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ノウハウ
2020年8月21日

【ジャンプSQ.】若手作家が聞く『マンガの極意!』助野嘉昭先生×仲英俊先生


人気漫画家に新人漫画家が突撃インタビューするジャンプSQ.人気企画「マンガの極意!」。 豊富な経験を培ってきた人気漫画家に対し新人漫画家ならではの視点や切り口によって、より漫画家目線に立った踏み込んだインタビュー内容となっております。今回は助野嘉昭先生に対して仲英俊先生が取材しました。
※本記事はジャンプSQ.編集部のご協力により、公式サイトの『マンガの極意』から転載しております。

《1》助野流ネームの作り方!
《2》サッカー漫画で空間把握
《3》デジタル化で作業時間倍増!
《4》コンペ後も練り続けるキャラ&設定!
《5》詰まらない秘訣は「描きたいこと」!
《6》漫画家・助野嘉昭の苦労と喜び!
《7》漫画家・助野嘉昭の人生の岐路!
《8》漫画を志す新人へ一言!


《1》助野流ネームの作り方!


仲英俊先生(以下、仲):今回は宜しくお願いします。助野先生にはアシスタントとして長い間お世話になって今更ですが、読者も意識して改めてお聞かせ下さい。ではまず、ネームの制作過程について教えて下さい。最初はどのように作られますか?

助野嘉昭先生(以下、助野):まちまちだけれど…少なくともネームの時にはシーンとか台詞とか、読者に見せたいビジョンがあって、そこに向かって作る感じ。ネームの時点ではあまり迷いはないですね。

:最初にゴールを決めているということですね。では新連載とか、何も決まっていない時はどうされるんですか?

助野:新作でもお話や出したいキャラなど、何かしら描きたいものは必ずあるので、そこから広げていく感じです。逆にそれがないと何も描き出せない。実は『貧乏神が!』(以下、『貧乏神』)の連載で、「牡丹編」だけ結末を決めないまま描き始めて…。そのシリーズだけすごいしんどかった覚えがあります(笑)。

:ネームはコマ割りから描かれますか?

助野:まずはプロットというか、脚本。本当にドラマの脚本みたいに、キャラ名と台詞を最後まで描き出します。それができたら1話45ページを一気にコマ割りして、その次に45ページ全部のフキダシと台詞を書き、最後に45ページ全部に絵を入れる…という順で作ります。少しずつ進めることができないので、工程ごとに分けて集中して描きます。

:ちなみにネームは、作画の段階で変更されることはありますか?

助野:細かい演出は変わるけど、少なくともネームの大幅な変更はないです。僕は新人の頃、同じネームを10回以上直したことがあって、それでノイローゼになっちゃったんです。その苦しさを経験しているから、ネームを直さないで済むように手を尽くす!もちろん何度も何度も直してクオリティを上げていく作家さんもいるので、あくまで僕の描き方だけど。

:では、ネームの段階ではあまり迷ったり考えたりはしないのですか?

助野:迷うのはほとんどプロットの段階ですね。一番最初に考えを巡らせて、脚本で台詞も全部決めて…そこまでは迷いまくり(笑)。でも脚本が上がった段階で僕の中では7割方完成、コマ割りネームまで上がったら9割終了です。あとはフキダシを描きこんで、担当さんに見せるための絵を入れるだけ(笑)。

:実際の絵の構図は、ネームの段階で決められるのでしょうか?

助野:ええ。コマ割りの段階で頭の中に絵があります。ちなみに構図は「右から左へ流れて読みやすいように」が基本。見せ場は迫力を出して、読んで見づらい時は構図を変える程度かなぁ…?

:アクションシーンの構図って、特に難しく感じますよね。助野先生の漫画は迫力がありつつも読みやすいのですが、何か秘訣はあるんですか?

助野:読みやすい構図としては『双星の陰陽師』(以下、『陰陽師』)では特にカメラに気を付けているかも。例えば戦闘シーンで、所々でキャラがアップや引きの構図になるけど、実はカメラ位置や向きはほぼ固定なんです。読者の見ている位置を変えず、できるだけ拡大・縮小で演出するようにすると、メリハリがつきつつ読者も混乱しない。あとは右上から左下に視線が流れるように、大まかなセオリーに沿って考えています。

:そういったセオリーはどこで学ぶのでしょうか?アクションが映える構図というか…。

助野:僕の場合は独学です。駆け出しの頃の持ち込みで「絵は上手いけれど漫画が下手!」と言われたことがあって…。その頃の僕、絵を描いて、余ったスペースにフキダシを押し込むという酷いやり方をしていて(笑)。プロの編集者にはしっかり見抜かれていました。その後は色々な漫画を意識的に見て勉強しました。今まで気にしなかったけれど、読みやすくなる工夫がいっぱいあって「漫画家は、そこまで考えてフキダシを置くんだ」と(笑)。

:普通の読者には気付かれない、漫画ならではの職人技がありますね。

助野:職人技とはいかないけれど、僕も『貧乏神』の後期や『陰陽師』では、ぶち抜きコマを控えるようになりましたね。少年漫画のコマ割りを研究すると、思った以上に読みやすいコマ割りをしているんですよ。「漫画が下手」と言われて以来、読みやすさは相当考えるようになりましたね。

:新人作家にコマ割りについてアドバイスをするなら?

助野:1コマ1コマに集中するより、流れを気にする方がいいと思う。1コマごとに集中してカッコいいアングルを描いても、一連の流れで読むと、視点があちこちに飛んで読みにくくなることがままあるので。


《2》サッカー漫画で空間把握


:助野先生は作画で詰まることはありますか?僕の中で、常に安定してスピードが速いという印象がありますが。

助野:作画に詰まるって、どういうところで詰まるものなの?

:よく聞くのがバトルシーンのアングルが決まらなかったり、キャラの表情がしっくりこなくて何度も描き直したり…。

助野:カメラアングルは、実はそんなに迷ったことがないです。というのも僕は中学・高校の頃、ずっとサッカー漫画のネームを描いていたんですよ。それもキャラ紹介や日常シーンをすっ飛ばして、ノート20冊くらいまるまる試合シーンで!サッカーって11人対11人で、広い場所で人物が動き続けているでしょう?自分では楽しんで描いていただけだけど、複数の人間の動きとか空間把握とか、すごい特訓になっていたのだと思う。

:『貧乏神』でも多人数の戦いがありましたよね。

助野:そこは前編集長に褒められました!「一度、助野さんには45ページまるまるバトルの作品を描いてもらっては」と言われたり。そして今『陰陽師』で、それに近いことをやりつつあります。

:空間把握能力が高いと、アングルで詰まることがないんですね。

助野:あとキャラの表情に関しては、描きこみ過ぎないように気を付けています。あくまで僕の感覚ですが、丁寧に描けば描く程、キャラの生々しさが薄れる感じがするので。もし表情が上手く描けないという人は、考え過ぎないで軽めに描いてみることも試して欲しいです。

:ある程度抜いて、読者が想像する余地を残す感じでしょうか?

助野:それもあるかも。僕が悩むのは打ち合わせと、最初のプロット。そこさえしっかり固めておけば、あとは悩まなくなるんです。

:作画面で、『貧乏神』から『陰陽師』で特に変わったことはありますか?

助野:『陰陽師』ではトーンをあまり使わなくなったことかなぁ…。あとはペンタッチも少年漫画を意識して太くしています。実は『貧乏神』の終盤から、それを試しているところもあって…。

:アシスタントをしていて気づきました!首の下に影があったり、鼻の描き方が普段と違ったり…。

助野:うわー、バレてる(笑)。あと集中線も「ちょっと太目でお願い」とか言ってたしね。もちろんガラッと変えるつもりはないけれど、少年漫画らしい路線を考えているつもり。キャラのデザインも、本当はもっとシンプルにすべきなんだけど…こればかりは自分の好みもあるしね。


《3》デジタル化で作業時間倍増!


:『陰陽師』になってカラーが一番変わりましたよね。

助野:デジタルになりました。最近、塗るのが楽しい!

:液晶タブレットはどんなものを使っていますか?

助野:20インチの特別高いものでもない型(笑)。設定とかは使いこなせなくて、ろくろの色設定とか実は毎回バラバラで…。まぁ、その場のパッションとライブ感ということで!

:ええ。助野先生がPCが苦手なことは知っています(笑)。デジタル導入を決めてから、実際にカラー原稿を描くまで練習はされましたか?

助野:全然!最初の『陰陽師』予告カットもぶっつけ本番(笑)。それにせっかくのデジタルなのに、未だにコピックの頃より倍の時間がかかっている。

:それはやっぱり、デジタルは何度もやり直せるから…?

助野:というよりキリがないから。アナログだと自分の技術や好みでできる範囲が見えるので、僕の中で「ここまで描けたら完成!」と、明確にゴールが決まっているんです。でもデジタルはゴールに到達しても、他の作家さんの上手いカラーを見るともっとすごい表現があって、しかも自分の環境でもそれができてしまう。そして少しでもそこに近づこうとすると、本当に終わりが見えない(笑)。

:カラー原稿にはどれくらいの時間を使いますか?

助野:今は見開きカラーで3日くらいかかるかも。ペン入れもデジタルになってから倍はかかっているはず。線の細部まで拡大できるから、気になってしまって…。でも実際に印刷されると、細部の差なんて分からない(笑)。なのでデジタルの工程はまだまだ模索中です。

:コピックとの違いで苦労された部分はありますか?

助野:実は僕のコピックの塗りって、あるデジタル塗りのイラストレーターさんを参考にしていたんですよ。いわばコピックでデジタル塗りを再現しようとしていた感じ。だからデジタルになっても、塗りの感覚はコピックの頃とそれほど変わっていないのかも。

:ちなみに1色原稿もデジタルに移行する予定はありますか?

助野:アナログには限界があるとずっと思っていたので、考えてはいるけど…全然時間がなくて準備できない(笑)。集中線とかトーンの削りとか、読者が見てそんなに違いが分からないのであれば、生産量の上がるデジタルもいいと思っています。もちろん、この辺は色んな考え方の作家さんがいるので、あくまで僕自身の話ですが。


《4》コンペ後も練り続けるキャラ&設定!


:次に『陰陽師』のろくろと紅緒など、キャラクターの作り方を教えて下さい。

助野:主役キャラに関しては、昔からキーワードで決めています。『貧乏神』の紅葉だったら「役に立たないドラえもん」、ろくろと紅緒だったら「黒いヤッターマン」というキーワードが最初にありました。そこに肉付けをして作っていく感じ。あと『陰陽師』は「少年向けバトル漫画」や「陰陽師がモチーフ」という案も最初にあったので、そこからも広げることができました。

:助野先生は連載の際、ラフスケッチや設定画もたくさん描かれますよね。

助野:でも、設定は連載を進める内にどんどん変わっていってしまう。衣装の細かい部分なんて、下手したら1話の中でも変わったりして(笑)。自分でいいと思ったら、細かく手を加えたくなるんですよ。

:プロトタイプとして設定画を描きながら、徐々に完成形に近づけていくのでしょうか?

助野:そう。だから一番最初に描いたろくろって、大分今と違う。背が高くて頭身も高くて、カッコよくて(笑)。それこそ深夜アニメの能力バトルの主人公っぽい。そもそも設定画は、気に入るものを作るためのラフ画なんでしょうね。ビジョンはあるけれど、絵がまだそこに辿り着けていないだけで。

:『陰陽師』のプロトタイプのネームは、ストーリーも結構連載と違っていたとか…?

助野:今よりずっとグロかった!それこそ人がどんどん死んでいく重い内容で…。ただ、リアル路線のキャラで描くと生々しいので、まずはキャラの頭身を下げ、可愛いビジュアルにシフトしていきました。可愛いキャラでグロい話を描くと、さらにインパクトがあると思って。

:それは連載会議のコンペに作ったネームですか?

助野:いや、連載会議を通った後(笑)。さらに連載時に至っては、コンペ用ネームのグロい部分すら減って、全体的に可愛くなってしまった。読んでもらいたい読者層を考えると、やっぱり今の形がベストだと思って。

:助野先生はネームが通った後も、常に試行錯誤されるのですね。

助野:プロトタイプは確かに会議を通ったけれど「それって通っていないよね?」というくらい改善点も貰ってしまって。僕も「面白くなるならなんでもやる!」と、どんどん手を入れていったら、大分変ってしまって…でも結果的に面白くなったので、これで良かったはず!(笑)

:主人公のろくろは王道と言うにはクセがあって、でもいわゆるゲストキャラほどエッジも立っていない、絶妙なバランスですよね。

助野:確かに最初は良く言えば王道、悪く言えば無個性だった。紅緒のデザインはあまり変わっていないかも。今よりキリッとしていたくらいかな。…というのも、『陰陽師』ではコメディやギャグは一切やらないつもりだったんです。でも直す内にギャグが増えて、その分紅緒も柔らかくなっていったんです。

:確かに『陰陽師』は最初シリアスでしたが、所々に『貧乏神』に通じるギャグがあって。ああ、やっぱり助野先生の作品なんだ…と、読んでいて嬉しかったですね。

助野:ギャグを入れた方がメリハリが利くし、キャラを立てることもできる。最初は『貧乏神』と比べられることが嫌で、真逆のものを描こうという気持ちがあった。だからといって、培ってきたものを全部捨ててしまうのも違うと思ったんです。

:『陰陽師』と『貧乏神』で描く時の意識の違いはありますか?

助野:『貧乏神』は良くも悪くも自分のために描いている部分があって、「自分が面白いかどうか」という指針があって…。ノンジャンルというか、コメディもあるけどバトルもあるごちゃまぜ(笑)。『陰陽師』は「男の子が読んでワクワクする漫画!」と最初に考えて、何か迷うことがあったら、少年が好きそうなものを選ぶようにしています。打ち合わせのたびに子供の頃の気持ちを思い出して、リトルタマ~ダ(担当)とリトル助野が「お前どっちがいい?」とか相談しているんですよ。


《5》詰まらない秘訣は「描きたいこと」!


:アイデアやネームに詰まる時、対処方法はありますか?

助野:え~!?こっちが教えて欲しい。でも、とにかくひたすら歩くとか、体を動かすことは大事かも。前に60ページ描いた時は、片道5分の仕事場を、すごい遠回りして30分かけて敢えて歩いたりしました。体力作りにもなりますし。

:ということは、体を動かせば詰まらないということなんでしょうか?

助野:いやいや多少は詰まりますよ(笑)。でもこの前のろくろと悠斗の対決は『陰陽師』の序盤で一番描きたいことだったので、そういう時は迷わない。逆に「このエピソードが終わったら、次を考えておかないと燃え尽きてしまうのでは…」と不安になったり。

:つまり描きたいことを持ち続けることが、詰まらない秘訣なんですね。

助野:あとはアンテナを広く張り巡らせておくこと。詰まっている時ほど「ここはこうでないといけない!」みたいに視野が狭くなっている気がする。苦しい時こそ他に色々な見方・考え方ができるようになると、打開策も浮かびやすいと思いますね。

:ちなみに助野先生は、連載の先の展開やアイデアは担当さん以外に話しますか?

助野:今はほとんどないです。『貧乏神』の時は仲くんやスタッフにも相談しましたが、みんなオッサンだから大人の意見になってしまう。『陰陽師』は子供の意見を知らないといけないし…。だからせいぜい「子供の頃、何が好きだった?」くらい。ただ時間がなくて、今の子供の流行をリサーチしきれていないのが悩みですね。

:では詰まることとは逆に、これまで描いた中で特に手応えがあった場面や絵はどこですか?

助野:『貧乏神』の最終回は描き切った感があった!向かい合って「じゃあね」のコマは、連載当初から頭にあった理想の終わり方で、描けた時の感慨はすごかった…っていうか君、その場にいたよね?

:はい(笑)。

助野:最初に決めていたゴールに辿り着けたのは、本当に幸運だった。でも感慨と一緒に喪失感もすごかった。これで市子たちとお別れなのかぁ…と。

:ところで『陰陽師』は最終的なゴールは決めていますか?

助野:ビジョンはいくつかあるけど、ライブ感というか、その時面白いものを描きたいので、敢えて決めずに進めています。自分の中では面白いと思える結末はいくつかあるけど、そこに至るまでの流れは固めないようにしています。

:理想の最終回が決まっていた『貧乏神』と違う作り方なんですね。ゴールがないことの不安感はありますか?

助野:確かに一つの章の結末が決まっていないと戦々恐々とするけど、『陰陽師』全体に関しては、そこまで不安はないですね。むしろこれからろくろと紅緒はどうなっていくのか、描く側としても楽しんでいるのかも。『貧乏神』の場合は結末が決まり切っていたから「市子と紅葉を別れさせるために描いている」という側面があって…。市子が成長していくたびに、僕は寂しくなっていましたね。

:市子と紅葉の距離が近づいて読者が微笑ましく感じる一方、助野先生は逆に別れを意識してしまって…。

助野:別れないという方法もあるんですよ。「二人のドタバタはまだまだ続くのであった。おしまい!」みたいな。でもそれだと、成長物語なのに成長せずに終わってしまうので。


《6》漫画家・助野嘉昭の苦労と喜び!


:今まで漫画家をやってきて、辛かったことと嬉しかったことを教えて下さい。

助野:辛かったのは最初に言った、ネームの直し過ぎでノイローゼになったこと(笑)。あと漫画家になってからは「牡丹編」の辺りですね。というか、君も知っているでしょ!

:はい。やっぱり元アシスタントがインタビュアーって、時々無理が出ますね(笑)。

助野:あと辛かったのは『陰陽師』が思いつく前、描きたいことが具体的になかった時かなぁ。新作のビジョンが何もなく「好きなものを描いて欲しい」と言われて…。それは編集部の厚意だけれど、自由過ぎると逆に辛い時もある。むしろ「こういった役割を果たして欲しい」と期待される方が分かりやすい。僕の場合、お題があって、それをどこまで面白いものにできるか考える方が描きやすいかも。

:お題という縛りがあると、制約の中で面白いものを考える力にもなりそうですね。

助野:嬉しかったのは…一番はやっぱり『貧乏神』で連載を獲ったこと。というか「通らなかったら今の力では漫画家にはなれない!」という覚悟があったので、ほっとしたという感じかも。アニメ化もすごい嬉しかったけれど、喜ぶタイミングを逸したというか…。だってアニメ化の話って、編集長に書類渡されて淡々と報告されただけだし(笑)。もっとこう「やったね!おめでとう!!」的なものがあるものかと。あとは賞を獲ったこと、一番最初にファンレターをもらったこと、そして『貧乏神』を理想通りの形で終わらせたこと!


《7》漫画家・助野嘉昭の人生の岐路!


:助野先生が漫画家を目指したきっかけを教えて下さい。

助野:ええ~?…仲くん、ある?

:ないですね(笑)。

助野:ないよねー!ずっと絵を描いていて、気が付いたらこれしか残っていなかったという(笑)。でも「逃げ場はない」「ここで漫画家になるしかない」と気づくポイントはあったかも。僕の場合は『帰って下さい。』で手塚賞に入選した時かなぁ…。

:確かに漫画家志望って、学校を卒業して、周囲も就職したりして…段々と進路というものがリアルになってきますよね。

助野:定食屋のバイトでフライパン振っている場合じゃない…と思って頑張ったり、逆に自信が持てずに泣いて漫画をやめたいと苦しんだり。僕の場合は「いずれ就職活動するけど、もうちょっとだけ続けてみよう」と考えていた頃、『帰って下さい。』の受賞で少し自信になったんです。そしてその辺りから、もう自分の人生、後には引けないと感じるようになりましたね。

:好きでやっていて、気づくと漫画家になっていたという感じなんですね。

助野:やっぱり漫画家を目指すのも、諦めて他の仕事に就くのも、結局は自分次第だと思う。あと、池田晃久先生のアシスタントをできたことも大きかった。池田先生は「漫画家は、漫画を描かなくても誰も怒ってくれない」と仰っていて、それがすごい僕の中に刺さったんです。結局、自分の意思で動かないと漫画は描けないんですよね。あとその時、チーフの方が「辞めても潰しが利かないですしね…」とボソッと漏らしていたのも印象的でした(笑)。

:リアルすぎて怖い(笑)!

助野:そうそう。だから「辞めるなら今!」。歳を重ねるにつれて就職活動が不利になるだけだし。そして本当に漫画家を目指す人は、結局辞められずに続けてしまう(笑)。

:助野先生は漫画家として、特に影響を受けた方はいらっしゃいますか?

助野:作品としては、よく取材でも挙げている『ザ・モモタロウ』(にわのまこと)ですが、作家としては池田先生ですね。心構えというか、プロ意識を持って描いている作家にお会いしたのは池田先生が初めてでした。作家として活躍するには心構えが必要だし、心構えがあっても続けられないかもしれない。そして心構えがない人はたまたまデビューできても、やっぱり続けられない…。池田先生の仕事ぶりから、かなり大きなものを学んだと思います。

:漫画家は自分一人で描き続けなければならない、恐ろしい世界でもありますよね。

助野:ある意味スポーツと一緒で、常に自分の技術を磨き、面白いネタを準備して、アンテナも張り続けないといけない。一流のサッカー選手だって、普段から厳しい練習を重ね、それでも試合で結果を出せるかどうか…。何もしていない人が活躍できるわけがない。

:それは新人の頃から意識していたのですか?

助野:ええ。新人の頃は時間がたっぷりあったので、漫画も映画もたくさん観て、仕事でもないのに毎週16ページの短編ネームを描いたりして。あと『京都のパゴン』という染物屋さんのweb連載漫画も描かせてもらっていました。あれはかなり勉強になったはず!だから新人の方は、せめて4コマだけでも毎日描くといいんじゃないでしょうか?

:それは色んなパターンが身に着きそうですね。

助野:逆に、長いネームをひたすら描き続けるのは効率が悪い気がする。昔、他誌の編集さんに「ネームを描いて、原稿にして、完成させることで初めて力になる」と言われたことがあって。

:確かに、実際に完成させた本数は自信にもなりそうですね。原稿を描き上げるって、漫画家を目指す人にとっては一番最初の試練ですし。助野先生が一番最初に完成原稿を描かれたのは、いつ頃ですか?

助野:実は京都精華大学の課題で描いた漫画で…。それも進級のための課題だったので、結構ひどいものだったと反省しています。


《8》漫画を志す新人へ一言!


:漫画家志望や新人作家へのアドバイスはありますか?

助野:先ほども言いましたが、普段から技術を磨き、体力もつけて、スポーツ選手と同じように準備して欲しいです。そうしないと連載は取れないし、取れたとしても凄い実力の先輩作家や、才能溢れる新人との競争にさらされるので。

:助野先生は新人の頃、やっておけばよかったと思うことはありますか?

助野:時間がある内にデジタルをもっと勉強しておけばよかった。僕自身は読者が面白く読める漫画なら、デジタルでもアナログでもこだわりはありません。ゆくゆくは自分の漫画もフルデジタルになると思っています。

:デジタルは慣れたら速いという印象もありますよね。

助野:そう!デジタルで作画効率を上げたら、いっぱい作品が描けて、いっぱい読んでもらえる。それにストーリーを練る時間もできるだろうし。今は作画の時間が決まっていて、ネームや展開を考えるとなると、どうしても一定時間以上は取れない。考える時間がないといい漫画は作れないので、今はデジタルの効率に魅力を感じています。まだ使いこなせていないけれど(笑)。

:一ヵ月の執筆スケジュールは決まっていますか?

助野:まず、作画に10日くらい使います。徹夜は基本的にしないし、してもいいものができるとは思っていないので。ネームは…3日プロット、3日コマ割りに使って、全部で6日取れたらいい方かなぁ?ただ、それぞれ延びる場合も結構あって…。

:僕がアシスタントをしていた頃って、締切で追い詰められたことはほとんどなかったですよね。全員が体調を崩した時くらいで。

助野:ああ、スタッフが全員風邪で倒れた時!あの時は本当に焦った。

:漫画家はデスクワークといえど、実はかなり体力勝負ですよね。

助野:体は大事!「病は気から」というけれど、その気力を出すのだって体なんだし。整骨院にいる友人に聞いたことがあるけど、骨格が歪んでいると健全な精神状態を保てないとか。だからいい漫画を描くには、体作りも大事(笑)。姿勢も体調もしっかりしないとね。

:作画中の助野先生は、結構姿勢を気にされていましたよね。背筋を伸ばして、絶対に足を組まなかったり。

助野:姿勢が悪いと腰を痛めるし、何より線が曲がってしまう。それに机にかじりつくような姿勢だと、疲れちゃうじゃない。

:まさか漫画家先生から姿勢の話が出るとは…(笑)。

助野:ちょっと言い方が悪いけれど、僕は漫画を「芸術」だとは思っていないんです。僕自身が才能でやってきたわけではなく、自分で努力して、そこで身に着けた技術で漫画を描いてきたから。だからこそ、頑張ったら誰でもなれるものだと思っています。僕に何か特別なところがあるとしたら、せめて出会いに恵まれていたことでしょうか。池田先生しかり、大学の竹宮惠子先生しかり。

:決して、才能に恵まれた人しか漫画家になれないということではないのですね。

助野:もし才能が必要というのであれば、好きで漫画を描いて、気づいたら漫画家になっていた…という漫画を楽しむ才能でしょうね。そういった意味では、他に楽しいものがあったりすると、漫画が「仕事」になってちょっと辛いかも。

:助野先生は漫画に対して「仕事」という意識はないのですか?

助野:プロ意識は持っているつもりだけど、お仕着せの「仕事」みたいに、嫌々やっている面はまったくないです。でもそれはスポーツ選手でも、俳優でも、それこそ会社の勤め人でも一緒。自分がやりたくて頑張っている人が、いつの間にか成功するのだと思う。漫画家は大変だし、身に着ける技術も多いけれど、ポジティブに受け止めて頑張ればきっと結果も出るはず。これから漫画家を目指す方は、楽しんで努力して、そして面白い作品を描いて下さい。

:ありがとうございました!


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■プロフィール


●ゲスト 助野嘉昭先生
2008年から2013年まで『貧乏神が!』を連載、現在『双星の陰陽師』連載中
●取材&マンガ 仲英俊先生
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!


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●ジャンプSQ.公式サイト
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