に漫画が好きというのはありますね。漫画という娯楽に対して、たくさんの人に触れてもらいたい、という気持ちは強いです。

-小さい頃から漫画は読んでいたんですか?

中野:小中学生のときは、やはり少年ジャンプは早売りを買いに行っちゃうくらいでしたし、いとこのお兄ちゃんがチャンピオン、サンデー、マガジンを買って毎号年間で保存していたので、遊びに行くとずっとバックナンバーから読んでいました。
作品としては、『あしたのジョー』が好きなんですよね。アニメ化もされて、いわゆるキャラクター萌えの走りだったと思います。自分自身もすごく影響を受けた、漫画好きとしての原点の作品と言えます。

-色々な漫画雑誌を読まれていたんですね。

漫画雑誌って、お金を払って買うものですが、もともとは暇つぶしに読むような気軽なものだったはずです。暇つぶしアイテムだった漫画雑誌がゲーム機やスマホの普及と共に、その座を奪われてきたのですが、アプリにより漫画を読む気軽さが復活してきているので、まずは無料で読んでもらいながら、お金を払ってもらえる作品に出会ってもらい、たくさんの読者に読まれることで作家さんにも還元して、漫画業界を活性化していきたいです。

【編集長の部屋12】LINEマンガ中野崇編集長③「自身が持つ美意識や感情を、恥ずかしがらずに漫画に投影してほしい」へ続く

インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 福間、川原、岡嶋

 

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